June 1 〜 June 7 2020

”Zoom Debate about BLM"
BLM抗議活動とアメリカの人種差別、私の友人達の意見


今週のアメリカの報道は全米各地で起こっていた 黒人層に対する警察の過剰暴力に抗議するブラック・ライブス・マター(以下BLM) のデモ、 及びそれに関連した様々なニュース一色で、すっかり人々の関心が遠のいたのがコロナウィルスの問題。
NYのクォモ州知事は「未だパンデミックは去っていない」と強調して、コロナウィルス問題を掲げて抗議デモの鎮静化を図ろうとしていたけれど、 毎日のように拡大していったのがデモの規模。そのNYでは今週末でデモがスタートしてから12日目を迎えるけれど、 現時点でコロナウィルスの新しい患者の増加が伝えられるのはもっぱら南部と中西部。それも 政府が定めたガイドラインを満たさずにシャットダウン解除に踏み切った州で、NYでは少なくとも週末の時点では コロナウィルス感染者数は引き続き減少傾向。
デモに参加する人々の言い分は「コロナウィルスの感染リスクがあるのは承知しているけれど、抗議デモは今どうしても続けなければならない」 というもので、日を追うごとにデモ参加者の間で薄れて行っているのがウィルス感染を恐れる空気。 6月8日からロックダウン解除の第一フェイズを迎えるニューヨークであるけれど、もしこのまま抗議デモが続いても感染者が増えなかった場合には、 レストランや小売店のビジネス再開には大きな弾みになるとさえ思われるのだった。




私はジョージ・フロイドの事件が起こって以来、先週と今週にアメリカ人の友人達とZOOMのグループチャットを 2回行っているけれど、 どちらでも話題の中心になっていたのがBLMの抗議デモとアメリカにおける人種差別問題。 抗議デモがスタートした直後の先週に話した友人が「抗議活動は理解できるけれど、バンダリズム(器物損壊)やルーティング(略奪)は立派な犯罪」と 言っていたのに対して、今週話した友人は全員がニューヨーカーだったこともあり 「平和的なデモ参加者は、深夜にストアを襲うルーター(略奪者)やヴァイオレンスを煽る政治活動者達とは全く別物」という認識。 NYPD(ニューヨーク市警察)の暴力的な取り締まりや、マンハッタンに向かって行進していたブルックリンの抗議活動参加者を 違反行為をしていないにも関わらず、警官隊がマンハッタン・ブリッジの入口と出口でブロックし、橋の上で2時間近く足止めにした事などを批判していたのだった。

最初の週のZOOMチャットのメンバー中には、時折 民選弁護士(弁護士が雇えない貧困層に政府が無料であてがう弁護士)を務める友人が含まれていたけれど、 彼女によれば 過去に弁護を担当した半数以上が ジョージ・フロイドの死因になった 膝で首を抑える行為を含むチョーク・ホールド(首に圧力を掛けて抑えつける行為)を 逮捕時に経験しているとのことで、NYPDを含む全米の警察で教え込まれているのがこの逮捕テクニック。 でもそれを行う警官が認識してないのが手錠を掛けられて うつ伏せになった容疑者の背中に乗ったり、首に圧力を掛ける行為をすれば3〜4分で呼吸困難に陥るという事実。
どちらのグループチャットの参加者も、ジョージ・フロイドの首を膝で押さえつけていた警官、デレク・ショーヴィンが その様子をスマートフォンで撮影されているのを知りながら、 不敵なカメラ目線で 白人警官に与えられた権限を誇示するかのように8分46秒に渡ってその行為を続けた姿にショックを受け、激怒していたけれど、 全員が同意見だったのが「もしジョージ・フロイドが命を取り留めたら、ここまで抗議活動が大きくなることは無かっただろう」ということ。 抗議活動が これまでに無い規模にまで急ピッチで発展したことに驚く声もあったけれど、 メディアとソーシャル・メディアを通じてヴァイオレンスの画像が洪水のように流れ込んでくる状況に疲れていたのは皆同じ。 それだけに 警官と抗議活動者が歩み寄る映像や写真を見て「ホッとした」、「涙が出た」という声が多く、それは私も全く同感なのだった。




今週のZOOMチャットで最大の話題になっていたのは、トランプ大統領が月曜夕方にホワイトハウスのローズ・ガーデンで武力による抗議活動取り締まり強化を呼び掛けた後、 ホワイトハウス周囲で平和的なデモを行っていた人々を催涙弾やゴム弾を打ち込んで追い出し、 そこを政権関係者を引き連れたトランプ氏が歩いてセント・ジョンズ教会に向かい、祈りを捧げることも無く、聖書を片手に記念撮影だけを行ったこと。
この行為は教会関係者から「宗教と聖書を政治に利用している」と批判されていたけれど、「警備隊に感謝を示すための訪問」と説明されて 一行に加わったアメリカ統合参謀本部長のマーク・ミリーやマーク・エスパー国防長官も「教会での写真撮影については何も知らされていなかった」と反発。 後に抗議活動者を武力で散らしたのはウィリアム・バー司法長官に指示された連邦軍であったこと、 その連邦軍に対してバッジを隠して所属が分からないようにする指示が出ていたこと、バー長官が「催涙ガスは使っていない」として抗議活動者を「嘘つき」呼ばわりした後で 引っ込みがつかなくなり催涙弾 の使用を認めたことなどが次々と明らかになったのが今週。

友達が観たメディア報道によれば、トランプ氏が武力による抑圧を呼び掛けるスピーチや、「抗議活動者を逮捕して10年間留置所にぶち込め、そうすれば問題は片付く」といった過激なツイート、 及び聖書を手に持った写真撮影を行った理由は、先週末に ホワイトハウスが抗議活動者で包囲された際、 メラニア夫人、息子のバロンと共にホワイトハウスのバンカーに逃げ込んだことがメディアで報じられたことに大統領が激怒し、その弱いリーダーのイメージを払拭するためだったとのこと。 その理由や目的が何であれ、チャット参加者全員が主張していたのは 「アメリカ市民を守ると宣誓して職に就き、税金で給与や恩給が賄われている軍隊や警察が、 合衆国憲法第一条で保証された言論と集会の自由を平和的に行使しているアメリカ市民に対して 武力と暴力による弾圧をするべきでない」ということ。
幸い軍関係者にもその意見は多く、ジェームス・マティス元国防長官を含む軍関係者が今週 次々と繰り広げたのがトランプ批判。 チャットでは「11月にトランプが選挙に負けたら”この写真撮影が命取りになった” と報道されるだろう」という予測も聞かれていたのだった。




その大統領選挙については、今週行われた予備選挙でジョー・バイデン元副大統領が民主党選出候補にあと一歩と迫っているけれど、 物忘れと失言が多いのがバイデン氏。でもチャット参加者はリベラル派が多いとあって「Anybody But Trump」という意見。 「ジョー・バイデンが痴呆でも、どんな失言をしても支持する」とまで宣言する友達がいたような状況。
「ジョージ・フロイドの事件で人種差別が改善されるか?」についても「まずはホワイトハウスからアメリカ最悪の人種差別主義者を追い出さない限り 決して変化や改革は訪れない」という意見で一致していたのだった。
加えて「もうこの段階まで来たら、トランプ支持を打ち出して ”自分は人種差別主義者じゃない”という言い訳は通用しない」というのが全員の主張だったけれど、 チャットのメンバーだけでなく、以前話したアメリカ人の友達も語っていたのが「自分の親がトランプ支持の人種差別主義者で、銃規制から同性婚、環境問題まで 自分が正しいと思うことに全て反対する」ということ。中には「親を嫌いにならないならいために、これらの話題を避ける」という友人も居て、 聞けばその親達はウェスト・ヴァージニアやサウス・キャロライナ等の共和党が圧倒的に強い州に住む 典型的な右寄り保守派。
私が個人的にブラック・ライブス・マターがこれだけの抗議活動に発展しても、直ぐに望めるのは表面的な変化だけだと思っているのは そうした右寄り保守派の考えが 何が起ころうと決して変わらないことを熟知しているため。 またこれまで黒人層の命が警察の過剰暴力で失われる度に 「人種の比率に対して黒人警官が少な過ぎる」など警察の在り方だけにフォーカスする風潮が続いてきたけれど、 実際には問題の根底にあるのは アメリカ社会に根差したシステマティックな人種差別の構図。 個人や企業に対する銀行融資、雇用、教育の機会などが圧倒的に白人有利の社会であったからこそ 人種間にこれだけの経済格差が生まれてきたことは各界の有識者が人種を問わずこぞって指摘する事実なのだった。

もしアメリカ社会が変われるとすれば、そんなシステマティックな人種差別を黙認し、恩恵を受けてきたベビーブーマー世代、ジェネレーションXが退いて、 社会正義の意識が最も強い ミレニアル世代後半とその後に続くジェネレーションZが世の中の主導権を握る時 というのが私の考え。 アメリカでも日本でも私は常に若い世代をサポートする立場を貫いているけれど、それは世の中に変わって欲しいという気持ちからのことなのだった。
悲しいことに人間は年齢を重ねれば重ねるほど 事なかれ主義、現状維持の立場を取って、 時に善悪を度外視して その安泰を揺るがす存在や、変化をもたらす思想を否定するようになる生き物。 なので本当の改革は ある程度若い世代からでないと生まれないというのが私の偽らざる意見。
その意味では今年11月に77歳を迎えるジョー・バイデンではなく、もっと若い世代から新しいリーダーが登場することを望んで止まないけれど、 もしこの抗議活動から指導者的なキャラクターが現れることがあれば、 その人物が変革まではもたらさなくても アメリカ社会に希望を与えることは出来ると思うのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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