Oct. 8 〜 Oct. 14 2018

”Americans Are Eating Out Less...”
外食が減っているアメリカ社会、トレンドと売上を担うミレニアル世代の食動向は?


今週のアメリカで最大の話題になっていた2つのニュースは、まずサウジアラビア政府に厳しい批判を展開していたワシントン・ポスト紙のジャーナリスト、 ジャマル・カショギの失踪事件。イスタンブールにあるサウジアラビア領事館に結婚の手続きで訪れたまま 姿を消したカショギについては、 領事館内で暗殺され、死体として運び出されたことが 防犯カメラの映像から ほぼ確実視されているけれど、 アメリカで関心が集中しているのは果たしてトランプ大統領がサウジアラビアに対して どの程度の制裁措置を打ち出せるかという問題。
というのもトランプ氏は、大統領に就任する以前から その不動産ビジネスでサウジアラビア政府からの恩恵を受けており、 個人的にも金策に追われている時に 巨大なヨットを20億円で買い取って貰うなど、サウジアラビアは大切なクライアントのような存在。 またサウジアラビアの政府関係者は、ワシントンのトランプ・ホテルを大黒字にするほどの出費をして行くことでも知られており、 トランプ氏が大統領就任後、初の外遊に出かけたのがサウジアラビアであることや、 9・11の実行犯がサウジアラビア人であったにも関わらず、トランプ政権の移民政策における入国禁止の対象国からサウジアラビアが 外されていたのは決して偶然ではないこと。 トランプ氏は「サウジアラビア政府に対して断固たる制裁措置を打ち出す」としているものの、 その信憑性を疑うメディアは多いのだった。
その一方で、政治&芸能の双方のメディアで「茶番」として報じられたのが、木曜に実現したラッパーのカニエ・ウエストのホワイトハウス訪問。 週末にはサタデーナイト・ライブもその様子をコメディ・スケッチに落とし込んでいたけれど、 あのトランプ大統領でさえ口を挟むことが出来ない勢いで11分間に渡り ラップのような演説を繰り広げたカニエ・ウエストの様子は ありとあらゆるメディアが「bizarre/ビザール(常軌を逸している)」と報じたもの。 トランプ大統領に対しても、カニエ・ウエストに対しても「もっとマシな時間の使い方はないのか?」という指摘が聞かれていたけれど、 カニエ・ウエストのスポークスマンによれば、刑務所のシステムの改善、殺人事件が急増するシカゴの治安問題等を 大統領と話し合うのがカニエ・ウエストの今回のホワイトハウス訪問の意図。 でも実際には11分間に、自分のアイフォンのパスワードや自分がセカンド・オピニオン無しで医師に躁うつ病と診断されたという愚痴を含む 40のトピックについて捲し立てただけで、「bizarre」という表現が相応しい訪問となっていたのだった。




さて、私がこのコラムを書いている10月14日に閉店したのが 1990年にユニオン・スクエアにオープンしたコーヒー・ショップ(写真上左)。 コーヒー・ショップとは言いながらもレストランであり、夜になるとラウンジのように経営されていた同店は、 かつては多くのニューヨーカーがディナーやクラビングの後の「未だ帰りたくない」という時間を潰していたスポット。 オープン当初はヴォーグ誌を始めとする多数の雑誌のグラビア撮影のロケーションとしても使われ、ニューヨーカーが行列してテーブル待ちをするほどの 人気ぶりであったけれど、過去数年では旅行者しか寄り付かないカフェになっていたのが実情。
コーヒー・ショップに限らず、過去2年ほどのニューヨークは長寿レストランが何軒も閉店しており、 高額レントが経営のネックになっていることが指摘されて久しい状況。 でもレストランが苦戦しているのは決してニューヨークだけではなく、むしろニューヨークは全米で最も外食が多いニューヨーカーに支えられて、 他州よりもレストラン・ビジネスが遥かに潤っている街。
マーケティング会社、NPDグループの調べによれば 平均的なアメリカ人は 2000年には年間215回外食をしていたというけれど、 2018年にはその回数が186回となっており、これは14%のダウンであるだけでなく、 過去28年間で最低のレベル。 ちなみにこのデータにおける外食とはブレックファスト、ランチ、ブランチ、ディナー、コーヒー&ペストリー、ドリンク&軽食などの 全て含めてのもので、朝食をマクドナルドのドライブスルーで購入した場合でもカウントされるもの。 今や平均的なアメリカ人の食事の82%が自宅での調理や準備によるものであることが明らかになっているのだった。 特にこの傾向に拍車がかかったのは日本でいうリーマン・ショックこと、2008年のファイナンシャル・クライシス以降。
にも拘わらず、2017年にはスーパーマーケットの食材の売り上げが 初めてファスト・フードの売り上げに抜かれるという事態が起こっているけれど、 その背景にあるのは 人々がオンラインで食材を購入するようになった結果、わざわざスーパーに足を運ばなくなったこと。 そのファスト・フードは、アメリカ国内では 売上が伸びているものの 客数が減っており、 それが意味するのは客単価のアップ。しかしながら来店客がより多くのフードをオーダーするようになったのではなく、 人件費や食材の値上がりを受けて、メニューの値上げを行ったためのもの。 したがって 来店客が減ったのは その価格上昇により、 低所得者層がマクドナルドで食事をする回数を減らしている状況を垣間見せているのだった。
客足が減って 客単価がアップしているのは、一般のレストランも同様であるけれど、 その背景にあるのは同様に人件費、食材、そしてレントの値上がり。 でもファスト・フード店とは異なり、一般のレストランは売上が確実に落ちていることが指摘され、 それがこのところのNYや他都市におけるレストランの閉店の原因になっているのだった。




国民の50%が「料理が面倒」と回答するアメリカ社会が、ホーム・クッキング、もしくはホーム・プリペアの食事をせざるを得ない理由は 言うまでもなく外食が割高であるためで、アメリカの一般的な街でランチの外食すれば そのコストは約10ドル。 それを自宅から持参のランチにすれば コストは半額で済む訳で、前回のファイナンシャル・クライシスから 経済的に立ち直っていない低所得者層を中心に広がっていったのが、朝食、ランチを自宅で用意する習慣。
その一方で、近年のアメリカで急速に広まったのがミール・キットのビジネス。 その最大手は”ブルー・エプロン” (写真上)で、このサービスを利用した場合、レシピ&調理法 と その全ての食材が 人数分のキットで送られてくるというのがそのシステム。 2人で利用した場合、1人分のディナーの代金が送料込みで9.99ドル。 4人家族で利用の場合は1人当たりの1食のお値段が8.74ドルで、外食に比べれば激安のお値段。 しかもレストランまで運転していくガス代も掛からないとあって、あっという間に拡大したのがブルー・エプロン。 2017年6月末には株式公開に漕ぎつけているのだった。
ミール・キットのビジネスには、その後競合が何社も登場しているけれど、ミール・キットの普及もアメリカ社会が外食をしなくなった理由の1つと言われるもの。 しかしながら公開当時に お祝儀相場も手伝って9.34ドルを付けたブルー・エプロンの株価は その後下降線を辿る一方で、今週末には最安値を更新して1.34ドルで取引を終えているような状況。 ブルー・エプロンのユーザーがその利用を続けない理由は「ポーションが小さすぎる」、「食べたいメニューがない」、 「インストラクションをフォローしながら料理するのが面倒」等が挙げられるけれど、 最大の理由は「自分で食材を買って料理した方が、簡単で安上がり」というもの。 したがって、外食ディナーのお金を節約しようと考えてミール・キットを利用し始めた人々であるものの、 結局は お金の節約のためにミール・キットの利用を止めるというパラドックスのような状況になっているのだった。

メディアの中には、過去数年に渡って食のトレンドをリードしてきたミレニアル世代のお金の遣い方が変わってきたのが アメリカ社会の外食回数の減少に影響しているとの指摘が見られるけれど、 実際に昨年の前半まではインスタグラマブルなフードをサーヴィングするレストランの前にはミレニアル世代が大行列を成していたのは記憶に新しいところ。 でもそのミレニアル世代が徐々に成長して、それまでレストランの前で行列していた時間に仕事をするようになり、 フードをソーシャル・メディアにポストする熱が冷めてきたのは外食産業に打撃を与えつつある現象の1つ。
ベビー・ブーマー世代を超える規模の消費者層であるミレニアルの消費動向の分析の結果、 最も危機感を煽られている外食産業は、ミシュラン3スター・レストランに代表されるファイン・ダイニング。 というのもミレニアル世代の多くが 共働き家庭で育ち、外食やテイクアウトに馴染んでいる一方で、 ファインダイニングには興味を示さないジェネレーションであるためで、ミレニアル世代はエチケット・コーチに 正式な食事のマナーをお金を払って習わないと、フォーマル・ディナーにも出席出来ないほど ファインダイニングを経験せずに育ってきた世代。 そのため、ニューヨークのミシュラン三つ星レストラン、パー・セでは、 ミレニアル世代のクライアントに同店の料理をアピールするために、 30歳以下のみを対象に激安ディナー・ナイトをホストしたほどなのだった。




マーケティング企業の調査によれば、ミレニアル世代が好む食の傾向のトップ7は 1.ファストフード、2. カジュアル・レストラン、3.アジアン・フード、4.エキゾティック・フード、5.オーガニック・フード、 6.イージー・ホーム・クッキング、7.テイクアウト/デリバリー。
このうちアジアン・フードは少し前までは日本食が圧倒的な人気であったものの、 現在それを急追するのがコリアン・フード。またフード・トレンドとしては過去2年間はダンプリング(餃子)が人気で、 特に昨年にはスープ・ダンプリング(小籠包)がもてはやされたのは記憶に新しいところ。 4のエキゾティック・フードは、ペルー、レバノン、イスラエルなど、 どんな料理かが頭に浮かばないような国の料理。 ニューヨークでも昨今こうしたエキゾティック・フードの小規模なレストランが人気と高い評価を得ているのだった。
6のイージー・ホーム・クッキングは、近年ミレニアル世代に人気を集めてきたアボカド・トーストや、 クラウド・エッグなど、ソーシャル・メディアで もてはやされてきたような簡単で ファスト・フード感覚のメニュー。
そして「7.テイクアウト / デリバリー」は、既にレストラン業界が動き出しているカテゴリー。 今や多くのレストランが、オンラインのデリバリー会社や ウーバー・イーツなどと組んで、 そのフードのデリバリー・サービスを行っているけれど、これはレストランにとっては生き残りのための手段の1つ。
そもそも デートアプリで出会った相手とも「Netflix & Chill / ネットフリック & チル(自宅でネットフリックスのドラマを一緒に見ながら くつろぐことで、その後の展開への期待も込めた意味合い)」が4年ほど前からトレンディングだった ミレニアル世代なだけに、レストランに行かずしてレストラン・フードが自宅で味わえるのなら その方が好ましいのは容易に理解できるところ。
かつてはグラマシー・タヴァーンやユニオン・スクエア・カフェといった人気レストランで知られたニューヨークのレストランター、 ダニー・メイヤーも今ではシェイクシャックやピザ・レストランの展開に力を入れているけれど、 その彼が新たに約22億円の投資を打ち出したのも、ニューヨークを拠点に アメリカ中のレストランのデリバリーを行うゴールドベリー。 ゴールドベリーは、フィラデルフィアのパッツ・キング・ステーキ、ニューオリンズのセントラル・グロサリー、 そしてブルックリンのロベルタなどの有名店をクライアントに持つだけでなく、 高額レントが支払えずに昨年クローズしたカーネギー・デリのオンライン復刻版を担当するビジネス。
私がダニー・メイヤーを優れたビジネスマンだと思うのは、彼がレストラン経営者にありがちな余計なプライドが無く、 自分が築き上げたものに時代に逆行してまでしがみつこうとするのではなく、 時代のニーズに合わせてどんどんその経営のスタイルを変えているため。
ニューヨークでは上がり過ぎたレントのせいで、今後オープンするアップスケールなレストランの殆どのロケーションはホテルの中。 ホテル内であれば ルーム・サーヴィスという確実な収入源があるので、ホテルの経営さえ安定していれば たとえアメリカ社会の外食が減っても レストランの採算が取れるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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