Sep Week 3, 2021
Retirement Challenges
夫の上司は後輩のイエスマン、職場を去る夫の決心を止まらせるには


秋山曜子さま。
長年サイトを愛読し、お買い物もさせて頂いている者です。 主人のことでご相談させて頂きたいと思ってメールをしています。
主人は大学卒業以来 ずっとある大企業務めで、数ヵ月後に定年を控えていますが 5年間は勤務が続けられることになっています。 夫は性格的に明るく、大胆なリーダータイプですが、はっきり意見も言うので出世に不向きなタイプで、 それでも社内である程度の地位に居るのは 夫だけがセールスの数字をしっかり取り続けたためです。 夫の上司は2年後輩のイエスマンで、夫は「上に媚びることが出来たら、もっと出世したはず」と何度言われたか分かりません。
夫は会社には忠誠心が強く、仕事も好きで、上から叩かれたり、後輩に先を越されてもやって来られたのは 夫の叩かれ強い性格もありますが、会社と仕事が好きだったためと思っています。 ですから私は夫が定年後の5年間も仕事を続けると思っていたのですが、先日突然、 取引相手の中小企業から引っ張られていることを私に話して、「一度で良いから、上のサポートを得ながら仕事がしてみたい」、 「今までと違う職場でチャレンジがしてみたい」と言い出しました。 夫は以前 その会社の社員のことを「あんな零細のために働くのは辛いはずだよ」と言っていたので、私はとにかく驚きました。

私としては世の中の不安定な情勢を考えると、夫には大手での仕事を続けて貰いたいですし、 夫は変にプライドが高いところがあって、どんなポジションで迎えて頂いたとしても 取引相手の企業さんの名前では満足するようには思えません。 その企業さんとは以前から仲が良く、社長さんが夫を高く評価して下さり、 2~3年も前から「定年後は うちに来ないか?」というお誘いはあったそうです。夫がそれを真剣に考えるようになったのは、 勤めている会社の業績が芳しくなく、上層部の経営手腕に以前にも増して 疑問や不満が高まったからのようです。 ですが私には一時の気の迷いにしか思えません。
夫は私より10歳近く年上で、これまで夫は自分のことだけでなく、家族の決断は全て自分で決めてきました。 秋山さんはこの状況をどうおもわれますか。
アドバイスをしていただけると嬉しいです。 よろしくお願い致します。

- Y -


決断の前にご主人にトライして頂きたいこと


人生の大切な選択の中でもリタイアメントについては、決断までに猶予がありますので その間に様々な迷いが生じるのは当然だと思います。 私もYさんからのメールを拝読した印象では、ご主人が一時的な気の迷いをされているように思いました。 それはご主人が「一度で良いから、上のサポートを得ながら仕事がしてみたい」、「今までと違う職場でチャレンジがしてみたい」とおっしゃっていらした部分で、 新しい環境でのチャレンジを望みながらも 同時に上からのサポート欲している、すなわち「保護を受けながら チャレンジをしたい」という矛盾が感じられるためです。
人間は結婚でも転職でも迷った挙句、間違った選択をする場合、往々にしてその理由として誤った利点を挙げるものです。 私の知人の女性は、結婚相手に若干の不安を抱きながらも「40歳を過ぎると、益々相手探しが難しくなるから この先これ以上の相手は現れない」、 「結婚すれば婚活や周囲からのプレッシャーから解放されるから、それだけでも人生が楽になる」と言って 39歳で結婚しました。しかし42歳には離婚。その後44歳で再婚しましたが、その時には「この人とだったら一緒に歳を取って行きたいなと思った」と語り、今もその結婚生活は続いています。

それとは別に私がご主人に大企業での勤務継続をお勧めするのは、ご主人の「大胆なリーダータイプですが、はっきり意見も言うので出世に不向きなタイプ」というキャラクターです。 こうした人物は取引先や部下、後輩には好かれるのですが、上司には嫌われがちですので 可愛がっていた後輩でも自分を飛び越えて出世した途端に煙たく扱われるようになります。 ご主人を引っ張って下さる企業の社長さんは、外から見たご主人のキャラクターやお仕事の手腕に惚れ込んでいらっしゃるかと思いますが、 それが自社の部下となった場合に自分が感じるプレッシャーまでは深く考えていらっしゃらないと思います。 ご主人は同等の立場で、役割が異なるパートナーとして迎えるには頼もしいキャラクターですが、自分が経営する会社に迎える場合、 たとえ重役でも部下は部下ですので、ご主人がそこで持前のキャラクターを生かして仕事をして、意見を述べれば、 それが上の立場に脅威やプレッシャー、快く思えない出来事をもたらすのは目に見えています。
大企業であれば 様々なキャラクターが存在するのは当たり前として捉えられますが、 中小企業は一度上との関係が拗れた場合、その時点で居られなくなるケースが殆どです。

そもそも上司の脅威になるような人物というのは 優秀な反面、自分の立場からしか状況を判断していないケースが多いのです。 上には上の事情と苦しみがあることを理解するべきですし、 組織の中では 立場は違っても業績拡大等、同じゴールを目指しているのですから、意見をして対立するよりも 歩み寄ってサポートする姿勢を見せるべきなのです。 ご主人が真剣に取引先へのお勤めをお考えなら、上の立場を思いやって理解を示す気持ち、上の決めた方針に賛同できない場合、 それに反発するのではなく、改善に導くような人間の器を持たなければ必ず社長とこじれます。
そのためには今の職場から上に立つ人間の事情や心情を思いやる努力を実践すべきで、 2年後輩のイエスマンの上司とて、自分と同じようなイエスマンの部下よりも ご主人のような実力がある人物のサポートが欲しいはずなのです。 ご主人が今までと異なる姿勢を見せれば、上司や周囲のご主人への態度やリアクションも変わってきます。 今の大企業を去るか否かは、まずそれを行ってみてから決断されるべきだと思いますし、 上を思いやる気持ちさえ持てれば 規模が小さい会社を選ばれたとしても、そこで上手くやって行けるものと思います。

人生は定年の5年後も続きます

ご主人は60歳を迎えようという今も 10歳近く年下のYさんをリードする夫婦関係でいらっしゃることからお察しして、 とても健康で若さも保っていらっしゃるものとお察しします。 また仕事への熱意と実力も人一倍お持ちでいらっしゃるようなので、もしご主人が定年後のキャリアをあと5年だけと考えていらしたら 判断を誤る可能性があると思います。
ご主人のような方は働いているからこそ若さや健康が保てるタイプですし、実際に仕事を通じて やりたくないタスクや自分が招いた訳ではないトラブルに対処するなどして、 脳を使い続けることは長生きの秘訣であり、認知症を防ぐ最善の手段でもあります。 脳トレや 自分がやりたい事だけをやっている生活では脳の劣化は防げません。 ですからYさんのために長く健康な人生を送って頂くためにも、ご主人には65歳以降の人生とキャリアを見据えた決断をして頂きたいと思います。

本来ご主人のキャラクターは、アントレプレナーやモチベ―ショナル・スピーカー、コンサルタント等に向いていらっしゃいますし、 強い正義感をお持ちですので ヘルパーズ・ハイ(他者を助ける喜び)を生き甲斐にするような慈善活動でも実力や指導力を発揮できます。
大企業でずっと働き続けてきた方は、それで安定した生活を送ってきた反面、自分の生き甲斐や人生の意義についての意識が希薄なケースは少なくありません。 それでも「もう一度生まれたらやってみたいこと」、「お金にならないから仕事にしなかっただけで得意なこと」などがあるはずです。 平均寿命が延びて、人間に与えられた人生の時間が伸びたということは それらにチャレンジする機会が与えられていると考えるべきなのです。
普通に働いてそれなりの生活を送っているだけでは幸せな人生とは言えません。 現代社会には毎日の生活に追われて、幸せの感覚が鈍化している人が非常に多く見られますが、 前回のこのコーナーにも書いた通り人間は幸せになるために生まれ、幸せになることこそが生きる使命なのです。 「楽だけれど、つまらない」は自分を腐らせるだけで幸せではありません。 「大変だけど、楽しい」は自分を成長させる幸せです。 ココ・シャネルの語録に「仕事をしなかったら、人生で他に何をするっていうの?」というものがありますが、 幾つになっても仕事は生き甲斐であり、ライフスタイルであるべきだと私は考えます。
ですからご主人が、心から望む人生のシナリオの一環としての定年後の職場を選ばれた場合には、 それがたとえ何処であっても Yさんにはサポートしてあげて頂きたいと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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