Jan.24 〜 Jan. 30, 2022

"Meme Boom Aftermath, Sports Betting in NY, Etc. "
Meme株爆上げから1年、ドラマで鬱になる!?、スポーツ・ギャンブル In NY!


今週は水曜に連邦準備制度理事会のパウエル議長が利上げが迫っていることをほのめかす いつもながらの予告声明を発表していたけれど、 その翌日木曜に発表された2021年度第4四半期の米国GDPは1.7%上昇。年率に換算して6.9%の上昇で、 1984年以来最大の上昇率であったけれど、前年度のパンデミックのダメージの大きさを反映した数値とも言われるのだった。
そんな中、今週最大のニュースの1つとなったのが最高裁判事、スティーブン・ブレイヤーの引退表明。 とは言ってもリベラル派であるブレイヤー判事の後釜に、バイデン大統領が新たにリベラル派の判事を指名するだけなので、 現在の保守派6 VS. リベラル派3のパワーバランスが変わることは無いけれど、バイデン氏が大統領選挙の段階で公約してきたのが 最高裁判事に史上初の黒人女性判事を指名するということ。 実現すればマイノリティ女性判事としてはNY出身のヒスパニック系、ソニア・ソートマイヤー判事に次ぐ史上2人目、黒人判事としては 1990年代の承認時にセクハラ・スキャンダルが物議を醸したクラレンス・トーマス判事に次ぐ史上2人目。 新判事候補は既に3人に絞られており、その顔ぶれはワシントンDCのケタンジ・ブラウン・ジャクソン判事(51歳)、カリフォルニア州最高裁のレオンドラ・クルーガー判事(45歳)、 サウス・キャロライナ州のJ・ミシェル・チャイルズ判事(55歳)。そのうち週末のメディアで名前が浮上したのは、第三候補と見られていたチャイルズ判事。
バイデン氏は副大統領候補にカマラ・ハリスを指名した際にも 「マイノリティ人種の女性を副大統領に選ぶ」と人種と性別を先に指定してからの 候補選びをしていたけれど、これは選ばれる女性側にとっては「まず人種と性別でふるいにかけて その中から選ばれただけ」で、100%実力だけ勝ち取った訳ではないことを意味する 有難くない選出法。共和党側からも「人種・性別が優先されるのは不適切」との声が聞かれ、 バイデン氏のマイノリティ票を獲得する選挙戦略が、必ずしもマイノリティ女性の地位向上に繋がる訳ではないことを意味しているのだった。



Memeストック爆上げから1年、ロビンフッドの転落


昨年の丁度今頃に話題と物議を醸していたのがゲームストップに代表されるMemeストックの爆上げぶりのニュース。 その仕掛け人集団ウォールストリートベッツがソーシャル・メディアのReddit上で呼びかけたのがGemeStop、AMCといった何のファンダメンタル要素も無いMemeストックのモブ買い。 丁度時代はパンデミックのロックダウン中の有り余る時間の中で、若い世代がYouTubeを始めとするソーシャル・メディアを通じてどんどん投資の知識を高め、 景気刺激策の助成金や失業手当の上乗せ金等を元手に投資アプリ、ロビンフッドを使ってファーストタイム・インヴェスターになっていたタイミング。 当初、ウォールストリートはそんな若いロビンフッダー達を「素人投資家の火遊び」と捉えて彼らをバカにしていたものの、 彼らのソーシャル・メディアを通じたコミュニケーション力と恐れ知らずのモーメンタム投資は、一躍彼らを従来の一般投資家がなり得なかったり得なかった”マーケット・メーカー” にまでのし上げたのは周知の事実。
そんなロビンフッダーがGemeStopをモブ買いし、2020年の1月だけでも1800%株価を上昇させたことから、同株のネイキッド・ショート(借りる株式が無い状態で空売りをすること) & ショート・スクイーズで 大儲けをもくろんでいたメルヴィン・キャピタルを含むヘッジファンドが倒産に追い込まれたけれど、 そのロビンフッダーの勢いを止めるために不当に取引規制を行ったのがロビンフッド。一般投資家の取引が規制される中、ヘッジファンドや金融企業はそれまで通りの取引が許されるという 完全に公平さを欠いたロビンフッド側の措置のせいで大勢の若き投資家が彼らにとっての大損を強いられたのがこの段階。
今週には、そのロビンフッドを相手取って損害賠償請求をしていた個人投資家が3万ドルの賠償金を勝ち取っており、 これは企業価値100億ドルのロビンフッドにとっては微々たる額。しかし昨年現時点には1300万人のロビンフッダーの約半分がGameStop株に投資をしており、 その多くが取引停止措置によって損失を強いられていることから、この賠償責任の勝訴判決によって今後同様の訴訟、及び集団訴訟が起こるのは必至。
そのロビンフッドは2021年第4四半期に4億3200万ドルの損失を計上したことから、今週木曜にその株価が11%下落。 2021年夏のIPO直後には70ドルをつけた同社株価は、現在は12ドル。ウォールストリートもその業績に明るい展望を持っておらず、 買収のターゲットになることも見込まれる状況。特に昨年末からはユーザーの取引数も、取引額も減っていることがレポートされているけれど、 そのビジネス・モデル自体が直面すると言われるのがSEC(証券取引委員会)による規制と取り締まり。 今週にはゲイリー・ゲンスラーSEC議長が、ロビンフッドの不正取引停止から1周年を受けて「可能な限り公平かつ、秩序のある、効率的な市場」のためにロビンフッドを指導していく意向を 明らかにしているのだった。



精神的落ち込みの原因はエンターテイメント!?


エンターテイメント・プログラムのウォッチドッグとして知られるケイティ・ステビンズが指摘したのが、近年の映画やTVドラマの画像が どんどんダークになっている変化。
ライティング技術は日進月歩で進化を遂げているものの、現代の映画やドラマはストーリー・ラインがダークで ドロドロした陰謀やヴァイオレンスを描くものが多いのに加えて、現代のシネマトグラファ―やディレクターが「ダークな画像の方が作品として格が高いイメージがある」と 考えていることから、すっかりダークにトーンダウンしたのが業界の映像スタンダード。
写真上 左から2枚は1961年に製作された「ウエストサイド・ストーリー」と、 2021年にスピルバーグ監督がリメイクした「ウエストサイド・ストーリー」であるけれど、 カラフルでミュージカルらしい1961年版よりもダークで、リアリティが強調されているのが2021年版。 写真上右側上段は殺人鬼を描いたドラマ「Dexter/デクスター」であるけれど、2006年のオリジナルに比べると 2021年のリブート版「Dexter: New Blood」の画像は濁っているような印象。 同様のことは「ゴシップ・ガール」のオリジナルとリブート版、「サブリナ、ザ・ティーンエイジ・ウィッチ」とリブート版の「チリング・アドベンチャー・オブ・サブリナ」でも 顕著。2001年に公開された映画の「ジュラシック・パーク3」と2018年公開の「ジュラシック・ワールド」を比較しても 後者の方が全体的にダークでグレーがかった画面になっているのだった。

特にネットフリックスのサブスクライバーが世界規模で増えて、ビンジ・ウォッチングという習慣が普及してからは、 ダークな画面、ダークなストーリーライン、それにマッチした不安を煽るような音楽や効果音と長時間 関わり続ける人が増えたけれど、 それがメンタル・ヘルス問題が深刻になってきたタイミングとシンクロナイズしているとあって、指摘されるようになってきたのがダークなエンターテイメントと精神的な落ち込みの関連性。
特に外出が制限され、外界とのコンタクトが減っていたロックダウン中にネットフリックス等のストリーミングでダークなドラマや映画をビンジ・ウォッチしていた人々は 太陽光が苦手になって夜更かしをするようになり、 体内時計に影響が出たケースもあれば、 精神的なメリハリを失って疲れ易くなる、やる気や行動力の低下、ストレスを感じ易い体質が形成される傾向が顕著。
実際に明るさや音が人間心理や精神状態に与える影響はエンターテイメントに限らず、様々な分野で立証されているもの。 例えば あるバス停付近で犯罪が多発したことから、そのエリアを明るくライトアップし、モーツァルトの曲をスピーカーで流したところ、途端に犯罪が無くなったという実例がある一方で、 ダークな照明、恐怖や不安をそそる音楽、効果音はハロウィーン・シーズンに全米でオープンするホーンテッド・ハウス(呪いの館)のビジネスには不可欠。 でも心理学の専門家によれば、人間はフィクションの世界で観た不安や疑い、恐怖といったネガティブ感情ほど、現実世界や自分の思考回路に持ち込む傾向にあることで、 子供が恐怖映画を見て、それが実際に起こることを恐れて眠れなくなるのはまさにその状況。
パンデミック中に ドラマや映画を見る人よりも精神的な落ち込みが少なかったのが スポーツ観戦をしていた人々で、どんなに応援するチームが負け続けて、フラストレーションが溜まることがあって、 それが精神的な落ち込みには繋がることは無かったとのこと。スポーツを行うことが身体の健康に良いのと同様に、スポーツを観ることも精神的に健全な効果をもたらすようなのだった。



NYがアメリカ最大のスポーツ・ギャンブル市場になる日


アメリカの2021年TV番組視聴率トップ100のうちの91番組を占めたのがNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の試合。 NFLのゲームは年間平均でも昨年より10%高い視聴率を記録。その要因は観客がスタジアムに戻ったエキサイトメントもさることながら、 毎週のように繰り広げられた熱戦の数々で、先週末のプレイオフ4試合は NFL史上初めて全試合がラストプレーで勝敗が決まるというモンスター・ゲームの連続。 私自身もTVに釘付けになってしまったけれど、そんな試合のエキサイトメントが大いに盛り上げているのが NYで1月からスタートしたばかりのモービル・スポーツ・ギャンブリング。すなわちスマホで手軽に出来るスポーツ・ギャンブル。
NY州のゲーミング・コミッションが明らかにした途中経過によれば、 1月8日〜16日の9日間にニューヨーカーがスポーツ・ギャンブルに投じた資金は総額6億300万ドル。1日当たり6700万ドルで、 これはローンチ後2週間の最高記録であるだけでなく、昨年10月にお隣ニュージャージー州が記録した月間賭け金の史上最高記録、13億ドルを超える勢い。 この9日間にモービル・スポーツ・ギャンブル企業が上げた利益は4820万ドル。 NY州はその利益に何と51%の課税をすることから、もたらされた税収は2460万ドル。
ニューヨーカーはスポーツの知識に長けている上に、ホームチームの数も多く、他州より平均収入が高いとあって この数字はまだまだ伸びる見込みで、 NYが全米最大のスポーツ・ギャンブル市場になる日は近いと見積もられるのだった。

でもギャンブル以外でも、スポーツを通じてお金が集まることを立証したのが、先週末にNFLプレイオフでバッファロー・ビルズを大接戦の末下した カンサスシティ・チーフのファンがNY州バッファローの地元小児病院のために多額の寄付を集めたというニュース。 バッファロー・ビルズのファンの間では ホームチームが大きな試合で勝利を収めた場合、相手チームのチャリティのためにファンが寄付をするという習慣があるそうで、 昨年ビルズがボルティモア・レイヴェンズをプレイオフで破った際には、レイヴェンズのクォーターバック、ラマー・ジャクソンのチャリティ・ファンデーションのために 50万ドルの寄付を集めたとのこと。またビルズのクォーターバック、ジョシュ・アレンの祖母が死去した際には 祖母が入院していた病院のために 彼の背番号17にちなんだ 1人当たり17ドルの寄付がファンに呼び掛けられ、総額110万ドルを集めたことも伝えられるのだった。
そのエピソードを知ったカンサスシティ・チーフスのファンのフェイスブック・グループがソーシャル・メディアを通じて呼び掛けたのがバッファローの小児病院に対する1人当たり13ドルの寄付。 この13という数字は、先週日曜の試合の第4クォーター残り時間あと13秒で逆転されたチーフスが、その絶望の淵から同点に追いついて、オーバータイムの逆転勝利を勝ち取ったことに ちなんだもの。NFL史上に残る名試合で劇的な勝利を勝ち取ったチーフスだけに、ファンの興奮は週が明けても冷めやらず、 そんな中での火曜日に呼びかけられた寄付は 木曜の朝までに30万ドルに達しているのだった。
視聴率と言い、こうしたファンのムーブメントと言い、今やアメリカのパストタイムと言えるスポーツは完全にベースボールではなく、フットボール。 これにモービル・スポーツ・ギャンブルが絡んできたことから、益々ファンがスポーツに熱くなることが見込まれるけれど、 現時点のNYスポーツ・ギャンブル市場で最大の収益を上げているのはシーザース・スポーツ・ブッキングで、これはラスヴェガスのシーザース・パレス、パリス、フォーシーズンス・ホテル、プラネット・ハリウッド等 多数のホテルやカジノを傘下に収めるシーザース・エンターテイメント系列のビジネス。それと市場を分け合っているのがオンライン・スポーツ・カジノのファンデュエルで、 共に2億ドル以上の賭け金を集めるメガビジネスを展開しているのだった。
アメリカのギャンブル市場の規模は2020年時点で1100億ドル。ギャンブルだけで食べているプロの平均年収は意外に少なく4万8000ドル。そうかと思えば 趣味のギャンブルで年収数百万ドルを稼ぐケースもあるけれど、ギャンブルで借金を抱えているアメリカ人は2300万人。 その平均的な借金の額は5万5000ドル。 ギャンブル市場と言っても、カジノに出掛けてポーカーやブラックジャック、ルーレットやスロットマシンに興じたのは昔の話で、今やこうしたプレーもオンラインで行うのがメイン・ストリーム。 それよりも遥かに大金が動くのがスポーツ・ギャンブリングで、2021年のスーパーボウルの際にはチャンピオンに輝いたタンパベイ・バッキャナーズに350万ドルを賭けた有名なギャンブラーも居たほど。
モービル・アプリによってスポーツ・ギャンブリングが益々簡単に、そして身近になって行くだけに、仕事をしない若い世代が収入源として のめり込むことを危惧する声も聞かれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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