Sep 28 〜 Oct 4 2020

”October Turbulence is Coming! "
オクトーバー・タービュランス(乱気流)がやって来る!
ウィルス感染でトランプ有利のパラドックス



木曜に発表されたアメリカの新たな失業者数は前週より僅かに減って83万7000人、 翌日金曜に発表された9月の雇用統計によれば、 9月に生み出された新しい仕事の数は66万1000で、予想されていた8万5000を大きく下回る数字。 失業率は8月の8.4%から0.5%下がって7.9%で、人数にして1260万人が失業している計算。 しかしこの数字にはコロナウィルスを危惧する等の理由で 現在仕事探しをしていない450万人が含まれておらず、 実際の失業率は10%前後というのが正しい目算と言われるのだった。



米国メディアが最も重視し、日本のメディアでは無視されたトランプ氏のディベート発言


今週は火曜日に「アメリカの恥をさらした」と言われるアグリーな大統領選ディベートが行われ、有権者だけでなく世界中を呆れさせたのは周知の事実。
その翌日からアメリカで2日に渡ってトップニュースになっていたものの、日本のメディアでは無視されていたのが トランプ大統領が極右の白人至上主義グループに対する 批判を避けて、特に白人男性武装グループ ”Proud Boys/プラウド・ボーイズ” に対して ”Stand Back, Stand By”と、「有事に備えて武装せよ」と解釈できるメッセージを送ったこと。 白人至上主義者についての意見を求められた瞬間は、トランプ氏が90分間のディベートで唯一言葉を失った瞬間。
さらにもう1点アメリカ・メディアが問題視し、日本のメディアが無視していたのは トランプ氏が 「郵送票のカウントが出る前に勝利宣言をしないと確約するか?」、 「選挙結果を認めて穏便な政権移行をするか?」という問いに対しても明言を避けたこと。 これら2点が意味するのは、トランプ氏が郵送票を無効として勝利宣言をした場合に見込まれる抗議活動に対するカウンター・アクションを極右武装勢力に望んでいる一方で、 バイデン氏勝利が伝えられた場合には その結果に反発する暴動を極右武装勢力に期待しているということ。 これを読んで「まさか」と思う人が居たら、それは今のアメリカを知らないことを意味するのだった。
実際に民主党内では バイデン氏が当選した場合に平和的にトランプ氏に政権移行させる手段が既に検討されていることはバーニー・サンダース上院議員がメディアとのインタビューで認めている状況。 トランプ氏のウィルス感染が伝えられてからは、極右派による陰謀説の吹聴や、それに煽られた暴動を危惧する声も聞かれ始めているのだった。
大統領選挙については、予想されるのが従来通り投票所に足を運んで投票する共和党支持者票が先にカウントされてトランプ氏優勢が伝えられた後に、 ブルー・ウェイブこと 民主党支持者の郵送票がカウントされて勝敗が決まるシナリオ。 そのためフェイスブックやツイッター等のソーシャル・メディアは「正式な選挙結果が出る前の勝利宣言、及び当選確実のポストは全て削除する」と9月初旬の段階で宣言しているのだった。



重要さを増した副大統領候補ディベート


史上最悪と言われた大統領ディベートのニュースが吹っ飛んでしまったのが、金曜米国東部時間午前1時に伝えられたトランプ夫妻のコロナウィルス感染のニュース。
当初ホワイトハウス側は「マイルドな症状」と発表していたものの、金曜夕方になって突如トランプ氏がウォルター・リード米軍病院に入院することになったことから、 大統領がホワイトハウスを出て病院に到着するまでの姿、もっと厳密にいえば自力で歩けるのかを確認するために メジャー・ネットワークが2時間に渡って通常プログラムを変更したライブ放映を行う異常事態になっていたアメリカ。 そうなった理由は入院が決まった途端にホワイトハウスから取材陣が追い出され、各メディアが敷地外からの望遠映像でしか取材が出来なかったのに加えて、 本当にマイルドな症状ならば選挙を直前に控えて自らそれをツイートしているはずのトランプ氏が 感染を伝えるツイート以来 全く音沙汰がなかったため。ちなみにトランプ氏のコロナ感染を告知するツイートは、”いろいろな意味のLike” とリツイートで記録を塗り替えており、 特に大統領の自業自得ぶりに沸き返っていたのがアンチ・トランプ派。そのためツイッターは「大統領のDeath Wish(死を望む)のツイートをした場合はアカウント閉鎖をする」と警告したほど。

トランプ氏の感染ニュースによって、突如重要さを増したのが副大統領候補ディべートで、通常なら副大統領候補が誰であっても、そのディベート内容がどうであっても選挙には全く影響を及ばさないもの。 しかしながらトランプ氏の感染と入院は74歳のトランプ氏と77歳のバイデン氏のどちらが当選しても任期中の病気、 最悪の場合は死去によって副大統領が大統領に就任する可能性を改めて国民に実感させてたのだった。

そこで浮上していたのが、大統領が公務不可能になった場合に代行を務めるペンス副大統領が ディベートを行うに際して感染のリスクはないのか?との疑問。 事実、火曜日の第一回大統領ディベートでは 会場入り前に全員が感染テストを受け、マスク着用が義務付けられていたにもかかわらず、金曜の段階で確認されたのが11人の関係者のウィルス感染。 その会場に 感染テストが間に合わないほど間際にやってきて、テストを受けなかっただけでなく、会場内でもマスク着用を拒否してディベートを見守ったことで批判を浴びたのが イヴァンカ・トランプ、トランプ Jr.らに加えて、トランプ氏の感染源とも言われたホープ・ヒックスを含むトランプ氏のゲスト・セクション。(写真上中央)
副大統領による公務代行はアメリカの近代史では既に2度起こっていて、 1度目は1985年にロナルド・レーガン大統領が前癌病変の除去手術のために一時的に当時のジョージ・H・ブッシュ副大統領が職務を代行した際。 2度目はそのブッシュ氏の息子ジョージ・W・ブッシュ大統領が2002年、2007年の2度に渡って全身麻酔によるで結腸内視鏡検査を受けた際に当時の ディック・チェイニー副大統領が代行を務めているのだった。



トランプ氏のコロナが悪化した場合と、回復がもたらすパラドックス


入院したトランプ氏は金曜のウォルター・リード・ホスピタル到着直後と翌日の土曜夜に2本のビデオメッセージをツイッターで発信。 それを見たトランプ支持者は一様に胸を撫でおろしていたけれど、メディアの間でホワイトハウスが語るようなマイルドな症状ではないとの憶測を呼んでいたのが、トランプ氏に対して用いられている治療薬が、 平均年齢45歳の少数の被験者に対して投与されただけで、 FDA(食品医薬品局)の認可も下りていない試験段階のものであったため。すなわち医療チームが大統領の健康回復に そんなリスクを冒すほど切羽詰まった印象を与えていたのだった。
100キロを超える体重でBMIインデックスが超肥満に当たる30.1ながら、これまでは健康を誇示してきたのがトランプ氏。 しかし大統領に当選する前から税金申告と共に隠し続けてきたのがその健康状態の詳細。 毎年のように自分が任命した医師に「大統領はオーバーウェイトであるものの至って健康」と言わせるだけで、歴代の大統領に比べて公開される健康情報が 極めて少ないトランプ氏は、昨年11月に突然「イレギュラーなチェックアップ(健康診断)」と称してウォルター・リード・ホスピタルを訪れた際には マイルド・ストローク(軽い発作)の噂が流れていたのだった。

トランプ氏はビデオで早急に公務に戻ることを宣言をしていたけれど、高齢者ほど一度回復したように見えて症状が悪化すると言われるのがコロナウィルス。
万一、トランプ氏の病状が極めて悪化した場合、共和党はたとえ選挙直前であっても 法律上では共和党が新たな候補者を擁立することが可能。 しかし既に全米30州で先行投票、不在者投票がスタートしているのに加えて、郵送票もどんどん送り込まれている現在、 それをどうやって行うべきかまでは定めていないのが合衆国憲法。
その一方でトランプ氏がコロナウィルスに感染した時点で、「もう選挙はバイデン勝利に決まった」という声も聞かれたけれど この騒動でサポートと結束を一層高めているのがトランプ支持派。 しかもコロナウィルス対策でバイデン氏に傾いていた無党派層やスウィング・ヴォ―タ―はトランプ氏に同情し、「自分が感染したことで、今後はしっかりウィルス対策をするに違いない」と 考える人も出始め、「大統領が散々馬鹿にしたウィルスが、大統領を再選に導く」とトランプ勝利ムードを掲げる政治関係者も居るほど。 事実、トランプ氏の感染後は税金申告書やメラニア夫人のFワード発言等、このところ立て続けに出てきたトランプ関連のネガティブ・ネタのインパクトが 一気に掻き消されているおり、 2016年の選挙の際に何が暴露されても支持率が落ちないことでついたニックネーム ”テフロン・ドン (テフロンは悪評がくっつかずにすぐに落ちるという意味で、ドンはドナルドの略称)”は健在という声も聞かれるほど。
選挙の年には”オクトーバー・サプライズ” が付き物であるけれど、10月は未だ始まったばかり。 今年に関してはパンデミックと最高裁判事の任命プロセス、全米各地での抗議活動や暴動等、不確定要素が多過ぎる中、 トランプ氏のウィルス感染までが加わって、サプライズを通り越した”オクトーバー・タービュランス(乱気流)” が見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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