Feb. Week 4, 2023
Japanese Media Charactor Irritates Me
日本のメディアやドラマにイライラします


初めまして。
私はある外国に住んで、起業しています。 外国に住み始めたのは、日本で女性として仕事をしていくことに限界を感じたためで、 そのきっかけになったのは元大企業勤めで 営業のコネを持つ男性、デザイナーの女性、私の3人で日本で起業をした際でした。 3人が同等のパートナーということで始めましたが、私とデザイナーの女性は男性の部下のような扱いで、そうなってしまったのは男性が エクセルもパワー・ポイントも使えない人だったためです。男性の唯一の仕事が商談とそのアレンジで、 私がミーティングに同行すると、世間話ばかりで 肝心のビジネス・コンセプトの説明は的外れでした。そのため、ある時 男性を置いて デザイナーと2人でプレゼンに出掛けたことがありましたが、相手の企業の担当者に 「XXXさん(男性パートナー)が中心じゃなくて、 女性主導でやっていこうとするなら 話は先に進められない」と言われました。 でも男性パートナーが それまで商談を纏められたのは大企業の社員だったからで、起業後はミーティングのセットアップは出来ても 実際の売り込みは無理だろうと判断して、 会社から抜けて海外に留学しました。 今から思えば、それは私にとってベスト・デシジョンでした。

そんな経験や日本企業に勤めていた時期の経験から、私は「日本の社会、特にビジネスの世界では 男性同士が上層部で結託して 女性が入り込めない世界を築いていて、 女性は能力がある人よりも、扱い易くて 立場をわきまえている人が 引っ張ってもらえる」という考えを持っていて、 日本の女性は 私が住む国の女性達と比べると 言いたい事を言わずに我慢していたり、結婚してもらうために無理をしてでも 自分じゃない人間を装ったりする傾向が強いとも思っていたりします。 そのため上司に煙たがられるほど仕事の能力があったり、本当のことを指摘する女性が、冷遇される様子を目にしては、他人事ながら腹が立ったり、 残念に思えることが何度もありました。
外国に住んでいる人間がこういうことを言うと、日本在住の日本人に叩かれるのは承知ですが、私は日本の事を悪く言っているのではなくて、 楽をして威張っていたい人間が上層部に居座るせいで、有能な人材が沢山居る国なのにそれが活用されずに、競争力をどんどん失っている状態を嘆くのは愛国心からの言い分です。

そういうフラストレーションを持ってせいか、ネットフリックスなどで日本のドラマを観る度に 頭に来てしまうのが 日本人女性の描かれ方です。 能力がある女性は、荒々しい語調で居直るようなキャラが多くて、大食いでお酒癖が悪い等、「男勝り」に愛嬌を持たせる歪んだ演出がされています。 普通の女性は 何か言われるとすぐに黙ってしまって、自分の意見を言わないキャラクターばかりで、見ていて本当にイライラします。 実際にそういう人も居るのかもしれませんが、私が知る日本人女性はずっとまともで、 主婦でもキャリア・ウーマンでも、はっきり主張するべき時をしっかりわきまえています。 何となくドラマのキャラクターで、女性像が型にはめられているだけでなく、ストーリー・ラインにしてもプロパガンダ的に女性を洗脳して、 特定の意識を植え付けようとしているような印象さえ受けてしまいます。

ニュースの報道にしても、欧米と同じ内容を報じていても フォーカスや解釈に日本的なズレがあって、それが先進国なのに 変に古臭いメンタリティとして日本にはびこっているように思えます。 少子化問題1つを取っても、給与を上げて、託児施設を整えて、結婚して子供を産んで育て易い環境を構築すべきなのに、結婚するしないを勝ち組、負け組の差別を持ち込んで、 婚活、妊活とか下らないスローガンだけで盛り上げようと知るのも、政府とメディアが結託するプロパガンダが見え見えで情けなくなります。 高齢者の”終活”にしても、何もしない政府がスローガンで片付けようとする姿勢でしかないように思います。
日本人は善良だと思いますが、メディアに乗せられて右向け右になってしまう国民性は、人と一緒であるで安心して、個性が重んじられない社会だからようにも思えます。 でもその風潮がある限りは、若い世代に向上心がある国に勝てないと思います。
勝手な不満を書いてしまってすみません。こんなことで私が腹を立てても仕方がないのは重々承知なのですが、 秋山さんは日本の風潮とかメディアについてどんな風にお考えをお持ちですか。 同じ外国に住む日本人として、どんな風に見ていらっしゃるかをお聞かせいただけないでしょうか。よろしくお願いします。

最後に、インターネット上にはいろんな人生相談のコーナーがありますが、こういう疑問を投げかけて お考えを聞かせて頂けるのはQ&ADVだけだと思っています。 心理学やソシオロジー、フィロソフィー等を網羅してお答えになる秋山さんのアプローチが大好きです。
これからもずっと続けて頂きたいです。

- R -


一般人の意識がメディアを超えた時代


日本を離れて外国に暮らしていると、日本に暮らしているよりも 自分が日本人であることを自覚する機会が遥かに多いですし、 日本社会を外から客観視することになりますので、Rさんのように日本のメディアや風潮についてフラストレーションを感じるお気持ちは良く分かりますし、 それが愛国心に基づくものであることも理解できます。
私は日本のドラマはあまり見る機会が無いので、Rさんのメールを拝読していくつかを観てみましたが、 主役の女性に共鳴するキャラクターが居ないのは私も同感でした。 またメディアの方が社会の女性像をリードして行くものだと思うのですが、日本のドラマに関しては描かれている女性の方が 実際の日本人女性よりも時代遅れのイメージを受けました。 でもふと考えると1990年代には「セックス・アンド・ザ・シティ」を観て、影響を受けたり感化された女性達が、 今、そのシークウェルの「And Just Like That」を観ると、「時代設定が新しくなっただけで、メンタリティが古臭い」という意見を持っているので、 世の中全体で 一般人の意識がメディアよりも先に向かっているように思います。
かつてはドラマでもニュースでも、発信するメディアが限られていましたので それが社会と世界への窓口でしたが、 これだけインターネットが普及して、情報源やエンターテイメントが多様化した現在では、古い体制を引きずったままのメディアや、 エンターテイメントのプロダクションが 逆に時代から遅れた存在になり、徐々に影響力を失っていくのは当然の成り行きと言えます。
ですので日本で そんなドラマを観ている 日本人女性も、Rさんや私同様に その中に描かれる女性キャラクターを古臭いと感じたり、 「特に観たいとも思わない」とわざわざ視聴に時間を割かないケースが増えているかもしれません。

報道に関しては、住む国それぞれに国民性を反映した問題が存在すると思います。 日本は国土が小さいですし、Rさんがおっしゃる通り「右向け右」が未だ根強い社会なので、政府とメディアがその国民性を反映した ニューズ・フィードを続けていますが、 アメリカは国が大き過ぎるだけでなく、他民族国家で、カルチャーから宗教、物の考え方まで様々なので、 外敵を設定して、民主・共和という2つに絞った政治勢力の対立と均衡によって国を1つに纏める体制が今も健在です。 以前 別のコラムでアメリカのコメディアンの「共和党は酷い政策の党、民主党は政策さえ無い党」というジョークを書いたことがありますが、 メディアに関して言えば、「事実に反することを報じるのが共和党寄りの右メディア、都合が悪い事実を報じないのが民主党寄りの左メディア」という構図が成り立っています。

先週末のアメリカでは、2020年の大統領選挙で 不正選挙の片棒担ぎを疑われた投票機メーカー、ドミニオン社がFOXニュースに対して起こした 20億ドルの損害賠償裁判の証拠資料の一部として、FOXニュースのトランプ派のメインキャスター達が 証拠なしで不正選挙を訴えて結果を翻そうとするトランプ派のプロットを「幼稚で馬鹿らしい」と笑い飛ばし、 トランプ氏と個人的にも親しいショーン・ヘネシーが、トランプ氏弁護団のインタビューを放映しておきながら「1秒たりともその言い分を信じていなかった」とジョークを語っていた様子が 公開されました。
要するに当時のFOXニュースでは、本来ジャーナリストであるまじきキャスターが、自分達さえ信じない内容を ウソと承知で ニュースとして報じる演技をしていた訳ですが、 そもそもFOXニュースというのは、メインストリート・メディアで冷遇される保守右派の人々に「自分達こそがメインストリーム」と感じさせるニュースを提供するメディアとして誕生した経緯があります。 すなわち保守右派によって稼ぎたいビジネスによる、保守右派のための保守右派ネットワークとして誕生したメディアですので、 カテゴリーとしては ニュースの殻を被ったエンターテイメント・チャンネルと見なすべき存在です。
何故、当時のFOXニュースがウソと知りながら 不正選挙説を強烈にプッシュしたかと言えば、 FOXニュースが トランプ・メディアでありながら 投票結果がなかなか出なかったアリゾナ州でのバイデン勝利をいち早く報じたことに視聴者から批判が殺到し、 視聴率を他の極右ネットワークに奪われつつある状況に陥ってしまった事から、それを回復するために 視聴者が聞きたがるニュースを報じる方針で固まったとのことでした。
FOXニュースは報道メディアと呼ぶには異質な存在ですが、 それでも報道やエンターテイメントには、常に何らかの意図、利害目的が付き物です。 アメリカでLGBTQコミュニティが過去20年間で大きく市民権を拡大したのも、 エンターテイメントに登場した好感度の高いゲイ・キャラクターが果たした役割が極めて大きいと言われます。 逆にかつてのLGBTQコミュニティに対する差別意識は、それ以前のエンターテイメントで描かれてきた存在によって築かれていたのもまた事実なのです。

風の時代の追い風にのる生き方を

私はあまり日本のカルチャ―やドラマには明るくないので、Rさんから頂いたお問合せに メディアと政府の一般論として語らせて頂く形になってしまいますが、 Government / 政府 という言葉の語源は「Govern Mental」すなわち 「精神を支配する」です。 要するに政治というものは、何時の時代も 国を運営する以前に 民意をコントロールすることです。
ヨーロッパでは何世紀も前から、安定した国家の条件を指す言葉に「ブレッド&サーカス」というものがありましたが、 ブレッドが意味するのは食糧だけでなく、ウェルス・ディストリビューション(富の分配)で、サーカスが意味するのはエンターテイメント、国民をハッピーにする娯楽です。 要するに「ある程度の生活レベルを保証して、楽しめる娯楽さえ与えておけば 暴動は起こらない」というセオリーで、何時の時代でも 政府は 民意のコントロールに努め、それにはメディアが深く関わってきました。

ですがインターネットが世界中に普及し、人々が世界を捉える視点が変わってきた今では、 政府を信じない人々が増え、それと同時にトラディショナルなメディアを信じない人々も増えています。 その結果、陰謀説がこれまで以上に増える世の中になりつつあるのもまた事実です。
私はFOXニュースの視聴者の トランプ支持から議会乱入までの一連のリアクションは、 メインストリーム・メディアを信じない人々が 反対勢力に盲目的に飛びついた典型例と思って見ていましたが、 人間は何かが信じられないと判断すると、反対勢力の言い分をあっさり信じて、それを自分の考え、モラル、価値観の起点にする傾向が顕著です。 私はある意味で、これは人間の弱さの成せる業だと思っています。
人間が本当に信じるべきは自分自身であって、自分自身の判断力や価値観をしっかり持つべきなのですが、 自分が信じられない人ほど、他の誰かや 何か を信じようとしますし、そこに仲間が居れば 更にその信仰心を強くします。 そんな心理につけこむのがエクストリームな政治集団やカルト宗教ですが、基本的にはそうした団体も 政府やメディア、大企業も、 やろうとしていることは人間心理の攻略なのです。
前述のように、今では「政府を信じない」、「メディアを信じない」という人が増えて、 以前ほどプロパガンダがすんなり浸透しない社会になっています。Rさんのようにニュースやエンターテイメントを見せられて、その背後の意図の方に 関心が行ってしまう人も決して少なくないと思います。 ですが 政府やメディア、大企業はもっと手ごわい存在で、信じる人が減ってくれば 今度は「信じていない人を上手く担ぎ上げる策」を仕掛けてきます。 「信じない」という考え自体も、攻略可能な人間心理の1つに過ぎないのです。

前回のこのコーナーを含め、これまで 何度となく「風の時代」について書いてきましたが、 私自身は これからの時代を幸せに、豊かに生きるには 「風の時代がどういうもので、その時代にどうあるべきか」という視点を持って、 逆風の中を進むのではなく、追い風に乗った エフォートレスな前進を目指すべきだと思っています。 自分が直接絡まないことで熱くなったり、自分ではどうにもならないことにフラストレーションを感じるよりも、その時々を楽しんで、 風向きを見て方向転換をする柔軟性や サバサバとした思考を持って生きるべきなのです。
歴史的に見ても、大きな時代の流れは 政府やそのプロパガンダといった小細工では変えられません。 時代は徐々にそういう局面に来ていますので、 特にRさんのように優秀で、正義感が強い方は 時代の 風向きに乗って、最小の努力で最大の結果を得ながら 生活のゆとりや自由を実感する生き方してみると、 自ずと世の中がクリアに見えて、さまざまな道が開けて来ると思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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