July Week 2, 2021
My Husband Got Fired, Again...
解雇が続く夫、状況を好転させるためには…


ようこさん、こんにちは。
私もアメリカ在住なのでいつもアメリカのニュースやゴシップを楽しみにしています。

ご相談があります。アメリカは簡単に解雇になるのでしょうか。
私のアメリカ人の主人はここ4年の間に2回解雇と1回の契約終了になりました。 1度目は日本に駐在中に8年勤めた会社を解雇。 2度目は2年勤めた会社で育児休暇を取ったところ解雇。 3度目はコロナの最中に解雇となり、仕事が無かったので契約社員で働きましたが 1年の契約がたった5か月で契約終了。 勤めていたのは製薬会社なので、コロナの業績不振が原因の解雇ではありません。むしろ人が欲しい状況です。 駐在員を解雇するのも、育児休暇中に解雇するのも違法なのですが、どちらの会社も非はないと言っています。

私の主人は上司に媚びたりするのができないタイプです。上司が仕事ができないのを指摘して喧嘩になることはしばしば。 私も日本で米国系の会社に10年居たので分かるのですが、米国系企業で出世する人は仕事が出来ると言うよりも、 上に取り入るアピールが上手い、そして下をこき使うのも上手いです。 こちらは言われた通りに遣るしかないという感じでした。でもそれが会社組織だと悟ったので割り切って仕事をしてきました。 でも主人はそれが出来ずに、いつも上司が仕事ができない上げ足を取って嫌われて、たとえ解雇が違法であっても解雇されてしまうという現状です。

子供がまだ小さくて、高いデイケアを払う収入が得られるほどの英語力は私にはないので、主人がまた仕事を見つけるのを待つしかない状況です。 しかしここまで続くとこの先とても不安です。アメリカで生活する不安が一層深まり日本に帰りたいとさえ思います。 少なくとも私は日本では仕事が見つかると思いますし、簡単に解雇されない社会で社会保障もあります。 でも主人は日本語が全く話せないので日本では仕事がなく、英会話教師をするというのは年齢的にプライドが許さないと思います。
アメリカで一体どう切り替えて行ったらいいのか助言をお願いします。 よろしくお願いします。

- YG -


同じ試練や逆境が何度も起こるのは…


アメリカ企業においては人種差別、性差別等、何等かの差別での解雇は問題になりますが、上司が「個人的に嫌いだ」という理由で解雇した場合は全く問題にはなりません。 雇用契約書を読み返してみれば そうしたことをカバーする条項が含まれているはずです。実際にアメリカの大手企業のHR(Human Resource/人事)担当者によれば、最も多い解雇理由は 仕事能力や勤務態度などではなくパーソナリティです。
育児休暇など特定の保証期間における解雇の違法性について言えば、私のアメリカ人の友人も26週間保証されている障害者休暇の終盤で会社に呼び戻されて解雇されました。 高額の敏腕弁護士にコンサルテーション・フィーを支払って相談しましたが、 「今時企業から賠償が得られるとすれば セクハラ程度だ。セクハラは無かったのか?」とあしらわれていました。

当事者であるご主人が 解雇が続いたことを どう思っていらっしゃるかが分からないまま アドバイスを差し上げるのは適切でないように思いますが、 ご主人は解雇について「会社が悪い」とか、「世の中が悪い」などと考えていらっしゃるのでしょうか。 「世渡りが上手いだけの仕事が出来ない上司の下で、自分を押し殺して働くなんて出来ない」と思っていらっしゃるのでしょうか。 大変失礼ながらYGさんのメールからはそんな雰囲気が読み取れた次第です。
それと同時に私の脳裏をよぎったのはアインシュタインの 「The definition of insanity is doing the same thing over and over again, but expecting different results」という語録でした。 日本語に訳せば、「狂気(妄想)の定義は、同じ事を何度も繰り返しては 違う結果を期待すること」です。
人生において同じ試練や逆境が何度も起こるのは、その局面で何かを学ばなければならないというシグナルです。 ここで何かを学んで、自分を変えない限りは同じ事が起こり続けます。 そもそも会社、それを取り巻く世の中を変えることなど出来ないのは誰もが認識する通りです。 ですが自分を変えることによって自分が発するオーラは変わります。そうすれば周囲の自分に対する態度が変わってきますし、 引き寄せる人間関係も変わって行くものなのです。

ではこのケースで「ご主人は何を学んで、自分をどう変えなければならないか?」についてですが、諸悪の根源だと思い込んでいる存在や、敵視している相手が、実は自分と 大差が無いことに気付いた時にその答えが得られます。 私の勝手な憶測から言わせて頂くと、ご主人の学ぶべき課題は 感謝、尊敬、思いやりの念を持って生きる姿勢です。
たとえ上司が仕事が出来なくても、ご主人の仕事ぶりを評価し、感謝してくれたら ご主人は上司の上げ足を取ったり、喧嘩する状況になったでしょうか。 自分の能力が正当に評価され、感謝や敬意さえ示してもらえていたら、ご主人は上司のことを「実務能力は劣っているけれど、人を見る目はある」などと考えていたはずですし、 良好な関係を築いていたと思います。 職場が変わっても、自分より仕事が出来ない上司に 評価も感謝もされずにご主人が解雇されてしまうのは、ご主人が上司と同じように感謝や評価、思いやりを周囲に示さないためです。 たとえそうした気持ちを抱いていたとしても 「そんなことをいちいち口に出す必要があるのか」と考えているようであれば、思っていないのと同じです。
YGさんはこれを読んで「主人は職場で 上司のように人に評価や感謝をするようなポジションには居ない」と思われるかもしれませんが、 立場に関わらず ちょっとした助けにもきちんと感謝するべきですし、 失敗して落ち込む人が居たら励まし、良い成績を上げた人が居ればそれを称えて、誰からでも謙虚に学ぶ姿勢を持つべきなのです。 企業は人の集団なのですから、人間関係を良好に保つことも仕事のうちなのです。 それは上司に媚びることではありません。皆が嫌う上司に媚びれば 逆に陰では嫌われる存在になります。 私がここで言っていること、そしてご主人がこの段階で向き合うべき課題は、企業の中で上手く立ち回れる人間になることではなく、 本当の意味での幸福を掴むための人間的資質を学ぶことなのです。

失礼な指摘が続いて大変恐縮なのですが、YGさんから頂いたメールの文面を拝読する限り、 私には今のご主人が 周囲からのサポート得たり、目標達成のための人脈に恵まれたり、 集まった人間の能力の相乗効果を生み出して、ビジネスも人生も楽しく、充実させていくようなお人柄には見受けられませんでした。
そう感じてしまった理由は、YGさんが「米国系企業で出世する人は仕事が出来ると言うよりも、上に取り入るアピールが上手い、そして下をこき使うのも上手いです」、 「少なくとも私は日本では仕事が見つかると思いますし、簡単に解雇されない社会で社会保障もあります」と 書いていらした部分です。 YGさんの現状を考慮すれば 米国企業の体質を責めるお気持ち、日本に帰国した場合を想定した希望的展望を抱く心理は理解できるのですが、 私にはYGさんが知らず知らずのうちに ご主人のセルフセンター的思考の影響を少なからず受けているという印象が否めませんでした。 もちろんセルフセンターはYGさんの本質ではありません。ご主人への愛情とそのプライドを守る思考が「夫は悪くない、悪いのは会社だ」的な 考えを生み出しているのは明らかですし、そんな考えが ご自身の米国企業での勤務経験をも「こちらは言われた通りに遣るしかないという感じでした。 でもそれが会社組織だと悟ったので割り切って仕事をしてきました」などと、実際よりもネガティブな視点で振り返るようになってしまったと解しています。

誤解しないで頂きたいのは、私は決してご主人の人格を否定している訳でも批判している訳でもありません。 人生というのは何歳になっても人間にとって自分を高めるレッスンで構成されている訳で、今 ご主人はこれまでの人生に欠けていた大きな要素を 学ばなければならない局面を迎えているということなのです。

言葉に出すことで 人間も人生も変わります

YGさんに先ずトライして頂きたいのは、1日の生活の中でご主人が何回 YGさんやお子さんに対してお礼や評価、謝罪、賞賛、愛情といったものを言葉で表現をしていらっしゃるかを 見極めて頂くことです。 YGさんが頼まれたものを買って来てあげた時、本来ご主人がやるべきことをやってあげた時、お子さんがご主人が落としたものを拾ってあげた時など 日常の 細かいシチュエーションで、ご主人は「Thank you」という言葉をきちんと言って下さいますか。 自分が失敗をしたり、迷惑を掛けた時に謝って下さるでしょうか。YGさんのお料理が上手く行った日に「美味しい!」と喜んで誉めて下さるでしょうか。 YGさんが困っている時に手を貸してれたり、悩んでいる時に話を聞いて下さいますか。 ご主人は1日に何回YGさんに笑顔を見せて下さるでしょう。 ご主人が最後にYGさんに「I love you」と言って下さったのは何時でしょう。

「家族なんだから そんなことはいちいち気にしない」とYGさん、もしくはご主人が考えていたとしたらそれは大間違いです。 家族に感謝や思いやり、賞賛を示せない人が、外で他人に対して出来るはずはありません。 そもそも家族間においてはこうした毎日の一言や笑顔が その愛情と絆を深める大切な要素なのです。
仕事や人間関係で追い込まれている男性は「そんなことにいちいち気を遣っていられる状況じゃない。こっちはもっと大切なことに取り組んでいるんだ」という態度に出る場合もありますが、 そんな心で居るうちは人間は追い込まれていく一方です。 「出来ることは全て遣っている」と言いながらも、物事が上手く行かない人というのは 往々にして一番大切なことを忘れているものです。 それは自分の現状に感謝することです。 恵まれない自分にフォーカスするあまり、自分が置かれている状況や持っている物に感謝しない人の人生は どんどん惨めなものになりますし、 孤軍奮闘状態で 周囲が助けてくれることはありません。 ですが常に感謝の心を持って、それを表し、人間として高潔に生きてさえいれば、万一周囲の理解や協力が得られないことがあっても、世の中一般が「運」と呼んでいる 見えない力が味方してくれるのです。
ここでご主人が感謝、賞賛、愛情という人やエネルギーが集まるプロダクティブ・サイクルを学べば、 自分の実力や能力を何倍にもしてくれる人間関係に恵まれますし、そんな状況で仕事に生き甲斐を見出すだけで収入もアップします。 逆にこの機会に学ぶことが無ければ、別の仕事をしても、自分でビジネスを始めても、住む場所を変えても常に同じ壁に突き当たります。

ご主人には手始めに、事あるごとに「Thank you」と言う習慣をつけて頂きたいと思います。 いきなりそんな事を言ってもやってくれそうにない場合には、「子供が感謝の心を持つ人間になるため」とでも言い訳をしながら、 お子さんの手本になる親としてそれを実践して頂いて下さい。 そしてYGさんも 感謝や愛情を努めて言葉に出してご主人に示して頂きたいと思います。 感謝や愛情はインターアクションによって習慣化し、高まって行くものなのです。
人に感謝が出来る人間は、人に感謝される人間です。そして感謝する人、される人は、愛し、愛される人でもあります。 世の中には愛情ほど強いパワーは存在しませんし、愛情に支えられた人間ほど強いものはありません。 感謝や愛情を通じてご主人のプライドが正しく満たされれば 「能力が無いからといって上司を人前で馬鹿にするなんて、自分のプライドが許さない」という考えになるはずです。

最後に、YGさんがご主人とお子さんとの幸せを考えるのであれば 私は早い段階で 「日本に帰国する」という選択肢を捨てるべきだと思います。 アメリカ生活は長くなればなるほど、知らず知らずのうちにいろいろな形でアメリカナイズされていきますので、帰国後の日本の生活は厳しいものになります。 その厳しさは日本にルーツが無いご主人とお子さんにとって比ではありません。 またアメリカ生活を諦めて帰国をするというケースでは、往々にして日本での生活が自分が思い描いていたようにならない現実を思い知らされる結果になります。
そもそも人生においては余計な選択肢を持つと どっち付かずの中途半端な状態が大切な決断の妨げをします。 その結果 アメリカ生活が上手く行かなくなって 帰国に傾けば傾くほど、そのデメリットとなるご主人の存在を重荷に感じるようになります。 ですので早い段階で腹をくくって「自分はここで頑張るしかない」とアメリカ生活に専念する決心をされた方が 悔いのない人生が送れると思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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