Apr. 18 〜 Apr. 25, 2022

"420 Booming, Netflix Moochers, Queens Mom Killer, Etc."
マリファナ・ブーミング,ネットフリックス・ムーチャーズの危機 ,
クイーンズ美人妻殺害の顛末 ETC.



今週のアメリカで大きな報道となったと同時に 混乱を招いていたのが、月曜にフロリダ州の連邦判事が 「CDC(疾病予防センター)には交通機関内でのマスク着用を義務付ける権限は無い」 という判断を下したことから、アメリカの航空4社、鉄道のアムトラックなどが次々とマスク着用義務を解除したこと。 しかしNY市のバスやサブウェイは引き続きマスク着用を義務付けており、ブロードウェイ・シアターも4月一杯までとしていた劇場内でのマスク着用を延長したばかり。 地方自治体や商業施設によってマスクのルールが異なることから、結局のところはマスク持参で外出する状況が続いているのだった。
フロリダ州判事の判断に対しては賛否両論が激しく、それというのも CDCでは 現在僅かながらアメリカ国内でコロナウィルスの感染が増えていることを受けて、 「あと2週間様子を見てから新たなガイドラインを発表する」と通達しており、その感染データ結果を待たずして下されたのがこの判断。 特に医療関係者の間では「感染症対策において医療専門家の判断よりも 判事の判断が優先されるのは間違っている」という猛反発が巻き起こっており、 週末に司法省はこの判決を不服として上告。 その理由は 現時点でのマスク着用の是非ではなく、今後再び感染症が広まった際に CDCの感染予防策が 裁判によって覆されないようにするためで、感染症対策におけるCDCと裁判所の力関係をここで明確にすることが目的と言われるのだった。



レクリエーショナル・マリファナ・ブーミング


今週水曜日、4月20日はマリファナの日。”420”はマリファナを象徴する番号として知られるけれど、これは1970年代にカリフォルニアのティーンエイジャーのグループが毎日4:20分に集まって マリファナを吸っていたエピソードが起源。これを1990年代に「4月20日、午後4時20分にマリファナを吸おう」というビラを配って世に広めたのは、 俗に”デッドヘッド”と呼ばれる往年のロックバンド、グレートフル・デッドのファン。 そのビラをマリファナ・マガジン、”ハイタイムズ”誌がフィーチャーしたことから全米に広まったのが4月20日のマリファナの日。 以来、マリファナが違法であった時代でも 4月20日に関しては 公園で人々が集まってマリファナを吸っていても逮捕されないという不思議な状況が繰り広げられてきたのだった。
今や4月20日の集団マリファナ喫煙イベントは アメリカ国内のみならず、イギリス、ドイツ、メキシコ、タイなど世界各国で行われているけれど、 2021年のギャロップ・ポールの調べによれば、マリファナをトライしたことがあるアメリカ国民は約半分に当たる49%。そのうちの12%がレギュラーなユーザーで、これは喫煙者の15%に迫る勢い。 「マリファナを合衆国憲法で合法にすべき」という意見は68%に、「マリファナの使用にモラル上の問題は無い」という意見は70%にそれぞれ上昇しているのだった。

マリファナが近年社会的に認められてきた要因の1つは医療用マリファナの効果の影響。アメリカでは合法的に処方された痛み止め薬の中毒で1999年から2019年までの間に 50万人が命を落としているけれど、 それに比べるとマリファナは遥かに中毒性が無く、安全で 確実な痛み止めの手段。 現時点で 全米の39州とワシントンDCがメディカル・マリファナの使用を合法化しており、このうちレクリエーショナル・マリファナを合法化しているのは19州。
そのうちの1州であるNYのお隣、ニュージャージーで今週4月21日からスタートしたのが レクリエーショナル・マリファナの店頭販売。 当日は早朝から販売店舗の前に1500人を超える人々が大行列を作っていたけれど、現時点のニュージャージー州で店頭販売が許可されているのは僅か13店舗。 全ての店舗が専用時間帯を設けるなどして 処方箋を持つ医療用購入者を優遇しているのだった。
マリファナは英語ではウィード、カナビス、ポット、グラス等、様々な名称があり、合法プロダクトを語る際に最も用いられるのはカナビス。 そのカナビス・プロダクトは吸うだけではなく、キャンディ、クッキー、チョコレートのように食べるフォームから、お茶のように飲むフォームまで様々。 でも子供が口に入れてしまう事故を防ぐために、カラフルな商業的パッケージングでは販売許可が下りないので、多くのパッケージがモノトーン。
ニュージャージー州ではカナビス市場が数年以内に20億ドル規模に達すると言われ、2023年には1億2100万ドルの税収を見込んでいるけれど、 それを上回る市場規模と税収が見込まれるのが 2022年末までにレクリエーショナル・マリファナの店頭販売が解禁となるNY。 ちなみにニュージャージー州では3.5gのマリファナのお値段が約80ドル。これはマリファナ違法時代のディーラー価格の約2倍。 「ディーラーから購入していた」というとマリファナ中毒を想像しがちであるけれど、アメリカではベビーブーマー世代以降、多くの国民が高校、大学時代にトライしたことがあるのがマリファナで、 眠れない時やストレスフルな状況に見舞われた際に、リラックスする目的で使用する人々が決して少なくなかったのが実情。
ニュージャージー州の販売店舗の1つが公表した初日の売上は何と20万ドルで、合法化によって高額になったとは言え、 混迷するストレスフルな時代を迎えているだけに 今後益々増えると予測されるのがマリファナ需要。 実際にハリケーン・カトリーナに見舞われた後のルイジアナ州では、被災者たちが現実逃避を求めて 政府から支給される援助金で食糧よりも違法ドラッグを購入していたことが明らかになっており、 インフレやリセッション懸念、ウクライナ情勢等の経済&社会不安はマリファナ市場にとっては追い風。
そのためNYでも年明け早々解禁になったスポーツ・ギャンブルと並んで、リセッション知らずの売上と税収をもたらすことが期待されるのだった。



ネットフリックス・ムーチャーズがお金を払う日


今週水曜にネットフリックスの2022年第1四半期の業績が発表されたけれど、それを受けてこの日に35%の下落を見せたのが同社の株式。 ネットフリックスはこの四半期で過去10年以上で初めてサブスクライバーの数を20万人減らしており、 昨年10月末には690ドルを付けていた同社株価は今週、その3分の1以下の215ドルにまで下落しているのだった。
ネットフリックスはペロトン、ズームらと並んで2020年春先からのロックダウンの恩恵を受けたステイホーム銘柄。しかし2022年に入ってからは パンデミック規制が大きく緩和され、 家でネットフリックスを視聴する生活に飽きた人々が外出を始め、映画館にも観客が戻り始めている状況。加えて昨今のインフレを受けて 人々が生活費を切り詰めるようになったことから、既にコンテンツがマンネリ化しているストリーミング・サービスは真っ先に節約の対象になる運命。 特にこれまで複数のストリーミング・サービスをサブスクライブしていた人々は、その数を絞る傾向が極めて顕著なのだった。

ネットフリックスは2022年第2四半期に 更に200万人のサブスクライバーを失う見込みを明らかにしているけれど、 これは同社が 俗に”ネットフリックス・ムーチャーズ(乞食)”と呼ばれる 料金を払わずに他人のパスワードを使って視聴する人々の取り締まりに動くため。 ネットフリックは複数ディバイスからのログインが出来ることからムーチャーズが多いことは周知の事実で、 ミレニアル世代やジェネレーションZの間では「ネットフリックスを自分のパスワードで視聴することがサクセスの第一歩」と言われたほど。
ネットフリックスでは100万人と見込まれるムーチャーズを取り締まり、彼らをペイド・サブスクライバーにするために 広告入りの低料金オプションを設けることを検討しており、かつては「決して広告を入れない」ポリシーを掲げていた同社も 激化する競争の中で方向転換を迫られているのが現在。 そんなネットフリックスのビジネスの先行きの険しさは、今年1月に10億ドル相当の同社株式を購入していた著名ヘッジファンド、 パーシング・スクエアが 今週水曜の大暴落直後に、4億ドルの損失を覚悟で 所有していたネットフリック株を全て売却したことにも象徴されているのだった。
同じく今週にはスタートして僅か3週間のCNNのストリーミング・サービス、”CNN+/CNNプラス”が、僅か15万人しかサブスクライバーが得られなかったことから早くもビジネス撤退を表明。 ネットフリックスを含むストリーミング業界全体が、小さくなっていくパイを奪い合う厳しい時代を迎えたことを感じさせていたのだった。



クイーンズ、美人妻殺人事件の顛末


今週NYで最大の報道になっていたのがクイーンズ在住の二児の母で、金融業を営む夫を持つオルソルヤ・ガール(51歳。写真上左)の殺害事件。 先週金曜夜に女友達とマンハッタンのリンカーンセンターで行われたパフォーマンスに出掛けた彼女は、深夜過ぎに帰宅。 その後、地下室で何者かに殺害され、遺体が翌早朝にダッフルバックに入った状態で 近隣住人によって発見されたのがこの事件。 家に押し入った形跡が無く、遺体の首や胴体に58箇所のナイフの刺し傷が認められたことから、顔見知りの怨恨による犯行として捜査が進んでいたのだった。
事件当日、夫と17歳になる長男は進学を希望するオレゴン州の大学の下見に出掛けて不在。 13歳の次男は事件当時 家の2階に居たものの 事件には気付いておらず、近隣住宅の防犯カメラ映像に捉えられていたのがダッフルバックに入った遺体を運び出す容疑者の姿。
夫のスマートフォンには事件直後に「お前の妻のせいで、刑務所行きになった。次はお前達家族の番だ」という脅迫メッセージが寄せられていたものの、 計画的殺人というには事件現場の様子があまりにずさんであることから、犯行は何等かのトリガーによる衝動的殺人で、 脅迫メッセージは捜査を攪乱するための小細工であることが早くから指摘されていたのだった。 そして水曜夜に逮捕の運びとなったのが、早くから容疑者として存在が浮上していたオルソルヤの愛人のハンディマン、デビッド・ボノーラ(44歳)。

オルソルヤの自宅の修理・修繕を任され、スペア・キーの隠し場所も熟知していたボノーラはメキシコ出身で、現在は違法滞在の身。 オルソルヤとは過去2年ほどオン&オフの愛人関係を続けており、今年4月に復縁したものの つい最近別れたばかりであったとのこと。
事件当日、ボノーラがオルソルヤに呼ばれて家を訪ねたのか、ボノーラが自主的にやってきたのかは不明であるものの、 2人は2階で次男が眠っていることから地下室に行き そこで口論となり、凶器として使われた刃渡り20cmほどのナイフは家の中にあったもので、ボノーラが持ち込んだものではないのだった。 オルソルヤ殺害後、ボノーラは地下室にあった息子のホッケー用のダッフルバッグに彼女の遺体を詰め込み、午前4時まで待ってからそのバッグを運び出し、 事件現場から約800メートル離れた位置に置き去りにして逃走。
ボノーラは返り血を浴びていただけでなく、自らも手に怪我を負ったことから 現場には彼のDNA証拠が数多く残されており、それ以外にも警察はボノーラの血にまみれたブーツや衣類を彼の自宅エリアのゴミ回収車から押収。 警察がボノーラに参考人としての同行を求めたのに対して、彼が犯行を自供したことから逮捕に至っているのだった。

この事件で気の毒なのは夫と2人の息子たちで、警察は捜査開始直後に容疑者がオルソルヤの「複数の愛人の1人」である可能性を示唆。 幸せそうな家族写真とは裏腹に、妻であり母であるオルソルヤが家族を裏切る情事を複数の男性と重ねていたことが事件の大報道と共に世間に知れ渡っているのだった。
またオルソルヤは事件の夜、帰宅前にクイーンズのバーに立ち寄り、1人でカクテルを飲みながら40分ほどを過ごしていたことが明らかになっているけれど、 ボノーラの弁護士は、その店のバーテンダーが殺害時刻と思われる時間帯に 彼女の様子をチェックするために家を訪ねていた事実を突き止めており、裁判で持ち出してくると見込まれるのが オルソルヤ殺害の真犯人が別の愛人やバーテンダーである可能性。 ボノーラは単なる死体の第一発見者で、錯乱して自供してしまったというセオリーを持ち出してきた場合、 裁判ではオルソルヤの交友関係や、日頃の素行にフォーカスが当たることになり、夫や息子たちにとって辛いものになるのは必至。 オルソルヤのソーシャル・メディア・アカウントは、デートサイトにアップするようなソロのスナップで溢れており、 事件報道が大きくなったのも ブロンドの白人美女であるオルソルヤのスナップの数々がニュース性を高めていたため。 もし裁判で有罪となれば、ボノーラは最高で25年の懲役刑が見込まれるのだった。

オルソルヤの浮気の原因が、安定した生活に退屈を感じていたためか、それともエイジング・プロセスの美人女性にありがちな 「まだまだ自分が年下男性を求められる存在である」ことを認識して 自己肯定感を高めたかったのかは知る由もないけれど、 CDCの調べによれば アメリカでは1分間に男女を問わず20人が性的関係を持ったパートナーによる肉体的虐待を受けており、 女性は3人に1人が 過去&現在に性的関係を持つパートナーからの暴力を受けているとのこと。 また女性の殺人事件は 55%が性的関係にあった男性、もしくはその友人や家族による犯行で、女性が見知らぬ人物に殺害される割合は僅か16%に過ぎないとのこと。
すなわち女性にとっての浮気は 家族を裏切る行為であるだけでなく、身を危険にさらす可能性が高まることを意味するのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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