秋山様、
初めまして。以前ある雑誌で秋山様のアドバイスを読んで以来、サイトにお邪魔をしては励まされるようなアドバイスを拝読しております。
私は本来弱い人間で、それを自覚していることもあり どうしたら強くなれるのか、どうやったら自分を鍛えられるのか考え続けてきました。
そこで友人の勧めで自己啓発的なコーチングをオンラインで受けることにしました。
その先生はかなりスパルタ式なので 友人も「それで強くなったと思う」と言っていました。
その先生は女性をターゲットにしているとあって、「本当に美しい人はダイヤモンドのように強く、傷つかない」というのが持論で、
「何かが起こって打ちのめされるのは自分が弱く、美しくないから」という感じの教えが中心でした。
そのためレクチャーを受けていた時期は、気持ちより外観を優先してしまうほどでした。
ですがある時、私のミスではないことでクライアントに八つ当たりされ、そこから始まったトラブルのせいで
辛い思いが続いて、夜中に目を覚ましては眠れなくなる思いをしました。
そんな時に追い打ちをかけるように 「そんなことで傷つくのは、心も外観も醜い証拠」的なことを先生に言われ、
鏡を見ると私の姿が 生気が無く、年齢以上に年老いて醜く思えて 一晩大泣きしてしまい、以来その先生のレクチャーを受けるのを止めました。
でも止めてからも、頭に植え付けられた「本当に美しい人はダイヤモンドのように傷つかない」という考えが離れず、
精神的に落ち込むようことが起こる度に、自分の弱さだけでなく、自分の醜さを情けないと思う習慣がついてしまいました。
自己啓発どころか 逆に精神を捻じ曲げられたような気持ちになっていますが、こんな状態を治すことは出来るのでしょうか。
何かアドバイスを頂けると嬉しいです。
宜しくお願いします。
- M -
世界的に婚約指輪でダイヤを購入するしきたりが若い世代にアピールしなくなり ダイヤの需要が下がって久しいとあって、
欧米でもダイヤモンドと女性の強さ、美しさを結び付けては、女性達に自立の証としてダイヤを購入して貰おうというマーケティング戦略が行われて久しい状況です。
そのため上の左側のビジュアルのように女性を「Unbreakable」などとダイヤに例えるピッチは良く聞かれます。
ですが私が約20年前にCUBE New Yorkのシミュレーテッド・ダイヤを扱うCJのセクションをスタートするにあたって、NYのダイヤモンド・ディストリクトでまず最初に学んだことの1つのが
「ダイヤは割れる、砕ける、傷が付く。だから高額な石ほど熟練した職人がセットしなければならない」ということでした。
確かにダイヤは天然鉱石の中では最も硬い9.9の硬度ではありますが、だからといって何があっても傷つかない、砕けないということではないのです。
したがって「本当に美しい人はダイヤモンドのように強く、傷つかない」というのは机上の空論に過ぎませんので、
Mさんがそんなレクチャーを受けるのを止めたのは正しい判断だったと思います。
血の通った人間であれば辛い時に落ち込んだり、中傷や裏切りによって傷つくのは当然のことです。
「強さ=鈍感さ」ではないのです。
とは言っても鈍感な人は強い人間同様の振舞いをしますし、世の中で成功したり、出世していく人ほど鈍感なケースは珍しくありません。
そもそも鈍感で居られるのは自己中心的で、自分の良いようにしか物事を解釈しないためで、そういう人は洞察力が鈍く、
自分に不都合な真実を受け入れることもできません。人に恐れられたり、陰で軽蔑されることはあっても
好かれたり、尊敬されたりすることが無いのが鈍感な人間です。そういう人が社会や組織の上に立つ悪影響は誰も理解しているものと思います。
鈍感な人と本当に強い人が共通に備えていると見なされるのが自信ですが、前者は往々にして「何が起ころうと自分は安泰」、もしくは「誰も自分には逆らえない」というような
裏付けのない空虚な思い込みを自信と思っているケースが殆どです。それに対して本当に強い人間は「問題が起こっても何とか対処していける」
「苦境に陥っても やがては乗り越えられる」という経験や実績に裏付けられた自信を持っているものです。
要するに自信や強さは人生の中で育むものであって、教わって身につくものではありませんし、
ましてや自分に思い込ませるものでもありません。
強さというのは自分の弱さを克服することで徐々に身につくものですから、強い人ほど自分自身や人間全般の弱さを理解しているものです。
また強い人ほど辛い経験に対して「乗り越えた」、「闘った」という意識を持っています。
これに対して自分の強さに目覚めていない人は、辛い経験が「通り過ぎた」、「終わった」と解釈しているケースが多く、
次に起こり得る災難や不運を不必要に恐れたり、事なかれ主義に陥って チャレンジやステップアップを控えてしまう結果、
消極的な人生を送る傾向も顕著です。
話をダイヤモンドに戻せば、そのダイヤとて磨かなければ美しく輝くことは無いので、私は男性でも女性でも外観に気を配って自分を良く見せる努力は大切だと思いますし、
それが自信に繋がるとも思っています。
でも「きれいにしていたら周囲に受け入れてもらえる=キレイにしていなかったら周囲に受け入れてもらえない」というような考えでいる限りは、
自分のコンディションによってグラグラするような自信しか身につきませんし、それは強さにはなりません。
本当の自信というのは「自分は周囲に受け入れて貰える」と思うことよりも「自分はたとえ周囲に受け入れられないことがあったとしても大丈夫」というようなアンコンディショナルなものであるべきで、
それこそが人間の強さになります。「自分は周囲に受け入れて貰える」的な自信を持っている人ほど、往々にして周囲に受け入れて貰うために無駄な努力や必要以上の気遣いをしているものですし、
周囲の目や意見を常に気にして、それに対する心配や不安にエネルギーを費やして、周囲に合わせる自分しか持っていなかったりします。
私自身は人間の本当の強さは柔軟性だと思っていて、マテリアルの世界でも硬いものより柔らかいものの方が遥かに丈夫なケースが多いのです。
人間の身体にしても ウェイト・トレーニングで筋力をつけたとしても、柔軟性のトレーニングを怠れば怪我をし易くなります。
プロ・アスリートがヨガをトレーニングに取り入れるのはそのためです。
人間心理も柔軟さがあれば 折られても、曲げられても 元に戻れる訳で、それが人間の強さなのです。どんなに強度が高くても へし折られたら壊れてしまうのでは意味がありません。
どんな状況で、どんなに打ちのめされても、「また頑張って自分が取り戻せる」、「やがてはこれを乗り越えられる」と信じて疑わないことが自信であり、それを実行するのが強さです。
また柔軟性というのは 様々な状況や環境にも対応、適応が出来る順応性や許容力も意味します。
弱い人間ほど「これはこうでないとダメ」とか、「皆と一緒でないとダメ」的な思い込みが強く、閉鎖的で排他的になりがちです。
そうすると どうしても長い人生の中で思い通りにならないフラストレーションを味うことになりますし、自分が定めた無意味なルールやスタンダードに縛られて
卑屈になってしまうケースもあります。
その意味で私は 人を受け入れ、異なる価値観に理解を示す柔軟性や許容力は、そのまま心の豊かさや幸福感に繋がると考えています。
Mさんは落ち込んでいた時のご自身の姿を鏡で見て「年老いて醜く思えて」と書いていらしたのですが、そんな時に元気はつらつで若々しく見える人などこの世には存在しません。
辛い時の自分は誰にとっても情けなく思えるものですが、それに必要以上の意味を持たせて 自分を追い詰めるのは間違いです。自分の弱さを嘆くより
「時間が掛かっても私は立ち直れる」と自分に言い聞かせて、ご自身の資質について余計な考えや疑いを持つべきではありません。
これからはそんなネガティブな雑念を振り払って、「自分を励まし、自分を疑わない事こそが強さに繋がる」と考えて頑張ってみて下さい。
Yoko Akiyama
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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