Aug 31 〜 Sep 6 2020

”Covid Divorce & Covid Boo"
パンデミック以降急増したアメリカの離婚とシングルのオブセッション


今週金曜にはアメリカの8月の雇用統計が発表されているけれど、それによれば8月は137万の仕事が生み出された結果、 失業率は7月の10.2%から8.4%に下落。 これを好感するメディアが多かった一方で、新たな仕事の数が7月の173万から20%以上減少していること、8月に増えた仕事の中には 来月で終了する国勢調査員の仕事が多数含まれていることを指摘する慎重論が聞かれていたのもまた事実。
その前日 木曜に発表された先週の新たな失業者数は、パンデミックが始まって以来最低の88.8万人で、前の週の100万人から減少。 しかしその理由の一端を担っているのが労働省が失業者のカウントの仕方を変えたことで、懸念されているのが一時解雇ではない 永久解雇の増加傾向。 したがって頭を冷やすと さほど好感できるデータとは言えないものの トランプ政権の経済アドバイザー、ラリー・クドローは、 これらの数値を受けて「アメリカ経済は自力で回復に向かっている。新たな経済刺激策は必要ない」と強気のコメントをしているのだった。



ジャパニフィケーション in USA


今週には連邦議会予算局が、米国債務が2021年にGDPを超える予測を発表。 これは第二次世界大戦直後の1946年以来のことで、パンデミックによる経済規模縮小と 膨大な額の景気刺激策の煽りを受けて2020年の連邦予算赤字は2019年の約3倍に当たる3兆3,000億ドルに達する見込みであるのこと。
現在 国債がGDPを超える国は日本、イタリア、ギリシャの3カ国であるけれど、 特に日本の低金利、低成長、低インフレーションに 少子化、高齢化社会が加わった状況は経済界では「Janification/ジャパニフィケーション」と呼ばれて久しい状況。 毎年1月に行われるアメリカン・エコノミック・アソシエーションのイベントでも今年最大のトピックになっていたのがジャパニフィケーション。 一部には「日本が今後の世界経済のプレビュー」という指摘が聞かれるものの、 マクロ・エコノミストの間では「アメリカと日本では根本的な状況が違い過ぎる」として、アメリカでジャパニフィケーションが起こった場合は 経済を救う手立てがないという声が多いのだった。



パンデミック中のアメリカの離婚、その実態


さてパンデミック以降、自宅勤務や失業、将来への不安などの要因が絡み合った離婚が世界各国で増えているけれど、 離婚大国アメリカでも前年比で34%アップしているのが離婚率。 特に離婚が増え始めたのはロックダウンに突入して1か月後の4月13日以降で、最も離婚率が高いのは 結婚5カ月以内の新婚カップル。結婚5年以内のカップルも同様に離婚率が高いものの、結婚年数が増えるに従って離婚率の低下が見られるのがこのグループ。
55%がエンプティ・ネストのカップルで、18歳以下の子供が居るカップルを上回っているけれど、 パンデミック中には後者の離婚率が前年比で5%もアップ。 これはオンライン授業、自宅勤務で親子が24時間一緒に生活する難しさを示したデータと言えるのだった。

地域別に見ると離婚が圧倒的に多いのは南部。アメリカには”バイブル・ベルト(聖書のベルト地帯)”という言葉があるけれど、これが意味するのは ヴァージニア、フロリダ北部、テキサス、オクラホマ、ミズーリといったキリスト教信仰が強く、共和党保守派が多い州を一括りにした一帯。 信仰心が強い共和党保守派の離婚率の高さは今に始まったことではないものの、パンデミック中も群を抜いて 高かったのがバイブル・ベルトでの離婚率。逆に少なかったのはニューヨークやマサチューセッツを含む北東部となっていたのだった。
パンデミックに見舞われた途端に閉店撤退するビジネスの多くが それ以前から経営問題を抱えていたのと同様に、 パンデミック中に離婚した多くのカップルも それ以前から火種を抱えていたケースが殆どと言われ、 パンデミックが果たしたのはそのトリガーの役割。 またパンデミック中にはドメスティック・ヴァイオレンスも急増しているけれど、 これは女性側に離婚や自立するだけの経済力が無いケースと言われるのだった。



シングルが探すCOVID Boo


一方、パンデミック中にはシングルのデート・アプリ活用が急増しており、今週にはそのうちの1つBumble/バンブルがIPOを示唆していたけれど、 バンブルはデート・アプリの大手Tinder/ティンダーの元エグゼクティブがスタートし、ロシアの富豪がバッカーについたサービス。 デート・アプリで知り合ったことがカップルにとってスティグマになっていた時代は終わり、パンデミック以降は「コーヒーショップやラウンジで出会うより 多くのプロフィールの中から選んだ相手と、事前のコミュニケーションを取ってからインパーソンで出会う方が安全で確実」という考えに世の中が変わってきているのだった。
私の友人の中にも複数のデートアプリで相手探しをしているケースは少なくないけれど、 日頃から相手に困らない人ほど探しているのがCOVID Boo(BooはBabyと同じ意味)。すなわちパンデミック期間中を乗り切るための相手。 これがエクスクルーシブなセックス・パートナーを指す場合もあれば、万一ウィルスに感染した場合のケアテーカーを兼ねた心の安らぎ的存在や、 パンデミック中の生活を経済的にサポートしてくれる相手という場合もあるけれど、COVID Booを探している人ほど”短期契約”と割り切って、日ごろよりハードルを下げているのが実情。
逆に以前から結婚願望が強く、パンデミックに突入してから益々それが高まった人、特に女性は アプリを通じて知り合った相手、 時に一度に複数の相手とのコミュニケーションにかなりの時間とエネルギーを注いでいるようで、 コミュニケーションがストップする要因になっているのが相手との温度差や求めているものの違い。 COVID Booと割り切って相手探しをしている人々の言い分は「パンデミックが終わって日常に戻ってみないと相手との本当のコンパーティビリティは分からない」、 「パンデミック中は他のアクティビティが無いから一緒に居る時間が長いけれど、パンデミックが去ったら相手のためにどれだけ時間が割けるか分からない」と現在を特殊状況と見なした慎重な意見。 それに対して結婚願望が強い側が持っているのは「誰もが将来の不安を感じて落ち着きたがっている今だからこそ 相手を探すチャンス」というパンデミック便乗型の考え。
しかしながら結婚相手に絞って探すと どうしてもハードルを下げる訳には行かないとあって、パンデミック以降ターンダウンした相手が数十人、中には100人を超えた女性も居るとのこと。 こればかりは数を撃っても当たる訳ではない様子を窺わせているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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