July Week 4, 2021
Information Overload in Health & Fitness
健康情報の洪水、自分に合った健康法を見極める法則とは?


秋山曜子さま。
長くサイトにお邪魔してお買い物と、NYの最新情報、そして秋山さんのお考えを楽しませて頂いています。

日本は、今健康本や自己啓発本で様々な健康と体調管理のアドバイスが氾濫していて、YouTuberでも健康本の内容をレクチャーしたり、 医療やフィットネス関係者が専門分野のケアをレクチャーするビデオが溢れています。でも情報量が多過ぎる上に、 「週3時間は走れ」という説と「ランニングは身体に悪い、ウォーキングをしろ」という説があったかと思えば、「塩分を控えろ」というビデオを観た翌日には「塩分を控えるのは止めろ」というビデオががオートプレイで出て来たり、 「糖分は一切取るな」というアドバイスの直後に、「糖分は脳のために必要」という教えがあったりで、何をどう実践して良いか分かりません。
秋山さんは、長くCUBEさんのサイトで健康についても書いていらして、心身ともにご健康でいらっしゃる様子を感じ取っていますが、 どうやってご自身にとって有益な健康情報を取り入れていらっしゃるでしょうか。 先日友達にも「健康情報が多過ぎて、何をしたら良いか分からない」と言ってしまったら、自分が実践している健康法とそれで健康になった自慢話を聞かされたのですが、 でも言っている本人はさほど健康そうには見えませんでした。
私は決して怠け者ではありませんが、日常のライフスタイルからストレスは抱えたくありません。そんな私でも出来る健康法があったら 教えて頂けると嬉しいです。
これからも応援しています。

- S -


健康情報は内容の氾濫ではなく、切り口の氾濫です


私は今年の2~3月にかけて5週間ほど日本に一時帰国していた際の自主隔離中に 日本の自己啓発系、及び健康情報系のYouTubeビデオをチェックしましたが、その数の多さには驚きました。 内容については失礼ながら玉石混交という印象を受けたのが正直なところです。
そして隔離後には東京の街で「以前より人々がヘルシーになっているのかな?」と思いながらチェックしていたのですが、 私にとって2年ぶりに見た日本の人々の姿は、以前よりも若い世代の髪質が衰えていて、マスクをしているせいか全体的に顔色がグレーがかって見える人が比較的多く、 そうした人達の目力は弱いものでした。また姿勢が悪い人、歩く時に身体がきちんと伸びていない人が目立ちました。 身体を気遣っても、気持ちや精神が伴わないと活き活きとした健康オーラは出ませんので、仕事や人間関係のストレス、先行きの不安など、 気分が重くなる生活の中で「せめて健康は維持しなければ」という気持ちで取り組んでいる人が多いのかな、と思ったのを覚えています。

世の中では「人の体質はそれぞれで、自分に合った健康法を見つけるのが大切」と言われますが、 その割には健康の指南本は、「この健康法はこういうライフスタイルで、こういう体質の人に特に効果的です」というようにあえて読者層を限定するようなものはなく、 誰でも同じように効果を上げるように謡っているものが殆どです。 また企業の圧力などで、本当に身体に悪い物をそうと言えない、書けないという傾向は日本において極めて顕著で、 世界各国で使用禁止になっている健康を害する原料が日本では未だ野放しになっている状況には、食品業界大手の利益追求姿勢が政界とメディアにしっかり行き渡っている様子が窺えます。
その一方で今の世の中に溢れる健康情報に共通する「睡眠をしっかり取る」、「夜遅く食事をしない」、「適度に運動をする」、「野菜を積極的に食べる」、」「身体に良い物でも食べ過ぎない」、「胃や腸を空っぽにして休める時間を作る」という ユニヴァーサルなメッセージは、ヘルス・コンシャスな日本国民なら改めて言われなくても 既に聞いたことがあるはずの内容です。 そんな内容でも、炭水化物や糖分、塩分など特定のアイテムを槍玉に挙げたり、「これだけやれば健康になれる」、「これをするから健康になれない」などの アングルを設けて、それに応じたキャッチ―なタイトルが付くと、全く異なる新しいコンテンツとして発信されることになります。
それを受け取る側も 「またその話か!」というリアクションになるのは それらを既に実践している人であって、 そうした情報を繰り返し得ては「この本にも書いていたから、やっぱりそうなのかと思った」などと考えるのは、情報を聞き流す、読み流すだけで実践していない人々であり、 そうした人々が出版業界やYouTuberの収入源になっている訳です。

私は自分に合った健康法やダイエットを見極めるには、まずは正しい判断が出来るノーマルな心身である必要があると思います。 ノーマルな心身になるためには、前述の「睡眠をしっかり取る」、「夜遅く食事をしない」、「適度に運動をする」、「野菜を積極的に食べる」、」「身体に良い物でも食べ過ぎない」、「胃や腸を空っぽにして休む時間を作る」という 全ての体質、全ての健康法に共通する課題を実践するべきなのです。 健康のために避けて通れないこれらの基本事項が実践出来ないのであれば 何冊本を読もうと、何本ビデオを観ようと時間の無駄に終わるだけです。 基本課題と余計なダイエットを一緒に始めようとすれば、生活に縛りやルールが増える分、基本課題の実践が妨げられてしまいます。 自分の体質やライフスタイルに見合った健康法やダイエットを見極めるのは、基本的な健康課題をこなした後の問題だと私は考えます。

不健康な食生活をしていた人には どんなダイエットでも有効です

1989年に渡米し、殆ど運動の機会が無く、外食やテイクアウトが中心の食生活だった私が「これではいけない!」と一念発起して健康に真剣に取り組む決意をしたのは1992年のことでした。 話が長くなるので決意に至った経緯は割愛させて頂きますが、今から振り返るとその頃の食生活は脂と炭水化物まみれでした。
そこでビル内にジムがあるアパートに引っ越し、ジムのトレーナーの指南で当時アメリカで大流行していた低脂肪ダイエットをスタートしましたが、 そのセオリーでは「炭水化物はエネルギーのために必要、脂肪が体重増加の原因なので徹底的にカット」とされており、 私の食生活からマヨネーズ、卵、バター、肉の脂など、ありとあらゆる脂肪分が取り除かれ、揚げ物は決して食べないと決心しました。 揚げ物を食べないポリシーは今も貫いていて、過去約30年間、私が揚げ物を食べたのは年に3~4回程度です。 逆に炭水化物、特に私が大好きなパンはエネルギー源としてタップリ食べ続けていました。ちなみに食べていたのは麦パンなどではなくホワイト・ブレッドです。 またエクササイズにも夢中になり、1日2時間のワークアウトを週に5日行っていました。
その結果、朝食にベーグルを2つ食べても 5ヵ月で体重10キロを落としましたし、それを維持し続けました。 当時は肌も髪の毛も絶好調で、現在の炭水化物を目の敵にする健康書が指摘するような問題は一切ありませんでした。 実際に 筋肉をつけて カロリーを燃やし易い身体を構築しようとしていた当時の私には、 炭水化物や糖質はむしろ必要だったのです。糖質を取らずに筋トレをすれば、筋肉を作るために大切な栄養素が他から奪われてしまうので、筋トレをする人にとって糖質は不可欠です。 ちなみに私は普通に引き締まったボディを目指しただけで、ボディビルダーのような体型を目指していた訳ではありません。よほどハードなトレーニングとダイエットをしない限りは そんなボディには成り得ません。

今の世の中では低脂肪、炭水化物過多のダイエットは「太る原因」、「痩せるはずがない」と言われるものですが、それでも私が痩せたのは それまでの私の食生活が不健康であったためで、その経験から私は「全く食生活に気を配っていなかった人ほど、どんなダイエットでも とにかく始めて、ある程度続けることで必ず効果が出る」という考えの持ち主です。
エクササイズについては世の中一般で言われるように、体重を減らすためにはさほど効果はありません。私も筋トレを始めた最初の2ヵ月ほどは殆ど体重が減りませんでした。 やがて低脂肪ダイエットによって体重が減り始め、身体が体重を落とすモードに入った段階で、当時のトレーナーに「もっと早く痩せたいなら有酸素運動をするべき」と言われ、 ステア―マスターという階段を上るモーションのマシンのワークアウトを筋トレに加えました。するとそこからは驚くほど体重が落ち始めて、周囲からも「痩せた」と言われましたし、 身体が軽くなってきたこともあり 苦手と思っていた有酸素運動もさほど苦になりませんでした。1日のワークアウトが2時間になってしまったのは有酸素運動を加えてからのことでしたが、 減らした体重を私が維持できたのはエクササイズを続けていたお陰で、ダイエットだけではせっかく痩せてたとしても徐々に元に戻ってしまうケースが殆どです。

そんな私の体重が再び増え始めたきっかけになったのは、朝食をベーグルからシリアルに替えたことでした。 以来 食欲、特に糖分への欲望が抑えられなくなり、シリアルもどんどん甘さが強いものに変わり、その消費量が増えました。 運動しているのに体重が徐々に増え続けたことから、焦りやフラストレーションが高まりましたが、ある日お土産でもらったゴディバのトリュフ20個詰めの 12個(計約2600カロリー)をあっという間に平らげても未だ満足しない自分にショックを受けて「砂糖中毒という病気になっている」と悟りました。
当時は食事と体重のジャーナル(日記)をつけていたこともあり、それを見直して 諸悪の根源がシリアルだと悟った時には、「決して食べ物を粗末にしない」主義の私がキッチンにあった2つのシリアルの箱をそのままゴミ箱に捨てました。

そしてちょうどその頃、NYタイムズで「スニッカーズ・エフェクト」の記事を読みました。 これはアメリカの食品業界が「何故同じキャンディ・バーの中でも スニッカーズだけがダントツで売れ続けるのか」を調べるために、 それを食べた人間の脳波をチェックした結果、明らかになったのが スニッカーズのチョコレート、ピーナッツ、ヌガーという複数のレイヤーの 味と食感が脳に次々と快楽の刺激を与え続けること、そして食べ終わった時に またそれを求める中毒性を砂糖とケミカルがもたらすという事実。 以来、それが食品業界にとって 莫大な利益をもたらす黄金のフォーミュラとなり、全ての加工食品において消費者を中毒にするためのケミカル・デザインが用いられるようになったというのがその内容でした。
そのテスト・ケースのような体験をシリアルを通じて実際に味わった私は、 それを境にスーパーで箱入りで売られている工場生産のフード、冷凍食品は殆ど買わなくなりました。 また当時からアメリカでは 挽肉や加工肉にピンク・スライムと呼ばれるケミカルの混ぜ物が入っていること、パルメザン・チーズのボトルの中にもチーズ以外の混ぜ物が多いことが報じられていたこともあり、 加工食品全般を避けるようになりました。
さらには徐々にロウ・ファット、ノン・ファットなど成分を調整した乳製品、工場生産の塩(いわゆる食卓塩)、GMO食品、オリーブオイル以外の植物油を避けるようになり、電子レンジを使わなくなりましたが、 これらはアメリカのヘルス・コンシャスな人々が一般的に行っている食習慣で、私だけが特にストリクトな訳ではありませんし、それでも食べられる物は山ほどあります。 電子レンジについては、これまでアメリカのキッチンで標準装備になってきましたが、若い世代ほど使わない傾向が顕著なので、ブルックリンの新築住宅には 電子レンジが無いケースが増えているほどです。

身体に良いはずの食生活で腸内が真っ黒になった私の経験

私自身の体質はと言えば、身体にエネルギーをため込むサバイバル型で、食糧危機の時には体力を維持出来ても、それ以外の時は太り易く、痩せ難いタイプ。 それを自覚してきた私にとって、ダイエットは人生の趣味のようなもので、断食、プチ断食はもちろんのこと、ヴェジタリアン、ヴィーガン、ロウ・ダイエット、ケトン体ダイエット、玄米ダイエット、レモネード・ダイエットなど、 ありとあらゆるダイエットをトライしてきましたが、苦しいダイエットでも精神状態が高まっている時は成功しますし、気持ちが伴わない時は簡単なことでも挫折するのは 自らの経験で言えることです。
でもアメリカは医療費が高額ですし、私は125歳まで五体五感満足で生きることを目標に掲げていること、そして何より 自分の身体は親や祖先から授かった最も大切な財産だと思っているので、 年齢を重ねるにしたがってダイエットの目的は自分のベスト体重を保つこと、そして健康を維持することにシフトしてきました。

とは言っても健康を追求し過ぎるのにも問題があることを思い知らされる出来事がありました。 私は9年前に大腸内視鏡検査を受けたのですが、その当時の私は週に2日の断食を実践しており、 野菜中心の食生活。炭水化物は玄米に五穀米を混ぜたもの、しかもそれを小腸に届くまで消化されないレジスタントスターチとして摂取するために冷めた状態で食べるようにしていました。 スナックにはアーモンドを食べており、腸内がさぞや綺麗だろうと自信満々で臨んだ検査したが 「腸の出口部分が真っ黒で何も見えない」と医者に言われて、 一体何を食べているのかと尋ねられました。
ハンバーガーとフレンチフライを食べているアメリカ人でさえ 検査前2日間の断食で腸がクリアになるのに、週に2日の断食をして、エクササイズもして、玄米と野菜を食べている私の腸が汚れているなんて 信じられませんでしたが、ドクターは「腸内を悪化させるから」という理由で五穀米入り玄米とアーモンドを食べないようにと言ってきました。 すなわち私が健康のためにやっていたことは、完全に裏目に出ていた訳で、既に野菜が多く 繊維質が十分過ぎた私の食生活の中で、 玄米と五穀米のミックスやアーモンドは消化吸収の負担以外の何物でもなかったのです。 そもそも私は同じ量の白米と玄米を食べた場合、玄米の方が体重が増えた経験があり、玄米との相性が悪いことは薄々感じていたのですが、 世間一般であまりに「玄米は身体に良い」と言われ、そう思い込む気持ちが強かったことから 始めてしまったのがその食生活でした。 そして自分ではそれが健康に良いのだと思い込んで、やがて病気になり得る原因を作っているとは思ってもみませんでした。
もし私がご飯とお味噌汁だけという食生活をしていたのなら、玄米を食べるメリットはあったのかもしれません。 でも玄米から取れるヴィタミンやミネラルは、白米と比べるから多いように思えても、同じカロリーのブロッコリーに比べたらずっと少ないですし、血糖値は白米同様にしっかり上昇します。 なので私は 野菜をしっかり食べている人や玄米が身体に合わないと感じる人には 決して玄米食を薦めない立場ですし、アメリカにはスティーブン・ガンドリー博士のように そのベストセラー書籍で「玄米は健康のためにならない」とはっきり宣言する有名なダイエット・ドクターも居ます。 これはどちらが正しいという話ではなく、どちらが自分の体質や食生活に合うかという問題なので、議論すること自体が馬鹿げているというのが私の考えです。

Sさんが書いていらした「ランニングか、ウォーキングか」についてに言えば、かつての私はとにかく走るのが嫌いで、90年代にステア―マスターを有酸素運動に選んだのも 走りたくないからでした。そんな私がランニングを始めたのは、ジムのトレッドミルの上で早く歩くよりも、ゆっくり走った方が楽であることを発見したためです。 人間の身体というのは早く歩こうとすると、自然に走るモーションになって行くものなのだそうで、その自然の摂理に逆らうからこそ競歩が非常に厳しいスポーツなのです。
筋トレには脳のモルヒネと言われるエンドーフィンをもたらす効果は望めませんので、頭の中がスッキリする効果はランニングのような有酸素運動ならではのものです。 その恩恵を走ることで受けてきた私はウォーキングよりランニング派ですし、運動で汗をかくのは私にとって最高のデトックスです。 でも少し前にセントラル・パークのランニング・コースを 何時もとは逆回りに音楽を聴かずに歩いたところ、10年以上走っているコースが全く別の景色に見えて、 しかも水流の音に気付いてそちらに目を向けると、コースの脇の茂みの奥に小さな滝があることに初めて気付きました。 それ以来、景色や空気、音を楽しみながら歩くことは人生のラグジュアリーであると考えるようになりました。
最後にSさんのメールに「自分の健康と健康法を自慢するお友達がさほど健康そうには見えなかった」とありましたが、私も健康に見えない人の健康セオリーは信用しない主義です。 そもそも私にとって健康は自慢するものではなく 感謝すべきもので、一生に渡って前向きかつ謙虚に取り組むべき課題なのだと思っています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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