Nov Week 2, 2021
Why My Life Sees Easy for Some
37歳独身の私に貼られる苦労知らずのレッテル 


秋山曜子さま、
キューブさんのウェブサイトを長年愛読しています。ご相談したいことがあってメールしています。
私は今年で37歳、独身で一人暮らしをしています。仕事が好きで、家事が苦手なこともあり、結婚願望がどんどん希薄になっているのを感じています。
自分の人生への満足度は高いのですが、家族や親戚からはいつも苦労知らずの半人前扱いです。私はもちろん経済的に自立していて、母や姉と買い物に出掛けたりすれば、 私の方が金銭的にゆとりがあるので 食事代を払うのは私ですし、私の誕生日に家族から高いプレゼントを貰うことはありませんが、家族が誕生日を迎えれば 毎年のようにブランド物を私がプレゼントしています。それを当たり前のように受け取り、姉などは姪の高い子供服を私に買わせるように仕向けておきながら、 「こんな風に好き勝手に生きていると、後が大変よ」と、まるで私がイソップ物語の「アリとキリギリス」のキリギリスで姉や両親がアリであるかのようなお説教になることは珍しくありません。

親戚も 以前は会う度に「早く良い男性を見つけて結婚しないと…」というプレッシャーだったのですが、 今では「独身で自分勝手な楽な生活をしていると、試練がやって来た時に押しつぶされてしまう」、「人間には平等に苦労や苦難が訪れるから、 苦労は若いうちからしておかないと ここぞという時に我慢が効かない」などと、結婚している人だけが苦労や試練に打ち勝って、将来が明るいようなことを言われます。
どうして世の中は独身者だというだけで 全く苦労をしていないと決め込むのでしょうか。 何かストレスを感じずに、何を言われても割り切れるような考え方がありましたら、是非ご伝授下さい。 宜しくお願いします。

- H -


苦労や試練は決して自慢や勲章ではありません


Hさんのご家族や親戚がおっしゃる通り、独身生活というのは傍から見れば、楽で身勝手に生きていると思われるのは仕方がないと思います。 それほど伴侶や子供が居る生活というのは、自分の思い通りにならない事が多くて大変なものなのです。 私は日本で既婚者を「勝ち組」と呼んで持ち上げるのは、少子化を防ぐために結婚や子育ての苦労や大変さをカモフラージュするためのプロパガンダだと感じますが、 大変であるからこそ、それが生き甲斐や人生の達成感や誇り、宝であるのもまた事実だと思っています。
でも「独身者が楽で 身勝手に生きている」というのは、独身時代に散々楽に 身勝手に生きていた人達の思い込みに過ぎません。 私は自分が分析した一般論を語っているだけで、決してHさんのご家族、ご親戚がそうであると言っている訳ではありませんので、誤解なさらないでください。 世の中一般では、結婚して それまでの身勝手で楽な生き方が出来なくなった人ほど、結婚生活は苦労や試練に満ちたものになります。 逆に結婚前から理性的で周囲に配慮していた人は、結婚によって生き方や生活がさほど変わることはなく、女性でも男性でもパートナーが出来た分人生が楽になるケースは少なくありません。

結婚というのは、離婚をしてやり直しが効くとは言え「一生の決断」として踏み切るべきものです。 この私も23歳の時には「たとえ自分が不幸になるかもしれなくても、適齢期に交際していた相手が天に与えられた伴侶」などと誤った考えを持っていたのを覚えていますが、 苦労知らずほど「先の事は何とでもなる」と思い込んで無謀な決断に踏み切るものなのです。 人生に真剣に取り組んでいる思慮深い人であれば、余計な苦労や試練を避けながら幸せや夢の達成を目指しますので、自分の気持ち、経済状態、相手の家族構成まで、様々な状況を用心深く見極めて そう簡単に結婚に至らないのは、決して身勝手ではなく 知恵のなせる業なのです。
そもそも人間が人生の中で なぜ苦労、逆境、トラブルに見舞われるかを考えてみると、 それは往々にして準備不足、情報不足、不注意、油断、目算の誤り、配慮の無い行動や言動等が原因で、見方を変えれば それらをきちんとしていれば 多くの苦労、逆境、トラブルは防ぐことが出来ます。 例え問題が起こったとしても、そこから学んで同じ状況が起こらないようにすれば、苦労やトラブルは貴重な経験や教訓に変ります。

ですから私は苦労や逆境、トラブルを乗り越えたことではなく、見舞われたことを人生の勲章のように語る人は 自分の至らなさが故に招いた苦労を美化しているだけと思って見ていますし、改善努力をしない人の人生は よほど運が良くない限りはトラブルや試練がエンドレス状態でやってきますので、 それらを美化しなければ やっていられないのも事実です。 「我慢強さ」を誇る人にしても、実際には何の手立ても講じることなく我慢を決め込んでいるだけで、 状況を改善しようとしない後ろ向きな姿勢を肯定しているだけのケースは少なくありません。
過去に何度もこのコーナーに書いてきた通り、人間は幸せになるために生まれ、それは日本の憲法でも合衆国憲法でも保障された人間の権利です。 人間ならば誰もが苦労、逆境、トラブルに見舞われていない状態を幸せと認識する訳で、 幸せになって、それを維持するためには日々の計画性や配慮、準備、用心、学習、情報収集といった多岐に渡る努力が必要になります。 そうやって生きる方が自分から苦労や試練を招いてそれらに甘んじるよりも、遥かに大変で 人間的な強さが要求されるのです。

人を不幸に導く道徳観とカルチャー

アメリカでも様々な逆境を乗り越えた経験談をモチベ―ショナル・スピーカーが語って聞かせますが、 アメリカの苦労話はハッピー・エンドに向かうプロセスとして語られるケースが殆どです。 「こんなことが起こっても諦めずに乗り越えさえすれば、こんな幸せやサクセスが待っている」という希望に満ちたストーリーで、 私は苦労というものはそういう形で語られるべきものだと思っています。 決して苦労自体を美徳として捉えるべきではありません。苦労は乗り越えない限りは人間を歪ませるだけで、大成させることはありません。

その一方で、日本のようなつつましさが重んじられるカルチャーの中では、お金や幸せといったものが 時に悪い物のように扱われることは珍しくありません。 誰もがお金持ちで、幸せになりたいと思いながらも「お金儲けは悪い事」、「お金持ちには悪い人間が多い」、「幸せは人を踏みにじったり、利用することによって得られるもの」、 「幸せそうにしていると周囲に僻まれる」という概念が強く、 寄付をして困っている人を助けたいと思っても匿名で行わないと「売名行為」、「偽善者」と批判を受けるなど、善行に対して欧米では有り得ないリアクションが起こるのも日本社会です。
私はそのバックボーンになっているのが苦労や試練を美徳として、その後に待っている幸福やサクセスにフォーカスせずに、「不幸に見舞われながらも 正しく生きること」、「大業を成し遂げても それに見合う報酬や評価を望まないこと」が人の道に叶っているかのように捉える風習だと考えています。 でもそうした社会が謙虚かつ無欲で美しいかと言えば、実際には足の引っ張り合いで社会自体が向上しない要因になってしまうものです。

私は 人と同じような服装で目立たないようにする方が 自分をよく見せる事よりも大切と判断したり、 謙虚な人が「分相応」を心掛けることで自分よりも下のレベルに同化する様子を日本社会で見て残念に感じたことが少なくありませんが、 そうした消極性は自分をありきたりの不幸に導くだけでなく、どんどん自信の無い人間にして行きます。 自分を目立たせて、胸を張って 上を目指し、自分の功績に見合う収益を上げて 幸せを勝ち取るには勇気と行動力が必要ですし、時に出る杭として打たれることもあるかもしれません。 ですが未だに出る杭を打つような社会には、もはや豊かな未来など望めないところまで来ているのです。

世の中は歴史上の大きな転換期に差し掛かっています。それは今まで まやかし的に言われてきたような転換期ではなく、 価値観から人生観までが覆るような新しい時代を迎えようとしているのですから、もはや何処に住んでいようと古い概念に縛られる必要などないのです。 あと10年もしないうちに、Hさんにお説教をしていた人でさえ「苦労するのが良いことだと信じて生きてきたなんて」と振り返る時代がやってきます。
Hさんには未来を見据えて、どんな社会になっても余計な苦労などせずに、活き活きと幸せに生きられるご自身を目指して頑張って頂きたいと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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