Feb 22 〜 Feb 28 2021

"Unequality of LGBTQ Equality Act"
LGBTQ平等法案で生じる不平等!?


今週のアメリカでは引き続き先週のスノーストームによる停電、その後の深刻な水・食糧不足に見舞われるテキサスのニュースが大きく報じられていたけれど、 今週メディアがフォーカスしていたのが 政府の規制を受けないエナジー・インディペンデンスを謳って見事に失敗したテキサス州の政策。 その批判をかわすためにテキサス州議員や州知事がFoxニュースと共に吹聴したのが、「風力発電機が寒さで凍り付いたのが停電の原因」という いかにもクリーン・エナジーを毛嫌いするテキサスらしいデマ。しかしテキサスにおけるクリーン・エナジー電力は未だ全体の20%にも満たない状況で、 エナジー専門家や世論の反発を受けて、州知事がそのコメントを撤回する記者会見をようやく行ったのが木曜のこと。
その前後から州知事が全責任を押し付けたのがテキサス州の電力会社エルコット(Ercot:Electric Reliability Council of Texas)。 エルコットは「もし州の一部を停電にしなければ州全体がブラックアウトに見舞われた」という危機的状況を説明していたけれど、 同社役員はそんなリスクを理解してか 全員が州外に住んでおり、今週には全員が辞任。
現地ではスプリンクラーや水道管の破裂による家の中の浸水で、自宅で暮らせない人々も多く、 それに追い打ちをかけるようにコロナウィルス感染者が増えていることも伝えられるのだった。



MeTooムーブメントにおける男性被害者優遇


今週のアメリカのメディアでは2018年のMeTooムーブメントがスタートした直後と同じようなペースで過去のセクハラや性的虐待の告発を受ける 著名人が報じられていたけれど、その顔ぶれは かつての側近に対して身体に触れる、キスをするなどの行為を繰り返し、ストリップ・ポーカーに誘っていたことを 告発されたNYのクォモ州知事(写真上左)、2018年に若手女優をレイプした容疑で訴追されたフランス人俳優 ジェラール・ドパルデュー(写真上左から2番目)、「薬を盛られて性的暴行を受けた」と 合計11人の男性モデルに訴えられたデザイナーのアレクザンダー・ウォン(写真上中央)に加えて、プロゴルファー、ミシェル・ウーのアンダー・スコート・ショーツを 下着と思って眺めていた様子をコメントしたルディ・ジュリアーニに対する批判も報じられていたのが今週。
でもこれらが霞むほどの大報道になったのが、アメリカ女子体操チームのかつてのコーチで性的虐待、セックス・トラフィッキングを含む24の容疑で訴追された ジョン・ゲッダート(63歳、写真上右から2番目)が、その数時間後、法廷出廷前日に銃で自殺を図ったニュース。 アメリカ女子体操界におけるチーム・ドクター、ラリー・ナッサー(写真上一番右)による20年以上に渡る”治療”と称した少女達への性的虐待行為は 長きに渡って隠蔽工作が行われ、 ようやく裁判で彼に175年の禁固刑が言い渡されたのは2018年1月のこと。 ジョン・ゲッダードはそのラリー・ナッサーにティーンエイジャーの選手達を送り込み、性的虐待を知りつつも嘘の証言で隠蔽に加担しただけでなく、 自らも選手やスタッフに虐待行為を働いていた人物。 女子体操連盟は100件以上の訴訟を抱えて2018年に破産を申請しているけれど、同様の破産は古くは1970代の性的虐待被害者からの 訴訟を抱えたカソリック教会やボーイスカウト連盟も申請しているもの。
しかし女性被害者達がここへきて怒りを新たにしているのが、 彼女らが性的虐待やレイプの被害を訴えるには、DNA証拠採取や写真撮影など被害を立証するレイプキットや、 度重なる尋問、時に被害者でありながら自分が責められる不当な扱いを受けるだけでなく、犯罪が直ぐに時効を迎えるのに対して、 男性が教会牧師やボーイスカウトに性的虐待を受けたケースでは 屈辱的な取り調べが無く、一方的に言い分が認められるだけでなく、時効が覆されて何十年も前の被害に対する訴訟が認められるダブルスタンダードがまかり通っていること。 同じ性的虐待被害者でも、なぜ女性だけが被害を訴えるハードルが高いのかに今更ながら不満の声が高まっているのだった。



LGBTQ平等法案が女子スポーツを崩壊させる?


さて今週のワシントンでは、下院議会でLGBTQ平等法案が民主党議員全員と、共和党議員3人が賛成票を投じて可決されているけれど、 これは既存の公民権法を改正して、トランスジェンダーを含むLGBTQの人権と平等が法律で保護されるよう明示する法案で、 バイデン大統領が選挙戦中から掲げてきた公約の1つ。
法案は今後、下院よりも保守派メンバーが多い上院に送られ、民主・共和議員が同数である上院で可決されるかは微妙なところ。 キリスト教保守派が多い共和党は、LGBTQの権利を保証することは宗教の自由を冒涜する行為として反対しており、 学校現場では共和党支持の親たちが長く猛反発しているのが 男性として生まれてきたトランスジェンダーの生徒が女児と同じトイレを使うこと。
さらにこの法案の是非において最も判断が難しいと言われるのが「女子スポーツの世界で、筋力や運動神経が女性に勝るトランスジェンダー・アスリートが 不当なアドバンテージを得ている」との抗議と訴訟が起こされていること。 LGBTQに否定的であったトランプ政権はそんな不平等を訴える女子アスリート達の訴訟をバックアップしていたけれど、 それがバイデン政権に代わったことで彼女らは後ろ盾を失っているのだった。
スポーツ関係者の間では「LGBTQ平等法案は女子スポーツ界に不平等をもたらす」という意見が多く、 法案可決は女子スポーツ界への打撃を危惧する声が圧倒的。 これは男性が女性に性転換をしたケースのみで起こる問題であるけれど、既にトランスジェンダー・アスリートの競技スポーツ参加を認めている州では、 元男性のアスリートが圧倒的に有利になっているのは周知の事実。アメリカではスポーツはレベルが高くなればなるほど、 大学奨学金から、ナイキのようなブランドのスポンサーシップ等、大金が絡むビジネスになってくるのは言うまでもないことで、 LGBTQの人権擁護を支持する人の間でも不平等、不適切が指摘されるのがトランスジェンダーの女子競技スポーツ参加なのだった。



アメリカで増え続けるLGBTQ人口


今週発表されたのがアメリカ国内のLGBTQに関するギャロップ・ポールの最新調査結果で、2020年段階でLGBTQのアイデンティティを持つ成人の割合は過去最高の5.6%。 最後に調査が行われた2017年から1.1%のアップで、人数に換算すると約1800万人。 1965年より前に生まれた55歳以上の人口に占めるLGBTQの割合が僅か2%なのに対して、18歳〜23歳のジェネレーションZにおいては15.9%を占めているのだった。
そんなLGBTQコミュニティに対するメディカル&メンタル・ヘルス・サポートの必要性が重視されてきたのを受けて バイデン政権が保健社会福祉省のアシスタント・ディレクターに指名したのがペンシルベニア州保健福祉省長官で、自らがトランスジェンダーのレイチェル・レヴァイン博士。 今週には上院議会で彼女の承認聴聞会が行われたけれど、その場で未成年トランスジェンダーのホルモン治療や性器切除手術を批判し、 「トランスジェンダーの増加は 世の中に受け入れられるために性転換をするべき という社会的圧力が原因」と語り、 事実上、性同一性障害の存在を否定したのが超トランプ派で知られる共和党議員、ランド・ポール。 今週はこの聴聞会とLGBTQ平等法案の影響で、突如ワシントンDCで議論の中心となっていたのがトランスジェンダー。
リベラル派がLGBTQコミュニティを支持する立場であるのに対して、右寄り保守派はキリスト教信仰に反するとしてLGBTQの存在を否定する立場であることから 本来ならば社会的弱者に理解を示さなければならない状況が、政治的に国を分断する要因として利用されているのが近年のアメリカの嘆かわしい実態。 トランスジェンダーに対する人々の考えが 銃規制、環境問題、人工中絶、移民問題、トランプ支持といった全く無関係のものと1つのパッケージになって 捉えられてしまう傾向が顕著になっているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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