Oct. 15 〜 Oct. 21 2018

”Why White Women Keep Calling 911
to Falsely Accuse Black People?”

何故白人女性は黒人層の普通の行動を警察に通報するのか?


今週のアメリカでは、引き続きイスタンブールのサウジアラビア領事館から姿を消したワシントン・ポスト紙のジャーナリスト、 ジャマル・カショギの失踪事件が大きく報じられていたけれど、ストーリーが二転三転し、カショギが拷問により処刑された7分間の音声の録音等が公開された後の サウジアラビア政府の説明は領事館で殴り合いの喧嘩が起こり、その暴力でカショギが死亡したというもの。 しかしながらその遺体についての説明は無く、世界中のメディアがその説明の信憑性を疑う一方で、 サウジ政府に対して個人的な関わりから全く強い態度を示せないトランプ政権に対しては身内の共和党からも批判が集まっている状況。 またサウジアラビアの王子と交友があるトランプ大統領の娘婿、ジャレッド・クシュナーがカショギの旅程をサウジアラビア政府に告げたとの疑いを 指摘するメディアもあり、この問題はまだまだ尾を引きそうな様相を見せているのだった。
週の後半のアメリカの関心が集中していたのは、賞金額が遂に10億ドルに達したメガ・ミリオンの宝くじ。 アメリカの宝くじの多くは、ジャックポットと呼ばれる当選が出ない場合は賞金が繰り越しになるシステムで、 7月後半からジャックポットが出ていないために今週金曜の段階で10億ドルに膨れ上がったのがその賞金額。 ボクサーでマルチミリオネアのフロイド・メイウェザーでさえ2000ドルを投じて1000枚のチケットを買ったことが伝えられているけれど、 金曜にもジャックポットが出なかったことから、来週火曜日に行われる次のメガ・ミリオンの賞金額は世界最高額となる16億ドル。
ロッタリー関係者は生活費を削ってまで高額をチケット代につぎ込まないようにと警告しているけれど、 ジャックポットが当たればビリオネアかと言えばそうでもなく、アメリカでは賞金額から40%以上の所得税が差し引かれるだけでなく、 1回払いを選ぶと更に賞金が目減りするシステム。 ジャックポットを当てる確率は3億260万分の1で、これは生涯に二度落雷に見舞われるよりも低い確率。 したがって当たるはずがない確率であるものの、ここまでの賞金額になると ダメもとでチケットを買ってしまうのが人情。 その結果チケット売上がアップし それが賞金額に反映されるため、もし火曜日にもジャックポットが出なかった場合には 賞金額が20億ドルを超えることが確実視されているのだった。




話は変わって今年の春以降、増えてきたのが白人の一般市民が有色人種、特に黒人層に対して、 罪を犯した訳でもないのに 一方的に責め立てた挙句、怒りに任せて911コール(日本でいう110番)をするという行為。 その先駆けとなったのは、今年4月にフィラデルフィアのスターバックスで、友人を待つ間 オーダーをせずに椅子に座っていた黒人男性2人が トイレの鍵を借りようと店員にアプローチした途端に警察に通報されたという出来事。 これがメディアでもソーシャル・メディアでも大きく取沙汰されて批判が集まったことから、 スターバックスは5月末に全米の店舗をクローズし、スタッフに対して人種問題についてのトレーニングを行う羽目になったのだった。
でもそれ以降も同様の出来事は増える一方で、今年4月には写真上、左側の女性がオークランドのレイクサイドで週末にバーべキューをしようとしていた黒人ファミリーに向かって 「チャコールのグリルを使うのは違法。今直ぐやめなければ警察に電話する」とからんで、本当に警察に通報。 でも「チャコールのグリルが違法」というルールなどは存在しておらず、この通報の様子を捉えたビデオが ソーシャル・メディア上でヴァイラルとなって、猛反発した人々が彼女につけたニックネームが「バーベキュー・ベッキー」。 その後この女性は事あるごとに「バーベキュー・ベッキー」として引き合いに出されることになっているのだった。

そうかと思えば5月には サンフランシスコで 写真上右側の女性が、 MBLジャイアンツの本拠地、ATTパークの外でウォーター・ボトルを販売していた 8歳の黒人少女に向かって「パーミット(許可証)がなければ ウォーターボトルを売るのは違法」と責め立てて警察に通報。 その様子のビデオがやはりヴァイラルになり、以来この女性は 「#パーミット・パティー」というニックネームのハッシュタグで 批判ツイートがトレンディングになっていたのだった。
ちなみに”ベッキー”、”パティー” はそれぞれ”エリザベス”、”パトリシア” の愛称であるけれど、 どちらも警察に通報した白人女性たちの実名とは無関係。これらが白人女性のトラディショナルな名前であることから、 からかう意味とゴロ合わせでついたニックネームなのだった。
7月にはメンフィスの公営プールで黒人男性が靴下を履いていたというだけの理由で白人女性が警察に通報。 この女性はソーシャル・メディア上で「#プール・パトロール・ポーラ」というニックネームで大バッシングを受け、 後に職場からも解雇されているけれど、 今年の夏にノースキャロライナ、サウスキャロライナといった トランプ支持派が多い州の公営プールで相次いだのが、 黒人のファミリーをブロックする差別行為。 まるでセグリゲーション時代(黒人と白人層が違うトイレや水飲み場を使っていた時代)に逆戻りしたような様相を見せていたのだった。




今週ソーシャル・メディア上でヴァイラルになったのは、ミズーリ州セントルイスのロフト・ビルディングに住む黒人男性が、 同じビルの白人女性の住人に不審者だと思われて ビルへの立ち入りを拒まれ、ビルに入った途端に警察に通報され、 自宅の扉の鍵を開けて中に入るまで女性に尾行された様子を収めたビデオ(写真上)。 女性は彼がビルの住人であることが明らかになっても謝罪さえせず 嫌味を言い続ける有様で、 終始礼儀正しく振舞っていた黒人男性は、後に通報を受けて駆け付けた警察にも対応しなければならなかったとのこと。 「これが2018年のアメリカとは思えない」というのが男性の言い分で、彼がビデオをソーシャル・メディアにアップした途端に、あっという間に 400万人が視聴。猛烈な怒りのリアクションを受けて、白人女性は 勤めていた不動産会社から解雇されており、彼女には「アパートメント・パティ」というニックネームがついているのだった。
その一方で先週には、ブルックリンのストアで9歳の黒人少年のバックパックがヒップに触れたのを痴漢行為と勘違いした 50代の白人女性が 「黒人少年にお尻を掴まれた。性的虐待を受けた」と警察に通報。女性は抗議した母親に対しても怒鳴りつけ、 その横で少年と妹が困惑して泣き出す様子を収めたビデオがやはりヴァイラルになっていたのだった(写真下)。 でも防犯カメラの映像で明らかになった事実は 女性の通報とは全く異なり、 女性の後ろを通り過ぎる際に少年のバックパックがヒップをかすった程度の出来事で、明らかに女性のオーバーリアクション。 この女性には 「コーナーストア・キャロライン」というニックネームがついて、やはりソーシャル・メディア上で彼女に対する批判が トレンディングになっていたけれど、女性は後日メディアのインタビューで少年に対しては反省の色が無い謝罪をしたものの、 彼の母親が自分を怒鳴りつけたことには引き続き抗議をしており、何故母親と怒鳴り合いになったかの理由については 全く考えが及んでいない様子を露呈していたのだった。


同じく今週半ばにヴァイラルになったのは 写真下左側の”ゴルフカート・ゲイル”とニックネームされた女性。 トラブルが起こったのは子供のサッカーの試合で、息子が審判の判断にフラストレーションを感じている様子を見た黒人の父親が、 「レフリーは正しい」と息子に叫んだところ、「過激な言動をした」、「脅しをかけた」と警察に通報。 父親は穏やかに「騒ぎを起こしたくないからこの場を去る」と言ったにもかかわらず、彼を引き留めて警察に突き出そうとしたのが ”ゴルフカート・ゲイル”。
この様子の一部始終をビデオに収めていた白人女性が、警察に事情を説明し、 父親が無事にその場を去るまで彼に付き添った様子は、同様にソーシャル・メディア上、および通常のメディアでもヴァイラルとなったけれど、 警察はこんな下らないことで呼び出されても、黒人の父親やビデオを撮影していた白人女性よりも、 ”ゴルフカート・ゲイル”の言い分の方を丁寧に聞いている有様で、警察に対してフラストレーションを感じる人々は少なくなかったのだった。

さらにメイン州のダンキン・ドーナツのドライブスルーでは、ソマリア人女性が家族と車内でソマリア語で話していたのをスピーカーを通じて聞いた店員が、 突然「怒鳴らないで!」と叫び出し、オーダーを受けるの拒否して、ドライブスルーから立ち退くように要求。 ソマリア人女性が車を駐車してストアに入って苦情を言おうとしたところ、警察に通報され、他の店員から「Bitch / ビッチ」とののしられる事態が起こっているのだった。 しかも駆け付けた警察の対応は、ソマリア人の女性に対してストアからの立ち退きと今後の入店禁止を言い渡し、チケットを切るというもの。
実はこのソマリア人女性はイスラム教徒にしてミス・メインにも選ばれたモデル。彼女がこの出来事をソーシャル・メディアでフォロワーに訴えたところ、 やはりヴァイラルとなり、後日ようやくダンキン・ドーナツ本社から謝罪のレターが送られてきたのだった。






先週には友人に頼まれて白人の2人の子供のベイビーシッターをしていた黒人男性(写真上)が、その様子を目撃した白人女性によって 警察に通報されるという事態も起こっているけれど、 このように昨今、頻繁に起こるのが白人女性による 黒人層の犯罪とは言えない行為に対する 警察への通報。 この背景にあるのは トランプ政権になってからというもの人種間のテンションが高まっただけでなく、白人至上主義的な人種的優越意識によるものと言われるけれど、 確かに白人層は自分たちが警察に不当に扱われないという確固たる自信を持っているのは明らかな事実。 逆に黒人層やヒスパニック層は、トラブルに巻き込まれたくないという理由から警察に通報すべき状況でも 通報を控える傾向にあるのだった。
元サンフランシスコ・フォーティーナイナーズのクォーターバック、コリン・カパーニックが 警察による黒人層に対する不当な権力行使に抗議して、試合前の国歌斉唱中に跪くジェスチャーをしたのは 今や世界中で知られることであるけれど、彼が自分のフットボール選手としてのキャリアを犠牲にしてまで抗議活動をするに至った理由は 「車のテールランプが壊れている」というようなごく些細なトラフィックの取り締まりでも、ドライバーが黒人層であった場合、 それが警官による射殺事件に発展するような事態が起こるため。 それを考えたら、”警察を呼ぶこと自体が黒人層の命を危険にさらす行為” というのが「バーベキュー・ベティ」、「パーミット・パティ」、 「ゴルフカート・ゲール」といった女性たちを批判する人々の意見であるけれど、 彼女らの「虫の居所が悪かったための人種差別=誤報と言える警察への通報」に対して、 責任を問う声が地元政府関係者から出たのは、ブルックリンの「コーナーストア・キャロライン」の件のみ。 それ以外はリスク・フリーで怒りに任せた通報をしている訳で、これは有色人種には出来ない行為なのだった。

トランプ政権誕生以降、政治をめぐって友達や家族とも口論するようになってしまったアメリカ社会であるけれど、 今では気に入らないことがあると自分に関係がないことでも文句を言って、それがエスカレートすると 警察に通報するというのが白人女性の常套手段。 これが白人男性になると暴力や、 銃の発砲に発展するのは様々な事件で報じられている通り。
以前このコラムで書いた通り、今年の初夏にはストアに数分立ち寄るだけなので障害者用のパーキング・スペースに駐車した黒人ファミリーに対して 白人男性が怒鳴り散らしのバッシングをしていたところ、店から出てきた黒人ファミリーの父親に突き倒され、 いきなり銃を取り出して父親を射殺する事件が起こっているけれど、世論の反発が高まるまで白人男性は逮捕さえされておらず、 今後 不起訴処分になっても不思議ではない状況。
そうかと思えば、先月にはスマートフォンを持たずに道に迷った黒人少年が、 近くの民家で道を尋ねようと玄関のベルを鳴らしたところ、いきなり住人の白人男性がライフルを持って出てきて、少年を目掛けて数発の銃弾を発砲するという 事件が起こったばかり。白人男性の言い分は「少年が強盗だと思ったので身を守ろうとしただけ」というものなのだった。

そんな状態なので、現在のアメリカでは 白人至上主義グループがどんどん力を付けてきているけれど、 そんな風潮を裏付ける出来事といえるのが、10月初旬にコロラド州のスーパーで 移民女性の来店客が母国語のスペイン語で話していただけで、白人女性に「ここはアメリカなんだから英語で話しなさい」と文句を言われ、 仲裁に入った白人女性とも口論になって警察沙汰になった事件。 ニューヨークのレストランでもサーバーがスペイン語で話していた様子を見た白人男性が、 「移民局に通報してやる」と脅しを掛けたことがニュースになっていたけれど、かつては人種問題においてキレイ事を言っていた白人層が、 どんどん人種差別の本音を出してきているのが現在のアメリカ。
その理由として 「政権のトップが人種差別や暴力を肯定する発言を繰り返しているため」との声も聞かれるけれど、 私が感じるのは表向きには景気が良いと言われながらも かつては中流だった、もしくは自分で中流だと思っていた白人層の生活がどんどん苦しくなっているためで、 そうした白人層は 裕福な有色人種を見れば「自分の富がこんな移民に奪われた」と考える一方で、貧しい有色人種を見れば 「自分の税金でこんな連中を養うのはまっぴら」と考えているので、移民政策に厳しいトランプ政権を支持し、 生活が苦しくなればなるほど その怒りが強まって、ますますヘイト・スピーチや人種差別を支持するようになっている状況。 したがってトランプ政権の関税政策や大型減税で、最も生活が苦しくなるのが伝統的に共和党を支持する 中西部、南部の白人貧困層であるけれど、その生活が苦しくなればなるほど、彼らが移民や有色人種を敵視して トランプ政権への支持を強めるのもまた事実。トランプ氏がこれらのエリアでの遊説の度に 移民に対して差別的なスピーチをすることは、支持層固めには非常に有効な手段と言えるのだった。




執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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