May. Week 4, 2022
Don't Want to Get Married, But...
結婚願望も、老後を1人で生きる勇気もありません


秋山曜子様、
いつも楽しくサイトとコラムを拝見しています。長年質の高いコンテンツを発信していらっしゃるのは凄いことだと思っています。
私はアラフォーで、一時は結婚を焦った時期もありました。でも結婚したいと思う相手に出会うことは無く、独身でいるうちに それが心地良くなってしまいました。 私の周囲は独身と既婚者が半々くらいです。独身者の中には結婚したがっている人はいますが、 その理由は老後を1人で生きて行く自信が無いためで、それは私も考えなくもありません。
ですが結婚について考えさせられることも多く、3年ほど前に知り合いが40歳直前で結婚したのですが、 その理由も 「これ以上年を取ったら結婚出来ない、独身でいたら老後が1人では心細い」というもので、 私にも「老後の1人暮らしに自信が無かったら、どこかで妥協点を見つけないと…」とお説教じみた事を言っていました。

その友達は結婚直後は 仕事で毎晩帰りが遅いご主人と遅い夕食と晩酌をする習慣が出来て 夫婦揃って体重を増やしていましたが、 友達からは「仲が良いわね」と冷やかされていました。 でもご主人の体調が悪くなったので 晩酌を止めることにしたら、お互いにアルコール依存症みたいに 飲めないのが辛かったらしくて、私の知り合いは自分が我慢しているのに 体調が優れないはずのご主人が1人で夜中にビールを飲んでいる姿にイラっとするうちに、 夫婦仲まで悪くなって行きました。 そしてコロナでご主人が自宅勤務になった時に我慢の限界に達して離婚を決心したそうで、そう言っているだけかと思ったら本当に離婚してしまいました。

結局、知り合いは「1人が寂しいからなんて言って結婚するもんじゃないわよ」と言って、結婚後の晩酌、その後の飲めない辛さ、離婚までのイライラで 太っただけでなく老け込んでしまったと愚痴っていました。私はそんな彼女を見て「だったら結婚なんかしなければ良かったのに...」と真剣に思いましたし、 「結婚は間違えると本当に不幸になる」と思ってしまいました。

それがきっかけで、今までは経済的に安定している人と結婚したいと思ってきましたが、食生活や生活習慣に気を遣わない人も嫌だなと思うようになり、 もう生涯独身だなと割り切るようになりました。だとすると老後を1人で乗り切ることを考えなければならず、それも不安に思えてしまって、 将来設計が見えないというか、今何をどうすれば良いのかが分からなくなってしまいました。
秋山さんも独身でNYで暮らしていらっしゃいますが、ご自身の独身としての将来に不安を感じることはありますか。あるとしたら、どう対処されていますか。 日本とNYでは違うことが沢山だとは思いますが、秋山さんなりの生き方や考え方を教えて頂けたら嬉しいです。 よろしくお願いします。

- M -


結婚と老後の安定は全く無関係です


私はアメリカにやってきて最初の3年間は会社勤めをしましたが、やがて会社の部署が無くなるという形でレイオフを経験し、その後フリーランスを経て、2000年に起業して22年が経過しました。 アメリカにやってくること自体が誰も知らない世界に飛び込む人生の冒険で、今振り返るとその後もずっとローラーコースターのような状態でした。ですから一時的にも安定を求める思考が無かったと言えば ウソになりますが、自営業とシングル・ライフの中で幸せを追求するうちに、「永続的な安定」や「楽に手に入る成功や幸福」というものが 人間が勝手に思い描く妄想に過ぎないことを自然に悟ようになりましたし、それらを求める気持ちも無くなりました。 そうなってからの方が無闇に将来を心配したり、不安を抱くことも無くなって来たように思います。
人生というものは逃避をすると逃げ込んだ場所に不幸が待っているものですし、 人間は幸福と安定にドップリ浸かっていると退屈して、自らの愚かな行為でそれを台無しにする生き物です。 外に対するチャレンジが無い人ほど、自分自身に追い込まれて結局自分に負けてしまう人生を送ります。 孤独を紛らわせようとして空虚な人間関係を築けば、その人間関係によって傷つけられ、更に孤独な思いを強いられます。
少しお金を稼いだくらいで 「これからは金持ちと付き合って、金持ちのコネクションで人生を切り開こう」などと考えれば、余計な交際費だけが嵩んで、 見栄を張っている間に せっかく築いた財産が激減してしまいます。 レバレッジ・トレーディングで一時期はに大儲けをしても、その時に身についた強気のメンタリティのせいで、 現在のようなボラティリティの高い市場で大散財に追い込まれるのも決して珍しいことではありません。 また順調に育っていると思っていた子供が、突然ラディカルな思想に傾倒したり、ドラッグに手を出すこともあれば、 恋愛相手にコントロールされて突如高校や大学をドロップアウトしてしまうこともあります。
要するに人生は不確実的要素に溢れているもので、「永遠」や「不動の安定」などはあり得ません。 どんなに順調に見える人生を送っている人でも、様々な苦境を乗り越えて、様々な問題と闘ってきたのがその内情です。 誰もが羨む人生が本当にその通りである場合は、その幸福を維持するための取り組み、摂生、周囲への思いやりを常日頃から実践する 人一倍の努力を続けている結果に他なりません。

その一方で 人生のターニング・ポイントになるのは幸福な時ではなく、むしろ不運や不幸に見舞われた時です。 その時に 眠っていた自分の能力や生まれ持った才能を発揮して、状況をどう打開するかで人生の方向性が大きく変わります。 中には「出来ることを何でもやらなければ生き残れない」という必死の状況に追い込まれるケースもありますが、 そうした甘えや後ろ向きな姿勢、固定概念を改めざるを得ない局面を迎えた時に、一気に別の道が開けるものなのです。
ですから私は未来を恐れる気持ちは、そのまま失敗やトラブルを恐れる守りのメンタリティを生み出して、 人生や人間性を消極的でスケールが小さいものにしていくと考えています。 そういうメンタリティで何らかの問題に直面すると、そのトラブルを正確にジャッジして対策に取り組むよりも、 未来を悲観してそのプレッシャーやストレスに打ちのめされてしまい、策を講じるための意欲やアイデアさえ湧いてこない人間になってしまいがちです。
シングルで生きて行くメンタリティについてお尋ねくださったMさんに 私がここで何を申し上げたいかと言えば、 「1人の方が楽だから結婚しない」、「老後が心配だから結婚した方が良さそう」というメンタリティでは、シングルで生きていても、結婚した場合でも、 空虚な安定を求めるだけの 弱々しい人生しか待っていないという事です。
結婚は成功すれば 人生の最良のパートナーが得られる反面、相手を間違えれば重荷や落し穴にもなります。 前述のように「逃避をすれば逃げ込んだ場所に不幸が待っているのが人生」ですので、老後を1人で過ごしたくないと思って結婚した場合、 相手の介護をさせられて、先立たれてしまうかもしれません。また孤独死というものはずっと1人で生きている人よりも、伴侶やパートナーを失って1人で取り残された人に起こるものです。 要するに結婚は老後や人生の保険にはなり得ないのです。

人生は人間に与えられた貴重な学びとチャレンジの時間です。 誰もが判でついたように結婚する時代はもうとっくに終わって、結婚という選択肢に縛られる必要が無くなったのですから、自分の夢の実現や ライフワークに時間やエネルギーを注いで、悔いのない人生を送るべきなのです。 その中で生涯のパートナーに出会った場合には結婚すれば良い訳ですから、今の段階で生涯独身を決め込む必要もありません。
シングル・ライフは人生に前向きに取り組む姿勢で生きるからこそ意義があるものであって、 「1人の方が楽だから」、「伴侶を養うなんてまっぴら」というような後ろ向きで消極姿勢のシングル・ライフは、 振り返った時に「何もしてこなかった」、「何も築けなかった」という後悔や人生の意義が見い出せない状況を招くものに他なりません。

人生の保険は健康、人との関係を大切にすることです

時代は変化の局面を迎えて、そのスピードはどんどん速くなっています。 日本のような高齢化社会は Mさんが60歳、70歳になる頃には、今よりもシニア・シングルが遥かに多い社会になっていますから、 その生活が現在の延長とは限りません。その時代まで年金制度や国民健康保険制度が持続するのかは危惧すべき不安要因です。
ですから私は人生にとっての本当の保険は、まず心身の健康だと考えています。 心身の健康は幸せな人生のインフラでもあります。それなくしては土台工事の出来ていない家屋と一緒で、どんなに素晴らしい物を上に築いたとしても 何かのきっかけであっさり崩れてしまいます。ちなみに私が考える健康とは 入院や治療が必要な病気をせずに済んでいる状態のことではなく、 心身共に毎日元気で、エネルギーに溢れて、強く、丈夫なことです。 夢や希望を持って前に進むことが出来る気力や体力、積極性、そしてポジティブなマインドを意味します。 私にとって「生きている」という状態は「人生に取り組んでいる姿勢」であって、諦めや妥協一辺倒の人生は、 脈があって身体が動いていたとしても、それは余生を過ごしているだけで、生きている訳ではないと考えています。 その意味で私は 時間と若さという、生きて行く上での最強の武器を持つ世代の人が、それを生かさず不満を言いながら過ごしている姿を見ると 「何かのきっかけで生き返って欲しい」と心から願う次第です。

心身の健康と共に人生の保険になると私が考えるのは人との関わりです。 それには大切なポイントが2つあって、1つはサポート・システムの構築です。 これは何かあった時に頼りたい人ではなく、一緒に楽しい時間を過ごせる人、精神的に自分を満たして、支えてくれる人を持つことです。 そういう関係は「何かが起こったら頼りにしたい」といった下心があっては決して築くことが出来ません。 また何かが起こった時に助けてくれる人が居るとすれば、それは本当に心が通った友達です。とりあえず友達関係をキープしている人や、嫌いなことに気付いていないだけで 会う度にストレスやプレッシャーを感じさせるような人は友達とは言えません。
人との関りで2番目に大切なのは、他人が関心を持ってくれる近寄り易い存在、敬意をもって接してくれる存在になることです。 以前このコーナーに書いたことがありますが、多くの人々は苦境に陥った時に 日頃あまり関りが無い人から思わぬ形で救いの手が差し伸べられるケースが殆どです。 助けて貰おうという下心でキープしてきた人間関係の場合、過去のしがらみやプライド、本音のレベルでの信頼の低さなどが障壁になって 助けが得られないケースが殆どですし、助けて貰えた場合でも それがきっかけで仲が拗れたり、トラブルが起こることは全く珍しくありません。
人間というのは見知らぬ人に対しても 親切になれる生き物で、親しい人間に対する親切よりも むしろ良く知らない相手に対して親切にする方が幸福感や満足度が高いものなのです。 そんな気持ちの良い親切やサポートを引き寄せることが出来るオープンかつポジティブで、人にも自分にも優しい人間性は年齢に関係なく、生きて行く上でとても大切です。 人間は歳を重ねると頑固で保守的になると一般論で言われますが、心身が健康でハッピー・ホルモンと言われるセロトニンが分泌されるライフスタイルを 送っている場合には、決してそのようなことにはならないことは医学的にも立証済です。 歳を取ったら、病気になって、人に頼らなければならず、頑固で理不尽になるというのは、アンチエイジングに真剣に取り組まなかった人の末路であって、 誰もがそうなる訳ではありません。

その意味で私はシングルでも既婚者でも、老いていく自分やその老後の心配をするより、老化を極力防いで、何歳になっても自立した生活が送れる自分になることにフォーカスすべきだと考えています。 ハーバード大学教授のアンチエイジングのスペシャリストで、世界的ベストセラー「ライフスパン」の著者でもあるドクター・デヴィッド・シンクレアは、 老化を病気と位置付けて「老化をしない、老化を治療することが可能である」という持論を展開していますが、やはり老化を食い止めるというのは 自然の摂理に反することなので非常に大変なことだと思います。 確実に言えるのは「心身の老化には 自分に対する甘えが如実に表れる」ということで、人間の老化にはDNAが30%前後影響するとは言え、 食生活やエクササイズなど、摂生を怠った部分のツケが老化という形で自分の脳や身体に降り掛かって来ます。 幸せに生きる、幸せを持続するということが努力や摂生の上に成り立っているのと同様に、健康と若さの維持にも日々の摂生と努力は不可欠です。
それに取り組まずに、好き勝手に生きる方が楽だと考える人は少なくありませんが、実際にはその逆で、好き勝手な人生には まずは不安、やがては後悔が待っています。 肺がんを宣告されて「散々タバコが吸えたのだから、後悔していない」と心から言えるヘビー・スモーカーなど存在しません。 後悔とは どんなケースでも リスクを軽視し、自分を過信した結果 起こるものです。そして後悔に至るまでのプロセスで必ず味わうのが不安と恐れです。
ですから将来や老後への不安を払拭したければ、日頃から摂生と努力をして取り組むしか対策はありません。 摂生と努力は周囲への体裁や、遣りたくない気持ちで行う場合には 達成不可能なタスクに思えますし直ぐに挫折します。 ですが自分のために実践している人にとっては 当たり前の生活であって、さほど高いハードルではありません。
それらに加えて社会から押し付けられる不必要な年齢概念を排除して 年齢を諦めや消極姿勢の理由にしないこと、 常に自分の可能性や運命を信じて ”エイジレス”で生きることが幸せな長寿には不可欠だと私は考えています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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