Mar 8 〜 Mar 15 2021

"Aftermath of Bombshell Interview"
物議を醸したハリー&メーガンのインタビューが最も打撃を与えたのは?


今週、ワクチン投与が成人人口の10%に行き渡ったアメリカで 早くも話題になっていたのが6月にはハード・イミュニティ(集団免疫)に達するという見込み。 木曜の時点で1回以上のワクチン投与を受けたアメリカ人の数は6,250万人に達し、65歳以上の高齢者の60%にワクチンが行き渡ったことから、高齢者擁護施設でようやく認められるようになったのが 家族を含む来訪者との面会。
アメリカではコロナウィルス感染者の公式発表数が約3000万人であるものの、実際にはその3倍以上が感染していると見込まれており、90万人が既に免疫を持つと想定した場合、 現在のペースでワクチン投与が進むと 免疫を持つ国民が75%に達し、集団免疫の数値(70〜85%)を満たすのは6月。 しかしワクチン投与による免疫力が1年以上持続すると言われるのに対して、感染者の免疫持続力は3ヵ月〜1年と定かでないことから、ハード・イミュニティに達してもそれがどの程度持続するかは予測不可能。
今週には上院で一部変更が加えられた1.9兆ドルのコロナウィルス経済支援策が ようやく下院で可決され バイデン政権が初の法令化勝利を収めたけれど、 これによって年収8万ドル未満の国民に対して1400ドルが支給されるのに加えて、パンデミックで大打撃を受けたレストラン・ビジネスに対する280億ドルの支援金、ワクチンの流通と投与に75億ドル、 220億ドルの家賃補助、390億ドルの育児補助が支給される見込み。 特に規制解除でようやく通常のキャパシティ、もしくはそれに近いキャパシティの経営に戻れるレストラン業界にとって、この支援金はビジネスの追い風になることが見込まれるのだった。



誰が英国王室の人種差別主義者か?


今週前半にメディアとソーシャル・メディアの話題を独占していたのが、3月7日 日曜に2時間に渡って放映されたハリー王子&メーガン・マークル夫妻の Megxit以来初のインタビュー。 インタビュアーを務めたのは、夫妻と直接面識が無いまま2018年のウェディングに招待され、その後夫妻と親しい関係になったオプラ・ウィンフリー。 オプラはハリー王子とアップルTVでメンタル・ヘルスに関するジョイント・プロジェクトを進めて久しい状況。
このインタビューでは、オプラは900万ドルのギャラを支払われているものの、ハリー&メーガン夫妻には一切の支払いは無かったとのことで、 アメリカ国内では1700万人の視聴者数を記録。イギリスを含むインタビューが今週放映された世界各国の視聴者総数は5000万人で、 様々な意味で世論の関心を集めていたのだった。
インタビューは 当初90分番組になる企画であったものが2時間に延長されており、前半はメーガンが1人で、後半でハリー王子が加わってインタビューを受ける構成。 終わってみれば メディアと人々の関心が集中したのは、メーガンがアーチーを妊娠中に ハリー王子が王室の上級メンバーと交わした会話の内容。 それによれば、アーチーには王子としての称号もロイヤル・ファミリーとしてのセキュリティ・ガードも与えられないと言われ、 アーチーのルックス、すなわちどれだけ肌の色がダークに生まれて来るかの懸念を表明されたとのこと。 この内容が語られたのはメーガン1人がインタビューを受けたセグメントで、ハリー王子自身はその内容には触れなかったものの、 それを言われた時のショックについては自らの言葉で語っていたのだった。
また当時メーガンはそのショックで精神的に落ち込み 精神医療のヘルプを求めたものの、 体裁上の都合で王室スタッフに それを認めて貰えなかったとも語っており、現在社会で最もセンシティブなレイシズムとメンタルヘルスという2つの問題が大きく取り沙汰されていたけれど、 中でも憶測を呼んでいたのが 果たしてイギリス王室の誰が人種差別発言をしたか。 オプラ・ウィンフリーによれば、ハリー王子がオフレコでその発言の主がエリザベス女王とフィリップ殿下ではないことを語っていたとのことで、 チャールズ皇太子、もしくはウィリアム王子との見方が高まり、その2人は共にハリー王子のインタビューに非常に腹を立てていることが伝えられるのだった。
エリザベス女王については、ハリー王子と良好な関係を続けてきただけに インタビューの中では特に敬意と忠誠心を持って語られており、 事前に懸念されていたキャサリン妃についても、メーガンが2018年のロイヤル・ウェディング直前にシャーロット妃が着用するフラワーガールのドレスを巡るトラブルに言及し、 「英国メディアによって 自分がケイトを泣かせた悪者にされ、バッキンガム宮殿がその訂正を拒んだ」とリベンジ・コメントをしたものの、 キャサリン妃は「後日自分の非を認めて謝罪をしてくれた」として、英国タブロイド紙が確執を伝える2人であるものの否定的コメントは無く終わっていたのだった。



人種差別発言は言論の自由?


通常ロイヤル・ファミリーのメンバーがメディアのインタビューに答える際には、その内容が事前にバッキンガム宮殿のレビューを受けて、承認を得てからの放映になるもの。 しかしハリー王子とメーガンのインタビューは、王室関係者には一切事前の内容通達が無いまま放映される異例のものであったことから、 その内容を懸念した英国王室、及び王室寄りのメディアが取ろうとしたのは、 多くのイギリス国民が再開される学校や、コロナウィルスのワクチン、そして手術を終えたばかりのフィリップ殿下の健康問題等のニュースに忙しく、 アメリカに渡り イギリスでの存在感が薄くなったハリー&メーガンのインタビューは「関心を払うに値しない」と軽視を装うポジション。
しかしながら実際に放映された途端に、アメリカでもイギリスでも誰もが黙っていられなかったのがこのインタビューについてで、 イギリス国内では保守派、王室支持派を中心にハリー&メーガンが「英国王室を崩壊に導こうとしている」、「ハリー&メーガンが王室の人種差別問題をでっち上げている」と猛反発したのに対して、 王室離れをが進む若い層を中心とした英国民、及びマイノリティ人種の間では イギリスのみならずアメリカでも エリザベス女王、もしくはバッキンガム宮殿側が王室内の人種差別問題について しっかりした見解と対応を見せるべきという厳しい意見が聞かれていたのが今週。
こうした一般人のリアクションに加えて、アメリカではFoxニュースのタッカー・カールソンや元Foxニュースのメーガン・ケリー、 英国ではITVのピアース・モーガン等、以前からアンチ・メーガン派であったニュース・アンカーやパーソナリティがメーガン攻撃を行おうとして、 レイシスト&セクシストとして批判を浴びる結果になっていたけれど、そうした批判の応酬によってさらにインパクトを増していたのがこのインタビュー。 中でもITVのグッド・モーニング・ブリテン(GMB)のホストで、かつてはメーガンについて好意的なブログを書きながらも、彼女がハリー王子との交際を始めて以来、 一切のコンタクト絶たれたことを根に持っているともいわれるピアース・モーガンは、「メーガンがインタビューで語ったことは一切信じない」と語っただけでなく、 「メーガンが語れば、たとえそれが天気予報でも信じない」とまで発言。 同番組で天気予報を担当するアレックス・ベレスフォードに「Has she said anything about you since she cut you off? I don't think she has, but yet you continue to trash her (彼女は君と縁を切ってから何か言った?何も言っていない、でも君は彼女のことを貶し続けている)」とやり返された途端に、腹を立ててスタジオを飛び出した様子は世界各国で報じられているのだった。 これを受けてITVに4万1000件の苦情が寄せられたことから ピアース・モーガンは一度は謝罪をしたものの 更なる問題発言に対する謝罪を拒み、自らが高視聴率に導いた番組のホストを降板。
海を越えたアメリカでは、そのニュースを知ったモーガンの長年の友人、シャロン・オズボーンが自身がレギュラーのトークショー”Talk” で 感情的を剥き出しにして彼をサポート。 共演者に責められる一幕があったけれど、今度はそれを知ったモーガンが ”Talk” のWokeカルチャーを批判しているのだった。 そのモーガンは自分に対する人種差別、性差別発言に対する批判を「言論の自由」に摩り替える いかにも彼らしい戦略を展開。 彼のGMBへのカムバックには既に20万人が署名したと言われ、週末のアンケート調査ではハリー&メーガンのポピュラリティは過去最低を記録したことが報じられているのだった。



英国内よりも大切なコモンウェルスのリアクション


このインタビューがアメリカで放映された3月7日はコモンウェルス・デイの前日で、コモンウェルス・デイは例年ウェストミンスター寺院にロイヤル・ファミリーが集まり、 式典を行うのが習わし。今年はパンデミックでそれが中止となっているけれど、、ハリー&メーガンのインタビュー放映は そんなコモンウェルス加盟国へのアピールを視野に入れて日程を選んだと指摘されるもの。
コモンウェルスは1931年にウェストミンスター憲章で成立したイギリス本国と自治領、旧植民地を結ぶ政治的合体で現在その加盟国は54ヶ国。 そのうちカナダ、オーストラリア、ニュージーランドを含む16か国は、個々の独立した国家でありながら 英国王室を君主とするコモンウェルス・レルム。すなわちカナダの女王と言えばエリザべス女王であり、 Megxit直後にカナダに移住したハリー王子&メーガン夫妻のセキュリティ費用の半額負担が自動的にカナダ政府に科せられたのは カナダがコモンウェルス・レルムであるため。 レルムを含む加盟国では英語を母国語とすること、民主主義、人権問題等の政治&社会規範がコモンウェルス憲章に従ったものとなっており、 英国王室の存在、支配力、影響力が単なる一国の王室のものとは比較にならないのは言うまでもないこと。

近年ではコモンウェルス加盟国の中に離脱を望む声が高まっているところも少なくないだけに、コモンウェルス・デイの前日に放映されたインタビューで 英国王室における人種差別について語られたことは 加盟諸国における英国王室のイメージに大打撃をもたらしたのはアソシエーテッド・プレスも大きく報じたニュース。 しかもその中にはルワンダ、ウガンダ、南アフリカ、ナイジェリア等、アフリカ諸国がいくつも含まれており、歴史的にイギリス、及びイギリス王室からの 差別と搾取を受けてきた意識が強いアフリカ諸国では、「英国王室の人種差別なんて今更大騒ぎするような新しいニュースではない」といった シニカルな声に交じって、その長年の抑圧への怒りを新たにする意見も聞かれていたのだった。
また以前からコモンウェルス・レルム離脱が取り沙汰されていたオーストラリアでは、「エリザベス女王が君主を退く時がレルム離脱の時」との声が強くなったとも報じられたけれど、 EUを離脱した英国が、欧州の孤立国家と見なさないパワーの源になっているのがコモンウェルズ。 したがって英国王室がこのハリー&メーガンのインタビューによってもたらされたイメージダウンを自国民の世論のコントロールだけで片付けられると考えていたとすれば、それは大間違い。
インタビュー放映前までは、「ハリー&メーガンは英国王室、及び英国王室によって恩恵を受けるイギリス国内及び、コモンウェルス加盟国の人々の パワーを軽視している」という指摘が聞かれていたけれど、 いざインタビューが放映されてみると、コモンウェルスというものが加盟国の国民にとっても旧体制の象徴でしかない様子を露呈した印象は否めないもの。
そもそもきれい事を言わなければ英国社会の階級意識や人種差別は有名私立校でも プロサッカーの世界でも公然の秘密としてまかり通っているもの。 王室のダメージ・コントロールをしたところで、それが差別の無い社会を意味する訳ではないけれど、それはヨーロッパの他の国々でも見られる状況なのだった。

来週のこのコーナーは執筆者旅行中にて1週お休みをいただきます。次回更新は3月4週目となります。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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