Apr 26 〜 May 2 2021

"Overcoming Vaccine Hesitancy"
ワクチン普及が明暗を分ける経済復興、アンチ・ワクチン派はどう扱われる?


今週のアメリカでは、国内のどのニュースよりもトータルで報道時間が割かれていたのが インドでのコロナウィルス感染拡大のニュース。 病院も火葬場もパンク状態となった現地の壮絶な様子が人々を愕然とさせていたけれど、インドの突然の感染拡大は医療の世界ではミステリーと言われるもの。 そもそもインドは肥満人口が少なく、屋外で過ごす時間が長いライフスタイルが対コロナで好影響に働いたと指摘され、 昨年のファースト・ウェーブの段階で都市部の約半分の人口がマイルドな症状に感染したことから 「コストをかけずにワクチン効果を達成した」と言われて コロナ感染の最悪事態を上手く回避したと考えられてきた国。 2021年2月の1日の死者数は約100人で、これはインドの人口を考慮すれば感染をコントロールしていると判断される数字。 そのためモディ首相は自らのリーダーシップを高らかに自画自賛する勝利宣言をしていたのだった。
そうして3月11日からウィルス規制無しで始まったのがヒンズー教最大のイベント、クンブ・フェスティバル。しかしながら時を同じくして既に上昇の兆しを見せていたのがインドでのウィルス感染。 4月に入ってからはそれが一気に加速し、今週にはアメリカが保持していた1日の新規感染者数の最多記録を毎日のように更新。 金曜には40万人近い新規感染者と2000人を超える死者を記録しており、 これを受けて医療界で高まったのが「インドは自然に集団免疫に達したのではなく、実は感染ピークが先送りされただけ」という指摘。 中国の科学者も「マイルドなコロナウィルス感染からはマイルドな免疫しか望めない」という見解を発表しているけれど、 インド政府は国民の免疫を過信していたことから ワクチン普及率は現時点で僅か2%。 しかしインドはワクチン生産国であることから、バイデン政権は今週アストラゼネカのワクチンと共にワクチン原料をインドへ緊急輸送すると発表。世界各国からも現地で不足する 酸素タンクも送られているけれど 完全に焼石に水の状態。
これを受けて ソーシャル・メディア上にはモディ首相辞任を求めるハッシュタグが溢れていたけれど、インド政府は フェイスブック、インスタグラム、ツイッターに対して政府対策を批判するポストを除去するように命じたことが報じられているのだった。



ワクチン・へジタンシーの攻略


アメリカでは4月30日の時点で、人口の30.5%に当たる1億140万人がファイザー、モデルナの2回の注射、もしくはジョンソン&ジョンソンのシングル・ショット・ワクチンの接種を終えた”フリー・ヴァクシネーテッ”ドの状態。 1回のワクチン接種を受けた人の数は1億4500人で、新規感染者数は過去2週間で25%下落したと言われるものの 1日のコロナウィルス死者数は未だに600人以上。 入院患者数は約3万6000人。 ワクチン投与は2週間前に1日450万人を超えるペースに達したものの、現在ではそれが250万人にスローダウンしているのだった。
すなわち積極的にワクチン接種を受けようとする人達への投与が一段落したことを意味しているけれど、最新のアンケート調査によれば、 「ワクチンを接種しない」と回答したアメリカ人は12%で、昨年8月の約4分の1に低下。もう少し様子を見てから接種するという人は15%で、 目下 NYを始めとする各州政府が力を入れているのが そんな”ワクチン・へジタンシー”と呼ばれる接種を躊躇している人々に対するアプローチ。
NY市では「ワクチンを受けに来ないのなら、こちらから出向こう」とばかりに、ワクチン接種者が少ないエリアを中心に ワクチンバスが出向いて通りがかりの人に 接種を呼びかけている他、マンハッタンの自然史博物館内にワクチン・センターを設けて予約無しのウォークインの投与を行っている状況。 ウィスコンシンではNBAミルウォーキー・バックスの5月2日、日曜の対ニュージャージー・ネッツ戦で、スタジアム内で観戦中の観客に対して ワクチン投与を行うというユニークな企画を打ち出しているのだった。

一方アメリカの大学は、秋からのセミスターをインパーソン・クラスで受けるにあたってワクチン接種を義務付けるところが徐々に増えており、 現時点でそのポリシーを打ち出しているのはコロンビア、ブラウンといったアイヴィーリーグを含む約30校。それらの大学ではキャンバス内にワクチン・センターが オープンしているところが多く、秋までにはそれが100校程度に拡大する見込み。
職場においては 通常のワクチンである場合、中小企業であれば雇用主が従業員に対して接種を義務付けることが可能であるけれど、コロナウィルスのワクチンはエマージェンシー・ユーズであることからその例外。 大手企業の中にはマクドナルドから、ターゲット、マリオットまで、ワクチン接種を受けた従業員に対してインセンティブを支払う制度を導入するところが増えているのだった。 今後最も雇用が増えると見込まれるホテルやレストランのようなホスピタリティ業界では、新規採用の条件にワクチン接種を謳うところは多く、これは法律上 問題無い採用基準。 中小ビジネスの雇用主の中には 「社会でコロナウィルスを乗り切るためにワクチンを接種しようという気運が高まっている時に、陰謀説を掲げてそれを拒絶するようなメンタリティの人間を雇うと 後々他の事でも問題が出て来る」とワクチン接種を人間性と結びつけて捉える声も聞かれるのだった。



私がファイザーのワクチンを選んだ理由


私は3月半ば過ぎまで日本に一時帰国していたこともあり、ワクチン接種は出遅れ組。 その私がアッパー・イーストサイドの自宅ビル内のファーマシーでモデルナのワクチンが打てるにも関わらず、ミッドタウンまでわざわざ出掛けてファイザーのワクチンを打つことにしたのは 友達4人でZOOMチャットをしていた時のこと。そのうち2人が既にワクチンの投与を終えていて、私ともう1人の友達がこれからだったので 「モデルナか、ファイザーか?」をという話になり、「バイデンはファイザー、カマラ・ハリスはモデルナ、 ドリー・パートンはモデルナにワクチン開発費100万ドルを寄付しているからモデルナ、イヴァンカ・トランプはファイザー」と友達が言ったところで、 もう1人の友達は「イヴァンカと一緒になりたくない!」とのリアクション。でも「プーチンもファイザー」と聞いた途端に友達も私も 「だったらファイザー!」と決めてしまったのだった。 どうしてプーチンの名前がワクチン選びにそんな大きな影響力を及ぼすのかは上手く説明が出来ないけれど、ワクチンを打ちに行った際の待ち時間に その場で会った人に「プーチンもファイザーを打ったらしい」と話したら、その人も喜んでいたので 誰もが同じように考えるようなのだった。
ワクチンの接種自体は至って簡単で、私は事前にオンライン予約を入れたけれど 2回の接種分が同時に予約できるシステム。 所要時間は レジスターを済ませて注射を打つまでが約15分、その後15分待機する必要があるので合計30分で、もちろん無料。 注射自体は2秒以下の速さで、針を刺すだけで終わるという感じ。セレブが公開したワクチン接種の写真を見て じっくり液体を入れていくような類の注射だと思っていた私は すっかり拍子抜けしてしまったのだった。 副作用は私が知る限り ファイザーを打った人は殆ど無いようで、私自身も翌日に注射後特有の違和感が腕にあった以外は全く異常無し。 モデルナを打った人の中には2回目の注射の後に熱が出たという人が何人か居たけれど、1〜2日寝ていれば治る程度の症状とのことなのだった。

私がワクチン接種の予約をするきっかけになったのは、NY市では ファイザー社のワクチンを投与しているところが少なく、ワクチン投与の年齢制限がなくなる前に打っておかないと 「必要に迫られた時にファイザーが打てないかも…」と考えたため。でも特に旅行などを計画していない人の中にはアンチ・ワクチン派でなくても先送りにしている人は決して少なくないとのこと。 絶対にワクチンを拒むアンチ・ワクチン派は都市部には少なく、圧倒的に多いのが中西部の保守派貧困層。 逆にNYではワクチンが普及してからというもの、ようやくパンデミックの長いトンネルの出口が近付いてきたことは誰もが体感していることで 街中の人通りも一年前とは段違い。 そのNY市は今週、7月1日をもって全てが平常営業に戻るカムバック宣言をしたばかりであるけれど、 今週発表された2021年第1四半期のアメリカ経済も1.6%、年率に直して6.4%の上昇。逆に金曜に発表されたユーロゾーンの経済は0.6%下落してリセッションに逆戻りで、 この明暗を分けたと要因と言われるのがワクチン普及と莫大な公的資金の投入。そのユーロゾーンは この夏の旅行シーズンにワクチン接種をしたアメリカからの旅行者受け入れを 週開けに発表。今後もワクチン普及率が 経済の復興との関連性を高めていくことが見込まれるのだった。



私がワクチン陰謀説を信じない理由


アンチ・ワクチン & ワクチン・へジタンシーの最大の原因になっているのがネット上、特にYouTube上で広まる陰謀説。 「ビル・ゲイツがワクチンにマイクロチップを混ぜて人間に投与を企んでいる」という陰謀説をスタートした著名アンチ・ワクチン活動家のタイ&シャーリーン・ボリンジャー夫妻は アメリカの過去数年間のはしかの大復活に貢献した存在であるけれど、 もっとまともな疑心暗鬼的不安を持つ人の言い分で多いのは「インフルエンザの予防接種の効力でさえ65〜75%なのに、それを上回る95%の効き目のワクチンが 短時間で開発されるなんておかしい」というもの。 これについては、今のご時世はワクチンでも病気治療薬でも一から開発されることはなく、ある程度の叩き台が存在して そこから開発されるもの。 加えて生物兵器を極秘で開発しているかは別として、生物兵器が使われた場合に備えてのワクチン研究は何処の国でもある程度は行われている訳で、決してパンデミックがスタートしてから 開発チームを作った訳ではないのだった。
インフルエンザの予防接種の効力が65~75%程度なのは、インフルエンザ・ウィルスにはさまざまなタイプがあり ワクチンはその年に流行するタイプを予想して毎年作られるもの。 したがってそれが当たる年もあれば、外れる年もある訳だけれど、それに対してコロナウィルスのワクチンはピンポイントでCOVID-19のためにデザインされたものであることを思えば95%の効力を誇っても さほど不思議ではないし、変異種に対してその効力が70~75%に低下するのも納得がいくところ。
ファイザーやモデルナのワクチンが超低温で保存しなければならない点を不審がる声もあるけれど、現在医療界ではがんの治療薬などで超低温保存が必要なものが増えていて、 だからこそ大病院ほど既に持っていたのがその冷却施設。なのでコロナウィルスのワクチンが特別という訳ではないのに加えて、そのがん治療薬も 近年では免疫力に働きかけるものに変わってきていることを考慮すれば、 コロナウィルスのワクチンが同じ保存法であってもさほど不思議ではないように思うのだった。ちなみにファイザー社のワクチンは現在2週間であれば普通の冷蔵保存が認められている状況。

陰謀説として多いのは「ワクチンが世界人口を減らす手段」というものだけれど、ワクチンの普及率が圧倒的に低いのは前述の通り 中西部の低所得者層に加えて、 かつて医療実験に利用された歴史があるアフリカ系アメリカ人。逆に普及率が高いのは白人の高額所得者で、マイアミのプライベート・アイランドや富裕層が集まるカントリー・クラブは ワクチンの流通がスタートした直後に優先確保をして大顰蹙を買っていたほど。 すなわち通常の陰謀説のターゲットにならない人々ほど接種しているのがワクチン。逆にパンデミックによって マイノリティ人種、高齢者、既往症を持つ人々が命を落とし、貧富の格差が更に開いたことを思えば、コロナウィルスがそれらを目的にばら撒かれたという説の方が遥かに信ぴょう性が高いと思うのだった。
さらに言えば、もし私がコロナウィルス対策を謳って陰謀を企てる側だったとしたら その手段として選ぶのは 最初から人々が疑ってかかるようなワクチンよりも、 誰もが疑わずにジャンジャン使っているハンドサニタイザーや使い捨てマスク。 実際にハンドサニタイザーについては、その売り上げが伸びてから アメリカでほぼ同ペースで増えたのが自閉症の子供とアレルギー症。 そうなってしまうのは皮膚から体内に入ったアンチバクテリア成分が 徐々に体内のバクテリアの量を減らしてしまうためで、これが良いことと思ったら大間違い。 人間の免疫力というのは、バリアのようなものではなく身体の中にどれだけの多くの善玉&悪玉バクテリアをバランス良く住まわせているか。 人間の身体はバクテリア無しでは食べ物を自力で消化分解することさえ出来ない訳で、人によって体重の2〜3キロを占めると言われるバクテリアは、 バランスがとれた状態で その量が多ければ多いほど身体が丈夫、すなわち免疫力が高いということ。
アメリカではハンド・サニタイザーに加えて、食肉用家畜に投与される抗生物質がオートイミューン・ディジーズ(自己免疫疾患)の原因と指摘されて久しいけれど、 それが引き起こすのが肥満、自閉症、うつ病、アレルギー症、皮膚のトラブル、老化の促進等。 したがってワクチンよりも まことしやかに存在しているものの中に、もっと疑ってかかるべきものが沢山あると言えるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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