May 18 〜 May 24 2020

”My NYC Lockdown Life 9 & Ready or Not"
NYCロックダウン・ライフ 9 & Ready or Not


例によって今週木曜にもアメリカで 新たに240万人が失業保険申請を行ったことが発表され、過去9週間の申請者総数は3880万人。
アメリカでは今週までに全50州が 少なくとも州の一部でロックダウン、シャットダウンの段階的解除に踏み切っており、 レストランや小売店のスタッフ等、休業に伴う一時的な措置として解雇されていた人々は仕事に戻り始めている状況。 とは言っても今週にはJ.C.ペニーやレンタカーのハーツが会社更生法を申請し、J.C.ペニーは242店舗の閉店、ハーツは1万人の従業員解雇を発表。 IT関連ではヒューレット・パッカード、IBMが業績不振によるレイオフを今週発表したばかり。したがってシャットダウンが解除されることで 必ずしも失業者が減る訳ではない様子を垣間見せているのだった。
コロナウィルス感染者は土曜日の段階でアメリカ全体で160万人を超え、死者数は約9万6000人。来週中には10万人を突破する見込み。 ニューヨーク州は今週末になって3月以来、初めて死者数が1日100人を下回り、感染者数も確実に減っている状況。 現在コロナウィルスのホットスポットになりつつあるのはロサンジェルス、シカゴ、ワシントンDC。
そのためニューヨークでは金曜の段階で10人までの合法的な集まりがようやく許可されたけれど、 クォモ州知事が今週末のメモリアル・デイ連休前に これに踏み切らざるを得なかったのはニューヨーク市民自由連合が彼を相手取って訴訟を起こしたため。
コロナウィルス感染拡大直後に支持率を大きく伸ばしたクォモ知事であるものの、 今では理不尽かつ不透明な措置で評判と支持率を落としており、その知事に対してニューヨーク市民自由連合が起こしたのは 経済復興目的ではなく、 「デモや集会を禁じることによる言論の自由の束縛」に対する訴訟。 それまでは「ここで解除を急ぐと感染が逆戻りして、経済復興が遅れる」と主張し、感染問題に支えられた独裁パワーを振りかざしていたクォモ知事であるけれど、 この訴訟によってアメリカの政治家として痛いところを突かれた形になっていたのだった。




一方、マンハッタンを始めとするニューヨーク市は ロックダウン解除の条件を満たすまでにあと2週間前後を要すると見られているけれど、 市民は既に先週末の段階で我慢の限界状態。私が住むアッパー・イーストサイドではアルコール・ドリンクをテイクアウト販売する 複数のレストランの前に人だかりが出来て、ソーシャル・ディスタンシングを無視してドリンクを楽しむ様子が見られていたのだった。(写真上)
同様の光景はダウンタウンでも見られており、私自身は アウトゴーイングなニューヨーカーが過去9週間にも渡って州政府、市政府に言われるままに 大人しく我慢していた様子を逆に不思議に思っていたので、この状況の方が普通のリアクションに思えるのが正直なところ。 ニューヨーカーが大人しかった理由の1つはロックダウンが始まって以降 ずっと寒い日が続いたためで、冷え性でもない私が 5月初旬にフリースのフーディーでランニングをしていたほどの低気温なのだった。 でも気候が温かくなってくれば人々が外に出たがるのは当然のこと。

先週あたりからは これまで「デリバリーとテイクアウトでは採算が取れない」と休業していたレストランが、コロナウィルス後のニューノーマルに対応するために 続々とデリバリーとテイクアウトを開始。 ステーキハウスのピーター・ルーガー(写真下左)は創業133年目にして初のデリバリー・ビジネスに参入。 現在のニューヨークではアプリを通じてフードをオーダーすると 届くまでに約1時間を要するので、果たしてどんなコンディションで同店のステーキやハンバーガーが届くかは 定かではないけれど、同様にMePa (ミートパッキング・ディストリクト)の人気レストラン、パスティス(写真下中央)、 ミシュランスター・シェフ、ジャンジョルジュ・ヴォングリヒテン(写真下右)傘下のレストランも 今週から新しいメニューでテイクアウトとデリバリーを開始。 これはロックダウン解除後に備えたキッチンのウォームアップを兼ねた措置とも見られているのだった。






ニューヨーク市のロックダウン解除は現時点で6月初旬から中旬と見込まれるけれど、レストラン以外のビジネスも再開に向けて大きく動き出しているのが現在。 街中では車の量と、人通りがどんどん増えて、週半ばからはマスクをせずに歩く人々の姿もちらほら見られ始めた状況。地下鉄の乗客数も増えているという。 なのでコロナウィルスの入院患者に例えれば、ようやく呼吸器が取り除かれて 快方に向かい始めたような段階。 ニューヨークの街に徐々にパワーが戻り始めているのは私だけでなく、友人やビルの隣人達も感じていることなのだった。
そんな中でメディアを賑わせ始めたのが様々な飲食店のコロナウィルス対策。 砂糖より甘いカップケーキで知られるマグノリア・ベーカリー(写真上左)では、実際に目の前でデザートを眺めながら注文を楽しまなければ 同店の魅力が半減するとして、店の入り口で遠赤外線を来店客に20秒当てることによりウィルスを殺傷するためのライトを導入中とのこと。 また数日前のCUBE New Yorkのフェイスブック・ポストで既にお知らせした通り、ブルックリン・ダンプリング・ショップが7月に イースト・ヴィレッジにオープンする新店舗では、テイクアウトやデリバリーをロッカーを通じて行い、店の入り口で入店者の体温チェックをする以外は、 ヒューマン・コンタクト・ゼロというスタイルを打ち出しているのだった。

しかしながらユニオン・スクエア・カフェ、グラマシー・タヴァーン、ザ・モダンといったレストランを傘下に収めるユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループのダニー・メイヤーは、 レストラン業界でいち早く 2000人の従業員の80%を解雇したとあって「ワクチンが開発されるまで、傘下店舗のリオープンは考えられない」と年内のビジネス再開が無い様子を示唆。
ミシュラン3つ星レストラン、イレブン・マディソン・パーク(EMP)のシェフ、ダニエル・ハム(写真上右) も同様の意見であるけれど、彼の場合 「EMPがファンシーなボックスに入れたデリバリー・フードを届けるのは意にそぐわない」として、 チャリティ団体とのタイアップで医療最前線のスタッフや失業者、低所得者のために1週間に9000食をサプライする コミッサリー・キッチンを5月1週目からスタート。 今ではその料理を「生涯食べた中で一番おいしい」と言ってくれる人々の笑顔が 彼のドライヴィング・フォースになっている様子を語っているのだった。




CDC(疾病予防センター)は、ここへ来てコロナウィルス感染リスクが ウィルスが付着した物の表面から起こることは無いとして、 買ってきた食材の消毒や、届いた荷物の拭き取り等の必要がないことを改めて呼びかけると同時に、食べ物に関しても 胃液でコロナウィルスが死滅するとしてデリバリーフード等の安全性を主張。 感染の殆どがフェイス・トゥ・フェイスのコミュニケーションによるものであるとして、引き続きソーシャル・ディスタンシングを守る必要性を呼び掛けているのだった。
そのソーシャル・ディスタンシングはレストラン業界のビジネス再開の大きな課題で、 トライベッカのブルックリン・チョップ・ハウスでは 写真上左のように各テーブルをプレキシガラスで仕切って隔離。隔離エリアではマスクを外してOKというルールを設けているけれど、 市政府はウィルス感染が屋外の方が遥かに起こり難いこと、 レストランがテーブルの距離を開けるにはスペースが必要であることを考慮して、 サイドウォーク・カフェの増加や、ストリートを閉鎖したアルフレスコ(アウトドア)・ダイニングのプランを検討している真っ最中。 写真上右は、スタッテン・アイランドのクリントン・ホールで、ほのぼのしたレトロ・ムードで夏のアルフレスコ・ダイニングが楽しめるモデルとして このところ頻繁に取り上げられるスポットになっているのだった。
さらに多くのレストランがメニューやナイフ&フォークの使い捨て、ナプキンやプレートを予めテーブルに置かずに着席後に配る、 テーブルが1回転するごとに消毒殺菌作業を行うといったプロトコールを打ち出し、感染防止強化対策に取り組んでいるのが現在。

とは言っても一緒にレストランに出掛けた友人がウィルスに感染していた場合にはやはり防ぐのが難しいのが感染。 通常の免疫力の人がウィルスに感染するのは約1000のウィルス細胞が体内に入った場合であるけれど、 1回のクシャミや咳で飛び散るウィルスの量は約2000万といわれ、そのスピードは時速80キロ。 目に見えないのはもちろん、ウィルスが降り掛かるのを感じることもなく、特に換気が悪い室内で感染者と至近距離で過ごす時間が長ければ長いほど 感染確率が高まるのは当然のシナリオ。
その対策としてイスラエルのメーカーが発売するのが写真上中央のつけたまま食事が出来るマスク。 リモート・コントロールで口の部分が開くだけでなく、フォークやスプーンが近づくとセンサーで口が開く仕組みであるけれど、 これをつけて食事をしたいと思う人がどれだけ居るかは微妙なところ。

ニューヨークだけでなく、世界の都市の経済復興のカギを握ると言われるのがコロナウィルスのアンチボディ(抗体)であるけれど、 あえてロックダウンをせずにナチュラルに感染を広めて市民のアンチボディを高めようとしたスウェーデンでは抗体を持つ国民は僅か7%。 これに対してニューヨークは感染者が極めて多かったとあって、2週間前の時点で5人に1人の割合で確認されたのがアンチボディ。 事前に見込まれた以上に感染が広がっていたとして驚かれていたのだった。
そのアンチボディ・テストは未だ結果の誤りが多いと言われる段階。でも抗体が一定期間でもウィルスを中和して再感染を防止するのであれば、 ニューヨークはやがてコロナウィルス感染において世界で最もリスクの低い街になり得るのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。


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