Oct 19 〜 Oct 25 2020

”This Time They Will Vote"
前回選挙で番狂わせを招いたサイレント・ヴォーターに代わる、今回のXヴォーターとは?


今週末から遂にニューヨークでスタートしたのが大統領選挙の先行投票。サウス・ダコタやミネソタ等では選挙の46日前から先行投票がスタートしており、 10月23日現在で投票を済ませた有権者は520万人以上。既に前回2016年大統領選挙の先行投票数を上回る数字。 パンデミックの影響もさることながら、今回の選挙の国民の関心の高さを示しているのだった。
ニューヨークに関しては10月24日から11月1日までの9日間に渡って行われるのが先行投票で、今回はNBAオーナーの協力によりブルックリン・ネッツの本拠地であるバークレー・センター、 NYニックスのホーム・スタジアムであるマディソン・スクエア・ガーデンが巨大な投票所として使用され、人々がNBAの試合やコンサート以外の目的で 久々にこれらのアリーナを訪れているけれど、初日から長蛇の行列。 アンケート調査によれば選挙日から2日以内で大統領が決まると考える有権者は51%。 残りは郵送票のカウント等で結果がそれ以降にもつれ込む考えであることが明らかになっているのだった。



今回のアンケート調査はどれだけ信頼出来るか?


そのアンケート調査では、春先からずっとトランプ大統領をリードしてきたのがバイデン氏。でも今週に入って前回選挙でトランプ氏当選を当てたトラファルガー・グループは 今回もトランプ氏当選を予測。一方2012年の選挙で全米50州中49州の選挙人の行方を全て当てるという偉業を成し遂げながら、2016年の選挙ではヒラリー・クリントン当選を予測した 538 / ファイブ・サーティー・エイトは10月24日現在でバイデン氏優勢を伝えている状況。
特にトランプ支持派の間で根強いのが「前回の選挙まで何年も投票をせず アンケート調査の対象にもならなかったサイレント・ヴォーターが 今回もトランプ氏に投票するはずなので、アンケート調査は当てにならない」という意見。 しかし過去4年間に大きく進化したものの1つがデータ・アナリシス。加えて何年も投票して来なかった人々が一度でも投票を行えば、 それはもう投票記録を持つアクティブ・ヴォーター。加えて前回の選挙結果の誤差が 次の選挙の貴重なデータになってきたことを思えば 4年前と同じメソッドで、同じようなアンケート調査や分析予測が行われることは無いのは容易に想像がつくところ。
今回のアンケート調査では 支持政党や候補者、自分にとって重要な政策等だけでなく 多岐に渡る質問が行われており、 それによればトランプ支持者の約半数が Qアノンが繰り広げる「民主党政治家やセレブリティが乳児の血を悪魔儀式で飲んでいる」という陰謀説を信じている一方で、 民主党支持者の半分以上がトランプ氏が再選されればメガリッチの減税がそのままで、ミドルクラスに対してのみ再び増税が待っているという考え。 トランプ支持者の60%以上がトランプ再選で2021年には経済のVシェイプ・リカバリーが望めると回答しているのに対して、民主党支持者は 半分以上が どちらの候補者が勝利しても2021年は経済的に厳しい年になるとという見通し。
こうした調査結果は選挙の行方を的確に占うことはないものの、トランプ支持派が楽観的で洗脳され易い反面、 民主党支持者がシリアスで現実直視型が多い様子を垣間見せているのだった。



選挙の行方を決めるのは前回投票しなかった、出来なかった人々!?


アメリカの選挙では投票の前にレジスター(有権者登録)が必要であるけれど、2016年の大統領選挙でレジスターはしたものの 投票しなかった人々の数は何と1890万人。 この中に多かったと言われるのが オバマ氏には票を投じたものの、ヒラリー・クリントンには票を投じなかった民主党支持の黒人男性、「どちらの候補者も嫌いでなので わざわざ投票しに行きたくない」と考えた人々。さらにスウィング・ステート以外の州では「結果が決まっている選挙のためにわざわざ投票するなんて」と考える人々も少なくなかったとのこと。
でも2年前の中間選挙の前からソーシャル・メディア上で盛り上がってきたのが、前回投票しなかった人々の反省や後悔の反動から投票を呼び掛けるムーブメント。 その理由の1つは大統領選挙と共に行われる上院、下院議員の地方選挙の重要性を理解する人々が増えてきたこと。 特に民主党支持者にしてみれば、選挙間際にも関わらず共和党が過半数を占める上院で新たな最高裁保守派判事が選出されるのをどうすることもできないジレンマや、 5月に民主党が過半数を占める下院で可決したコロナウィルス支援策が、9月まで上院で審議もされなかったことは上下院の過半数獲得を目指す極めて大きなモチベーション。 その地方選挙ではオバマケア撤廃に投票してきた共和党現職議員の苦戦が伝えられ、これまで共和党議員しか選出したことが無い選挙区から初めて民主党の議員が生まれるかもしれないのが今回。 そんな激戦区には民主共和両党から多額の選挙資金が流れ込んでいるのだった。
その一方で18歳で選挙権を得るアメリカで、今回初めて投票するのがミレニアルの次世代であるジェネレーションZ。 この世代は生まれた時からインターネットが存在したデジタル・ネイティブで、学校では火災の避難訓練よりも頻繁に 銃乱射事件に備えた避難訓練を強いられてきた世代。 少し前に私が観た報道番組では2001年9月1日のテロの日に生まれた子供たちが、今回初めて行う投票について語る特集が組まれていたけれど、 この世代は驚くほどダウン・トゥ・アース。すなわち地に足がついていて、それと同時にとてもポリティカル。 投票権を得るのを待ち侘びていた層であり、今の政治と政治家に失望しているジェネレーション。 今回の選挙へのインパクトもさることながら、4年後にはアメリカのマジョリティになるのがミレニアルとジェネレーションZなのだった。



デジタル・ネイティブを狙う攻略法とは


今週メインストリーム・メディアでも報じられるニュースになったのが、ニューヨーク選出の最年少下院議員で 既に民主党のスターパワーになっている アレクザンドリア・オカジオ・コルテス(以下AOC、写真上左側、紫の枠内)が、ゲームのストリーミング・チャンネル、トゥイッチに登場して 人気ゲーム”Among Us / アマング・アス” をプレイ。それを何と40万人が視聴し、ゲームストリーミング史上第3位の記録を打ち立てたこと。
「政治家がゲームで有権者にアピールするなんて」という冷ややかな声も一部で聞かれたものの、 現在31歳、ミレニアル世代のAOCはなかなかの腕のゲーマーで、プレイをしながらビューワーに投票を呼び掛けた彼女の様子に 共感したゲーマー、特にジェネレーションZは多く、ツイッター上にも溢れたのがそのポジティブ・リアクション。 AOCは民主党議員にソーシャル・メディアの使い方を教える等、ナンシー・ペロッシ、チャック・シューマーといった民主党のメインストリームとは一線を画した独自のリーダーシップを 民主党のニューウェイブ議員の間で確立している存在なのだった。

そんなニューウェイブ議員が多いこともあり、民主党の方が新世代の有権者獲得のデジタル・アプローチに前向きに取り組んでいるのが今回の選挙。 その象徴と言われるのはジョー・バイデン&カマラ・ハリスが任天堂のアニマル クロッシング:ニュー・ホライゾンの中にヴァーチャル・フィールド・オフィスを設けていること。 デジタル・ネイティブにとっては、実物が何歳であろうと自分が深く関わる世界の若くキュートなバイデン・アバタ―がバイデン像になってしまう訳で、 パンデミック以降、Eスポーツの普及に拍車が掛かり、さまざまなイベントがヴァーチャルになる傾向を考慮すれば 4年後の大統領選挙のキャンペーンの多くがデジタル・ワールドで行われても 全く不思議ではないこと。
その一方で今週にはドリーム・ワークスの共同設立者で元ディズニー副社長のジェフリー・カッツェンバーグと、ヒューレット・パッカードの元CEO、メグ・ウィットマンという ビジネス界のパワーチームが17.5億ドルの資金を集めて4月にスタートしたショート・ビデオのアプリ ”Quibi/クィビ” が僅か半年でビジネス閉鎖となったニュースが報じられたけれど、 同じショート・ビデオのアプリでパンデミック中にユーザーを急増させたのが言うまでもなくTikTok。 著名人を使った高額コンテンツを多数制作していたクィビはユーザーが増えず、経営難に陥ってからは バイヤーを探していたものの全く買い手がつかなったとのこと。これを受けてビジネス業界の教訓となったのが「以前のビッグ・ネームの古い考えでは、フォーマットを新しくしたところで デジタル・ネイティブにはアピールしない」ということ。 同様のことは今後政治の世界でもどんどん顕著になって行くと思われるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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