Dec.20 〜 Dec. 26, 2021

"Speed of 2021, Omicron Tsunami, TikTok Rules, Etc."
2021年のスピード、オミクロン津波、米国議員の投資 &、TikTokの美味しい新ベンチャー


毎年年末を迎えると誰もが感じるのが「1年なんてあっという間」ということ。 年末を迎える以前にも、4月に入った時には「もう1年の4分の1が終わったなんて」、7月を迎えた時には「もう1年の半分が過ぎたなんて」と時の流れの速さを感し、10月以降は「今年もあと2ヵ月」、「もうホリデイ・シーズン?」と、 年末までの時間があっという間に過ぎて行く様子に驚くのは毎年のこと。
でもパンデミックは誰にとっても そんな毎年の時間の感覚を狂わせるもので、昨年末に友人とZOOMをしていた時に多かったのが「今年は長かった」という声。 それほどまでに早く終わって欲しいという気持ちでアメリカ人が過ごしていたのがパンデミックと大統領選挙の2020年。 2021年も終わってみれば 1年間パンデミックを引きずったのは2020年同様であったけれど、 年末に振り返って多くの人々が語るのが「1月6日のトランプ支持者の議会乱入事件がまるで去年の事のよう」、 「バイデンが大統領に就任して未だ1年が経っていないなんて信じられない」ということで、 自分や家族のスケジュールを考えるとあっという間の1年も、世の中の流れという尺度で振り返ると 昨年のホリデイ・シーズンが2年前のことのように思えてしまうのだった。
そういうタイムラグが生じるのはパンデミックが原因というよりも、世の中の変化や進化が人間が生きるペースを上回るスピードになってきたためだと私は考えていて、 前回のアドバイスのセクションでもご説明した風の時代特有の「スピーディーな世の中の展開」を象徴していると言えるのだった。



オミクロン・キャンセル


今週のNYは「オミクロンが突如津波のような勢いで襲って来た」というのが偽らざる本音。NY州の金曜の新規感染者数はパンデミックがスタートして以来最多の4万4000人に達しており、 NY市は水曜〜金曜までの3日連続で2万人以上の新規感染者を記録。引き続き街中のありとあらゆるテスト・サイトに大行列が出来ていたけれど、 行列している多くは家族や友人などクロース・コンタクトがある人物が感染したことからテストを受ける人、クリスマスからニューイヤーに掛けての家族や友人の集まりに参加するためにウィルス感染をチェックするケースで、 オミクロンはブレークスルー感染が多いことから、身内だけの集まりでも高齢者が居る場合は陰性テスト結果を参加条件にするケースが多いのが今年のホリデイ・今シーズン。
その一方で今週のブロードウェイでは「ハミルトン」、「アラジン」といった人気ミュージカルがスタッフやキャストの感染でクリスマス以降まで休演になり、クリスマス・イブのマチネに上演されたパフォーマンスは僅か2つ、 クリスマスの日に上演されたパフォーマンスは僅か6つという 信じられない少なさ。 さらに今週多かったのがウィルス感染によるスタッフ不足で臨時休業を強いられたレストランで、私が水曜にディナーに出掛ける予定だったレストランも週末まで休業となってしまい、 前日朝にわざわざマネジャーから予約キャンセルの丁寧な謝罪電話が掛かってきたのだった。
オミクロン・キャンセルは空の旅にも波及し、金曜にはウィルス感染によるスタッフ不足で国内線600便、土曜のクリスマスには900便以上がキャンセルされていたけれど、 こんな状況下でもプレパンデミック・レベルに戻ったことが指摘されたのがホリデイ・シーズンの旅行者数。 いずれにしても、ここへきて新規感染者数がピーク時に戻ったことで、「まさか2021年末を迎えてまでパンデミックと闘っているなんて」と考えた人々は多かったけれど、 NY州の集中治療室の患者数は2020年3月のピーク時に970人だったのに対して、現在は54人。 危機感も以前のピーク時とは雲泥の差。この違いをもたらしているのは言うまでも無くワクチンの普及で、アメリカでCOVID-19のワクチン投与が始まったのは1年前の12月14日のこと。 ワクチン接種者にとってはオミクロンもデルタも 入院や死亡リスクが低いことから、徐々にManageable/マネージャブルな脅威になりつつあるのは紛れもない事実。 そのため2022年のパンデミック予報は 収束に向かうよりも 「常にCOVID-19感染リスクがある状態がニューノーマルになる」 という見通しが多いのが現在。

そうなると2022年に見込まれるのが、2021年以上にワクチン未接種者の行動半径が限られてくること。事実、ユニオン・スクエア・カフェやグラマシー・タヴァーンといった長寿人気レストランを多数傘下に収める ユニオン・スクエア・ホスピタリティ・グループが今週発表したのが「スタッフと来店客全員にブースターショット接種の証明を求める」意向。 メトロポリタン・オペラも1月17日から観客にブースター接種を義務付けており、ハドソン・リバー沿いのレストラン、シティ・ワイナリーは、 今週から来店に際してワクチン・カードと24時間以内の陰性テスト結果の双方の提示を求める最初のレストランになっているのだった。
アメリカでは”Anti-vaxxer”の旗印であるロバート・F・ケネディ・ジュニアさえ、招待客にワクチンカード提示を求めないとパーティーさえホスト出来ないことからも分かる通り、 Anti-Vaxであることが社交面にかなりの影響を及ぼし始めているのが現在。 支持政党や政策に対する考えの相違は乗り越えたり、表面を取り繕ったり、話題にしないことで社交の妨げになることを防げるけれど、 ワクチンに関しては接種者と未接種者が同じ場所に存在することさえどんどん難しくなっており、リベラル派が多いNYでは 「もはや”隠れAnti-Vax”、”隠れトランプ”であり続けるのは 不可能」とまで言われるほど。 そのトランプ氏は今週ブースター・ショットを打ったことを公言。支持者から複雑なリアクションを招いていたのだった。



米国議員の2021年の投資先と2022年のNFT


アメリカで毎年年末に上下両院議員、及びその家族に義務付けられているのが その年の投資内訳の公開。 それによれば民主・共和 両党の議員と家族が購入した投資対象の総額は2億6700万ドル、売却したのは3億6400万ドル。 投資対象の約60%が企業株式で、民主党議員が総額7500万ドル、共和党議員が総額1億ドルの企業株を購入。 民主党が好む投資先はテック関連で、約50%に当たる3500万ドルを投じているけれど、共和党がテック株に投じたのは14%。 逆に共和党議員が積極的に投資をしていたのは、気象変動を否定する党のポジションを反映してエナジー関連株。 逆に環境問題を政策の優先課題に掲げる民主党議員がエナジー株に投じた資金は1%以下になっているのだった。

アメリカ議会でも急がれているのがクリプトカレンシーに対する規制や対応で、バイデン大統領の第2位の献金者が クリプト・ビリオネアであるにもかかわらず、クリプトカレンシーに関する規制強化を謳っているのは民主党側。 逆に共和党議員は政治献金が行き届いているのか、それとも意味が分からないためか、 規制に消極的というパラレル・ワールド状態。
どの国においても クリプトカレンシーだけでなく、ブロックチェーン上に展開されるWeb3、メタヴァースという 新時代へ対応が大きな、そして急速な課題になってきた2021年に 驚くほど様々な形で普及したのがNFT。 今や投資対象となって久しいNFTであるけれど、12月にマイアミで行われた世界最大のアートフェア、アート・バゼルでも最も注目を集めていたのがNFTアート。 多くのセレブリティもNFTコレクティブル・ビジネスに参入し、メタヴァース上の不動産もNFT資産としてもてはやされたのが2021年。
「そんな物には価値はない」と否定する人は今も多いけれど、 Non-Fungible Tokenというものは 決してコピーでは同じ物がクリエイト出来ないだけでなく、改ざんや偽造も不可能なので アートやブランド物のオーセンティシティがプロテクトできる上に、 Web3時代にはID、電子カルテ、保険証、運転免許証、様々な権利書、証明書を含む登記の役割を担って行くテクノロジー。 それを理解せずにNFTを馬鹿にしていると、あっという間に変って行く世の中の変化に対応できなくなってしまうのだった。
ちなみに2022年に最も一般的に普及すると言われるのが音楽のNFT。これまでのダウンロード、ストリーミングがNFTになっていくことにより 大きく変わって行くのが音楽業界の構図。アーティスト側がレコード会社からの搾取から逃れて、遂にフェアシェアを得られる時代はすぐそこまで来ているのだった。



TikTok、 ユーザー・ニーズを見事に捉えた新ヴェンチャー


今週クラウドフレアが発表したのが2021年に世界中で最もアクセスされたウェブサイト。 それによれば 昨年No.1のGoogleとの接戦の上、今年のNo.1に輝いたのはTikTok。 TikTokとGoogleは 2021年中、1位と2位の入れ替わりを繰り返しており10月、11月はグーグルがトップを維持していたものの、 その後TikTokが逆転したとのこと。Googleがマップ、翻訳、メール等、全てのサービスを総合したアクセス数であることを考慮すると、 TikTokが如何にあっという間に巨大なプラットフォームに成長したかは驚くべき事実。
3位以降のランキングはFacebook、4位はMicrosoft、5位はApple、それ以降はAmazon、Netflix、Youtube、Twitter、WhatsAppというのがトップ10。 TikTokはショートフォーム・ビデオのトレンドを巻き起こし、他のプラットフォームからもインスタグラム・リールス、YouTubeショート、Triller/トリラーといった 類似のサービスが登場するきっかけになったけれど、2021年9月にはグローバル・ユーザー数が10億人を超えて、ダントツの強さを誇っているのだった。

そのTikTokが2022年3月からスタートするのが”TikTokキッチン”という 新たなサービス。 これはTikTok上でヴァイラルになったレシピが 実際にオーダー出来るフード・サービス。 すなわちこれまでは自分で作るしかなかったヴァイラル・レシピがデリバリーされてくる訳で、 特に作る時間が無いと諦めていた人、わざわざ食材や道具を買いたくない思いながらビデオを観ていた人々には願ったり叶ったりのサービス。 そのメニューには、写真上のクラウド・ブレッド、ミニドーナツ・シリアル、ベイクド・フェタ・パスタといった名物ヴァイラル・レシピが当然のことながら含まれているのだった。
NYを始めとする都市部では、高額レストランが富裕層だけをターゲットにする結果、どんどん高額になってきているけれど そうしたレストランに出掛けて驚くのが来店客の年齢層が高く、 NYらしい喧騒やエキサイトメントが無い落ち着いた雰囲気。 それと同時に 新しさが全く感じられない料理しか出て来ないのが高額レストランで、逆に NYのフード・クリティックが2021年のベスト・レストランに選んでいた多くは クイーンズやブルックリンのエスニック色が強いカジュアル・レストラン。すなわち写真を見ても 味が想像出来ないような料理を出すお店。 そもそも若い世代を中心に食生活、食の好み、食に対する考え、食のアイデア・ソースがどんどん変わってきたのが現在で、 COVID-19の問題が続くか否かとは無関係に 2022年以降、レストランを始めとするフード・ビジネスが 大きく変わって行くことは必至と思われるのだった。

最後に本年もCUBE New Yorkでお買い物をして下さったお客様、サイトをご愛読下さった皆様に心からお礼申し上げます。 沢山の幸運と健康に恵まれる2022年をお迎えくださいませ。
勝手ながら次回のこのコーナーはお休みを頂きまして、2022年は1月9日からこのコラムを再開致します。 来年もCUBE New Yorkをよろしくお願い致します。
秋山曜子

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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