Jan 4 〜 Jan 10 2020

"Domestic Terrorism Incited by POTUS"
米国史上最悪の出来事、大統領に導かれた自国民によるドメスティックテロの検証


今週のアメリカではコロナウィルスの感染が更に広がり木曜1日だけで死者数が4000人を突破。 金曜に発表された2020年12月の雇用統計では 14万の職が失われ、過去数ヵ月の回復基調が完全に崩れた状況。 火曜日に行われたジョージア州の選挙ではトランプ氏の熱心な選挙応援にもかかわらず上院の残された2議席をどちらも民主党が獲得。 そしてその選挙結果が出た水曜の午後に起こったのがアメリカ史上最大の汚点と言われる米国大統領に促された自国民によるドメスティックテロ。
今となってはアメリカ中からテロリスト、ライオター(暴動者)と呼ばれるようになったトランプ支持者達は、この日ワシントンDCで行われたSave Amemricaラリーに参加するために集結。 そのほぼ全員が信じていたのが ペンス副大統領が下院の選挙人投票結果を覆して トランプ氏が大統領に就任するということで、それでダメな場合は力で勝ち取るために武装しての参加。 しかし下院の選挙人投票カウントは、実際にはセレモニアルな票の読み上げで、通常は30分で終わるもの。またペンス副大統領は結果を発表するだけの立場で、 結果を覆す権限が無いことは合衆国憲法で定められていること。にもかかわらずトランプ氏はあたかもペンス氏が結果を覆せかのように事実に反する情報を事前に吹聴。 トランプ支持者は取材のレポーターに「合衆国憲法では副大統領にそんな権限を認めていない」と説明されても「You're wrong」, 「You know nothing」と、 トランプ氏の主張だけを盲目的に信じるカルト集団状態になっていたのだった。

やがてペンス氏が下院での投票前に 「自分には選挙結果を覆す権限はなく、就任時の宣誓通りに職務を遂行するだけ」という意向を示したことから、 集まった支持者の間で広がったのが「ペンスが裏切った」という怒り。 それにルディ・ジュリアーニの「闘いで選挙結果を勝ち取れ」というスピーチ、「今や我々は激しく闘わなければならない、自分も一緒に行く、これから議会へ向かおう」と語ったトランプ氏が 事実上のGoサインを出したことから バリケードを倒し、窓ガラスや扉を破って議会に乱入したのが支持者たち。 投票審議中だった上下院議員達はそれを中断し、議員席の下に設置された催涙ガス用マスクを着用し、命の危険を感じながら避難することになったのだった。
乱入したテロリスト達が先ず探していたのが ”裏切り者のペンス”。 既に議会のすぐ外にはペンス氏を絞首刑にするために用意したと言われるヌース(首吊りの縄)が簡易ゲートに取り付けてられており(写真下右)、 「Where is Pence」と叫びながら彼らが歩き回る様子を耳にしたペンス氏は、一緒に避難していた上院議員に「トランプのために散々尽くしてきた結果がこれか…」とつぶやいたことが議員の証言で明かされているのだった。





最初からテロ目的で集まったトランプ支持者 


テロリスト達の乱入がスタートしてからの状況は、現地で取材をしていたメディア関係者が「こんな光景は見たことが無い」、「これがアメリカとは思えない」と絶句のリアクションを示したもの。 それを速報で見守った国民は、テロリストになす術がない警察やセキュリティ・ガードの様子に腹を立てていたけれど、後の映像で明らかになったのがゲートの1つが警官によって開けられ、テロリストを招き入れる形になっていたこと。 国防軍の出動の遅れについては、その様子をホワイトハウスのTVで観ていたトランプ氏が出動要請を出すことを拒み続け、ペンス氏が国防省にコンタクトしたことが金曜に明らかになっているのだった。
特にリベラル派や黒人層を怒らせたのは、ブラック・ライブス・マターの平和的デモをしていた人々に対しては戦車が出動し、催涙ガス弾やゴム弾が 容赦なしに撃ち込まれ、誰彼構わずアグレッシブに逮捕していた警察やフェデラル・ガードが、ほぼ100%白人のテロリストが米国議会に乱入した際には 説得はしても逮捕をせず、 略奪や器物損壊を放置し、テロリストと一緒にセルフィ―まで撮影する警官まで居るという完全なダブル・スタンダードぶり。 その様子に失望した黒人層は「黒人はジョギングに出掛ければ追いかけられて射殺され、自宅で眠っているだけでも理由も無しに押し入った警官に射殺されるのに、 白人ならこんなことをしても無罪放免なのか?」とソーシャル・メディアで猛反発。この日のNBAの試合ではプレーヤー達が 警官の黒人層に対する過剰暴力への抗議ではなく、 警官の白人層に対する特別扱いに抗議をして国歌斉唱中に跪く姿が見られたのだった。

ドメスティック・テロは当初、ラリーのために集まった支持者が暴徒化したかのように伝えられたけれど、実際には支持者のオンライン・グループでは このラリーがスケジュールされた時点で、 呼びかけられていたのが武装。現場からは9oのハンドガンから自動小銃、パイプ爆弾、火炎瓶、議員達に対して使おうとしていたと思われる何十ものプラスティックの手錠等、数えきれない武器が押収され、 議会突入が事前にプランされていた様子を窺わせていたけれど、 何故大統領がスピーチをするラリーの参加者達がこれだけの武器を持ち込めたのかは、不思議というより不審というのが大方の意見。
テロリスト達の野蛮ぶりは想像を絶するもので、自分の大便を床に擦り付けてその茶色い足跡を自慢するなど、 民主主義の象徴である米国議会を まるで自分達が住む町の 気に入らないバーを 嫌がらせで襲うような感覚。 我が物顔の遣りたい放題を繰り広げて、その場を去る際には「下院と民主党は自業自得」という捨て台詞を吐くモラルの欠落ぶりを見せていたのだった。



トランプ・カルトへの制裁がスタート


今回の事件で最もショッキングなシーンの1つと指摘されたのがテロリストがアメリカ国旗を降ろして、トランプの旗を掲げた瞬間で、 その姿はベテラン・ジャーナリスト、ダン・ラダーが「トランプが政治家ではなくカルト・リーダーであることを立証している」と語ったほど。 さらにアメリカ国民を唖然とさせたのは、テロ加担者が それぞれに ”Best day of my life!”、”I am proud of myself!” というメッセージと共に議会内に押し入った様子をフェイスブック・ライブやインスタグラムで発信し、罪の意識が無いどころかそれを楽しんで、自慢していたこと。 そんなフェイスブックやインスタグラムのポストのお陰で、FBIが写真を公開し 容疑者のID情報を求める以前にソーシャル・メディア上でスタートしていたのが 一般国民によるテロリスト達のID割り出し。
翌日木曜にはメディアの報道写真を観た雇用主が次々と彼らの解雇を発表。 暴動の中心的存在ほど狂信的なトランプ支持者で、既にソーシャル・メディア上では陰謀説論者として知られていたことから、 直ぐに名前がメディアで公開され、その途端に彼らのソーシャル・メディア・アカウントに溢れたのが「アメリカの恥!」、「刑務所で頭を冷やせ!」という内容の 何百、何千ものメッセージ。
またテロ参加者の中には テキサス州の元市長候補の女性や、2年前まで共和党下院議員だったリック・サッコーン、11月の選挙で当選したばかりのウェストヴァージニア選出の、 デリック・エヴァンスも含まれており、特にエヴァンスは議会の扉を破って入る瞬間に「We're in, baby!」とはしゃぐ様子をフェイスブック・ライブでポスト。金曜朝には逮捕され、 土曜日には議員辞職に追い込まれているのだった。
中には「周りの支持者と一緒に入っただけで、自分は法を犯していない」と言い訳する加担者も居たけれど、 例えそれが事実でも議会内に突入しただけで不法侵入、議会決議妨害罪等、複数の容疑に問われる見込み。 さらには今回の暴動に参加するためにワシントン入りする段階で、既に飛行機内で手に負えない態度を取っていたトランプ支持者に対して フライトアテンダントの組合が抗議をしていたことから、ホームランド・セキュリティとFBI、航空局が進めているのが テロ参加者を今後ノー・フライ・リストに載せること。
一方ソーシャル・メディアでもQアノンの陰謀説者、不正選挙の陰謀説を盛んにプロモートした弁護士のシドニー・パウウェルとトランプ氏が恩赦したばかりのマイケル・フリンがツイッター・アカウントを閉鎖され、 YouTubeはルディ・ジュリアーニと共にテロに関する過激な発言を展開したスティーブ・バノンのポッドキャストを削除。 トランプ支持者の陰謀説の出所になってきたソーシャル・メディア、パーラーもグーグル、アップルからシャットダウンされた他、、 投票マシンのメーカー、ドミニオンはシドニー・パウエルに対して13億ドルの損害賠償訴訟を申請。トランプ氏に対しても同様の賠償責任を問う意向を示唆しているのだった。



何故 陰謀説が地方の白人層にアピールするのか


このドメスティック・テロを招いたのはトランプ氏が選挙前から吹聴し続けてきた「自分が負けた場合は不正が起こっている」という陰謀説。 そもそもトランプ氏はオバマ大統領のバーサーゲイトからQアノンまで、陰謀説によって支持基盤を固め、それをカルトレベルにまで押し上げてきた従来の政治家とは全く異なる存在。
アメリカにおける陰謀説には必ず裏に金銭的スポンサーがついているもので、例えばオバマ政権下にコネチカットの小学校で起こった銃乱射事件について「実際はステージアクトで、被害者の親はクライシス・アクター」 という陰謀説を裁判で訴えられるまで唱え続けたアレックス・ジョーンズについていたのが銃規制反対勢力のスポンサー。彼がポッドキャストやフェイスブック・ポストでその説を広めれば広めるほど収入が得られたのがその仕組み。 世の中には「火の無いところに煙は立たない」と考えて、陰謀説が浮上するにはそれを裏付ける事実や証拠があると信じる人は多いけれど、 実際にはスポンサーがつき易いセオリーに偶然や事実の捏造を結び付けて でっち上げられるのが陰謀説。 その実態は真実を追求する正義や愛国心とは一切無関係で、それによって政治的、金銭的メリットを得る勢力や組織による洗脳行為に他ならないのだった。

では何故人々がそれを信じて、時に狂信的なサポーターになるのかと言えば、陰謀説というものが不遇にあるプライドが高い人間の心を巧みに掴んでコントロールする要素に満ちているため。 陰謀説に洗脳されるのは往々にして「友人が少なく孤独、もしくは退屈な生活をしている」、「プライドが高く、自分は特別という意識が強い」、「自己中心的な正義感を持っている」人々。 経済的にさほど恵まれていないケースが多く、社会や体制への反逆心を持ち、それらが自分の不遇の原因と考える傾向が顕著。 陰謀説はそんな人々に「自分のような選ばれた人間だけが知る真実」という特権意識や優越感を与えながら、社会への怒りや歪んだ正義感をどんどん駆り立てていくもの。 陰謀説論者が「お前たちは何も知らない、世の中やメディアに騙される愚か者」という態度で自分が信じる説を語り、 その陰謀説を否定されれば「今に見ていろ、やがては分かる日が来る」的な態度を取るのは、そうした実態が伴わないエリート意識のなせる業。
アメリカ社会において、陰謀説が特に地方の白人低所得者層に大きくアピールするのは、彼らがマイノリティ人種に対する優越感に裏付けられたプライドを持ち、 銃を所持するパワーとそれをマイノリティに対して行使してもコミュニティに守られる自信と確信を持つ一方で、自分が親の世代と同じ生活&経済レベルにない原因が リベラル派がもたらした政治システムと移民(マイノリティ)にあるという怒りや不満を抱いているため。 だからこそアメリカの陰謀説は白人社会のプライドと怒りを掻き立てるもので溢れている訳で、 そんな白人層の怒りを代弁し、危機感を煽って誕生したのがトランプ政権であり、白人社会の守護神としてのカルトステータスを確立したのがトランプ氏。
したがって今回のテロは不正選挙の陰謀説を信じる信じないといったインスタントなレベルだけで起こったというよりも、 その根底にある 自分達の優位性が脅かされることを嫌い、反発する保守派白人層による至上主義、特権意識に駆り立てられた結果と解釈すべきものなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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