July 26 〜 Aug. 1 2021

"Emotional Olympic, Gender Dress Code, Etc."
ワクチン義務化?、五輪ウォッチパーティー意外なインパクト、ジェンダー・ドレスコード, Etc.


今週発表されたアメリカの第2四半期の経済成長率は1.6%、年間成長率に直すと6.5%という好調ぶりで、 数字の上ではプレパンデミック・レベルに戻ったと言われるのがアメリカ経済。
しかし引き続き猛威を振るうデルタ変異種の影響で、今週にはCDC(疾病予防センター)が ワクチン接種者に対してもウィルス感染拡大地区におけるインドアでのマスク着用を呼びかけ、 ワクチン接種者であってもウィルスを撒き散らすリスクがあるという以前とは異なる見解を発表。 これを受けて今週にはグーグル、フェイスブックが 共に9月からのオフィス業務カムバックを10月半ばまで延期し、オフィス勤務に戻る社員全員に義務付けたのがワクチン接種。 また連邦政府、州政府の職員に対しても 9月までにワクチンを接種するか、さもなくばその後毎週感染テストを受けるかの選択が提示され、 ウォルマートやディズニーも接客スタッフに対するワクチン義務化を発表。
それ以外にもユニオン・スクエア・カフェ、グラマシー・タヴァーン、ザ・モダンといったNYの長寿人気レストランを経営するユニオンスクエア・ホスピタリティ・グループが、 その全傘下レストランで 9月7日から従業員全員と インドア・ダイナーに対してワクチン摂取を証明するワクチン・カード提示を求める 新たなポリシーを発表。ワクチン未接種の来店客はアウトドア・ダイニングのみになるけれど、 既にNYではエステラ、フランシェットといった人気レストランが一足先に来店客にワクチン・カード提示を求めるルールを導入している状況。
更に金曜には、9月からパフォーマンスを再開するブロードウェイ・シアターが 役者、スタッフ、観客の全員にワクチン接種を義務付けるプロトコールを発表。 ワクチンが接種出来ない12歳以下の観客にはウィルス陰性テスト結果の提示が求められ、加えて パフォーマンス中には 観客全員に義務付けられるのがマスク着用。 これに対するシアター・ゴーワーのリアクションは「安心してパフォーマンスが観られる方が嬉しい」というポジティブなもので、 「ウィルスのクラスターのせいで再びシアターがクローズするリスクは シアター・カルチャー存続のためにも避けるべき」との声も聞かれていたとのこと。
デルタ変異種の感染ピークが一段落の兆しを見せているイギリスでは、今週アメリカ、及びEU圏からのワクチン接種旅行者に対する14日間の自主隔離義務の 撤廃を発表。その直後からアメリカでは英国行きの航空券売上が250%もアップしているのだった。



五輪ウォッチ・パーティーの思わぬインパクト


東京オリンピックの米国放映局NBCのベテラン・コメンテーターで、今回のオリンピックが15回目というメアリー・カリッロが 日程の半分にようやく差し掛かろうという段階で語っていたのが「東京オリンピックは、観客不在の味気無いオリンピックになるという予想とは裏腹に、 過去に例を見ないほどエモーショナル・レベルが高いイベントになっている」というコメント。
彼女自身、何度も目頭を熱くする光景に出くわしたとのことだったけれど、 オリンピックを盛り上げるために不可欠と思われてきた観客の存在を補う以上のインパクトをアメリカの放映でもたらしているのが、チームUSAの選手地元で行われている ウォッチ・パーティーの様子。 本来なら選手と共に日本に出掛けて現地で応援しているはずの家族や親類、友人、サポーター達が地元に残って応援しなければならないことから、 かつてないほど規模が大きく、エモーショナルに盛り上がっているのが全米各地のウォッチ・パーティー。
多くのアスリートを送り込んでいるフロリダ州では、ユニヴァーサル・リゾートが家族と友人が集まれるウォッチ・パーティー会場をホストしているけれど、 各地のウォッチ・パーティーには取材陣も押し寄せ、一部の競技では会場の様子を分割画面で同時放映してそのエキサイトメントを盛り込むことに成功。 競技後には アスリートとのインタビューが家族とのフェイスタイムを交えて行われ、 オリンピックというものが 決してアスリートだけがメダル獲得のためにプレーしているのではなく、 その背後に彼らを支える家族の犠牲やコミュニティの存在があることをビューワーに大きくアピールしているのだった。
パンデミックのせいで東京オリンピックは アスリート達にとって極めて孤独で、精神的に厳しい闘いを強いられているとあって、 競技が終わって家族や友人達の顔をフェイスタイムで観た途端に泣き出すアスリートも居るけれど、 そんなアスリートとサポーター達の感情のクライマックスが今回のオリンピック放映の最大の目玉。 ここまで緊張と熱のこもった応援や歓喜、感動のリアクションは、プロスポーツの試合には決して見られないもの。 ソーシャル・メディア上では競技自体よりもウォッチ・パーティーの興奮や喜びの様子がヴァイラルになるケースも多く、 熱心に観戦する人々の姿が 時にスポーツ以上に見る側の心を動かすことを立証しているのだった。



ジェンダー・ドレスコード


2週間前にヨーロッパで行われていたビーチ・ハンドボールEuro21選手権でノルウェイ・チームが規定のビキニボトムを着用せず、 スパンデックス・ショーツで試合に臨んだことから、罰金を科せられたニュースが世界的に大波紋を広げていたところに、 東京オリンピックでドイツの女子体操チームが「スポーツをセクシャライズしたくない」、「自分達が心地良いウェアで競技に臨みたい」という理由で、 足首までのユニタードを着用したことから、賛否両論のリアクションが見られていたのが今週。
大方はドイツ・チームをサポートする意見で、平均年齢26歳という彼女らの「年齢に応じて身体が変わるだけでなく、身体に対する意識、着用するウェアに対する意識も変わってくる」という 女性なら誰もが感じる言い分に賛同していたけれど、 その反発意見としては、「歴史を紐解けば、女性の肌の露出が禁じられた時代から 今のスタイルに辿り着いたのは、女性達が動き易さを求めた結果」というものから、 「また足首丈のスカートでテニスをする時代に戻る気か?」という極端なものまでが見られていたのだった。

しかし体操、新体操、ビーチ・バレーボールといった肌や身体の線を露出するウェアのスポーツが、男性の目からセクシャライズされているのは紛れもない事実。 今年春にはESPNの男性コメンテーターが女子体操選手を”スキャンティ・クラウド”と呼んで番組を外されている一方で、女子体操選手の全裸パフォーマンスをフィーチャーした日本のアダルト ビデオの存在は 海外のドキュメンタリーでも大批判されている日本の恥。 今週には、世界のメディアにオリンピック映像を届けるOBS(The Olympic Broadcasting Services)のCEOが、「今後はよりジェンダー・ニュートラルな映像を心掛ける」と 声明を発表していたけれど、女性アスリートの映像の方がボディパーツのクロースアップや、前屈みの姿勢を後ろから捉える映像が多いなど、 カメラの捉え方にもスポーツをセクシャライズする視点が入っていたことが事実上認められていたのだった。
とは言ってもここで問題になっているのは、肌の露出やカメラ・アングルではなく「パフォーマンスに影響が無いのであれば、女性アスリートが自分達にとって心地良いウェアでプレーする権利が認められるべき」ということで、 特定のドレスコードを女性だけに押し付けることが性差別であることに気付かない連盟や協会のエグゼクティブの判断で決まるべきではないということ。
ちなみに前述のノルウェイ・チームがビーチ・ハンドボール連盟に科せられた罰金については、シンガーのピンクが彼女らをサポートするために 支払いを申し出たことが報じられているのだった。



And… メンタルヘルス


今週のアメリカで避けて通れない話題になっていたのが、誰もがゴールドメダル獲得を疑わなかった女子体操のシモーヌ・バイルスが、メンタル・ヘルスを理由にチーム・ファイナル以降の競技を棄権したニュース。 多くのメディアが同じくメンタル・ヘルスを理由にテニスのフレンチ・オープンを離脱し、東京オリンピックの金メダル候補と言われながら今週敗退したナオミ・オオサカ選手とシモーヌを比較する報道をしていたけれど、 そのリアクションのマジョリティはシモーヌの棄権とメンタルヘルスを重んじる姿勢をサポートするもの。 しかしテキサス州司法長官代理が彼女を「National Embarrassment(国の恥)」とツイートして炎上したり、 「プレッシャーと闘うのもはスポーツのうち」、「プレッシャーの出所は多額のスポンサー契約とソーシャル・メディアだ」として、 かつてのテニス選手、体操選手にはあり得ないナオミ選手の6000万ドル、シモーヌの1000万ドルの個人資産を持ち出す声も聞かれていたのだった。
メディアの中には2人が共にマイノリティ人種の女性トップ・アスリートで、それぞれが社会問題についてスピークアップしているアクティビスト・アスリートであることから、 右寄り保守派、及びそのメディアからの風当たりやジャッジメントが強いことを指摘する声もあったけれど、実際に2人に対して圧倒的に否定的なのが右寄りの保守メディア。 ナオミ選手がブラック・ライブス・マターの抗議活動に積極的であったのに対して、 シモーヌ・バイルスがスピークアップしていた問題は、女子体操連盟が 元チーム・ドクターで現在服役中のラリー・ナッサーによる長年に渡る選手に対する性的虐待を知りながら、 野放しにし、その隠蔽をしてきた問題。被害者数は150人以上で、ラリー・ナッサーによるメディカル・トリートメントを名乗ったレイプに対して 女子体操連盟からの圧力が原因で FBIが数ヵ月以上 捜査に動かなかった内部レポートが公表されたのはオリンピック開会式の約1週間前のこと。 虐待被害者であったチームUSAのメンバーがこぞって引退したことから、体操連盟に対して体制改善を求める圧力が掛けられる唯一の現役被害者になっていたのがシモーヌ。 ラリー・ナッサーが服役の身となったところで、女子体操連盟が謝罪と改善をしない限りは シモーヌを含む被害者達の闘いは終わっていないのだった。
シモーヌの棄権に最も同情し、大きなサポートを寄せたのが オリンピックの最多メダル獲得数を誇り、自らもメンタルヘルスで苦しんだことを公にしている元水泳のマイケル・フェルプスであったけれど、 彼が白人男性として現役時代に抱えていたメンタルヘルスの問題と、ナオミ選手やシモーヌが抱える問題を同じレベルで判断すべきでないという意見もあり、 結局のところメンタルヘルスは本人の問題であり、「周囲が勝手に状況を判断してジャッジすべきものではない」というところに落ち着くのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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