Oct. 29 〜 Nov. 4 2018

”Midterm Election for the Ages!”
大統領選挙より高額かつ重要な中間選挙!
その結果でアメリカの次の2年はどうなる?



今週のアメリカで最大の報道になっていたのは、グァテマラやホンデュラスなどの中米諸国からの難民キャラバンに対して、 トランプ大統領が難民の数を上回るアメリカ軍を派兵したニュース、そしてトランプ氏が合衆国憲法14条で保障されたバースライト・シチズンシップ、 すなわちアメリカで生まれた子供がアメリカの市民権を取得する権利を大統領令で覆す宣言をしたニュース。
総勢7000人と言われる難民キャラバンについては、未だアメリカとメキシコの国境から700マイルも離れた地点に居り、 既に長旅で気力も体力も尽きているので アメリカの国境に達するには未だ何日も掛かる状況。 また難民のうち アメリカへの移住を求めてやってくるのは20%程度と言われ、 中には母国でのギャング・ヴァイオレンスから逃れるための亡命の手続きを希望する人々も含まれているけれど、 無条件にその受け入れの拒否を宣言したのが今週のトランプ氏。 そのトランプ大統領が来週火曜日、11月6日に控えた中間選挙の遊説の度に支持者に語っているのが、 「難民キャラバンの全員が犯罪者で、その中には中東からのテロリストも含まれている。 難民キャラバンを送り込んでいるのは民主党で、民主党が政権を握ったら国境がオープンになって 難民がどんどんアメリカに流れ込んでくる。自分は何としてもそれを阻止する」という内容のスピーチ。
既に2000人の警備隊が配備されているメキシコとの国境に、 今週送り込まれたのが7000人のアメリカ兵。その数は来週には1万人を超える見込みで、 長旅で疲れ果てた難民1人当たり、武装したアメリカ軍2人が対応に当たるという 明らかなオーバーリアクションと税金の無駄遣いぶりなのだった。




トランプ氏が今週、不必要なアメリカ軍の派兵を行い、憲法14条を覆して「不法移民の子供には市民権を与えるべきではない」と 宣言したのは、中間選挙の焦点を自分に有利な移民問題にシフトさせるためで、 「敵を設定して、その危機感を煽る」というのはアメリカ政治においては支持層固めの常套手段。
その中間選挙は 下院の435の全議席と上院の100議席中の35議席に加えて、39の州で州知事選挙が行われるメガ選挙。 アメリカ政治に詳しくない人は、トランプ大統領自身も投票の対象になると勘違いしがちであるけれど、 大統領の4年間の任期の2年目に行われる中間選挙は、事実上政権に対する世論の信任投票という意味合いを含むものの、 大統領に投票するものではないのだった。 でも今回の中間選挙については、これまでのどの中間選挙よりもその意味合いが大きいと指摘され、 「アメリカの歴史上最も重要な選挙」とまで言われるもの。
民主党やリベラル派にとってのその理由は、現在のように上院、下院でトランプ大統領を率いる共和党が過半数を占めていた場合、 トランプ氏の政策に歯止めを掛けることが出来ないため。 そもそもトランプ大統領が過去2年間に政策面でやりたい放題が出来たのは、 議会がその政策にストップをかけることが無かったためで、これは同様に共和党が上院下院の双方で 過半数を占めていた状況で 民主党のオバマ前大統領の政策がことごとく議会の反対に見舞われていた状況とは全くの正反対。
そのオバマ氏は民主党候補の応援演説でこのところ大忙しであるけれど、もしこのまま上院・下院で共和党が過半数を占めた場合、 環境問題が益々ないがしろにされ、既に関税措置によって始まっている貿易戦争が悪化、 メキシコとの国境に160億ドルの血税を投じた壁が作られて移民法が厳しくなる一方で、 現時点では8年間に限って施行された富裕層を優遇した大幅減税が永久となり、 企業や金融機関に対する規制緩和がさらに進み、同性婚の合法やLGBTQコミュニティの人権が脅かされ、銃規制が野放しにされ、 オバマ・ケアが完全に覆され、年金制度やメディケア(老人に対するヘルスケア)のバジェットがさらにカットされるなど、 待ち受けているのは民主党支持者&リベラル派にとっての悪夢。
しかも高齢者が多い最高裁判事のうちの誰か1人でも引退した場合、 再びブレット・キャバナーのような候補者がトランプ氏によって選ばれても、それを上院の議会承認の投票で覆すことが出来ないわけで、 キャバナー同様の若く保守系右派の判事が選ばれた場合、今後合衆国憲法がその意向を反映して書き換えられるのは 時間の問題と言われるのだった。
トランプ支持派にとってこの選挙が大切な理由は、トランプ政権が誕生してからも 彼らにとっては大統領選挙モードが続いており、 メディアやハリウッドを含むアンチ・トランプ派に対する怒りや敵対心が更に高まる一方で、 トランプ氏への支持は今や宗教化した盲目的なもの。 自分たちの生活を含むアメリカの国自体がトランプ氏によって守られ、救われているという思い込みが非常に強く、 民主党が議席を獲得することは 貧しい移民が増えて治安が悪くなり、自分たちの職が奪われ、銃規制によって自分たちの銃が奪われ、 ゲイやマイノリティが幅を利かせる、彼らにとって耐え難いアメリカを意味するもの。
したがってどちらの政党を支持していたとしても、極めて重要なのが今回の中間選挙なのだった。




そのため今回の中間選挙にはかつてないほどに寄付金が寄せられており、 その選挙資金の総額は2016年の大統領選挙を遥かに上回る52億ドル(約5800億円)になる見込みで、 これはアメリカ史上最高額。
特に多額の選挙資金が流れ込んでいるのが政治的に重要な接戦レースで、 最も注目されるのはテキサスの上院議員選挙。 その共和党候補は現職で2016年の大統領選にも立候補したテッド・クルーズ(写真上中央右側)。 民主党の対立候補は一部で「第二のオバマ」とも呼ばれ、過去3カ月間だけで3800万ドルの選挙資金を集めたベト・オルーク(写真上中央左側)。 彼の選挙資金の出所となっているのはハリウッドやシリコン・ヴァレー等のテキサス以外の個人や企業。 写真上左のように 彼に投票する権利が無いサラー・ジェシカ・パーカーやルブロン・ジェームスといったセレブリティまでもが、 彼への支持を打ち出しているのだった。
ベト・オルークがこうした人気を獲得した理由は、NFLの試合前の国歌斉唱の際に跪いて黒人層に対する警察による過剰ヴァイオレンスに 抗議するプレーヤー達を支持する発言をしたことに加えて、徐々にヒスパニック系が増えて人種構成が変わりつつあるテキサスに 民主党が礎となるポジションを切望していること等が重なってのこと。 もちろんオバマ氏に似た 政治家らしからぬ雰囲気を支持する人々も多いけれど、残念ながら オバマ氏のしたたかさが欠落していることもあり、「ベト・オルークは選挙資金を使って移民のキャラバンをアメリカに誘致している」といった テッド・クルーズ側のデマ広告が功を奏するような有様。 現時点では接戦ではあるものの 彼を支持するテキサス州民でさえ「テッド・クルーズが勝利するだろう」と予測しているのだった。

それ以外に激戦で注目されるのはフロリダ州とジョージア州の州知事選挙で、 特にジョージア州は民主党候補、ステイシー・エイブラムが当選した場合、 アメリカ史上初の黒人女性州知事が誕生するとあって、 オプラ・ウィンフリーがその選挙応援に登場。エイブラムと共に州民の家を1軒1軒訪ねて投票を呼び掛ける様子が 今週大きく報道されていたのだった。
しかしながら共和党対立候補、ブライアン・ケンプは ジョージア州の司法長官。その彼が選挙直前の今日11月4日に嫌がらせのように司法局に捜査依頼を出したのが 民主党による 投票マシン・ハッキング未遂の容疑。トランプ大統領が一押しするブライアン・ケンプは選挙の候補者でありながら、その選挙の正当性について 判断を下す立場にあるという極めてアンフェアな状況で、ステイシー・エイブラムはたとえ当選した場合でも 後からどんなケチがつくか分からないと言えるのだった。




今回の選挙の行方を握ると言われるのは通常は選挙に無関心なミレニアル世代。
そのミレニアル世代は先月、民主党支持を打ち出したテイラー・スウィフトの呼び掛けで 6万5000人が新規に投票のための手続きを済ませたことが伝えられたほか、春先にフロリダ州パークランドの高校で起こった 銃乱射事件の後、アクティビストとなった高校生たちが 夏休み中に全米各地を周って ミレニアル世代に投票のためのレジスターを呼び掛けており、今回の中間選挙ではその40%が投票する見込み。 これはもちろん過去最高の投票率なのだった。
現時点での予測では 上院では共和党がこれまで通りの過半数を維持する見込みで、 民主党はどこまでその差が広かないようにするかが課題。 下院選挙は435議席のうちの73議席が接戦で、 現段階では民主党が30〜35議席を取り戻して、過半数を獲得するという見方が有力。
もしそれが実現した場合、どうなるかと言えば 民主党はトランプ大統領の税金、移民政策、貿易、健康保険等の政策を議会で 否決することが出来るので、これまでのようなトランプ氏の暴走には歯止めが掛けられるものの、 トランプ氏には議会の採決を必要としない大統領令の発令という武器が残されているのだった。 また向こう2年以内に再び最高裁判事が任命されることがあれば、共和党多数の上院で承認されてしまうので、 ブレット・キャバナーのシナリオの再現は防げないのは言うまでもないこと。 でもオバマ・ケアことアフォーダブル・ケアアクトの要である 既存の病状の健康保険によるカバーは継続されると見込まれるのだった。
経済の専門家は、もしトランプ氏が民主党が多数を占めた下院に歩み寄るとすれば、 「全米の老朽化した橋やトンネル等のインフラ整備による景気の刺激策を打ち出すこと」と指摘するけれど、 政権誕生以来のトランプ氏の関心が注がれているのはもっぱら国防の強化で、地方のインフラ整備については全くの無関心。 また民主党にしても2020年にトランプ氏を再選させないためにも、敵に塩を送るような政策には乗らないであろうと指摘されるのだった。

トランプ大統領は下院で共和党が過半数割れすることを見込んでか、応援演説に出かけているのはもっぱら上院議員選挙の候補者で、 特に貧困層が多いエリアでのスピーチが多いと言われており、 90年代には金持ち政党だった共和党は今や低所得、低学歴のキリスト教右派の白人政党。
リベラル派が危惧するのは、株価と失業率という実態を伴わない好況のバブルが弾けた際に、 これらの低所得者層の怒りの矛先がトランプ氏の洗脳とも言える巧みな演説によって民主党に向けられて トランプ大統領再選を招くこと。 その意味では民主党&リベラル派にとっては、今回の中間選挙はたとえ下院で過半数を獲得しても その先の心配が待っている訳だけれど、もし双方の議会で再び過半数を逃した場合には、 「民主主義の終焉」とまで言う人々が決して少なくないのだった。
その背景にあるのは、もはやアメリカ政治において事実、真実というものが全く効力を失いつつある危機感。 それを象徴するかのように、今週トランプ大統領は「自分は真実が言えるケースでは真実を話すようにしている」と語っていたけれど、 これは非常に恐ろしい意味合いを含んだコメントと言えるのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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