Aug 13 〜 Aug 19 2018

”Fashion Can Be Investment?”
ファッションは財産か?、消耗品か?


すっかり夏休みモードになっていた今週のアメリカで行われていたのが、2016年にトランプ大統領の選挙対策本部長を務めた ロビースト、ポール・マナフォート(69歳)の脱税、マネー・ロンダリング等の容疑についての裁判。 同裁判は トランプ政権のロシア癒着疑惑の副産物的存在なので 米国民の関心度は今一つであるけれど、それでもソーシャル・メディア上で 話題が集中していたのが、検察側が脱税の証拠として提出したポール・マナフォートの 総額1億4000万円以上のワードローブの驚くべき悪趣味ぶり。
彼のワードローブの殆どは ビバリーヒルズのブティック ”Bijan / ビジャン” と かつてニューヨークのエグゼクティブ の御用達ブランドだった ”Alan Couture / アラン・クチュール” のもの。 その中には イタリアン・マフィアのようなカットのパステル・チェックのスーツや スネーク・スキンのジャケット(約180万円)、 オーストリッチのジャケット(約160万円)等が含まれており、それに対するリアクションは 「そんなにファッションでお金を無駄にしたいのなら、グッチで買い物をするべき」という皮肉たっぷりのファッション評論家のジョークに始まり、 「130万ドル以上も払って この程度の服しか揃わないなら、自分だったら訴える」というような一般人のツイートなど、 彼の悪趣味ぶりと、それに糸目をつけずにお金を遣う様子を批判したり、馬鹿にするもので溢れていたのだった。




写真上が 脱税とマネー・ロンダリングまでして ポール・マナフォートが手に入れたワードローブの一部であるけれど、 彼が有罪になった場合には 刑期とは別に脱税額+利息+ペナルティを支払うのは当然の義務。 キャッシュで全額を支払えない場合は その財産が売却されるけれど、 中古のワードローブがオークションで高額で落札されたのは、 1997年にクリスティーズが行った故ダイアナ妃のイヴニング・ガウンのコレクションのみ。 どんなセレブリティでも、映画のコスチューム以外は中古の服が高値で売れることは無く、 ポール・マナフォートの場合、「お金を払って引き取ってもらうのさえ不可能」と言われるほど そのワードローブのセンスが酷評されているのだった。

そんな中、ちょっとした論議の対象になっていたのが「ファッションは財産か?、消耗品か?」という問題。 2012年にニューヨークのヘッジファンダーと離婚したプロフェッショナル・ポーカー・プレーヤー、べス・シャックは700足のクリスチャン・ルブタンを含む 1200足のシューズ・コレクション、約1億1000万円分を 離婚の際に 手持ち財産として申告しなかったとして 元夫に訴えられたけれど その訴えが直ぐに取り下げられたのは、彼女がそれらのシューズを財産として持っていたのではなく 個人のワードローブとして持っていたため。 すなわち全てのシューズが中古品であるため、売却益が小売価格の総計を遥かに下回り、元夫が勝訴してその半分を勝ち取ったとしても 訴訟費用の方がずっと高額であったため。

かく言う私も2週間ほど前にオンライン・コンサイメント(委託販売)のThe Real Real に何年も着用していなかった クリスタル・フォックスのカラーが付いたプラダのオーストリッチ・ジャケットを売りに出したけれど、驚いたのはThe Real Real が付けた売値。 小売価格約90万円のジャケットが340ドルの売値で、それに20%オフの割引が適用されて、私の手元に入ってきたのは僅か204ドル。(写真下がそのオンライン明細) こんな値段にされるのならば 他で売れば良かったけれど、価格に気付いた時には既に売却済みの状態。 私がこれを85%オフで購入していたことと、元を取る程度には着用していた事が不幸中の幸いと言えるのだった。

ニューヨーク、マイアミ、ロサンジェルスのメガリッチな女性達の間では ファッションは ディスポーサブル・アイテム、すなわち使い捨てのものと考えられていて、 よほど気に入ったものは例外として、 新シーズンのアイテム購入のクローゼット・スペースを確保するために 前シーズンの物を The Real Realのようなリセール・ビジネスで処分するのが常。 中には毎月リセールの売り上げが数千ドルに達する女性も居るけれど、 彼女らが毎シーズンのファッションに投じているお金を考慮すると、これはとても投資とは言えないリターン率なのだった。






ファッションが投資になることを最初に立証したアイテムと言えば 何と言ってもスニーカー。 現在 発売と共に完売するスニーカーの殆どは、投資や転売目的で購入されていると言われ、 その金字塔の頂点に立つ ナイキのエア・ジョーダンは、マイケル・ジョーダンを引退後にビリオネアにしただけでなく、 コレクター達をミリオネアにしてきた立派な投資対象。 マーケットもしっかり確立されているだけに リセールの基準も厳しく、化粧箱など全ての付属品が完璧に揃った新品でない限りは 価値が大きく失われるのだった。

今や男性も女性並みに何百足ものシューズや数十本のジーンズを備えたクローゼットを持つ時代であるけれど、 目下、世界中で最も高額なワードローブを持つと言われるのは男性の場合も女性の場合も、毎日のようにビリオネアが誕生している中国やシンガポールのアジアン・リッチ。 先週アメリカで公開された映画「クレージー・リッチ・アジアン」の影響で、アメリカのメディアで リアルライフ ”クレージー・リッチ・アジアン” の ワードローブが公開されていたけれど、欧米のテイストとは若干異なると言われるのが中国やシンガポールのアジアン・リッチなのだった。
でも女性の場合、国境に関係なく 世界共通の価値を持つのが エルメスのバーキン&ケリー、クリスチャン・ルブタンのシューズで、 クローゼットの価値を立証する目安になるのもこれらのアイテムを幾つ所有しているか。 どんなに悪趣味なバーキンやケリー、ルブタンのシューズでも、数を持っているだけで意義があると見なされるのは紛れもない事実。
バーキン&ケリーについては、一部のセレブが公開したクローゼット写真に写っているコレクションの一部が 精巧に作られた 7スター・レプリカであることが そのスタイリストによってコッソリ明かされているけれど、 大金持ちほどフェイクを ”税金対策” の名目でクローゼットにミックスするのは珍しくないこと。 ポール・マナフォートのような悪趣味なワードローブでも高額なファッションを揃えていれば 脱税の証拠になる訳で、ブランド物のハンドバッグのように小売価格が一般に知られる高額品は、 脱税摘発の恰好のターゲット。
例えばこのページのトップにフィーチャーしたのは カイリー・ジェナのハンドバッグ・クローゼットのフォトであるけれど、 メディアは この写真に捉えられているバッグに加えて、彼女が自らソーシャル・メディアにポストした写真、パパラッツィにスナップされた写真をチェックして、 彼女がハンドバッグだけで最低7000万円相当を擁していると見積もっているのだった。

エルメスの バーキン、及びケリーの再販は、安定した高利益が望めることからベンチャー・キャピタルまで乗り出してきたことが伝えられるけれど、 そのせいでハードルが上がったのが近年のバーキン&ケリーの中古市場。かつてだったら 人気色のバーキンであれば多少の使いジワがあっても ある程度の価格が付いたけれど、 今では投資目的で再販する人々が増えた結果、エルメスの箱、ダストバックなど、全てが完璧に揃った新品同様のものでないと リセールのトップ業者は引き取らないケースが殆どなのだった。




でもスニーカーやエルメスのバーキン&ケリーは ファッションにおいて投資対象となり得る 極めて特殊な存在で、 それ以外はグッチでもシャネルでも、たとえ一度も使用していなくても リセール市場で価格が下がるのは避けられない宿命。 またどんな一流ブランドの製品でも 誰もが悪趣味と思うようなアイテムは、例えデザイナーのブティックでは完売したアイテムであっても、 リセールの世界では価格を下げても売れない事がしばしば。
そんなリセールの売り上げや トレンドの動き等を 総合的に分析して言えるのは、 最もお金を遣うべきでないのは服、次いでバッグ。自分の足に心地好いスタイルを選んで、きちんと手入れをすれば 意外にコスト・パフォーマンスが良いのがシューズで、何十年も前から言われる「ファッションに賢い人はシューズにお金を掛ける」というのは 不滅の格言と言えるのだった。

でもファッション絡みで最も確実に財産になるのはやはりゴールド&プラチナのジュエリーや時計。 多くのラッパーが巨大なゴールド&ダイヤモンドのジュエリーをつけているのは今に始まったことではないけれど、 写真上、下段中央の50センツ が身につけている ジュエリーと高額時計は軽く1千万円を超える財産で、 こうしたラッパーのためのジュエリーを製作する業者が集まっているのが 私がビジネスで出入りするニューヨークのダイヤモンド・ディストリクト。
彼らのジュエリーは一見悪趣味に見えるけれど、彼らが飽きたジュエリーは製作業者に買い取らせたり、そのゴールドを使って 更に大きなアップグレード・ジュエリーを作るケースが多く、たとえ中古品でも買取価格はゴールドの市価に基づいて決まるので ゴールド価格がアップしていた場合には儲けが出る仕組み。 それだけでなく キャシュの持ち合わせがない時の担保の役割をするのがラッパーのジュエリーで、彼らにとってはファッションであり、ステータス・シンボル兼 財産であり、いざという時に身を守ってくれるのもジュエリー。 今でこそ ラッパー達が高額ファッションを身に着けるようになったけれど、かつてはずっとバギージーンズとTシャツというカジュアル・スタイルに 巨大なゴールド・ジュエリーをつけていた訳で、これは最も賢いお金の使い方。 実際のところ、サクセスフルなラッパーは有能なビジネスマンであるケースが多いのだった。
昨今ではエミリー・ラタコウスキー(写真上、下段右)やヘイリー・ボールドウィンらも、カジュアルな服装にダイヤのテニスネックレスと、ゴールド・ウォッチ&ジュエリーといった スタイルで頻繁にスナップされているけれど、服ではなく ジュエリーでステータスを演出するのは ファッションでお金を減らさないスタイリング。 逆に同じジュエリーでも決してお金を払ってはいけないのがゴールド・プレート、ゴールド・フィルド、ゴールド・ヴァーメイ(Vermeil)といったいわゆる金メッキで、 これらの財産価値はほぼゼロ。 今のヴェネズエラでコーヒー1杯とも取り替えられないのがこれらのジュエリーなのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行

PAGE TOP