Oct. 22 〜 Oct. 28 2018

”Recession is Coming!”
あれから10年、リセッションの再到来!?


今週のアメリカは写真下のニューヨーク・ポスト紙の表紙の通り、 合計14のパイプ爆弾が民主党関係者とアンチ・トランプ派に送付されたニュース、 NBCが3年間77億円のギャラで契約した元フォックス・ニュースの人気キャスター、メーガン・ケリーを 「ハロウィーンに白人が顔を黒く塗って黒人に扮する事の何が悪い!」という問題発言の2日後に解雇したニュース、 爆弾事件の犯人逮捕のニュース、そして土曜日にピッツバーグのシナゴーグで起こった11人の犠牲者を出した銃の乱射事件と、 大きな報道が相次いだ週。
メーガン・ケリーの解雇については、アメリカでは白人俳優が顔を黒く塗って黒人層に扮して、彼らを馬鹿にしたり、 人間と扱わないようなパフォーマンスをして白人観客の笑いを誘っていた暗い人種差別の歴史があるだけに、 白人が顔を黒く塗ることは「ブラック・フェイス」という立派な人種差別行為で、これは一般の知識人ならば誰もが熟知していること。 それだけにメーガン・ケリーの発言には身内であるNBCの局内からも批判が殺到しており、解雇は妥当の処分。 でも今年のハロウィーンは、コスチュームにモラルを問う声が高まる一方で、あえて人種差別的なコスチュームを着用する 極右派も多く、ハロウィーンという一見無害なイベントが 政治や移民問題、人種差別主義のディスプレーとして 使われている様子を垣間見せているのだった。
爆弾犯については、フロリダ州に住む元男性ストリッパーで 狂信的なトランプ支持者、シーザー・セイヨック(56歳)が逮捕されたけれど、 そのスピード逮捕に繋がったのは8つの前科がある彼の指紋がFBIのデータベースにファイルされており、それが爆弾の1つに付着していた指紋と一致したこと。 2012年に個人破産を申請した彼は、今は爆弾製作の現場にもなった自家用車のバンの中で暮らしていたとのことで、 そのバンはメディアが”トランプ・シュライン(トランプ神社)”と呼ぶほど、トランプ支持メッセージ、アンチ・オバマ&ヒラリーのステッカーが一面に貼りつけられたもの。 メディアの多くが、トランプ氏が遊説の度に行うヘイト・スピーチーが シーザー・セイヨックを犯行に駆り立てたと指摘する一方で、 トランプ氏は 特にCNNを名指しで、「フェイクニュースを発信しているから 爆弾騒ぎは自業自得」と批判。 遊説先の会場では引き続きトランプ支持者が「CNN Sucks!」と同局を批判するチャンティング(詠唱)が聞かれていたのだった。






こんな事件が相次いだので、昨日土曜日の友人とのディナーでもそれらが話題になるかと思いきや、 私たちの会話が集中していたのが 株価と経済、そして次のリセッションについて。
今週末までには、ダウとS&Pが共に 2018年に入ってからの上昇分が帳消しになる下落ぶりを見せており、 S&P500は約半分の銘柄が既にベア・マーケットに入っている状態。 ダウも10月3日の史上最高値から約10%ダウン。ラッセル3000も11%のダウンとなっているけれど、 友人たちが特に話題にしていたのが、これまで米国株式市場を引っ張ってきたFANG(ファング)ストックにまでベア・マーケットの兆しが出てきたこと。 FANGとは フェイスブック、アマゾン、ネットフリックス、グーグル(アルファベット)のことで、 アマゾンについては木曜に予測を下回る業績が発表されたことから、金曜の取引開始直後から8%株価がダウン。 この日の終値で7.8%の下落となっているけれど、9月4日の史上最高値から 約20%価格を落としているだけに、ネットフリックスと共にベア・マーケット入りの状況。 金曜だけで アマゾンCEOで、世界一の富豪であるジェフ・ベゾスは個人資産を140億ドル(約1兆5680億円)失ったと言われるけれど、 誰も彼に同情などしないのは言うまでもないこと。
金曜にはグーグルの親会社であるアルファベットの株価も5.6%下落し、 フェイスブックも6月25日の史上最高額から約30%株価が下落している状況。 フェイスブックについてはインサイダーによる自社株の売却が5月から伝えられているけれど、 実際にインサイダーによる自社株の売却はフェイスブックだけでなく、銀行を含む大手企業で初夏の段階から顕著な傾向。
それがこれまで価格に現れなかったのは、企業側が自社株を買い支えてきたためであるけれど、 10月に関しては業績発表の2日後まで企業に対して自社株の買い戻しが禁じられていた月。 したがって、株価が自社株の買い支えが無かったら どうなるか?という米国市場の実力が現れたのが今月で、 これによって 如何に株式に投資する層が限られているかを実感した市場関係者も多かったようなのだった。




景気の指針となる住宅関連銘柄も株価を大きく下げているけれど、ニューヨークのように不動産がバブル状態であった市場では、 コレクション(価格調整)モードが更に高まるのが目に見えているのに加えて、FED(連銀)が年内にもう1度公定歩合を引き上げることを明らかにしているので、 高額の物件ほど売れない状態。 ジャスティン・ティンバーレイク&ジェシカ・ビール夫妻が 今年に入ってから売りに出していたソーホーのペントハウス は2回値下げをしても未だ売れないので、遂に赤字覚悟の購入価格以下になっているけれど8億円の物件が7億円になったところで、 それが購入できる層が限られているだけに、簡単に売れなくても不思議ではないところ。

一方、右上のグラフはモルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが算出している株価指数のグラフで、 これは相場動向を知るための指針として使われるもの。グラフはグリーンがアメリカ市場、レッドがアメリカを除く世界の株式市場の指数であるけれど、 今年5月までは若干の違いはあっても大体シンクロしていたのが2つの指数の推移。 しかしながら5月を境にその推移に大き開きが出てきたのは見ての通りで、 これはアメリカ市場が 世界市場の動向とは無関係に 好調であった様子を示しているもの。 ところが10月に入ると、レベルは異なるものの その動きが再びシンクロモードを見せており、 このことが意味するのは、アメリカ市場の好調ぶりが 各国の市場に好影響を与えることは無くても、その不振ぶりは確実に 世界市場に反映されるという実態。

土曜にディナーをした私の友人たちは 2人が金融業界、1人がファッション業界、 1人がメディア業界、もう1人が小説家というキャリアであったけれど、 最も経済動向に疎かったのはメディア業界の友人。 驚くほど経済指標や様々なデータをフォローしていたのが小説家の友達。 そんな私達の全員一致の意見は 2008年を超えるリセッションが迫っているということ、 そしてアメリカ政府の21兆ドルの負債は、最初から返済の意志が無い借金であるということ。 すなわち「政府の負債だけでなく、ソーシャル・セキュリティ(アメリカの年金制度)等、 既に破綻しかけている制度を、すべて帳消しにするようなリセットが起こるはず」というのがその見解。 リセットというと聞こえが良いけれど、これは早い話が経済システムの破綻を意味しているのだった。




金融の友人によれば、次のリセッションで2008年のリーマン・ブラザースの役割を果たすと言われるのがドイツ・バンク。 ドイツ・バンクの株価は前回のファイナンシャル・クライシス直前の2007年の史上最高額から 現在では94%価値を失っているだけでなく、クライシス直後の最安値よりも現在の方が株価が安い状態。 そのドイツ・バンクは 数か月前に9000人をレイオフし、すでに金融業界では「ゾンビ・バンク(既に死んだ状態で歩いているという意味)」と 呼ばれて久しい状況。 ドイツ・バンクは リーマン・ブラザースよりも遥かに大きなバンクであるのに加えて、 同バンクが関わるデリバティブが非常に多いことから、破綻すればリーマン・ショックどころでは済まないと言われるのだった。
ちなみに上のグラフは、左の軸がドイツ・バンクの現在の株価をドルで示したもの、右側の軸がリーマン・ブラザースの破綻前の株価をドルで示したもの。 2007年から破綻までのリーマン・ブラザースの株価推移が、現時点までのドイツ・バンクの株価推移と 酷似している様子は金融業界ではちょっとした話題になっているのだった。

私が個人的にこの会話で最も興味深かったのは、2008年のリセッション時点ではほぼ全員が ウォールストリート・ジャーナル、ニューヨーク・タイムズといったメインストリート・メディア、 CNBCやブルームバーグ等のファイナンス・メディアから経済情報を得ていたものの、 今ではそれぞれが全く別のニュース・ソースから情報を得ているということ。 小説家の友人と、ファッション業界の友人は 2008年から2009年にかけて、当時のCNBCの 高視聴率に貢献したと言っていたけれど、実際にはその情報に振り回されただけだったとのこと。 金融業界の友人は以前ほどブルームバーグをニュース・ソースとして利用しなくなったと語り、 全員が共通してニュースソースに挙げたのはYouTubeだけ。でもそれぞれが異なるチャンネルをフォローしていて、 それによって株が暴落した場合のヘッジにビットコインを選ぶか、ゴールドを選ぶかの意見が分かれていたのだった。

もう1つ興味深かったのは 2008年のリセッションの際には、サブプライム・ローンで大儲けをしながらも、 Too Big to Fail(潰れるには大きすぎる)と言われてベイルアウトされた大手銀行を 諸悪の根源と見なすのが 世の中の定説であったけれど、これから起ころうとしているリセッションについては メディア業界の友人を除く 全員が 「FED(連銀)のシステムに全ての問題の根源がある」という見解で、 深く意見を聞くとその理由はそれぞれに若干異なるものの、2008年の時点よりも 情報源が多様化した様子が感じられたのだった。
要するに自分の財産を守りたかったら、メインストリート・メディアの情報など当てに出来ない時代になった訳だけれど、 そのメインストリート・メディアは、これだけ株価が下がって不安材料が重なっても、ニュース番組は経済問題には殆ど放映時間を割かないのが実情。 ファイナンス系のメディアは、危機感を煽るヘッドラインが見られても、 大した情報が報じられていなかったり、 「株価の下落を受けて ウォールストリートのベテラン・アナリストが 買いのシグナルを出している」というようなもの。
実際のところ、金融業界の友人は リセッションの前に 「もう一度株式市場に希望の明かりを灯すような局面が来るはず」と言っていたけれど、 「それに乗ってしまったら、素人は売り逃げられないだろう」という意見なのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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