Dec. 10 〜 Dec. 16 2018

”Uncertainty Just Ahead”
先が見えない時代を読むために人々がリサーチするのは?


今週のアメリカで最大の報道になっていたのは、トランプ大統領の元弁護士兼フィクサーのマイケル・コーヘンに対して、 選挙資金法違反、偽証罪、脱税の罪で3年の実刑判決が下ったニュース。 現在行われている大統領選挙の際のトランプ陣営とロシア政府の癒着疑惑の捜査に協力しているコーヘンは、 今週メディアのインタビューに応え、 トランプ氏が当時違法と知りながら不倫相手2人に口止め料の支払いを指示したと発言。 また今週には ロシアの女性スパイが、「NRA(ナショナル・ライフル・アソシエーション)を通じて共和党議員にアプローチし、 大統領選挙に影響を与えようとした」ことを認めたことから、これまで以上に トランプ氏の疑惑関与の信憑性が高まった印象を与えていたのだった。
来年になると下院で野党民主党が過半数を占めることから、これまで野放しになってきたトランプ氏の税金申告書の提出や、 ロシア疑惑等が厳しく追及されることが見込まれるとあって、なかなか決まらないのが年内で辞任するジョン・ケリー大統領補佐官の後任。 週末には行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー局長が一時的な代行を務めることが発表されたものの、 これからトランプ氏が迎える難しい局面で 大統領補佐官を務めるのはワシントンでは政治的自殺行為と言われるもの。 また同じく週末には複数の疑惑捜査の対象となっているライアン・ジンキ内務長官の年内辞任が伝えられたけれど、 これも来年から民主党による不正疑惑追及が厳しくなることを見込んだものと言われるのだった。




さて土曜日のパリでは今週で5週連続の ”イエロー・ヴェスト”による抗議活動が行われたけれど、 マクロン大統領が先週燃料費の増税を断念し、今週には賃金引き上げと税金での譲歩を公約したことから 規模的に徐々に小さく、そして穏やかになってきたと言われるのがこの活動。でもマクロン大統領を信用せず「彼が辞任するまで続ける」という活動家も多く、 フランスの商業&観光業に大きなダメージを与えているこの抗議活動に対する国民世論は賛成と反対がフィフティ・フィフティで 真二つに分かれていることが伝えられる状況。
またイギリスでは難航するブレグジットでメイ首相が政治的危機に瀕し、イタリアでは貧困層のためのユニバーサル・ベーシックインカムと減税を公約した ポピュリスト連立政権が誕生したことから、こちらもEUと対立姿勢。 ブラジルでは軍隊出身の極右派、ジャイル・ボルソナロが10月の大統領選挙で勝利したことから、 これを事実上の極右軍事政権誕生と見る声が多いのが実情。それ以外にもヴェネズエラ、フィリピン、シリア、ミャンマー等、 独裁政治や政情不安が世界中に広がる一方で、難民問題がどんどん深刻になってきているのは周知の事実。 ヨーロッパでもアメリカでもネオナチ・グループが勢力を増して、特にアメリカではトランプ大統領が就任して以来、 激増したのがユダヤ系に対するヘイト・クライム。 アメリカの人口の3%程度と言われるユダヤ教徒をターゲットにした犯罪がヘイトクライムの80%を占めており、 人種差別という点では黒人層に対する差別が1960年代のレベルにまで戻ったと指摘されるのが現在のアメリカ。 そんな世情を受けて、世界的に一般の人々の政治への関心が大きく高まっていると言われ、セレブリティまで政治活動家のような 言動や行動になっているのだった。
時代の先行きがこれまでに無く混沌としている 最大の要因と言われるのは他ならぬトランプ大統領。というのも、これまでであればアメリカが世界の大国として 民主主義、自由経済、人権擁護の姿勢を断固として打ち出し、それを世界のスタンダードとして その秩序を守るために良い意味でも悪い意味でも 国力を使って来たけれど、 トランプ氏が米国大統領に就任して以来、その価値感や意味合いが大きく崩れているためで、 政治も経済も 果たしてこれからどうなっていくか予測が極めて難しくなっているのだった。




トランプ氏の大統領就任を事前に予測していた人々を中心に、2016年の選挙戦の最中から徐々に盛り上がっていたのが トランプ政権下の社会を占うためのヒットラー再検証。 現在 トランプ大統領誕生を描いたドキュメンタリー「ファーレンハイト11・9」を製作中のマイケル・ムーア監督も、 その中でトランプ氏とヒットラーを比較検証していることが伝えられるけれど、トランプ氏がヒットラーをモデルにしていることは 大統領選挙の最中からメディアによって指摘されてきたこと。 トランプ氏の枕元にはヒットラー演説集が置いてあり、ヒットラーの著書で一時はヨーロッパを始め 世界各国で出版禁止になっていた「マインカンプ(我が闘争)」をトランプ氏が複数冊所有すること、そのうちの1冊は 当時選挙参謀であったスティーブ・バノンによって贈られたものであったのは今では有名な話。
そのためこれからの世の中を占う指針として 読む人が増えていると言われるのが「マインカンプ」で、11月にはコネチカット州のユダヤ人の少女が アマゾン・ドットコムで「マインカンプ」が販売されていることをCEOのジェフ・ベゾスに抗議したものの、アマゾン側から何の回答もないことが伝えられているのだった。 それと同時に増えているのがヒットラー、ホロコースト、ナチス・ドイツに関するドキュメンタリーを観る人々で、 これらがアメリカ成人の4人に3人と言われるアマゾン・プライムのメンバーであれば アマゾンで無料で視聴できるというのも観る人々を増やす 大きな要因になっているようなのだった。

かく言う私も11月に風邪で寝込んだ際にアマゾン・プライムでヒットラーのドキュメンタリーを無料で観た1人で、確かにトランプ氏の キャッチーなセリフと 短いセンテンスで 大衆受けを狙ったスピーチ、相手によって言い分をクルクル変えるところ、 暴力を煽るところ、フェイク・ニュースとプロパガンダを駆使し、移民を蔑む姿勢などはヒットラーに酷似しているのは事実。
でもヒットラーがもっとずっと恐ろいのはユダヤ人に対する民族浄化を行っていただけでなく、ドイツ人に優越人種の意識を植え付け”民族強化”をしていた点で、 第一次大戦敗北後にドイツ国民が味わった屈辱を巧みに利用したプロパガンダで、国民の健康、教育、社会(政府)への服従レベルを高めながら、 外観における美の追求がナチスの建物から、真っ赤なバナー、兵士のヘアカットやユニフォームにまで行き渡っていたのだった。 ふと考えると 映画でもTVでもナチス党員を演じる俳優には肥満体や ネオナチのようなスキンヘッドは居ない訳で、 DNAの存在が明らかになる前から、ブロンド&ブルー・アイを増やすことが当時のドイツ人ドクターの課題になっていたとのこと。 加えてより忠誠心の高い次世代の英才教育、女性が優秀で健康な子供を産むための生活指導も行われ、 単なる独裁政治だけではなく 長期展望に立った国家形成がなされていたのがナチス・ドイツ政権。
そのためヒットラーの民族浄化政策は ドイツ国内からスタートしていて、その政権下で奇形児が処分され、生まれつきの障害を持つ人間の 断種(精管や卵管の切除手術)が行われたのに加え、後にアウシュビッツに作られたのと同様のガス室がまずドイツ国内に設けられて、 そこで精神異常者や重病人を殺害しており、これは後に尊厳死という形で注射で行われるようになったとのこと。 「そうしたヒットラーのビジョンが 酷く読み難い文章で書かれている」と言われるのが「マインカンプ」で、これは英語に訳すと「My Struggle」。 したがって「我が闘争」より「我が葛藤」の方が意味的には正しいけれど、 その弱者切り捨て主義や特定の人種を病原菌のように扱う様子は トランプ氏が今後進めようとするメリットベースの移民政策、 すなわち財産と能力を基準にした移民の受け入れに現れているという指摘もあるのだった。




その一方で経済の今後を占うという点で 一部の人々が2015年を前後して注目し始めたのがシュミータ。 シュミータとはユダヤ教の安息年で、これを最初に現代に広めたのはユダヤ教ラビのジョナサン・カーン。 それまでは「その存在を知らなかったという」というラビも居て、ジョナサン・カーンという人物については ユダヤ教徒の間では いろいろな意味で賛否の意見が分かれる存在。
彼がその著書の中で記した内容によれば、 シュミータは3000年前から伝わる神秘の言い伝えで 7年ごとに訪れる安息年で、 種まきや収穫を含む経済活動をしてはならないと言われる年。 神の教えに従っている場合はこの年に祝福が与えられるものの、神に背いている場合は制裁が下されると言われ、 祝福でも制裁でも飽和化した経済が リセット、もしくはワイプアウト(消滅)するのがこの時。 したがってシュミータには負債が帳消しになる一方で、大きな組織や国家、都市や地域が消滅することもあると言われるのだった。
金融界のみならず、世界中の様々な分野の人々が ここへ来てシュミータを意識するようになったのは、宗教的にこれを信じるというよりも 人々が「神の裁き」と思い込むタイミングで 金融システムや政府機関が崩壊する、あるいは世界中の国々が抱える膨大な負債がリセットされる 何か大きな出来事が仕掛けられるのでは?と見ているため。 経済のコメンテーターの中には、シュミータの存在を知ってから聖書を読んで、 「これまでの世の中の流れを解くカギが数多く盛り込まれいた」として驚く人も居るけれど、実際に上の年表が示すような 経済危機だけでなく、イラク戦争(1980年)、9・11のテロ(2001年)、エボラ・ウィルスによる死者増加(2015年)など、世の中の大きな出来事が起こっているのもシュミータの年。 前回のシュミータである2015年の金融界には何も起こらなかったと思う人は少なくないけれど、 この年の8月にはダウが週末を挟んで4日連続で合計1800ポイント以上の下落を見せて、それが世界市場に波及するという出来事が起こっているのだった
次のシュミータは2022年の9月で、その規模が大きいために 前兆が顕著になり始めると言われるのが来年2019年。 既に多くの企業が2019年のレイオフを発表しているだけに、 そんな脅しを聞く以前に 来年がかなり大変な年になるであろうことは このホリデイ・シーズンに誰もが話題にしていること。
それにしてもそんな混沌とした時代を迎えるに当たって人々が ヒットラーとユダヤの教えをリサーチしているというのは、 何とも皮肉な組み合わせと言えるのだった。


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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