Sep. 20 〜 Sep. 26 2021

"Gabb‘y's Follow Up, US Food Shortage, Supermodel's Damage, etc."
ガヴィ失踪フォローアップ、米国食糧不足?、スーパーモデルのダメージ、Etc.


今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのは、先週のこのコラムでもお伝えしたガヴィ・ペティ―ト失踪事件。 彼女とフィアンセのブライアン・ロンドリーが7月から出掛けたのがアメリカ横断旅行。旅先で度々喧嘩が目撃された2人は、やがてガヴィが消息を絶ち、ブライアントだけが9月1日にフロリダの実家に戻っており、 その旅行の様子がインスタグラムにポストされ続けていたこともあって 全米の関心を集めていたのだった。
先週日曜にはガヴィのものと思しき遺体がワイオミングの国立公園で発見されているけれど、本来なら不可能と思われる巨大な公園内での遺体発見の手がかりとなったのは、 同じ頃に同じ公園でキャンプをしていたYouTuberが撮影したビデオにガヴィとブライアンが旅行に使っていた白いバンが偶然捉えられていたこと。 遺体が彼女であると確認されたのは週明けのことで、その1週間前から行方不明になっていたのが重要参考人であるブライアン。 現在は遺体解剖によって死亡時期と死因の確定が急がれている段階で、ブライアンは未だこの事件で逮捕するには証拠不十分であることから、 警察は彼がガヴィのものと思われる他人名義のデビッド・カードを使って現金を引き出した容疑で 木曜に彼を全米指名手配。 一日も早く彼を捕らえ、別容疑による拘束期間中にガヴィ殺害容疑を固めようとしているのが今週末の段階。
両親が「バックパック1つで家を出た」と証言するブライアンであるものの、隣人はブライアンが失踪直前に1ヵ月分はあると思われる食糧を車に積み込んでいた様子を証言しており、 現在フロリダの警察は巨費を投じて 付近の森林や沼地の大捜査を行っている状況。 2人がアメリカ横断旅行中に立ち寄った町では、それぞれにガヴィのためのメモリアル・サーヴィスが行われており、 改めてドメスティック・バイオレンスの問題がクローズアップされるきっかけにもなっているのだった。



NYで誕生した宝くじ億ドル長者


今週火曜日にNYで誕生したのが宝くじ、メガ・ミリオンのジャックポット・ウィナー。 アメリカの宝くじは勝者が出ない限りは賞金が繰り越しになるので、既に3ヵ月ほど勝者が出なかったこの日の賞金額は4億3200万ドル。 メガ・ミリオンは1〜70の中から5つの番号を選び、それとは別にメガボール・ナンバーを1〜25の間から選んで、全てが当選番号とマッチすれば 提示の賞金全額が得られるジャックポット。 メガボール・ナンバーを除く5つの番号のマッチでも100万ドルの賞金が得られるのだった。
メガ・ミリオンのジャックポットが当たる確率は3億257万5350分の1で、落雷に見舞われる確率の6分の1以下。
火曜日の勝者がチケットを購入したのはマンハッタンのミッドタウンにあるピザ・ジョイント(写真上右側)で、店側にもボーナスとして1万ドルが支払われるシステムだけれど、 店にとってさらにラッキーなのは、一度ジャックポットが出た店には その後 縁起を担ぐ人々がわざわざチケットを買いに来るので、 今後チケット売上のコミッションが増える利点をもたらすのだった。

4億3200万ドルはNY市で当たった宝くじ賞金額の過去最高額、NY州では史上2番目。アメリカの宝くじの賞金の支払いには一括払いと分割払いのオプションがあり、 多くの勝者が選ぶ一括払いは賞金額が約3割減ってしまうので、今回の賞金も3億1500万ドルに目減りする計算。 そこからNY州とNY市の他州より高額な税金が差し引かれるので、勝者が実際手にする金額は賞金額の半分以下の1億9200万ドル。
世の中では宝くじに当選した人は、いきなり手にした大金で人生を狂わせる、逆に破産に追い込まれると言われるけれど、 少なくともNYでは宝くじの当選者はさほど不幸になっていないようで、 特に100〜500万ドル程度を得た人々は、賞金をローンの支払いや投資に当てて生活にゆとりが出た人々が殆ど。 またNYはビジネス・サヴィな街とあって、過去に1億ドル以上の賞金を得た2人の勝者にしても、 共に真っ先にファイナンシャル・アドバイザーと弁護士を雇い、理性的な投資をした様子が伝えられるのだった。
でも地方の街になると そうは行かないようで、親族の借金の肩代わりをさせられたり、家族が通う教会から多額の寄付を迫られる一方で、 自分も贅沢な旅行や不動産購入をして破産に追い込まれるケースは極めて多いとのこと。 特に多いのは伴侶との離婚で賞金の半分を取られるケース。NYでも2004年に逃げた妻が戻って来たことから「運が向いてきた」とばかりに メガミリオンのチケットを買った男性が 見事にジャックポットを当てたところ、その10日後には妻に離婚を突き付けられて、課税後の賞金5900万ドルの半分を持っていかれるケースが起こっているのだった。
要するに宝くじの勝者として幸せになるには、親戚が少ない独り者の無神論者が好ましく、直ぐにファイナンシャル・アドバイザーを雇う理性と手堅さが必要ということになるのだった。



アメリカの一部で食材不足、その背景の意外な理由


今週、アメリカで報じられたのが一部の州が食材不足になり、そのせいでレストランのメニューが影響を受けているというニュース。
不足気味なのは牛肉、鶏肉、野菜など多岐に渡る食材で、その原因として誰もが頭に浮かべるのは 気象変動のせいで作物の収穫が減っている、もしくは自然災害のせいでライブストック(精肉)市場が影響を受けているということ。 でも実際の原因は食材を運搬するトラック・ドライバーが不足しているためで、 春先にガソリン・スタンドが石油不足に見舞われたのも、石油はあってもそれを運搬するタンカー・トラックの運転手が不足していたため。
アメリカではパンデミック以降、仕事をしなくなるドライバーが増えた一方で、オンライン・ショッピングが益々行き渡って 配達ニーズが大幅に増えたことから、 物流体制が崩れかかっているのが現状。 ニューヨークのように物価が高く、ドライバーに高額を支払える街への配達にはさほど影響は出ないものの、地方の街では徐々に食材不足が 深刻になっており、フライドチキン屋がチキンを入手できない事態まで発生。レストランの中には利益を削ってまで専属ドライバーを雇う店が出て来ているのだった。

アメリカで不足しているのは食材だけでなく、CUBE New Yorkのフェイスブック・ポストでもお伝えしたように複数の州ではテキーラ、バーボン、スコッチの人気ブランドが品切れ状態。 ペンシルヴァニア州では1日に買えるアルコールの制限がスタートしたほどで、これはパンデミック中に大きく増えたアルコール消費に生産と流通が追い付かない結果。 それに加えてトイレット・ペーパー、洗浄プロダクト、ボトルド・ウォーターも需要に供給が追い付かず、やはり一部の州で品切れ状態となっていることから、 コストコでは今週末に購入数量制限を発表したばかり。 この原因になっているのは国内のトラック・ドライバー不足ではなく、アメリカに商品を輸入するコンテナ不足で、 あのナイキでさえ輸送コンテナ探しに奔走しているのが現在。
そのため2年前には2000ドルだった長さ約12メートルのコンテナ1つの輸送費が 現在では2万5000ドルに跳ね上がっており、 ナイキだけでなく、ウォルマートやターゲットといった大手がそれを競って確保しているものの、 まだまだ足りない状況。
その品薄は今後ハロウィーン・グッズやクリスマス・ギフトにも見込まれていることから、 メディアでは「棚に商品があるうちに買っておく方が、確実に品物が手に入るだけでなく、結果的にお金の節約にもなるはず」と今後の更なる品薄と値上がりを消費者に警告しているのだった。



リンダ・エヴァンジェリスに永久ダメージを与えた美容施術


90年代に活躍したスーパーモデル中のスーパーモデル、リンダ・エヴァンジェリスタ(56歳)が今週木曜日に自らのインスタグラムを通じて行ったのが、 彼女の容姿が美容施術によって永久的なダメージ受けたという告白。
ここ数年、シンディ・クロフォード、ヘレーナ・クリスチャンセン、ナオミ・キャンベルといった彼女と同世代のスーパーモデル達が再びランウェイや ファッション広告にカムバックしているにも関わらず 彼女が一向に姿を見せなかった理由としてリンダが明らかにしたのが、 メスを入れない美容施術として人気のクール・スカルプティングのセッションによってPAH(Paradoxical Adipose Hyperplasia)という副作用に見舞われ、 そのせいで容姿のダメージだけでなく 生活を台無しにされて、深刻な鬱病、深い悲しみ、自己嫌悪のサイクルに苦しむ羽目になったという状況。 そして施術前にはそのリスクについての一切の説明が無かったとしてクール・スカルプティングのメーカーを訴える意向を明らかにしていたのがこのポスト。

クール・スカルプティングは、クリオリポリシスと呼ばれる冷却技術を使用して 皮膚には影響を与えずに皮下脂肪を凍結して 事実上凍死させ、 それを数週間かけて肝臓から体外に排泄することにより、施術から3か月以内に脂肪を最高で25%程度減少させるという施術。 アメリカでは2010年にFDA(食品医薬品局)に認可を受け、これまでに世界74カ国で800万回以上行われてきたトリートメント。 その稀な副作用と言われるPAHは、同じ冷却の若返りトリートメント、クリオセラピーを受ける男性には時折起こるもので、本来ならどんどん萎んでやがて死滅していくはずの 脂肪細胞が逆に大きくなって、脂肪層が形成されてしまうという逆転現象。
リンダの場合、最初にクール・スカルプティングの施術を受けたのは2016年のことで、写真上右が2016年の彼女のスナップであるけれど、これが施術を行う前か後かは不明。 本人によれば、施術の数カ月後には皮膚の下で大きくなった脂肪が硬く盛り上がってきたそうで、 「それを除去する施術を複数回行ったことから身体に永久的ダメージを受けた」というものの、ダメージについての具体的な説明やビジュアルは公開しないまま。 そして「これを公に発表することで 今後は自分らしく、胸を張って外に出られるようになりたい」という言葉で締めくくられていたのがこのポスト。 これに対してはシンディ・クロフォード、クリスティ・トゥーリントン、クラウディア・シファーといった仲間のスーパーモデルを含むファッション関係者を中心に 多数のサポートが寄せられていたのだった。

とは言ってもクール・スカルプティングでのPAH発症率は僅か0.0051%と極めて稀である上に、これを含む副作用についての説明は施術の資料やウェブサイトに記載されているとのことで、 加えてどんな美容施術でも受ける前には副作用が起こり得ることに合意する書面にサインをしているのは言うまでも無いこと。 しかも施術後についた脂肪が、食生活や運動不足によるものではないことを立証するのも困難で、この訴訟はスーパーモデル、リンダ・エヴァンジェリスタによる訴えであっても果たして裁判になるかさえ定かではないもの。 そのためこのポストは クール・スカルプティングを実際に多くのクライアントに対して行っている美容整形医から見れば 「メディアからのネガティブ報道を避けたいメーカー側から示談で賠償金を取るために ソーシャル・メディアでプレッシャーをかけながら、自分が以前よりも遥かに太った姿で公の場に出てもボディ・シェイミングを受けないために伏線を張っているようにしか見えない」とも指摘されるのだった。

ちなみにリンダ・エヴァンジェリスタは、2012年に現在のセルマ・ハイヤックの夫で、グッチを傘下に収めるカーリングのCEO兼会長、フランソワ・アンリ・ピノーから 彼との間に生まれた私生児の養育費を勝ち取るための裁判を起こしており、その多額の養育費の中には自分の美容維持費が含まれていたのは有名な話。 このインスタ・ポストの翌日にリンダは5000万ドルの損害賠償を起こしているけれど、ソーシャル・メディアのリアクションは「エイジングと体重増加を施術でごまかそうとして、失敗したら賠償請求なんて虫が良すぎる」と極めて否定的。 もしこの訴えが認められた場合には エイジング・スーパーモデル達が美容施術を受けることが 極めて難しくなる事態が見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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