July 9 〜 July 15 2018

”Mentality of Masses ”
コンスピラシーで説かれる小市民のメンタリティ
分かっていてもカモられる大衆心理のシナリオ



今週のアメリカはトランプ大統領が ベルギーで行われたNATO(北大西洋条約機構)の会合に出席した後、イギリスを訪問したニュースに メディアの報道時間が割かれていたけれど、NATO会合を控えてEUのプレジデント、ドナルド・タスクが メディアに語ったのが「アメリカは少なくなってきた味方を大切にするべき」というトランプ氏への警告。 そのNATOの会合では、トランプ大統領が加盟国全てに4%の防衛負担を求める爆弾発言をし、 アメリカ政府関係者がダメージ・コントロールに追われる一幕が見られていたのだった。
一方、トランプ氏の新しい”友達” であるはずの 北朝鮮のキム・ジョンウンは、引き続き核開発を急ピッチで進めている様子が 情報機関のサテライト映像で確認されており、今週には北朝鮮との高官レベルの協議に 北朝鮮側が姿を見せず、マイク・ポンペオ国務長官が トランプ氏から預かった キム・ジョンウンへの親書を手渡すチャンスさえなかったことが伝えられる状況。 ちなみにこの親書には かつてトランプ氏がキム・ジョンウンをからかうニックネームに使っていたエルトン・ジョンのヒット曲 「ロケット・マン」のCDが含まれていたとのこと。
そのトランプ大統領が月曜にフィンランドのヘルシンキで 会談を控えているのが もう1人の”友達” と言われる ロシアのプーチン大統領。政府関係者は トランプ氏のロシア癒着疑惑が晴れていないだけに、 「2人きりで密室で会わせるのは避けたい」と、まるでティーンエイジャーのデートに口を出す親のようなコメントしているけれど、 現時点では両氏が2人きりで90分の会談をするという説が有力となっているのだった。




さてアメリカは景気がすっかり回復したと言われながら、その先行きを危惧する警戒ムードが徐々に高まっている状況。 本来だったら トランプ政権の大幅減税や規制緩和、株価のハイレベルで もっと楽観ムードなはずのアメリカ経済であるけれど、 史上最高レベルでどんどん膨れ上がるアメリカの国債や中国を始めとする諸外国との貿易戦争、 気象変動による自然災害の増加、移民・難民問題等、不安材料が山積する中、 ウォーレン・バフェット、ビル・ゲイツといったビリオネアや経済専門家が2008年のファイナンシャル・クライシスを遥かに上回る規模の 経済破綻を予言しており、経済をある程度理解している人が楽観的になれないムードが漂っているのが現在。
ふと振り返ると 2008年のファイナンシャル・クライシスを迎える前にも、現在のように景気とは無関係に警戒ムードが高まった時期があり、 それは2005年のこと。もちろんベア・スターンズが崩壊して、サブプライム・ローンという言葉が盛んにメディアに登場するようになった2008年春にも 警戒ムードは一気に高まったけれど、今振り返れば この段階はファイナンシャル・クライシスのスタート地点。 今の状況はその3年前に NYタイムズ等が起こり得る金融危機について予測し始めた頃に似ていて、 そんな記事を読んで不安になった私が 金融業界に努める友人と「これから先、アメリカは大変な事になる」という会話をした様子は 当時の私の日記にしっかり記されているのだった。
でも2005年から2008年を迎えるまでは、「この時に財産を作っていなかったら馬鹿」と言われるほどの景気のメガ・ピークがあった訳で、 それを思うと人々の間に穏やかな警戒感がある今は、 未だ大きなファイナンシャル・クラシスを迎えるには早いように感じられるのだった。

そんな中、今週には裕福なクライアントに投資レポートを発信するパームビーチ・リサーチ・グループが、 クリプトカレンシー(仮想通貨)市場における金融大手の陰謀説を発表。2017年半ばから ゴールドマン・サックス、 J.P.モーガン、ビリオネア投資家のジョージ・ソロス等、仮想通貨に否定的だった企業や投資家が大量の資金を投入して 2017年末のビットコイン急騰の恩恵を受けた様子がレポートされていたけれど、そのレポートの中核になっていたのが 様々な経済局面において、財力のある大手にカモられては 財産を奪われる小市民たちのマス・サイコロジーについて。
レポートの中でパームビーチ・リサーチ・グループが例に挙げていたのは、 HBOの 「デッドウッド」でドラマ化されているアメリカのゴールド・ラッシュ時代のストーリー。 ゴールド・ラッシュに煽られて 早くから鉱山を掘り当てていた人々に対して 「やがて鉱山が政府に没収される」、「もうすぐ銀や銅が掘り尽くされる」等のデマを流して翻弄し、新聞社を買い取って フェイク・ニュースで不安や恐怖を煽りながら 安価で鉱山を買い漁り、 莫大な財産を築いたのが 後に政治家となるジョージ・ハースト。 その息子ウィリアム・ハーストはアメリカ最大の新聞発行人となり、ハースト・コミュニケーションズというメディア・エンパイアを築いたのは周知の事実なのだった。




同様のことは2000年を前後したドットコム・バブルにも見られていて、人々が疑心暗鬼ながらもドットコム銘柄に投資をし始めたのは1994〜96年。 1999年を迎える頃には誰もが信じて疑わなくなったのがインターネットとその関連ビジネス。 やがて2000年を過ぎた頃からブームの陰りが見え始め、2002年のクラッシュ時にはピーク時の70%のバリューを失ったのがドットコム・バブル。 そしてこの大底で投資をした2%以下の企業&個人投資家が、後の90%以上の利益を着服することになった訳で、 ここでも”ブームに乗せられて投資をして それを安価で手放す大衆 & そこから大儲けをする大富豪” という ゴールド・ラッシュ時代のジョージ・ハーストのシナリオが再現されているのだった。

そこで問題になってくるのが時代や状況に関わらず大衆が全く同じリアクションを示すマス・サイコロジー。 マス・サイコロジーは人間に限ったものではなく 自然界の鳥や魚、羊など様々な動物にも見られるもので、 人間に関していえば「マジョリティがやっていることが正しい」、「マジョリティに従っていれば安心、もしくは安全」という強い思い込み。
実際、多くの人々の賛同を得ていれば 事実の裏付けや科学的な根拠など無しに、間違った理論を 正しいと押し付けて来る人は沢山居る訳で、 これまで そんな大衆心理を操る最大の武器であったのがメディア。 でも昨今ではソーシャル・メディアがそれを上回る影響力を見せて、ブレグジットから2016年の大統領選挙に至るまで、 見事に大衆心理を操った様子は既に報じられている通り。その影響力は 「ヒラリー・クリントンが幼児性的虐待組織を運営している」とフェイスブックのフェイク・ポストで報じられた ノースキャロライナのピザ店に 男性が銃で武装して子供の救済に押し入ったという、 常識では考えられない事件にも象徴されているのだった。

ソーシャル・メディアがそれほどまでに大衆心理を動かすパワーがあるのは、 ソーシャル・メディアそのものが よりパーソナルなレベルで ジェラシー、共鳴、怒り、競争心、不安、焦りを煽るようにデザインされているだけでなく、 スマートフォンを通じて人々にアクセスするスピードと手軽さが、ペーパーメディアやTVのニュースには見られない大きなリアクションを生み出すため。 そんなソーシャル・メディア&メディアの経済関連のアウトレットでは、 現在ライターやレポーターに対して ETFやボンドをプロモートする一方で、クリプトカレンシーを叩くことが奨励されていると 某メディアの関係者がオフレコで語ったという話も聞かれているのだった。




さて経済や景気動向と大衆心理を如実に表しているのが上のビジュアル。
多くの人々が様々な景気側面でウェイブに沿った心理で投資の売り買いをしている訳だけれど、 これに沿っている限りは 度合いは違っても 「高く買って、安く売る」というシナリオを演じるのが宿命。 大衆心理というのは不思議なもので、物欲に駆られている時は警鐘が耳に入らないだけでなく、 僅かな損に捉われて売却の決断が付かないまま、大損をするまで下落を見守ってから絶望感と共に手放す一方で、 今が買い時という底値を目の当たりにすると それに手を出す勇気が持てず、 周囲が儲け出すのを見てから 再び高値で投資をして 儲かったと思うのも束の間、 また売る時期を逃して損をするという繰り返し。
幾度にも渡る歴史がそんな大衆心理を証明して、頭の中ではどんなにこの図式を理解していても いざその局面を迎えると 大勢に逆行する勇気が持てず、人と同じように振る舞う安堵感を好むのが一般大衆。
要するに 「人と同じにしていたい」、「人と一緒が心地好い」、「人がやっているから自分もやる」というメンタリティでは、 経済の仕組みや それを操る企業のカモになってしまう訳だけれど、 それを悟っていないのが一般大衆。「周囲がやらないと、新しい事に手を出さない」、 「メディアが言っていることを自分の知識や意見として請け売りする」、「周囲と違うことをやっている人を見ると 攻撃や批判をしたくなる」というのは、典型的な大衆心理であり 小市民の思考なのだった。
「大金持ちは変わり者が多い」というのはまさに一理ある説で、 人と違う事をするからこそ大金持ちになれるし、自分と同じ事をする人が少なければ少ないほど 自分の儲けが増えるという世の中の仕組みを理解しているので、大金持ちほど お節介なアドバイスや、金持ちになる方法の伝授などはしないもの。
したがって 大金持ちになる指南本やレクチャーにお金を払っている限りは、小市民の思考から決して脱却できないことを意味するのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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