Sep. 26 〜 Oct. 2 2022

"Hurricane, Strong $ is Bad News, etc."
ハリケーン、知っておくべき日銀介入リアクション、
米国がドル高を歓迎しない これだけの理由、ETC.



今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのがフロリダ州を襲ったハリケーン、イアンによる大被害のニュース。 アメリカ史上6番目に大きなハリケーンとなったイアンは風速時速250キロで、竜巻のようなパワー。 高額ボートやヨットが破壊されながら陸地に打ち上げられ、空港ではセスナが車輪を上にしてひっくり返り、橋は流され、民家は屋根や壁が吹き飛ばされる有り様で、 イアンが去ってからも膝上の高さの水が引かないエリアがある状況。 そんな浸水した住宅街の一部には、さすがフロリダとあって流されてきた野生のワニや蛇が泳いでおり、自宅の様子を見に行くにもリスクが伴う住人も多いのだった。
フロリダ半島の南西部については、東部、中部に降った大雨が川の流れに乗って今後も流れ込んでくることから、 浸水の更なる被害が見込まれており、事実、イアンが去ってからの方が深刻な水害がレポートされる状況。 その中には100万ドルのマクラーレンP1の新車がまるで潜水艦のように水に浸かる映像(写真上左下)もあり、 被害の完全復旧には5〜7年の年月と計り知れない費用が掛かる見込み。
週末の時点でハリケーン・イアンによる死者数は70人が確認されているけれど、米国の自然災害で最も死者が多いのはハリケーンかと思いきやヒートウェーブ/熱波。 そのためカリフォルニアなど、熱波による被害が深刻な州では ハリケーン同様に熱波にもアルファベット順の名前を付けて 人々に注意を促すことが検討されているのだった。



知っておくべき 日銀円買い介入へのリアクションと ドル高が米国インフレを抑制しない理由


金曜夕方にウォール・ストリート関係者が「ようやく終わった」とため息をついたのが、過去20年間で最悪の成績を記録した9月の株式相場。
9月は歴史的に株価が振るわない月であるけれど、ダウ工業平均株価は9月最終日の金曜に500ポイント下落し、2万8725ドルで引けており、ダウとS&P500は共に過去1ヵ月で約9%下落。 ナスダックは10.5%下落しており、残念ながら この下降トレンドはまだまだ続くことが見込まれるのだった。
為替市場では 先週9月22日に1ドル=145円を付けた段階で、日銀が24年ぶりにドル売り円買いの介入を行ったのに続いて、 今週は トラス政権の大型減税案を投資家が嫌い、英国ポンドが対ドルで史上最安値を更新したことから、英国中央銀行が 向こう2週間に渡って自国の長期国債の買い入れを発表。英国経済への信頼維持に努める姿勢を示していたのだった。
日銀に話を戻せば、先週のドル売り円買いに費やされたのは190.7億ドル(2.84兆円)。しかし今週末の段階で1ドル=144.7円で、”焼石に水”的な効果。 バンク・オブ・アメリカのアナリストは外貨準備高1.3兆ドルの日銀が、1360億ドルの預金と満期1年未満の有価証券1480億ドルを使って、 今後も10回の介入をすると見ているけれど、回を重ねるごとにその市場インパクトが減って行くと予測。 J.P.モルガンのアナリストは、日銀が介入を重ねたところで日米の金利格差が埋まらない限りは円安は続くと見ているのだった。

ところで 少し前に日本の知人と話した際に 「アメリカはドルが強い方がインフレが抑えられるから、ドル高歓迎なんでしょ」と言われて、 少々驚いたのが住む国が違うと経済の見方もこんな風に違ってしまうのかということ。
まず株でも クリプトカレンシーでも、投資をしている人にとって最も有難くないのがドル高。詳細を説明すると長くなるけれど、ドルが強い限りは相場に資金が流れ込まないので、 今時、投資に真剣な人が毎日のようにチェックしているのが ”Dxy Chart/ディキシー・チャート(左上)”。これはドルと全ての通貨やアセットとの力関係を示すチャートで、 昨年末から「これが自分の持っている株のチャートだったらどんなに良いか…」と思うような理想的な上昇ラインを描いてきたのが米ドル。
にも関わらず同じ期間にアメリカ国内では8%以上のインフレが進んでいる訳で、 そうなってしまうのは 現在のインフレが人件費や流通コストの上昇等、ドル高とは無関係な要因と関わっているのに加えて、 輸入品の多くがドル建てで取引されているため。すなわちドルが上がろうと下がろうと 輸入品への支払い額は同じ訳で、 ドル高がインフレ抑制にはさほど功を成さないと認識されているのだった。

それを踏まえてアメリカがドル高を歓迎するかと言えば、そうとは思えないケースが多いのが実情で、 アメリカ国内外でドル高で恩恵を受けるケース、逆に苦戦するケースを挙げると以下のようなリストになるのだった。



ドル高の勝ち組と負け組


★ ドル高で恩恵を受けるのは…
他国通貨で取引する米国の輸入業者: 輸入商品を他国通貨で払う分には、ドルが上がれば上がるほど、仕入れコストが減って行くのは当然のシナリオ。

アメリカ人旅行者、及びドルで給与を受け取ってアメリカ国外で暮らす人々: ドルが強ければ隣国メキシコから イギリスを含むヨーロッパ等への旅行、もしくはそこでの生活で全てが割安になるということ。 現地のスポーツ観戦やエンターテイメント・チケット、現地で購入するブランド物なども割安になるのも然り。ただし航空運賃は 高騰しているので、例え歴史的な円安でも 日本のようにアメリカからの飛行機代が高い国へのヴァケーションではその恩恵がさほど感じられないのも事実。

在米移民の祖国への送金: 米国で働きメキシコやグアテマラなどの母国に送金をしている移民にとっては、ドル高により同じ金額を送付しても 家族や親戚が受け取る額が増えており、母国の通貨が弱ければ弱いほど恩恵が大きくなるのだった。

★ ドル高で苦戦するのは…
メイド・インUSAのプロダクト: 人件費や原料、流通コストの上昇で商品値上げを迫られているところに来て、更にドル高が製品価格高騰に拍車を掛けるので、米国製品の海外での競争力は大きく低下中。

原材料輸入: 石油から小麦まで、殆どの原材料がウクライナ戦争、干ばつや洪水を含む異常気象、パンデミックの余波、サプライチェーンの問題等で 数年来の 高値を更新中。これらは米ドルで価格設定されていることから、アメリカにとっては単なる値上がり。 しかしトルコ、エジプト等、原材料の大半を輸入に頼る国々は 既に上がった原材料価格を ドルに対してどんどん弱くなる自国通貨で支払うことにより、 二重の打撃を受けているのが現在。

米国のインターナショナル企業: 世界中でビジネスを展開する米国企業は、各国支社のビジネスは現地通貨で回っていたとしても、業績はドル換算での発表。例え海外支社が売上を維持しても ドルが強いと業績が悪化した計算になり、その結果もたらされるのが株価下落、企業価値低下等の悪影響。

アメリカ国内の旅行産業: アメリカ人旅行者を通貨価値の低い海外に奪われ、外国人旅行者が減ることから、ラスヴェガス、ニューヨークからディズニー・ワールドに至るまで、 海外からの旅行者の恩恵を受けていたエリアのホテル、レストラン、シアター等は、ただでさえパンデミックの影響を受けて落ち込んでいたビジネスの不振が更に続く見込み。

新興国経済: 過去5年間でドルに対して88%価格を下げたのがアルゼンチン・ペソ。過去1年間だけも国内の物価が2倍以上に高騰しており、 そんなアルゼンチンを含む 多くの新興経済国の政府や企業の資金調達手段と言えば米ドルによる債権発行。そのためドル高が進めば現地通貨に換算した借金が膨れ上がることを意味し、 しかも連銀がアグレッシブに金利を上げていることから、借入金の利息も高騰。 国内のインフレが進んで、国の借金が膨らむシナリオは、7月にスリランカで政権交代に繋がる暴動が起こった要因の1つで、ドル高は同様の火種を抱える新興経済国が増えること、すなわち世界的な政情不安を意味するもの。 ちなみに新興国の負債が焦げ付けば、世界の金融機関にもダメージをもたらすのは言うまでも無いこと。

これらを総合して世界のマクロ経済のためにも、アメリカの大手企業や投資家のためにも これ以上進んでほしくないのがドル高。 しかし連銀のパウエル議長はインフレ抑制のために リセッション覚悟で 今後もアグレッシブに利上げする意向を明らかにしていることから、2023年一杯は続くとさえ言われるのがドル高。
歴史を紐解けば、アメリカのインフレ率が14%を超えた1980〜81年にかけては、金利が最高で20%まで跳ね上がり、この頃は「銀行に預金するだけで財産が増えた」という時代。 当然の事ながら 誰もリスクを冒してまで株式に投資をしたがらなかったので、82年に底をつけるまで下がり続けたのがダウ。
現時点のアメリカでは利上げの影響でクレジットカードや住宅ローンの金利は大幅に上がっているけれど、残念ながら銀行預金の利息にはさほど反映されていないのだった。



その他、今週のキャッチアップ


アイフォン
中国での生産を減らすために最新のアイフォン14の生産をインドで行うことを発表したアップルが、そのアイフォン14の2022年下半期の生産量を600万台減らすことを発表。 理由はインフレや経済の先行き不安で手持ちのアイフォンの使用継続を考える人々が非常に多いためで、実際に売上の伸び悩みが伝えられるのがアイフォン14。

更に上がった米国住宅金利
今週遂に7%台に達したのがアメリカの住宅ローンの金利。これにより住宅ローンの申し込み数は過去22年間で最低の水準。平均的な住宅の30年ローンを支払っている人々は、 年明けに比べて毎月の返済額が830ドル増えている状況で、金利上昇に伴い この額はまだまだ上がる見込み。

ポルシェ IPO
売り出し価格84ユーロで今週IPOを果たしたのがポルシェ。 ティッカーは ”P911” でこれはもちろんポルシェで最もアイコニックなモデル、911に由来するもの。 これによって親会社のフォルクス・ワーゲンは910億ドルの資金調達に成功しており、この金額は2022年のヨーロッパの全IPOの総額の2倍。 2022年の欧州ではIPO件数が40%減少しており、長年ブランド・イメージとファン・ベースを確立しているポルシェのIPOは2022年の 例外的なサクセス例と受け止められているとのこと。

アメリカで自殺者が増加
パンデミック2年目の2021年に自殺を図ったアメリカ人の数は4万7644人で、前年比で4%アップ。それまで若干の減少傾向を続けた自殺率が再び大きく増えており、 2021年のアメリカでは 10分に1人が自殺を遂げていた計算。

ジェフ・べゾス元夫人、マッケンジー・スコットが離婚
25年間連れ添ったアマゾン元CEOジェフ・べゾスと2019年に離婚し、ビリオネアになったマッケンジー・スコット(52歳、写真上右)が、 2021年に再婚した元科学教師の夫、ダン・ジェウェットとの離婚を申請。マッケンジーは現在総資産330億ドル。べゾスとの離婚以来、 130億ドル以上をチャリティに寄付してきた彼女は今や世界屈指の慈善事業家。それだけの寄付をしても個人資産額を保ってきたのは離婚時に獲得したアマゾン株式が昨年まで高騰していたため。
再婚以来、多額の寄付と慈善活動をカップルとして行って来たマッケンジーは、離婚申請と共に全ての活動からジェウェットの名前を削除。 プリナプチャル・アグリーメント(婚前に結ぶ離婚後の財産分与を取り決める協約)を交わしていたことが見込まれることから、 マッケンジーのビリオネア・ステータスには変化はないものの、離婚の原因は不明。元夫のジェフ・べゾスは マッケンジーとの離婚原因になった愛人、 ローレン・サンチェスとの交際を続け、2人で公の場に出る機会は増えているものの、婚約や結婚については憶測が飛び交うだけの状況が続いているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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