July 15 〜 July 21 2019

”Climate Change Ruins Our Summer”
猛暑だけじゃ済まない!気象変動がもたらす夏地獄


今週のアメリカはトランプ大統領による民主党女性マイノリティ議員に対する人種差別ツイートや、 先週のこのコーナーでお伝えした少女虐待ビリオネア、ジェフリー・エプスティーンとトランプ氏との関係などに 報道時間が割かれていたけれど、 週半ばから報道のフォーカスになっていたのがアメリカ国土の3分の2、1億5400万人を襲ったヒートウェーブ(熱波)のニュース。
金曜の段階で非常事態宣言が発令されていたニューヨークでは、 土曜日に予定されていた毎年恒例のトライアスロンが史上初めて中止になっただけでなく、セントラル・パークの屋外イベントも中止。 気温は35度を記録し、その体感温度は中西部の猛暑並みの40度。
ビル・デブラジオ市長は日中の外出を控えるように市民に呼びかけていたけれど、炎天下の屋外よりも暑いのが 地下鉄の駅。ニューヨークでは地下鉄車内には冷房は入っても、駅構内には冷房が無いので 地下鉄を待つ人々は息苦しいほどの熱風や暑さと戦うことになるのだった。 更にデブラジオ市長が呼びかけていたのが節電で、 先週土曜日にウエストサイドの一部だけとは言え、原因不明の停電に見舞われたニューヨークだけに、 電力会社、コンエディソンは停電回避のためにフル稼働状態。他の全米各地では約10万世帯以上が停電となり、 シカゴでは高温によるレールの曲がりを危惧して電車がノロノロ運転。 フィラデルフィアの高齢者施設では冷房が壊れたために入所者全員がクーリング・センターに移送されており、 各地で熱中症で病院に運び込まれる人々が激増していたのが今週末。
ちなみにニューヨークの史上最高気温は2011年にセントラル・パークで観測された摂氏40度。 とは言っても木々に囲まれたセントラル・パークの気温は街中のアスファルトの路上や地下鉄構内より 遥かに控えめな数値になっているのだった。




ここ数年は 日本の夏の暑さも尋常ではない様子が伝えられるけれど、 日本の20倍の国土を持つアメリカの3分の2という広範囲で これだけの猛暑となったのは極めて珍しいこと。
しかもこの夏はワシントンDCの気温がカリフォルニア州の砂漠地帯であるデスバレーと同じ、 アラスカのアンカレッジの気温がマイアミと同じになる一方で、地球上最北端の人類居住地区であるカナダの町で 21度の気温が記録されるというあり得ない異常気象ぶり。 21度というと普通の環境であれば過ごし易い気温であるものの、人類最北端の町においてはニューヨークが摂氏45度になるのと同等の暑さ。 実際に今年の北極の夏は11万5,000年ぶりの暖かさが記録されているのだった。

地球の温暖化がもたらす夏の危険は気温に止まらず、海水温度の上昇を招いているため アメリカではビーチの浅瀬に頻繁に出没するようになったのがサメ。2018年には夏の人気の観光地、マサチューセッツ州のケープ・コッドで1カ月間に 150匹のホオジロザメが記録され、年間では19人がサメに襲われて死亡。 今年も春先からそのケープコッドに加えてフロリダ、ノースキャロライナ、ハワイでサメが頻繁に出没。 死者に加えて、サメに片足や腕を食いちぎられる被害が何件も報告されているのだった。

加えて今年に入ってからビーチゴーワーを恐れさせているのが ”‘Flesh-eating’ bacteria / 人食いバクテリア”への感染。 このバクテリアはピラニアのように人肉を食べるというよりは、皮膚細胞や筋肉を殺してしまうもの。 フロリダ州の77歳の女性(写真右上段)はビーチを散歩中に転んで小さな傷が出来、その傷があっという間に悪化して2週間後に死亡。 6月上旬にフロリダを旅行したインディアナ州の12歳の少女(写真右下段)も、水質に危険があると警告されたビーチで 膝下まで海に入っただけで、その翌日には歩行不可能となり、感染部分の皮膚の除去と強力な抗生物質の投与で幸い命は取り留めているのだった。
人食いバクテリアは13度以上の水温で繁殖が認められ、これまではメキシコ湾岸沿いのビーチでごく稀に被害が報告されてきたもの。 しかし海水温度の上昇のせいで繁殖エリアが広がっており、ビーチゴーワーは「皮膚に傷がある場合は海水に触れないように、振れた場合は 必ず消毒するように」と警告されているのだった。 またシーフードを食べることも人食いバクテリアの感染源になり得るようで、 昨年には東海岸のデラウェア州で、7月に入ってからはカリフォルニア州で 共にビーチに出掛けていない人が シーフードからバクテリアに感染した可能性が指摘されているのだった。




当然のことながら気象変動によってオゾン層は益々破壊されているので、更に強まった紫外線が 日焼けによる肌のダメージを悪化させるのはもちろん、各地での水不足、ダニや蚊の増加が伝えられ、 湖や海岸では藻が大繁殖。 2018年にはフロリダ州のビーチ・リゾートで毒性が強い藻が大量発生して、 魚が大量に死亡。ビーチがクローズして観光収入が激減しただけでなく、 潮風で藻の成分が空気中に舞うため、ビーチの近くを歩いただけで幼い子供や老人、 敏感性の人々が目に刺激を受けたり、肌にアレルギー症状を訴えたことから ビーチだけでなく、その近隣への立ち入りが制限されたほど。
また高温と直射日光が鉄道線路の曲がりに加えて 道路の陥没や ひび割れを招いており、 交通機関の混乱も猛暑が招く問題の1つに数えられているのだった。

健康問題では熱中症まで行かなくてもヒート・ストレスや熱疲労、 大気のクォリティ悪化による呼吸器障害、 サマー・アレルギーも深刻な問題。 加えて忘れてはならないのは年々大型化し、各地に大被害をもたらす山火事、竜巻、ハリケーン。 今週半ばには 中西部と南部で大洪水の被害をもたらした トロピカル・ストーム ”ビリー” がニューヨークを襲ったけれど、 雹(ひょう)が降っているのかと思うほど 当たると痛い大粒の豪雨のせいで浸水被害が見られただけでなく、 何分も続いたのがワン・ワールド・トレードセンターの避雷針も直撃した雷。
さらにストームがもたらした猛烈な湿度は、汗をかいてそれを蒸発させるという 身体の体温調整機能を鈍くしてしまうことから、 熱波が襲う週末前の段階で 既に多くの人々が熱中症や熱疲労を訴えていたことが伝えられるのだった。




その一方で今週末はアポロ11号の月面着陸から50周年とあって、そのアニヴァーサリー報道が盛んに行われていたけれど、 それに合わせて自社の傘下の宇宙開発プロジェクト、ブルー・オリジンをアピールしていたのがアマゾンCEO、ジェフ・ベゾス。
ブルー・オリジンはNASAの開発パートナーでもあり、今週のインタビューでジェフ・ベゾスが語っていたのが、 気象変動によって「地球が死にかけている」こと、そして「宇宙の資源を使えば、地球を救うことが可能である」ということ。 ブルー・オリジンでは既に太陽系のあらゆる惑星にロボット探査機を送った結果、 人類の居住には地球が適していることを再確認確したとのことで、 その地球を守るために「何百年を掛けてでも製造業を中心とした高汚染産業を宇宙に移すべき」と提言していたのだった。
しかしながらソーシャル・メディア上で陰謀説として囁かれる”地球に見切りをつけたトップ1%の火星移住説”を肯定するかのように、 「地球外にも人間の居住に適した場所があれば、そこへの移住を選択する人々も居るだろう」とも発言。 ブルー・オリジンは現在、イーロン・マスクのスペースXや ヴァージン・ギャラクティックと共に スペース・トリップの商業化を進めている最中で、 そのスペース・トリップはトップ1%しか経験出来ない高額旅行。
ソーシャル・メディア上にはそのスペース・トリップについても陰謀説があり、 それは「スペース・トリップが出来る大富豪達の目的地が火星ではなく、 環境汚染や気象変動が起こる前の地球への 5次元空間を利用した”タイムトラベル”である」というもの。 このタイムトラベルのメソッドは、2014年に公開されたマシュー・マコナヘイ、ジェシカ・チヤステイン主演のSF映画 「インターステラー」に描かれていたけれど、 人間が感じられる4次元空間を超えた 5次元の世界では時間の軸が外れることから、歴史が時系列というルール無しに存在しており 「そこに入り込める生命体であれば タイムトラベルが可能になる」という 火星移住よりも更にハードルが高い話なのだった。

50年前の月面着陸については今もアメリカ人の6%がアメリカ政府とNASAによる偽装だと信じているアンケート結果が出ているけれど、 陰謀説を広めるインターネットが無かった1970年代にはアメリカ国民の30%が疑っていたと言われるもの。 でも年々気象変動を痛感させられる一般人の間では、その真偽論争以前に 「宇宙開発より地球の環境に取り組むべき」という声が多く、 そんな人々の間では 月面着陸から50周年の盛大な報道も「国民の血税を宇宙開発に回すためのプロパガンダにしか見えない」という指摘が 決して少なくないのだった。

コラム1週お休みのお知らせ
いつもご愛読ありがとうございます。来週のこのコーナーは都合でお休みさせて頂きます。8月1週目より再びアップいたします。よろしくお願いいたします。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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