Nov. 19 〜 Nov. 25 2018

”Discounts Drive Us All Crazy?”
また死者と怪我人が出たブラック・フライデー、
ショッパーをヴァイオレンスに駆り立てる要因とは?



今週は木曜日がアメリカ最大のホリデイであるサンクスギヴィング・デイであったので、 火曜日から帰省を含むトラベル・ラッシュであったけれど、 時を同じくして 猛烈な寒気団が到来し、 過去100年で最も寒い中で行われたのが毎年恒例のメーシーズのサンクスギヴィング・パレード。
その中で思わぬ批判を浴びることになったのが、毎年のようにパレードの終着点で見事なラインダンスを披露する ロックフェラーセンターのダンサー・チーム、ロケッツ(写真下)。 ロケッツは毎年ホリデイ・シーズンに「ロックフェラーセンター・クリスマス・スペクタクラー」という パフォーマンスを行ってニューヨークのホリデイ・シーズン名物になっているけれど、 そのロケッツが批判を浴びたのはメンバーの殆どが白人であったため。 ツイッター上では「白人ばかりでホワイト・クリスマスとはこのことだ!」といった批判が飛び交い、 何かにつけて”ポリティカリー・コレクト” にこだわる今のアメリカを象徴していたけれど、 そんな時代を反映させているのはロケッツのパフォーマンスもしかり。 今年の「ロックフェラーセンター・クリスマス・スペクタクラー」には、初めてドローンを取り入れたセグメントが登場しており、 これはインテルとのタイアップで実現したもの。 GPSが使えない会場内でドローンが音楽やライティングとシンクロした飛行をするための ナビゲーション・システムをインテル社が開発しており、 既にリハーサルでは ドローンが完璧なパフォーマンスを見せていることが伝えられているのだった。






サンクスギヴィング・デイの翌日と言えば、ホリデイ商戦の始まりであるブラック・フライデーであるけれど、 都市部ほど オンライン・ショッピングをする人が多いとあって、 ニューヨークではさほどの混雑が見られなかったのが実情。 それを立証するかのようにブラック・フライデーのオンライン・ショッピングの売り上げは前年比23%アップ。 加えて今年は史上初めてブラック・フライデーのスマートフォンによるショッピングの売り上げが20億ドルに達したことが伝えられているのだった。 オンライン・ショッピングの売り上げが年間で最も高いと言われるサイバー・マンデーには78億ドルの売り上げが見込まれており、これは前年比の18.5%アップになっているのだった。
でも地方や郊外では 今もウォルマート、ターゲットといった大手小売りチェーンが ”ドアバスター”と呼ばれる来店客が先着で購入できる 目玉セール品をプロモートする結果、サンクスギヴィング・ディナーもそっちのけので 人々がオープン前から大行列をするのは例年のこと。 そして開店と共に来店客がなだれ込んで大混雑&大混乱になる様子は、TV局が毎年取材に訪れるブラック・フライデー名物であると同時に、 ホリデイ消費を煽るプロパガンダのような役目を果たしているのだった。
でもそれがエスカレートして死者や怪我人が出るようになったのは2000年代前半からのこと。 来店客の開店時の猛ダッシュに行列の前方の人々や店員が押し倒されるのがその怪我や死亡事故の原因であったけれど、 ここ数年で増えているのが 商品を奪い合う買い物客の掴み合いや殴り合い。 ウェブ上には「ブラック・フライデーの最悪の出来事」のランキングが掲載されているけれど、 その中には買い物中に体力が尽きて倒れた男性客に誰も気づかず野放しになったケース、パーキングで購入した商品を手渡すようにと 銃を持った強盗に脅された買い物客が銃で応戦して双方が怪我を負った事件、 パーキング・スペースを争った買い物客がナイフで刺し合った事件、 またトイザらスのような一見無害の場所でも2008年には玩具の銃か本物かの区別がつかなかった男性客2人が 所持していた本物の銃を撃ち合って共に死亡した事件など、 とてもバーゲン・ショッピング中の出来事とは思えないようなエピソードが並んでいたのだった。
今年もアラバマ州のショッピング・モールで来店客の争いが発砲事件に発展。 銃を所持した男性が18歳の少年に二発、12歳の少女に一発の銃弾を浴びせ、 駆け付けた警察がそれに関わったと思しき男性を射殺。ところが射殺された男性はアメリカ兵で 事件の当事者ではなく、恐らく銃声を聞いて自分の身を守るため、もしくはその争いを止めに入ろうと 銃を手にしただけで、2人に怪我を負わせた容疑者は逃亡し、未だ逮捕されていない状況。 このように銃乱射事件でもないのに ショッピング・モールで撃ち合いが起こるのは アメリカの45州で銃のオープン・キャリーが認められているためであるけれど、 銃の所持が禁じられているニューヨーク郊外のショッピング・モールでも メーシーズのアパレル売り場での口論が ナイフの刺し合いに発展。 アメリカ人が武器を持参でブラック・フライデーのセールに出掛けている実態を垣間見せていたのだった。




そもそも90年代半ばまでは ブラック・フライデーは通常より2〜3時間開店が早い程度で、 ごくごく普通の行列が出来ていた程度のイベント。 それが夜中の12時からのセールに変わり、半日以上行列する人々が出てきたのは90年代後半からで、 開店と共に来店客が我先にと見苦しいまでの姿を露呈する様子は、時に写真上のようにゾンビ映画のシーンと比較されるもの。
その要因になっているのが前述の”ドアバスター”であるけれど、 毎年のアトラクションになっている”ドアバスター”商品と言えばビッグスクリーンTV。 時に50%オフの割引が謳われているけれど、実際にその割引で購入可能なのは僅か20〜30ユニット。 それが売れてしまえば20%程度の割引率で、小売業界のデータによればビッグスクリーンTVの割引が最も大きいのは ホリデイ・セールよりもむしろスーパーボウル直前セール。 しかしながら3〜5時間も行列して入店すると、とにかく何かを買わないと自分の努力が報われないという気持ちが高まるので、 大した割引率ではなくても買ってしまうのに加えて、店内は”競り買い”ムード一色。 そのため 昨年のブラック・フライデーには、ろくなセール品が残っていない店内で 買い物客が 激安タオルを奪い合って 掴み合いの喧嘩をする様子がソーシャル・メディア上にアップされていたのだった。
その一方で、早くから行列をしてお目当ての品を手に入れた買い物客は、 これからまだまだ行列しなければ入店出来ない人々を後目に、 戦利品を見せびらかしながら車に積み込んで、次のセールに向かうというのはかなりの優越感のようで、 時にそれは 欲しかったものを安く購入したというお得感、達成感、満足感よりも 大きいと言われるもの。 それとは別に長時間待たされた後にストアに足を踏み入れて お目当ての売り場に向かう時、 希望の商品を掴んだ瞬間のアドレナリン・ラッシュを楽しむ人々も多く、 特に手にした商品が最後の1つ、2つであった場合には、軽いナチュラル・ハイを味わうことも指摘されているのだった。
こうした人々にとってセールに出掛けるのはお金の節約を兼ねたある種のスポーツ感覚。 スポーツにオフェンスとディフェンスがあるように、オフェンスはストアでお目当てのディスカウント品をゲットすること、 ディフェンスはそれを無事に持ち帰ることで、銃やナイフを持参でブラック・フライデーのセールに出かける心理は そのコンペティティブで時に危険がはらむ状況に備えるディフェンス手段とも捉えられているのだった。




都市部の人々がブラック・フライデーにどんどんオンラインでバーゲン・ハンティングをするようになっているのは、 その方が簡単で行列や人混みと無関係でゆったりと買い物が出来ることもあるけれど、 そもそも日頃からオンライン・ショッピングばかりで、わざわざ店に足を運んでまでショッピングをしていないため。
また写真上はオレゴン州ポートランドのナイキのアウトレットのブラック・フライデー後のスナップであるけれど、 自分の買い物に夢中になっている人々は、トライしたシューズを箱に戻すようなマナーやモラルが欠落しているので、 セール品が傷んでいたり、付属品が欠落しているケースは珍しくないもの。 加えてその荷物を持って帰って来る手間や労力を考えると、どうしてブラック・フライデーに わざわざ大変な思いをして買い物に出かけるのかが不思議であるけれど、 アメリカ全体でも徐々にブラック・フライデーがオンライン・ショッピングにシフトしてきているのは事実。 特に高額品ほどオンラインで購入される傾向にあって、これは都市部の可処分所得が高い層がオンラインで ショッピングをしていることを思えば当然のこと。
逆にブラック・フライデーのために行列をしてまでショッピングをする人々というのは、 その場の雰囲気を楽しんでいる、毎年の行事だから続けている意識が強く、 この様子をかつての税金申告と比較する小売り専門家も居るほど。 アメリカの税金申告は今やオンラインがマジョリティで、申告書を郵送する人は激減したけれど、 そうなる前は確定申告の締め切り日である4月15日になると 何とかその日の消印で送付しようとする人々の大行列が 全米各地の郵便局の本局で 深夜零時まで続く光景が見られていたもの。 「そんな大変な思いをするのなら 延長を申請するか、前もって準備をするべき」と不思議がられていたけれど、 並んでいた人々はTVの取材がやってきたり、その場の宣伝効果を狙ったフードやドリンクのサービス、 大勢の人が集まるちょっとしたお祭り気分を楽しんでいるケースが非常に多かったのだった。
したがってブラック・フライデーもそれと一緒でアメリカ人の殆どがオンライン・ショッピングにシフトすれば、ストアでの行列や大騒ぎは どんどん下火になっていくと思われるけれど、これだけ物が溢れている時代のホリデイ商戦でさえ 武器による争いが起こることを思うと、この先もし食料危機が起こったとしたら アメリカは一体どうなるのか、考えただけでも恐ろしくなるのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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