Oct. 21 〜 Oct. 27 2019

”High-end Marriage or Dating Down”
キャリア・ウーマンに顕著なデートダウン
貧富の格差拡大で変わるデート市場



今週もトランプ大統領の弾劾をめぐる報道がトップニュースだったアメリカ。金曜にワシントンの連邦裁判所が野党民主党が進める弾劾を合法 という判断を下したことから、大統領をかばってロバート・ミュラー・レポートの非公開証拠の提出を拒んでいた司法省がその提出を余儀なくされたのは民主党側には大きな進展。 その一方で、司法省は大統領弾劾に協力する政権関係者にプレッシャーをかけるために独自に不正捜査を開始したことを発表しているものの、 何が捜査対象になっているかが不明瞭で、トランプ大統領の腹心、ウィリアム・バー長官率いる司法省が国の正義より大統領の立場を守る機関に成り下がったことを嘆く声が聞かれていたのが今週。
その一方で、金曜にはアマゾンのCEOで過去数年世界一の富豪であったジェフ・ベゾスが、数時間に渡ってその座を ビル・ゲイツに明け渡す事態が起こっていたけれど、金曜の夕方にはアマゾンの株価上昇を受けて、再び世界一の富豪の座に返り咲いたのがジェフ・ベゾス。 しかしながら同じ金曜にはアマゾンが落札すると見られていた国防省の100億ドルのコントラクトがマイクロソフト社によって落札されており、 それを巡って様々なロビー活動に大金を投じてきたアマゾンに打撃を与えていたのだった。




さて今週クレディ・スイスが発表したのが「グローバル・ウェルス・レポート」。それによれば世界中のミリオネア、日本で言う億万長者の数は約4,680万人に達したとのことで、 昨年度に新たにミリオネアの仲間入りをしたのは110万人。ミリオネアは現在最も増加が著しい所得層で、もはや夢のステータスではないことを改めて確認しているのだった。
ミリオネアの資産総額は158.3兆ドルで、最もミリオネアが多いのはやはりアメリカ。昨年度に67万5000人が新たに加わった結果、その総数は1,860万人。 次いでミリオネアが多いのは中国で、昨年度新たにミリオネアになった15万8,000人を加えた450万人。 でもアメリカで最も大きく報じられたのは、このレポートの中の世界のトップ10%の富裕層の数で、中国が史上初めてアメリカを上回っているのだった。
レポートによれば世界のトップ10%の富裕層は中国に1億人。これに対してアメリカには9,900万人。 でも中国の人口が13億ド4000万人、アメリカの人口が3億1110万人であることを考慮すれば、人口比率ではまだまだアメリカの方が富裕層が多い計算。 では幾らの資産で世界のトップ10%入りが可能になるかと言えば、意外にハードルが低くて総資産10万9,400ドル(約1,189万円)。 これはアメリカではミドルクラスと見なされる資産。 しかし中国において世界のトップ10%の富裕層が増えているのに対して、アメリカではミドルクラスがどんどん減って貧富の差が開いていることから この数字が伸び悩んでいることが伝えられるのだった。
クレディ・スイスが改めてレポートするまでもなく、世界のトップ1%の富裕層が世界の総資産の50%を所有するのは周知の事実。 その一方で世界人口のうちの所得が少ない50%の人々の資産合計は、世界総資産の1%にも満たないことが同レポートで確認されているのだった。

ここまで世の中の貧富の差が開くと何が起こるかと言えばソーシャル・モビリティの低下で、ソーシャル・モビリテが意味するのは貧困家庭に育った子供が マルチミリオネアやビリオネアになるなど、運や実力で自分が育ったクラスよりも上層に抜け出す可能性。 ソーシャル・モビリティが低下した社会で歴史的に起こりがちなのがお金とお金、もしくはお金とパワーの結婚。
先月、英国王室ハリー王子とメーガン・マークルのマッチメーカーを務めたと言われるソーシャライト・デザイナー、 ミーシャ・ノヌーとアメリカの大富豪ファミリーの一員、マイケル・ヘス(写真上左)の結婚式が行われた際にも、欧米のハイソサエティの関心が集まったのがそのゲストリスト。 ロイヤル・ファミリーと親しいミーシャ・ノヌーの両親は中東のオイル・マネーと英国の良家のカップリング。一方のマイケル・ヘスはアメリカの石油富豪の三代目で、 NFLニューヨーク・ジェッツのオーナーでもあるビリオネア・ファミリーの一員。
2人のウェディングのゲストリストには 英国王室ベアトリス王女とその婚約者でイタリア貴族の血を引く不動産デヴェロッパーのエドアルド・マペッリ・モッツィ(写真上中央)、 ギリシャの海運王ビリオネア、スタブロス・二アルコス三世と彼の婚約者で ビリオネアのローマン・アブラモヴィッチと離婚したアートコレクター兼マガジン・エディターのダーシャ・ズーコヴァ(写真上右)、 庶民的なところではシンガーのケイティ・ペリーと俳優のオーランド・ブルーム等、これからお金とお金、もしくはお金とパワーを結びつける結婚をするカップルが 姿を見せていたけれど、ハイソサエティにとって結婚は5〜6世紀前同様に資産とパワーを倍にするための手段。
50歳のマルチミリオネアの男性が資産価値ゼロの20代のモデルを妻にするような財産が半分になる結婚などは決してしないもの。 一緒にプライベートジェットで旅行が出来る同年代、同等にリッチ、同等にソーシャル・メディア・コネクションがあるカップリングがマストで、 ミーシャ・ノヌーのウェディングはそれを世の中に改めて示したイベントと見なされているのだった。




以前のこのコーナーで ビリオネアには達しなくても資産が5億ドル以上の富豪を”デミ・ビリオネア”と呼ぶようになったことをお伝えしたけれど、 ミリオネアがここまで増えてくるとメガリッチと言うレベルに達するには資産1億ドル(約108億円)が必要とのことで、世界の1%の資産を持つ証は 株式投資だけで最低30億円。 ミリオネアでも資産が少ないとシングル・ディジット・ミリオネア(一桁ミリオネア)と馬鹿にされるのが今のご時世。
そんな時代になるとデート・アプリにも変化が出てきて、資産内容を審査した上でメンバーの受け入れを行うエクスクルーシブな ”ビリオネア・アプリ”が登場。これはデートアプリで一世を風靡した"ティンダー"が、セレブ&モデルを対象にルックスのハードルを遥かに高くしたバージョンをクリエイトしたのと 同様のことを個人資産に置き換えたアプリ。 でもある程度資産がある人々を集めれば ルックスが選択基準になるのは当然のことで、ニューヨークで男性の美容整形が増えているのは 男性達が「資産があってもルックスが良くなければ女性がなびかない」ことを悟っての結果と言われるのだった。
とは言ってもニューヨーク、ロサンジェルスなどの都市部では、やはり男性にとっての買い手市場が続いていて、 女性がどんどん高学歴、高収入になればなるほど、女性達が自分の社会的ステータスに見合う男性を探し出すのは至難の業。 私がつい最近それを痛感したのは、アメリカ人の友達と話していた時にロシア人マッチメーカー、オルガ・バーキンが話題に上った時。 オルガ・バーキンは数年前に 私がブロンド美女の友人とバーニーズでショッピングをしていた時に、友人にアプローチしてきたマッチメーカー。 タイムワーナー・センター・ビル内のコンドミニアムに住むユダヤ人ヘッジファンダーのクライアントに私の友人を紹介しようと躍起になっていて、 ユダヤ教の彼女がヘブライ語がどの程度話せるかをチェックしてから その場でクライアントに電話を掛けて、 友人とへブライ語で会話をさせていた押しの強さをはっきり覚えているのだった。
そのオルガ・バーキンの現在のビジネスはサクセスフルな女性をクライアントにして、同じようにサクセスフルな男性とのマッチメーキングをするというもの。 すなわち僅か数年の間にクライアントの性別が入れ替わってしまった訳で、 オルガ・バーキンのフィーが幾らかは定かではないものの、今や高学歴、高収入の女性にとって自分のサクセスに見合う男性は お金を払ってまで出会う価値がある存在になっているようなのだった。

でも普通の女性達はマッチメーカーにお金を払うよりデートダウン、すなわち自分にはステータス的には相応しくないと内心思いながらも、 一緒に居て楽しい男性、自分に尽くす男性と交際するのが通常で、決して少なくないのが家族や友人には一切紹介せずにデートを重ねる例。 女性達が周囲に交際を明かさないのは、デートダウンの相手とは経済的な理由から結婚を考えていないのに加えて、 「周囲に相手とのステータスの違いについてとやかく言われたくない」、「周囲に交際相手が居ると思われると男性を紹介してもらえなくなる」という理由もあるとのこと。
セレブリティのデイト・ダウンの例としては、昨年婚約直後に破局を迎えたアリアナ・グランデとSNLのコメディアン、ピート・デヴィッドソン(写真上左)、 先週末に結婚した女優のジェニファー・ローレンスと アート・ギャラリーに務めるクック・マローニー(写真上右)、 スーパーモデルのジジ・ハディドと短い交際をしたリアリティTV「バチェラレット」のコンテスタント、タイラー・キャメロン等が挙げられるのだった。




ジェニファー・ローレンスの結婚相手、クック・マローニーのようにアート界の男性は社会的ステータスや資産がファジーな上に ヒップでクリエイティブなイメージが手伝って、女性セレブリティが一般人をデート相手に選ぶ業界のNo.1。 画家で映画監督も務めたジュリアン・シュナベルの息子で、ハイディ・クルム、アンバー・ハードらとの交際が伝えられる アート・ディーラー、ヴィトー・シュナベル(写真家一番右)、アシュレー・オルセンと交際中のアーティスト、ルイース・アイズナー、 シエナ・ミラーと交際中のルーカス・ズウィルナー等、例を挙げたらキリがないほど。
その一方でアジアやインドから欧米に出てくるビリオネアの子息達も野心的な女性達には格好のターゲットのようで、 今週話題になったのが 中国の家族からシノ・バイオファーマスーティカルの20%、39億ドル相当の株式を譲渡され、 一夜にして世界で550番目の富豪となったエリック・ツェ。 彼はアイヴィーリーグのウォルトンを卒業したばかりの24歳。 写真上左のようにベラ・ハディドやリリー・アルドリッジなどのモデル、カーラ・ブルーニ、ビル・ゲイツ等と 一緒に写真に納まるなど、リッチ・ピープルのサークルでは既に知られた存在。 彼のようなビリオネアの子息はインスタグラム上でインフルエンサーになっているケースが非常に多いのだった。
でもお金とお金、お金とパワーの結婚でやはり多いのは子供の頃からの家族ぐるみの付き合いというケース。 前述の英国王室ベアトリス王女とエドアルド・マペッリ・モッツィもそのケースで、 夏休みを一緒に南仏やハンプトンで過ごしたり、幼い頃から同じ学校に通っているというのは結婚に繋がり易いと言われる関係。 それもあって昨今の親達は幼い頃から子供達をエクスクルーシブ な学校に通わせようとする傾向が益々顕著で、 そんな学校では既に親同士が子供のための婚活を活発に行っているのだった。

つい最近、私の友達が悔しがっていたのが彼女の息子が4歳の時から同じプレスクールに通い、高校まで一緒だった 大富豪の令嬢が、ずっと息子のことがずっと好きだったにも関わらず 別の男性と結婚してしまったこと。 令嬢の実家は世界中に家を9軒所有し、高校卒業の際には80人以上娘のクラスメートが一流ホテルで パーティーが楽しめるように スウィートルームを14室借り切る大盤振る舞いをしたファミリー。 ウェディングも昼間にはシャンパン・ピクニックやクルーズ・ブランチ、前夜はリハーサル・ディナー、式の当日には複数の白馬の馬車が登場する週末3日掛かりの 壮大なイベントだったとのことで、私の友達は何とか息子をその令嬢と結婚させようと何年も努力してきただけに 「逃がした魚は大きい」と嘆いていたのだった。
ちなみに私の友人の息子は未だ22歳。大学を卒業して社会に出たばかりで、令嬢に結婚を迫られていたのは大学時代のこと。 要するに令嬢はクラスメートの誰よりも早くフェアリーテール(おとぎ話)・ウェディングをしたかったようで、 その令嬢はキャリア経験ゼロで 親が運営するチャリティのディレクターに収まり、世界各国への旅行費用をチャリティのエクスペンスで落としている生活。 エリック・ツェ同様に 世界各地のパーティーでセレブやイーロン・マスク等の著名ビジネスマンと一緒に撮影した写真がインスタグラムに何枚もポストされているのだった。

いずれにしても英語で「シルバー・スプーンをくわえて生まれてきた」と表現される富豪ファミリー出身でない限りは、 今の時代で”婚活” とは、英国王室に嫁ぐ前のメーガン・マークルのようにキャリアを高めて資産や社交ネットワークを出来るだけ拡大すること。 そのメーガンはイギリスのハイソサエティ・マガジンから近年最大のソーシャル・クライマー(社会のヒエラルキーの下層から上層に昇り詰めた人物)に選ばれているのだった。
前述のミーシャ・ノヌーの結婚式にはトランプ大統領の娘婿の弟、ジョシュア・クシュナーと 妻でスーパーモデルのカーリー・クロスが出席していたけれど、カーリーのマルチミリオネア&スーパーモデルのステータスでもクシュナー家からは「嫁として役不足」として 何年も結婚を認めてもらえなかったのは有名なエピソード。 要するにちょっとやそっとの美貌や運では玉の輿的なシンデレラ・ストーリーはあり得ないということなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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