Mar. 9 〜 Mar. 15 2020

”Feeling Empty, Nothing to Dot”
残された唯一のゲームはサバイバル・ゲーム!?


「コロナウィルス・カンファレンスでさえコロナウィルスが原因でキャンセルされた」という冗談のような報道で幕を開けた今週は、 NBA、MLB、MLS、NHLといったプロスポーツ・リーグ、マーチ・マッドネスことNCAA大学バスケットボール選手権、ボストン・マラソンを含む ありとあらゆるスポーツ・イベントやコンサート、パレードがキャンセル、延期、停止になったのは世界中で報じられた通り。 TVのトークショーやバラエティ・ショーも軒並み観客無しの収録となったけれど、 水曜の東部時間午後9時にトランプ大統領が緊急のTV演説を行い、 ヨーロッパからの旅行者に対する一カ月の入国拒否を打ち出してからというもの、 アメリカ全土で混乱と危機感が高まっているのだった。
ニューヨークでもスーパーのレジに大行列が出来て、市民が食糧の備蓄に本腰を入れていたけれど、 ニューヨーカーはレジの行列中に「SF映画の世界で生きているみたい」と見ず知らずの来店客同志がボヤき合う程度にユーモアのセンスが残っている状況。 マスクをしている人も未だ少なく、私が出かけたスーパーではマスクをしている買い物客が逆に周囲からジロジロ見られていたのだった。 でもこれがカリフォルニアになると、コストコを含むスーパーでの商品の奪い合いや、行列の割り込みをめぐる喧嘩や口論が絶えないようで、 地元警察が 「スーパーの行列の割り込みで911(日本の110番)に通報しないように」と警告したことが伝えられるのだった。




NYでは週明けにデブラジオ市長が「地下鉄に乗らないように」と呼び掛けたのを受けて、今週は乗客数が100万人減少。 乗客より目立っていたのが駅や車両の清掃をするスタッフの姿で「ニューヨークの地下鉄がついに清潔になった」という皮肉の報道が見られていたのが今週。 代わりに自転車シェアリングのシティバイクを利用する人々が急増しているのだった。
スーパーに人々が行列する様子と反比例して、当然の事ながら客足が激減しているのがレストラン。 今週は過去にオンライン予約をした ありとあらゆるレストランから Eメールで送られてきたのが 各店のCOVID-19対策についての説明。 その内容は 体調が悪いスタッフが出勤しないようにと徹底していることに加えて、殺菌消毒を含む衛生面の強化など 万全のウィルス対策をアピールするもの。入店する前に来店客の体温をチェックする店も登場する一方で、 Uber EatsやGrubhub等の モービル・アプリを通じたデリバリー・サービスを行っているレストランはその利用を奨励していたのだった。

目下ビジネス・ダメージが大きいのはパーティーやイベントを行うレストランで、中には予約キャンセルだけで数千万円のダメージを受けた店もあるほど。 また企業が会議、カンファレンスを中止する一方で、TVや映画のプロダクションが停止になったことを受けてケータリング・ニーズも激減。 客足が少ないことから一時休業を発表するレストランも多く、 チャイナタウンで50年の歴史を誇る大型飲茶パーラー、Jing Fong / ジン・フォン(写真上右)は今週いち早く休業を宣言。 ブルックリンでも飲茶レストランの大手がクローズしているけれど、 チャイニーズ・レストランは中国でコロナウィルス感染が広がった段階から客足が大きく減っていたので、かなり苦戦を強いられているカテゴリー。
他にもミッドタウンのシーフード・レストラン Oseana / オシアーナが、ブロードウェイ・シアターやラジオ・シティ・ミュージックホールの閉鎖を受けて 収入源であるプレシアター・ディナー客を失うことを理由に4月1日まで休業。 さらにミシュラン3星レストラン ル・ベルナダンも現時点で向こう2週間の休業を発表。
スターバックスも中国でコロナウィルス感染が広がった時と同様に 一部の店舗の休業し、 暫しの間アプリを通じたピックアップとテイクアウトのみのビジネスにすることを3月15日 日曜夜に発表。 また幾つものレストランがこれから先客足が減ることを受けて、サーバーなどの時給で働くスタッフのレイオフを始めていたのが今週なのだった。




レストラン業界で今週最大のサプライズになっていたのは、ニューヨークに20店舗を擁する ユニオンスクエア・ホスピタリティ・グループが金曜にその全店舗の休業を発表したこと。
ユニオンスクエア・ホスピタリティ・グループは、先週末にニューヨークの交通機関を掌るポートオーソリティのディレクター、リック・コットンが コロナウィルスに感染したことが伝えられ、その直前に傘下のレストラン、ザ・モダン(写真上左)でディナーをしていたことが メディアで報じられたのを受けて 店を休業し、専門業者を雇って消毒殺菌を行ったばかり。 また同じく傘下のユニオン・スクエア・カフェ(写真上右)でも 今週キッチンスタッフが体調不良を訴え、コロナウィルス感染が認められたことから、 店を2日間クローズ。250件前後の予約をキャンセルしてやはり専門業者による消毒・殺菌を行ったばかり。 にも関わらず傘下の全レストランの休業に踏み切ったのは、木曜にデブラジオ市長が NY市の緊急事態発令と共に 打ち出した500人以上のイベント開催禁止、500人以下が集まるイベント、クラス、ストア、レストランは、 法律で許される半分のキャパシティに抑えるという規制を受けてのもの。 これは人と人の間に空間を設けて感染を防ぐことが目的ではあるものの、レストランにとっては 「50%しかテーブルが埋まらない状況でビジネスを続けろ」と言われているようなもので、採算が合わない経営になるのは必至。 3月15日 日曜にはフレンチのミシュランスター・レストラン、ジャンジョルジュやABCキッチンを含むジャンジョルジュ・レストランツも 傘下10店舗の休業声明を発信しているのだった。
レストランに限らずジムやヨガクラス、スピニング・クラスも同様に採算が合わない経営を強いられることになるけれど、既にこれらは 人々が感染を恐れて寄り付かなくなり始めた場所。ナイキでさえアメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド、西ヨーロッパの直営店を3月27日まで閉店することを発表。 そうかと思えば お隣のニュージャージー州では ナイトクラブで入場者数制限が行われるだけでなく、夜10時には閉店という厳しいルールでの経営を強いられる状況。 オハイオ、イリノイでは全てのバーとレストランが、カリフォルニアではバーとワイナリーがそれぞれ閉鎖の措置となっているのだった。 (アップデート:ニューヨーク、ニュージャージー州では3月16日月曜午後8時から全てのバー、ジム、映画館、カジノ、がクローズ、レストランはテイクアウトとデリバリーのみの営業になり、 50人以上の集会が禁止。午後8時から午前5時までの外出自粛が求められています。)




レストランについて言えば、ニューヨークはただでさえレントが高いことから、2〜3年ほど前から客足が多いレストランでさえ閉店を余儀なくされていた状況。 2020年に入ってからも コロナウィルス感染が広まる前にクローズしたレストランは 比較的知られているところだけでも、15年間ビジネスを続けた日本食のテーマ・レストラン ”ニンジャ”、 アッパー・イーストサイドで6年間 経営を続けたロティサリー・ジョルジェット、NY土産のチョコレートを買う日本人が多かったガブリエル・クルーサーのショコラティエ&カフェ、 ミートパッキングで過去15年店舗を構えた鉄人シェフのレストラン ”モリモト”、ミッドタウンに2年前にオープンした北京ダックのアップスケール・レストラン ”ダ・ドン” ケロッグのシリアル・レストランのユニオン・スクエア店、フラットアイアン地区のミシュラン・スター・レストラン ”’アルデア”、フード・クリティックには高い評価を得ていた中東レストランの”キシュ・カシュ” 、 世界のベストバーに選ばれたファイナンシャル・ディストリクトの”デッド・ラヴィット”の姉妹店で6年前にオープンした”ブラック・テール”といったラインナップ。 それ以外にもネイバーフッド・レストランの老舗どころがどんどんクローズしており、 コロナウィルス感染前も、貧富の差が開いていただけで決して好景気とは言えなかった様子を窺わせているのだった。
実際のところアメリカの好景気は株価のバブルと過去50年来最低と言われた失業率で演出されたイルージョン。 ニューヨークでは一部の高額所得者を除いてはサバイバルを強いられる状況がずっと続いてきた訳で、 そうでなかったら2019年に7万6000人ものニューヨーカーが物価とレントが安い州外に移り住むようなことは無かったはずのこと。 ちなみに2019年のニューヨーク州の人口減少は全米50州で最多の数字。
2019年には大手企業のストアだけで全米で9,300店舗が閉店しているけれど、マンハッタンの街中にはそんな経済データには含まれない 小規模店舗の撤退後のテナントが埋まらない状況がコロナウィルス前から あちらこちらに見られているのだった。 そうして迎えたのが ドミノ倒しのような勢いで広がったコロナウィルス・クライシス。 政府の助成金法案が可決され、連銀が1.5兆ドルの資金投入を打ち出したところで、その恩恵を受けるのは航空会社やクルーズ船企業、金融大手であることが これまでの経験から分かっているだけに、中小企業にとってコロナウィルスはビジネスの存亡をかけたサバイバル・ゲーム。 しかもそれを 殆どのレジャー、スポーツ、エンターテイメント、社交イベントが行えない状況で乗り越えるのは至難の業。
その一方でアメリカの病院のベッド数は先進国の中では極めて少ない人口1000人に対して僅か2.8床。 同じ数字は中国が4.2床、フランスが6.5床、ドイツが8.3床、ロシアが8.2床、日本は13.4床、 現在パンデミックで閉鎖中のイタリアでさえ3.4床。それを考えると、ビジネス以前にまずはコロナウィルス感染を防ぐことが一番のサバイバル・ストラテジー。 医師や医療機器も病院ベッド数に応じた数しか存在しないことを思うと、 今まで以上に「健康が最優先」であること痛感するのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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