Oct. 3 〜 Oct. 9 2022

"New Plot in Tiwtter Deal、Paradox Marketing、ETC."
まだまだ分からない E.マスクのツイッター買収、パラドックス・マーケティング、ETC.


今週金曜に発表されたアメリカの9月の雇用統計によれば、先月アメリカで生み出された新しい職の数は予測を下回る26万3000で、 8月の31万5000に比べて明らかな減少傾向。しかし失業率は8月の3.7%から9月は3.5%にダウンして過去50年で最低。 この数値はまだまだジョブ・マーケットが堅調であることを示し、それが意味するのはこの先も利上げが続き、ドル高、株安のシナリオが継続すること。 そのため今週水曜には3万ドル台を回復したダウ工業株価は金曜に630.15ポイント値を下げて、再び2万9000ドル台で今週の取引を終えており、 10月13日に控えている9月の消費者物価指数の動向によっては更なる下落が見込まれるのが株式市場。
それとは別にインターネット上で先週末からヴァイラルになっていたのが 「クレディ・スイスが破綻秒読み段階」、「それに連動してドイツ銀行も破綻」という説。 そのため「リーマン・ブラザース破綻のシナリオが再現される!」というエキサイトメント混じりの不思議な危機感がネット上だけで暴走しており、 経済関係者が「クレディ・スイスの経営状態は芳しくないものの、2008年のリーマン・ブラザースより遥かにマシ。少なくとも暫くは破綻のリスクが無い」ことを 事あることに説明していたのが今週。先週末には3.92ドルまで下がったクレディ・スイスの株価であるけれど、週明けからは上昇に転じ、 金曜には30億ドル相当の社債の買い戻しを発表したことから市場の信頼を回復。今週末は4.85ドルで取引を終えているのだった。



それでもまだ信用できないイーロン・マスクのツイッター買収


10月3日、月曜に大きく報じられたのが、もうすぐ法廷で争われる予定だったイーロン・マスクによるツイッター買収について、 突如マスク側がオリジナル価格での買収に前向きな姿勢を見せたことから、成立に動き出したニュース。 その直後にはツイッター株価が13%も高騰し、一時取引中止になっていたけれど、 ツイッター側はこれまでの経緯からマスクが本当に買収を遂行するかについては信頼しておらず、買収話を進めながらも 崩さなかったのが裁判を予定通り行う姿勢。 マスクはそんなツイッターの様子を複数のツイートで批判していたけれど、裁判の日程については 延期を申し出たマスクの希望が認められ、 マスク側が時間稼ぎに成功した形になっているのだった。

マスクが買収成立を望むニュースが報じられた直後から、メディアで指摘され始めたのがその買収に出資する金融機関が大損を被ること。 買収資金のうちの130億ドルを 複数のバンクが出資しており、左上のリストにあるようにその90%がモルガン・スタンレー、バンク・オブ・アメリカ、 バークレー、三菱UFGが請け負っているけれど、今年4月にマスクがツイッター買収のための金策をアレンジした時とは、 すっかり様変わりしたのが金融市場動向。 春以降、世界中の中央銀行がインフレ抑制のために利上げを行い、ジャンク・ボンドからレバレッジ・ローンまでの利回りが急上昇したことから、 今年4月の段階で 現在より遥かに低い利息での融資に合意している金融機関が損失を被るのは当然のこと。 ブルームバーグの見積もりによれば、金融機関の損失額は現時点で5億ドル。 外部投資家に債券を発行して債務を押し付けようとしても、金利が高い状況では投資家が債券購入に消極的であることから”ディスカウント=損失”を強いられるのは必至。 しかもバンク・オブ・アメリカ、バークレーは来週、別の大型買収のために83億5000万ドルの資金を調達しなければならないタイミング。 そのため、今となってはイーロン・マスク以上にツイッター買収から降りたがっていると言われるのが融資をする銀行側。

マスクは未だ資金調達を行う銀行に対して借入通知を送付してだけでなく、 銀行に買収を成立させる意向さえも通達していないことが関係者の証言で明らかになっていたのが今週末の段階。 そのため 信ぴょう性が増してきたのが、銀行からの融資が得られないことを理由に マスクが買収から手を引く策略に出るという説。 もし融資が得られず買収が成立しなかった場合、マスクが支払うのはキャンセル料の10億ドルのみで、4400億ドルの買収より遥かに安くつく計算。 法的見地からは銀行にもマスク側にも、ツイッター買収から手を引く手段は無いと指摘されるものの、まだまだ買収成立までドラマがあるという見方が強いのが現時点。
そのツイッターは今週、ついにツイートの編集ボタンをデビューさせているけれど、これが使用できるのはツイッターの有料サービス、 ツイッター・ブルーを毎月4.99ドルのフィーを支払って利用しているサブスクライバーのみ。 編集はツイートしてから30分以内であれば5回まで可能とのこと。 ちなみに有料のツイッター・ブルーは知られていないだけで、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドの4カ国のみで2021年からスタートしているサービス。 そのため編集機能が使えるのも現時点ではこの4カ国のみになっているのだった。



今週話題のパラドックス・プロジェクト


以前のこのコラムで、保守派右寄り男性はデート・アプリで女性にアピールし難いことを書いたけれど、 相手が見つからない保守右派男性ほど 複数のデート・アプリに登録しては、何とか女性と交際しようと躍起になっているのが実情。 そこに目を付けたアントレプレナー、ライアン・マッケナニー(34歳)が、ヴェンチャー・キャピタリストのピーター・ティールの出資で 新たにスタートしたのが、保守右派のみを 対象にした紹介制デート・アプリ、 ”ザ・ライト・スタッフ”。 ピーター・ティールは初期からのフェイスブックのインヴェスターとして知られ、2016年の大統領選挙ではトランプ氏当選に裏から最も力を発揮した シリコンヴァレーには珍しい超右派。
その彼が出資したとあってザ・ライト・スタッフは徹底的に保守右派を持ち上げてターゲットにするコンセプト。 登録時に義務付けられるのが 冷やかしのフェイク・ユーザーをはじき、保守右派度をチェックする目的も兼ねて 複数のトピックに対して短いエッセーを執筆すること。 そのトピックは 「1月6日は...」という書き出しを提示して、トランプ支持者議会乱入について語らせるものから、「自分が気に入っているリベラル左派のウソ」、 「即座に思いつく社会への抗議」 など、右寄り右派であれば 熱く語れそうなものが並び、そのうちの3つを選んで200字以内で記載するのが条件。
通常のデート・アプリでは 女性ユーザー達が保守右派&男尊女卑系ユーザーを見分ける指針として「人工中絶を支持するか?」という質問事項を設けていたりするけれど、 ザ・ライト・スタッフでは保守右派であればあるほど アルゴリズムで優遇されるのがそのシステム。 そのCMでは どう見てもヤラセの美女が登場して「右派の男性は男女関係での男性の役割をきちんと理解している」と 通常はモテない彼らを褒めたたえているけれど、 ソーシャル・メディアのリアクションは「その役割って女性を殴って、最終的には撃ち殺すこと?」と、銃を持つ右派の男性がDVの末に女性を射殺するケースが多いことを皮肉るコメントが 見られたかと思えば、「このアプリはFBIが白人至上主義グループ逮捕の捜査に使っているはず」とからかう声も聞かれて、既に何時までビジネスが続くかが見守られている状況。 中にはピーター・ティールほどのヴェンチャー・キャピタリストが 利益を度外視して こんなアプリに投資をしたことに驚く声も聞かれていたけれど、 逆に彼が大金を投じて救済しなければならないほど、保守右派の男性に昨今の女性がなびかない現状を指摘する意見もあるのだった。

一方、経済の世界で今週話題になっていたのが、タトル・キャピタル・マネージメントが証券取引委員会に新たに登録を申請した”インヴァース・クレーマーETF”。 これはケーブル局CNBCの長寿番組 ”Mad Money / マッド・マネー” のホストで、その一押し銘柄に外しが多く、 マーケットの読みが真逆であることも少なくない ジム・クレーマー (写真上、右から2番目) の予測と正反対の投資をするETF。 ジム・クレーマーは元ゴールドマン・サックスで、分析力や知識よりもキャラクターと話術で素人投資家にファンが多いパーソナリティ。 しかし最初は彼の言い分を信じて投資をしていた人でも、徐々に苦い経験と共に悟ようになるのが彼の言う通りに投資をするリスクの大きさ。 そのため「彼の予測の真逆に投資するのは 理に叶った儲けのフォーミュラである」と考える市場関係者の失笑を買っていたのがこのETF申請。
ちなみにタトル・キャピタル・マネージメントが専門家予測の逆を狙うETFをスタートするのはこれが2度目。 1度目は テスラ大暴騰を見事に予言し、テック株中心の投資で過去数年ウォールストリートのスーパースターになっていたキャシュー・ウッズ (写真上、右) 率いる アーク・インベストメントのETFの真逆に投資する ”SARK ETF”。 SARKとは "Short ARK"の略で、かつては多くの投資家が「ETFはアーク・インベストメントのものしか持っていない」 と語るほど 確実に儲ける手段であったのがアークのETF。ところがテック株への風向きが大きく変わってきたことから、今では損失に次ぐ損失を出しているのがアークETF。 逆にSARK ETFは 昨年11月のスタート以来、85%アップの利益を上げるサクセスフルぶり。
他人の失策で儲けるコンセプトではあるものの、「外れる確率が高い予測の逆は、成功率が高い」のは紛れもない事実なのだった。



その他、今週のキャッチアップ


証券取引委員会、キム・カーダシアンを訴追しながら同じ過ち…
10月3日月曜に報じられたのが、キム・カーダシアンが2021年にインスタグラムでフィーを支払われた広告であることを明記せずに無名のクリプトカレンシー、EMAX(イーサリアムマックス)を 彼女の3億人以上のフォロワーにプロモートしたことに対して 126万ドルの罰金の支払いと、向こう3年間クリプト関連の広告をポストしないことで 証券取引委員会(SEC)と合意した報道。 EMAXが行ったのはキムの知名度を利用し、話題を煽って値を吊り上げてから 売り逃げる典型的なPump & Dumpのスキーム。このことはメイン・ストリーム・メディアで大きく報じられたけれど、 それ以外に SECチェアマン、ゲーリー・ゲンスラーがソーシャル・メディアで発信したのが、わざわざその事態を説明する売名行為と言える異例のビデオ・メッセージ。 そして このビデオ・メッセージについてメディアが更に報じたことから、突如爆上げを見せたのがEMAX。 しかしその後はすぐに暴落、再び上昇して再度暴落という典型的なPump & Dumpのシナリオになり、世間に警鐘を鳴らすよりもキム・カーダシアン同様のEMAXプロモーションを行うという 失態を見せたのがゲンスラー。 SECチェアマンのビデオの方がキムのインスタグラムよりも遥かに拡散力あったというのは面目躍如であるものの、一般投資家の損失額もキムを起用したPump & Dumpのスキームを遥かに上回っていたとのこと。 SECチェアマンに対しては多方面から批判が寄せられていたけれど、この件で最も美味しい思いをしたのが本来最も責められるべきEMAXであったのは皮肉な結果。

アイフォン14のクラッシュ・レポート機能
今週のアメリカで、交通事故としては珍しく全米で報じられたのがネブラスカ州で10月2日、日曜午前2時15分に起こった追突事故。 6人が乗車したホンダ・アコードが大木に激突し、乗っていた5人の男性が死亡し、24歳の女性が重傷を負い、その後運び込まれた病院で死去したという惨事。 通常ローカル・ニュース止まりの交通事故が全米ネットのニュースで報じられたのは、事故の警察への通報がアイフォン14に新たに加わったクラッシュ・レポート機能によって行われたため。 アイフォン14には極端な加速、もしくは減速を感知できるハイGフォースの加速度計が搭載されており、これによって車の衝突や電車脱線等の事故を察知し、アイフォン所有者が動けない状態でも 自動的に通報が行われるのがこの機能。残念ながらこの事故で犠牲者を救うことは出来なかったものの、クラッシュ・レポート機能の優秀さはアピールされていたのだった。

カレッジ・アスリートが広告出演で財産を二倍以上に
昨年6月にNCAA(全米大学体育協会)が認めたのが、カレッジ・アスリートが自分の名前、イメージ、好感度を利用して収益を上げる権利。 それまで大学がスポーツ・プログラムで何十億円もの収益を上げ、コーチの年俸が億円単位であっても、ソーシャル・メディアを通じた収入がせいぜいだった学生アスリートが、企業広告等で 収入を得ることが許されたのがこの時の判断。それから約1年が経過して 発表された大学女子アスリートの長者番付で 予想通り1位になったのが、ルイジアナ州立大学のジムナスト、オリヴィア・ダン(20歳)。ソーシャル・メディアの収益だけでも既にミリオネアであったオリヴィアは、 NCAAのルール改正直後に プロアスリートを多数クライアントに抱える WMEスポーツとエージェント契約を交わし、以来コスメティック、アパレル、フード・デリバリー、 プロテイン・サプリメント等の広告に出演。今やその資産は220万ドル。しかしながらソーシャル・メディアのポストは徐々にアスリートというよりインフルエンサー、ライフスタイル・モデル的な ものが増えており、ルール改正の際に危惧された「アスリートとしてのサクセスよりも、セレブリティとしてのステータスにフォーカスする傾向」が進行しつつあることが指摘されるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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