Aug Week 3, 2021
Toxic Workplace Poisoned Me
劣悪職場を退社しても、生活習慣が直りません


秋山様。
2ヵ月前に劣悪な職場環境に嫌気が差して会社を退社しました。きっかけは同僚が体調をくずし、医者に 「そんな風に働くのは自殺行為だ」と言われた話を聞いて、私もこんな会社のために死にたくないと思ったからです。
私の仕事はある業界ではちょっと知られた人の小さなオフィスで、薄給で休みが少なく、残業も多く、オフィスビルが閉まってからも 同僚たちとファミレスにパソコンを持ち込んで仕事をするような毎日で、気性が荒い社長に怒鳴られるのを恐れながらの仕事は非常にストレスになりました。 入社から数日で来なくなる人も居ましたが、それでも私を含むスタッフが働き続けたのは社長に「お前たちのレベルじゃ他に行き場などはない」と言われて、まずはここで少し勉強するしかないと思っていたのと、 1つ仕事が終わると 次の仕事が待っているエンドレス状態だったためで、思い返せば完全なブラック企業でした。
自分でも身体がボロボロになっているのが分かったので、退社後3ヵ月は新しい仕事をせずに休息に当てる決心をしました。 ですが暫しの間、朝起きた途端に「寝坊をして遅刻した!」と思ってパニックになることが何度もあり、夜も人並みの時間には眠くならず、昼間は 時間の束縛が無くなったものの何をしたら良いのか分かりません。 食事にしても健康的な食事をしようと野菜を買って来ては料理をする気になれないので、野菜が冷蔵庫の中でクテクテになってしまい、 仕事をしていた時と同じようなコンビニ調達の食事やデリバリーのピザを食べる習慣が抜けません。 時々同僚と入り浸ったファミレスの食事が懐かしく思えることさえあります。 要するに仕事を辞めても仕事に行かなくなっただけで、不健康な生活は全く変わりません。
むしろ以前より脂っぽいものを食べた後に胸やけをするようになり、糖質依存も前より酷くなったので食生活は悪化していて、 気付くと体重も増えていました。 世の中が「糖質カット」と言っている時に、甘い物で体重を増やしている自分が情けないです。
今は友達に薦められて、YouTubeで健康関連の情報を観ているので 気持ち的には運動や食生活など、健康な自分を取り戻すために何かしなければと思うのですが、 「菓子パンやドーナツが一番悪い」というビデオを菓子パンを食べながら観ている自分に気付く有り様で、 毎日のように「明日から…」と決意だけしては、翌日になると身体が言うことを聞かず 自己嫌悪の毎日です。

このコーナーは学生時代の友達に教わりました。友達がどうしても読むようにと送ってくれたリンクのアドバイスに励まされたことがあって、 「いっそ私も相談してみよう」と思いました。 自分でも今の自分が嫌でたまりませんし、こんな自分を何とか健康な自分に変えたい気持ちは一杯です。 でもどうしてもそれが出来ない時、やろうとしても始められない時っていうのはどうしたら良いのでしょうか。
情けない相談ですが、本当に抜け出せずにいるので、何かアドバイスをお願いします。

- R -


自分自身がブラック企業になっていませんか?


過去のコラムを読んでご相談下さったとのこと、ありがとうございます。
Rさんがどの程度の期間、ブラック企業で耐えていらしたかはメールに書いていらっしゃいませんでしたが、長時間労働で、 健康や食生活に気を配る時間や余裕が無い生活、プレッシャーのある職場環境はさぞやストレスフルであったとお察しします。 一度習慣化した状況を変えるのは人間にとって簡単なタスクではありませんので、今までの生活からヘルシーなライフスタイルへの転換が難しいのは当然だと思います。
これは あくまでメールを拝読した私の印象ですが、Rさんがいらした職場は入社したばかりの社員に しっかりしたトレーニングをすることなく、実践的な仕事とプレッシャーを押し付けてはいなかったでしょうか。 またそんな職場にいらしたせいでRさんが知らず知らずのうちにプレッシャー・ジャンキーになっていらっしゃらないでしょうか。
Rさんは健康的な食生活をするために いきなり野菜を買って来て それを料理するところからご自身をプッシュしたかと思えば、 そう簡単には変わらない体内時計の仕組みを顧みずにご自身の睡眠習慣を責めたり、「休息のための3ヵ月」と言いながら 「時間の束縛が無くなったものの 何をしたら良いのか分かりません」と、休むことを罪悪と考えていらっしゃる様子が窺えます。 そして生活習慣が変えられないご自分に対して「情けない」、「どうしてこんなことが出来ないのか?」と フラストレーションを感じて、プレッシャーをかけていらっしゃいます。
気性が荒い社長を恐れながらの激務からようやく解放されたのですから、何故もっと安堵感を味わって、 心身ともに疲れを癒して 健康を回復しようというお気持ちになれないのでしょうか。 私の目からは Rさんが社員を大切にしないブラック企業で働くうちに、自分を大切にする気持ちがすっかり失われてしまい、 「プッシュして、出来なければ なじる」というブラック企業同様のメンタリティでご自身を追い詰めているように見受けられます。

またご自分に向けているメンタリティは、必ず他人に対しても向けられているものです。 日本では「自分に厳しく、人には優しく」という姿勢が美徳とされていますが、実際には自分に厳しい人は他人にも厳しく、 自分にも他人にも簡単に腹を立てては 孤独に生きています。逆に自分に寛容な人は他人にも寛容で、小さなことで腹など立てずに 自分と周囲を幸せにして生きているものなのです。 教育にしても、スパルタでルールや課題を押し付けて競争させるよりも、のびのびと自由に自分がやりたい興味を伸ばしてあげる方が ずっと能力を引き出せるのです。
ですからRさんには もっとご自身に優しく、寛容になって頂きたいと思います。そしてこれまでのご自分の周囲への態度を今一度思い返して、 人の過ちやミスにばかり着眼していなかったか、「これくらい出来て当然」と無理を押し付けたことは無かったかなどを考えて頂き、 もしそうであれば「優しさを示して、助けてあげるべきだった」、「プレッシャーをかけるよりも、励ましてあげるべきだった」と考えを改めるところから始めて頂きたいと思います。
健康的なライフスタイルへの改善はその意識改革のステップ無くしてはあり得ません。

自分に優しくするということは、自分の全てに思いやりを示すことです

私がパンデミック中に学んだことの1つが、「自分の身体は自分の意志で自由に扱えるものではなく、自分が管理を任され、その責任を負う存在である」ということでした。
例えば自分の身体がアパートメント・ビルディングであるとしたら、私は管理人に過ぎません。 ビル内のロビーや廊下をキレイに保てば、住人もその場を汚さないように気を遣いますが、掃除を怠れば平気でゴミを落として行きます。 規律を守る体制を作らなければ、夜中に大音響で音楽を掛ける人や勝手に部屋を改装する住人も出てきます。 住人がフィードバックした問題に対しては、直ぐに対処をすれば大事に至ることはありません。 でも壊れたエレベーターを放置すれば、最初は仕方なく階段を使っていた住人もやがては抗議活動をしたり、家に戻らなくなったり、引っ越したりするはずです。
これらと全く同じことが 脳を含む自分の身体の中で起こっている訳で、私の役割は それぞれの臓器や、身体の部位に良かれと思うことをして、 問題が起こったら対処し、出来る限り美しく、老朽化を防いで管理することなのです。
そう考えると免疫システムの衰えは、「不摂生をして自分の身体を大切にしない人間など しっかり守る必要は無い」と、免疫システムが手を抜くようになった結果とも捉えられますし、 オートイミューン・ディジーズ(自己免疫疾患)のように自分で自分の細胞を攻撃して起こる病気は 不摂生や自分の身体への思いやりの欠落に対する抗議活動とも取れるのです。

私はこの考え学んでからというもの、髪の毛を 自分に生えている植物のように大切に手入れをして 育てる という気持ちで洗髪やブラッシングをして、 抜け毛も労をねぎらってからゴミ箱に入れるように心掛けるようになりましたが、それ以降の抜け毛の激減ぶりは目を見張るほどです。 また私はこれまで「江戸っ子」であることを口実に、しっかり咀嚼せずに すぐに飲み込んでしまう乱暴な食べ方をしていましたが、それも消化器官への配慮の無さと反省するようになり、 今では努めてしっかり噛むようになりました。最初のうちは「顎が疲れる」と思いましたが、食事の味わい方が変わってきましたし、満腹感を覚えるスピードも速くなってきました。
要するに私がここで申し上げる「自分への優しさ」とは、 自分がのびのびと より良いパフォーマンスができるように配慮し、自分の全てに対して思いやりを示すことなのです。決して自分を甘やかすことではありません。

自分への思いやりは身体だけでなく住む環境、すなわち家の中でも示すべきものです。 家の中をキレイにしていない人ほど「どうせ誰も来ないし…」など考えるケースが多いのですが、家は自分のための場所なのですから、他人が来る来ないの問題ではないのです。 生きる喜びが感じられない人の家、外面は良くても身勝手な人の家は、往々にして頻繁に使う物が出しっ放しになっていたり、脱いだ服が椅子に何枚も掛かっていたりと、 掃除を含めた「後でやろう」という事が山積している状態で、心地好くオーガナイズされた空間ではありません。
他人の家に滞在した時は「掃除の手間をかけると悪いから」と配慮ができる人でも、自分の家となると 「どうせ掃除するのは自分だから」とあえて構わず散らかしたり、 片付けを先送りにして後からの掃除の手間をどんどん増やす人は少なくありません。 ですが自分にとって一番大切なのは自分なのですから、 掃除の労力と時間を節約して、気持ち良く過ごすためにも日頃から部屋を汚なさいように配慮するべきですし、片付けも その場その場で最小の手間で迅速に行うべきなのです。 そして部屋の中には美しい物や好きな物を飾って自分の美観を満たし、家を自分が幸せになる空間にするべきなのです。

ハンドバッグでも乱暴に使っているのと、大切に使っているのでは見た目や寿命に大きな差が出るのと同様、自分自身も大切にすることによって、 健康状態や老化の進行具合、人生の充実度まで 大きな差が出ます。 自分という存在が かけがえが無いものであることを自覚して大切にする習慣をつければ、 自分にとって必要で、自分を幸せにしてくれる周囲のことも同様に大切にできるようになります。 そのためには「今の自分が嫌い、情けない」などと考えずに、「自分を元気にする方法」、「自分を幸せにする方法」を思いやるべきです。
例えば食べる物を買いに行く時でも、自分を思いやる気持ちを引き出せば ケミカルまみれの出来合いフードよりも 「新鮮な食材を使った美味しいお惣菜を自分に食べさせてあげたい」という気持ちになるはずですし、 「消化器官を休ませてあげられる食事」という選び方なども出来るはずです。食べる量や時間にしても、自分の身体にとって大切な消化、吸収、組成という役割を果たしてくれる臓器に 余分な負担をかけて苦しめないように配慮することによって、理性的にコントロールすることが出来るようになって行きます。 そうやって身体への思いやりを少しずつ実践して行けば、身体も徐々にそれに応えて肌の色艶が良くなったり、快眠が取れるようになったりと 成果を示してくれるようになるのです。

そもそも自分を抑え込んでいた習慣や思い込みを崩すには、ほんの小さなことを1つ1つ行っていくのが最も効果的です。 「A small leak will sink a great ship(小さな水漏れがやがて大きな船を沈める)」という言葉がある通り、 「まさかこんなことで何も変わるはずがない」と思うような些細なことほど、やってみるとそこからドミノ倒しのように全てが変わることは全く珍しくありません。 玄関に何足も出ている靴をしまってみるなど、決心が要らないほど小さなことを実際にやってみると 思わぬ精神的な効果をもたらしますので是非トライしてみてください。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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