June 16 〜 June 22 2020

”My Own Encounter with NYPD"
NYPD 私の2度のエンカウンター


今週もアメリカで150万人が新たに失業保険を申請し、これで過去13週間連続で失業者数が150万人を上回ったことになるけれど、 それよりもアメリカで危惧されているのが、コロナウィルス感染が再び拡大している状況。 ニューヨークでは感染者数が日に日に激減しているので、あまり実感が沸かないけれどテキサス、アラバマ、フロリダ等、 全米の半分近くの州で過去1週間で感染者の急増が伝えられ、アップルは既にオープンしている店舗の再度休業を発表。 MLBのフィラデルフィア・フィリーズは選手を含むチーム関係者から感染者が5人出たことから、チームのトレーニング施設を閉鎖。 マイアミを含む複数の都市がロックダウン段階的解除の延期を発表しているのだった。
一方のニューヨーク市は6月22日月曜からオフィス業務、レストランのアウトドア・ダイニングが解禁、 これまでのピックアップ・オンリーからストア内でのショッピングが出来るようになり、ヘアサロンもオープンすることに なっているけれど、自宅勤務を継続する企業は多く、ビジネスの中にも自主的な休業を続けるところは少なくないのだった。




BLMの抗議デモは引き続き連日行われているけれど、そのトリガーになったジョージ・フロイドに次いで メディア、及び抗議活動者のチャンティングで名前が出るのがケンタッキー州ルイヴィルの救急テクニシャン、ブリオナ・テイラー(26歳、写真上中央)。 彼女は2020年3月12日深夜過ぎに私服警官3人が麻薬捜査のために突然自宅に押し入り、 同居していたボーイフレンドが それを強盗だと思い 合法的に入手し ライセンスを所持している銃で自衛しようとして撃ち合いになり、8発の銃弾を浴びて死亡。ボーイフレンドは一命を取りとめているのだった。
結局自宅からは一切のドラッグは見つからず、何故彼女の名前が捜査リストに載っていたのかも不明。 今週になってようやく現場に居た3人の警官のうちの1人が解雇されたものの、3人とも逮捕も訴追もされていないことが人々の怒りを買って久しい状況。 BLMの抗議が高まったことから、先週にはそれまで合法であった No Knock Warrant (警察と名乗らず、いきなり押し入る捜査)を禁止する ”ブリオナ法”が成立したけれど、それまでは年間約2万件、その殆どが黒人層、ヒスパニック層に対して行われていたのがNo Knock Warrant なのだった。

つい最近ブリオナ・テイラーの話を友達としていた時、ふと思い出したのが私も3年くらい前に夜中にいきなりNYPD(ニューヨーク市警察)の警官が 自宅アパートにやって来た経験があるということ。 私の場合、制服を着た警官2人が夜中の2時過ぎに以前住んでいたアパートのドアベルを鳴らしたので No Knock Warrant ではないけれど、 「It's Police , Open the door!」と言われたので、身に覚えがない私が 「Are you sure you came to the right door?」 と扉越しに訪ねると答えは「Yes」。 なのでチェーン・ロックをしたまま扉を開けると、ヒスパニック系の警官2人がバッジを見せてから 尋ねてきたのが911(日本の110番)通報をしたか。 何のための通報であったかは警官は言わなかったけれど、私は電話をしていないし、何も異常が無いと説明。 「他に誰かアパート内に居るか?」、「誰かゲストが来ていたか?」を尋ねられたけれど、直ぐに納得して帰って行ったのだった。
通常ドアマンが居るビルに住んでいれば、誰かが訪ねてくれば事前にドアマンから電話がかかってくるもの。 でもさすがに警察の場合は ドアマンからの連絡は無く、いきなり現れたので驚いたのは事実。 友達には「黒人だったらアパート内を調べられていたかも」と言われたけれど、 捜査令状無しで警官が個人宅を調べれば それは違法行為。なので私は応じる必要はないのだった。




私にはもう1回NYPDとのエンカウンターがあって、それは2015年のクリスマスの翌日にセントラル・パークを走っていた時のこと。 前から10歳〜12歳くらいの黒人少年2人が走ってきて、避けようとする私にどんどん近付いてきて、すれ違い様にしたのが 身体に故意に触れる痴漢行為。 私はNYのストリートで10回以上 痴漢行為の経験があって、その都度不愉快で眠れない思いをしたので、 この時は少年たちを走って追いかけて「What was that?」と問いつめると 「That' was a joke」という返事。 痴漢行為は立派な犯罪だと言う私に 「こんなのは犯罪なんかじゃない」と開き直った少年は 貧乏くじを引いた側で、もう1人は既に逃げてしまったのだった。
するとパーク・パトロールの車が丁度通り掛かって セキュリティ・ガードが事情を尋ねてきたので、 何があったかを説明すると、黒人少年は「She's a liar」と 私が最も嫌う ”人を嘘つき呼ばわりするウソ” をあっさりついて見せたのだった。 それに対して 何らかの嫌がらせをされない限り、見ず知らずの子供相手に口論に及ぶ必要などないことを私が指摘すると、 今度は「ちょっと触れたくらいのことで、オーバーリアクトしている」とまたしても私を悪者扱いするふてぶてしさ。
程なく 別のパーク・パトロールがやって来たので、再び事情を最初から説明することになったけれど、そのセキュリティ・ガードは もう何年もセントラル・パークでランニングをしている私のことを覚えていて、「彼女はここで何年もエクササイズしているけれど、一度も問題を起こしたことは無い」と、 私のキャラクター・ウィットネスになってくれたのだった。 そして少年に対しては「確か40分前くらいに、他の友達3人とこの道の先で固まって何か相談してただろう?その時から何か様子がおかしいと思った」と言い、 彼がその1人であったことを認めると、最初に車を止めたセキュリティが「That's it, I'm calling the police」と言って、 本当に警察に通報。 4〜5分後にやって来たのがNYPDのパトカーで、それを見た途端に 散々私を悪者にして、悪態をついてきた少年が いきなり泣き出したのには 驚いてしまったのだった。

まずは通報したセキュリティが警官に事情を説明。 次に私1人が警官達と話すことになったけれど、 通報は私がした訳ではなく、子供相手に訴追をするつもりなどないことを話すと、私はその場を離れて良いことになったのだった。 再び走り出す間際に、セキュリティに促されて少年が泣きながら私に謝ったので、 その謝罪を受け止めて、二度とこんなことをしないように少年に声を掛けた時は、先の態度がまるでウソのような従順さ。 「これがNYPDのパワーなのか?」と思ったのを鮮明に記憶しているのだった。




その後問題はすぐに片付いたようで、ランニングに戻った私をパトカーが追い抜く際にクラクションを鳴らして、警官が手を振ってくれたのがこの時のエンディング。 私はこれら2つエンカウンターから特にNYPDには悪いイメージを持っていないのが本音。 でもマイノリティ人種が多いエリアの警官の方がアグレッシブで暴力的なのは紛れもない事実。 またNYPDで最も人種差別や不要な発砲が多いは制服警官よりも、600人の私服警官によって構成されるアンチ・クライム・ユニット。 今週にはBLMの抗議活動を受けてその解散が決定。リフォームされることが明らかになっているのだった。

友達にセントラル・パークのエピソードを話した時に言われたのが、 ここ2〜3年ほどの間に黒人層に対してオーバーリアクトして警察に虚偽の通報をする白人層が増えているだけに、 「今だったら Karen だと思われるかも…」ということ。 Karen はマイノリティ人種の行為に対して直ぐに警察に通報する白人女性の総称。 5月末にセントラル・パークの黒人バード・ウオッチャーから 飼い犬をリードに繋ぐようにと違反行為を指摘されて逆切れし、 「黒人男性に命を脅かされた」と警察に通報したエイミー・クーパーは ”セントラル・パーク・カレン” と呼ばれているのだった。
アジア人の私が”Karen” と見なされるかは別として、昨今のありとあらゆる警官による暴力、 白人層の人種差別発言や 警察への通報の動かぬ証拠になっているのがビデオの存在。
全米50州で旅行者を含む市民に保障されているのが 警官の公の場における撮影の権利。 したがって警官にはその撮影を止めさせることが出来ないだけでなく、撮影したビデオや写真を警官に見せるように言われてもその必要が無いこと、 撮影ディバイス没収や、映像の削除を強要されてもそれに従う必要がないことも同様に知っておくべき権利と言えるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。


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