Sep 10 〜 Sep 16 2018

”You are Judged by Your...”
シンシア・ニクソンのベーグルだけじゃない!?
米国で 思わぬものが人々に与える偏見の数々



今週はトランプ政権発足以来、メディアにおいて最もトランプ大統領の影が薄かった週で、 前半にメディアの関心が集中したのはUSオープン女子決勝におけるセリーナ・ウィリアムスとアンパイアのやり取りを巡る ”ダブル・スタンダード”、すなわち男女の格差の問題。
全米ネットのニュース番組でも取り上げられるほどの論議を醸したのがこの問題であるけれど、 それと時を同じくして報じられていたのが2つの#Me Tooがらみのスキャンダル。 1つ目は 3大ネットワークの1つCBSのトップであったレス・ムーンべスが、12人のセクハラ被害者が名乗り出たことで職を追われる際に、 日本円にして130億円以上の退職金をオファーされたニュース。もう1つはニューヨーク・シティバレエの20歳のバレリーナが、 バレエ団内部に横行するセクハラ、女性バレリーナ蔑視に加えて、男性のスター・バレリーナが 自分達と関係したバレリーナたちのヌード写真やセックス・ビデオを仲間や高額スポンサーに流通し、それが マネージメントの保護の下で行われていたとしてシティ・バレエ、及び男性バレリーナを訴えたニュース。 そんな男性優遇措置のスキャンダル報道も、少なからず”男女の格差論議” を盛り上げていたのが実際のところ。
でもどんな報道であれ、USオープン女子決勝がらみのニュースを最も歓迎していると言われたのがテニス・アソシエーション。 それもそのはずで このところテニス人気は下降線を辿っており、かつて3大ネットワークで放映されていたグランドスラムの決勝は ここ数年はケーブル局での放映。 その視聴率も低下中で、新聞のスポーツ欄やニュース番組におけるテニスの取り扱いも年々小さくなる一方。 今回のようなパブリシティやソーシャル・メディアのフォーカスを獲得したのは何年かぶりで、 アメリカでは「All publicity is good publicity」と言われる通り、内容に関わらずパブリシティは大歓迎されるもの。 事実、先週コリン・カパーニックを広告に起用して物議を醸したナイキは、今週その株価が同社史上最高値を付けているのだった。




今週の中盤以降のアメリカはノース&サウスカロライナ州に大被害をもたらしているハリケーン・フローレンスのニュースで持ち切りであったけれど、 そんな中 ソーシャル・メディアで物議をかもしていたのが、木曜に行われたニューヨーク州知事民主党予備選挙で 現職のクォモ州知事に大敗した 「セックス・アンド・ザ・シティ」のミランダこと、シンシア・ニクソンがオーダーしたベーグル。
彼女が今週月曜にアッパー・ウエストサイドの老舗デリ、ゼイバースで取材に応じながらオーダーしたのが シナモン・レーズン・ベーグルに スモークサーモン、クリーム・チーズ、トマト、レッドオニオン、ケーパースを挟んだサンドウィッチ。 この誰もが首を傾げるコンビネーションのお陰で、彼女が獲得したのが 州知事選立候補以来、 最大のパブリシティ。 特にベーグルに拘るニューヨーカーの間では、誰もが話題にするほどのトピックになっていたけれど、 ニューヨーカーといえば、好みのベーグルやピザで 相手の味覚をジャッジするだけでなく、性格や人間性まで判断するのが常。
往々にしてニューヨーカーは旅行者と一緒に行列してまでベーグルを購入するのは馬鹿げていると考えていて、 「前の日に買ったベーグルを自宅でトーストするのはOKでも、デリのカウンターでその日に焼きあがったベーグルのトーストをオーダーする人とは友達になれない」 など、トースト派を嫌う傾向が顕著。 朝から口臭を気にせずに オニオン・ベーグルや、オニオンを挟んだベーグルを食べる人を「社会性が無い」と見なしたかと思えば、 シナモン・レーズン・ベーグルにバターとクリームチーズ以外を挟むのは邪道と考えるニューヨーカーは多く、 シンシア・ニクソンを擁護して「シナモン・レーズン・ベーグルにスモーク・サーモン、クリーム・チーズ、ケーパーズ、レッドオニオンはOK」という人でも、 「それにトマトは許せない!」という声が聞かれていたのだった。
またニューヨークでは 優秀なベーグルが街中のあらゆるところで販売されているので、スーパー等で冷凍のベーグルを購入するのは 「馬鹿げている」、「味音痴」というのが多くのニューヨーカーの考え。 さらに一度茹でてから焼き上げるというベーグルの味に、ニューヨークの水が大きく影響すると考えるニューヨーカーが多いだけに、 他州のベーグルの味を褒めた場合、その途端にニューヨーカーから「テイスト・ブラインド(味覚音痴)」のレッテルを貼られるのは珍しくないことなのだった。

ニューヨーカー がベーグル以外でこだわるのが、前述のピザに加えて、ハンバーガー、ステーキ。 ピザ論議を醸すポイントは クラストの厚さとトッピングの種類、そしてニューヨーク・スタイル、ナポリ・スタイル、昨今人気のデトロイト・スタイル、ローマ・スタイルなど、 どのタイプのピザを好むか。 中には、「ピザの好みが合わない女性とは付き合わない」とまで豪語する男性までいるけれど、ベーグル同様、ニューヨークには 優秀なピザ店が多いので、冷凍やドミノ・ピザのようなチェーン店のピザを好むと言えば、やはりその味覚に偏見を持たれても文句は言えないのだった。
ステーキ&ハンバーガーについては 「どの店のものを好むか」で、その食の好みや味覚のレベルが大体分るけれど、ピザやベーグルのように 人間性にまで結び付けたジャッジが行われることは無いのだった。




さてアメリカは 現在就職シーズンを迎えているけれど、新卒の大学生を採用する企業の70%が選考の際に考慮するとアンケートで回答しているのが、 応募者のソーシャル・メディアのアクティビティ。この割合は2年前には45%であったことを思うと著しいアップで、ソーシャル・メディアが採用に不利に働く割合は 3人に1人と言われるのだった。
そうなっても仕方がないのは、グーグルの社員が「女性には生物学的にエンジニアの才能がない」とツイートして大顰蹙を買ったり、 フットボールのドラフト候補から、リアリティTVのキャストまでが 本人も忘れている数年前の人種差別ツイートで 論議を呼ぶなど、組織や企業に関わる個人の発言に対して 社会がどんどん敏感になってきているため。 特に人種&女性差別や蔑視の発言、ネオ・ナチや白人至上主義グループへの参加などは、雇う前に必ずチェックしなければならない事項。
そのため本人が削除したツイートやコメントまでもがチェックされるけれど、ビジュアルでご法度とされるのは セクシーで挑発的な写真やビデオ。アメリカではつい最近、エクササイズでポールダンシングを習っていた女性教師が、下着姿で踊っているビデオを インスタグラムにアップした途端に停職処分になったエピソードがあるほどなのだった。

企業の中にはソーシャル・メディアのポストの内容だけでなく、その書き込みの頻度や感情レベルから人間性をジャッジする傾向もあって、 ソーシャル・メディアがマイナス印象に働くのは、自分に関するポストの頻度が多すぎる人。また短時間に何度もネガティブ・ツイートを行う人や フェイスブックに短時間に複数回ネガティブな書き込みをするケース、長い文章でネガティブな書き込みをするケース、 同じトピックを何度も蒸し返したり、売り言葉に買い言葉のような論争をコメント欄で繰り広げる人。 これらは執念深く、フレキシビリティが無い性格と判断される傾向にあり、 たとえ主張が正しい場合でも、複数のリアクションやコメントは「短気」、「感情に歯止めが効かない」とジャッジされることが 採用基準をデザインする心理学者によって明かされているのだった。

そのためアメリカでは嫌いな人間がソーシャル・メディア上で失言をした場合、 わざとリツイートやシェアをして 本人が削除してもそれが残るように 画策すると言われるけれど、そんなことをしなくても 一度インターネットにアップしたものは 一生残り続けるのは周知の事実。 そのため 「怒りに任せたツイートや書き込みは三度考えてから行え」と言われるほどで、 これらは通常の交友関係においても偏見を持たれる要因。「友人の怒りのツイートや書き込みを読んで 距離を置くようになった」という人々は決して少なくないのだった。




それとは別に、先日アメリカ人の友人宅のディナーにポテトサラダが出てきた際に話題になったのが コンディメンツ(ケチャップ、マヨネーズ、ソース等の調味料)による世帯年収のジャッジメント。 私はケチャップやマヨネーズを食べなくなって久しいので、今、世の中の人が一体どんな コンディメンツを購入しているのかに全く疎かったけれど、 その場に居た友人達によれば、ニューヨークやサンフランシスコのように可処分所得が高く、ヘルスコンシャスな都市部の場合、 もし冷蔵庫の中に 一般大衆のスタンダード・ブランドである ヘルマンズやミラクルホイップのマヨネーズ、もしくは ハインツのケチャップが入っていれば、その家庭は年収6万ドル(約660万円)以下と判断出来るとのこと。
今やマヨネーズはオーガニックで、グルテン・フリー、GMOフリー、シュガー・フリーが主流だそうで、確かにアマゾン・ドット・コムで調べてみたところ ベストセラーになっていたのが、左から3番目のアヴォカドオイルのマヨネーズ。お値段はヘルマンズと比べると約3倍で、 アマゾンでショッピングをする人々は、ウォルマート等で買い物をする人々に比べると 所得が多いのは言うまでもないこと。 もちろん上には上があって、高級食材店で売られているグラス・ジャー入りのマヨネーズの場合、ヘルマンズの5〜6倍のお値段。 それはケチャップでも然りで、グルメストアでメイソン・ジャーに入れて販売されているような高額ケチャップは、やはりハインツの5倍以上のお値段なのだった。

以前私の友人が ニューヨークの超一流ホテルで メートルディをしていた際に、ホテル内のレストランのスムージーを作る野菜や果物が全てオーガニックか、スモークサーモンがスコティッシュかアトランティックか等、 食材に異様に気を配るリッチな男性客が居て、何をしている人物かと思ったらアメリカの大手食品会社のエグゼクティブで、「自社製品のシリアルやチーズなど 絶対に食べていない様子だった」という話があるけれど、 昨今の世の中ではリッチな人々が工場生産の安価な加工食品を食べなくなってきているのは紛れもない事実。 ヘルス・コンシャスで可処分所得がある人は、シェイクシャックでハンバーガーを食べても マクドナルドには行かないのと同様、 そうした人々にとっては ヘルマンズのマヨネーズやハインツのケチャップも マクドナルドのような存在になってきているようなのだった。
アメリカは低所得者層ほど肥満が多く、不健康であるのは周知の事実であるけれど、 リッチ・ピープルがオーガニック、GMOフリーの新鮮な食材に拘わって、 低所得者層が工場生産の加工食品を食べ続ける状況を見ていると、 食べ物が世帯収入だけではなく、ライフスパン(寿命)のジャッジメントにもなることを実感してしまうのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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