Dec. 19 〜 Dec. 25 2022

Year 2022 was..., Year 2023 would be..."
アメリカの2022年を振り返って&2023年の展望


今週末は言わずとしれたクリスマス。今年は月曜がクリスマスの振替休日になるとあって、今週のアメリカの旅行者数は1億1300万人。 しかしそれを阻むようにアメリカを見舞ったのが数十年に一度の”Snowpocalypse/スノーポカリプス(雪の黙示録)”とも表現されるメガ・ストーム。
思えば2022年のアメリカは ホリデイの度に悪天候に見舞われ、キャンセル便や遅延便のせいで せっかく旅行に出掛けた人々が空港で寝泊まりする様子が見られたけれど、 ホリデイ以外の時期にも 竜巻、山火事、暴風雨、熱波、寒波、記録的な干ばつと水不足、火山噴火、ハリケーン、地滑り、洪水、大雪など、ありとあらゆる自然災害に見舞われ、 その規模が大きくなり、数が増えて行ったのは周知の事実。 それに伴う停電被害も深刻であったけれど、2022年はこれまで山火事が起こらなかったエリア、大雪が降らなかったエリア、竜巻が起こらなかったエリアなど、 より無防備な地域にまで災害が広がって被害を大きくしていた一方で、前回のハリケーンや竜巻の被害からの復旧前に再び同じ災害に見舞われるケースも増え、 もはやそうした地域では保険を掛けるのは不可能な状態。
また2022年にはアメリカ国内で飲料水が飲めないエリアが更に確実に拡大しており、2023年はアメリカ、及び世界中で自然災害や環境問題のせいで住居を移さなければならない エンバイロメンタル難民がどんどん増えて行くことが見込まれるのだった。



ウクライナ戦争、民主主義の危機、ガン・ヴァイオレンス、トリプルデミック…


2022年の国際政治では言うまでもなくウクライナ戦争が最大のニュースであったけれど、戦争勃発当時は僅か数日、もしくは数週間でロシアに占領されると思われていたのがウクライナ。 今週にはそのウクライナのゼレンスキー大統領がNATOのスパイ・エアクラフトを使ってワシントン入りして、下院で行ったのが「ウクライナへの支援はチャリティではなく 投資である」と、 アメリカからの更なる支援を求めるスピーチ。しかし、年が明ければその下院の過半数を占めるのはウクライナ支援懐疑派が多い共和党。 アメリカ国民は40%以上が現在のペースでウクライナ支援を続けることに賛成しているものの、開戦当時に比べるとこの数字は下降線を辿っているのだった。
そのウクライナ戦争が始まった頃には、11月の中間選挙で惨敗すると見込まれていたのが与党民主党。しかし最高裁が5月に人工中絶合憲を覆して 時代錯誤の保守傾倒への危機感が高まったのに加え、共和党支持者が多いレッド・ステーツで州民投票結果の覆しを可能にする 選挙法改正案が提出されていたことから リベラル派と無党派層の間で「民主主義が覆される」という危機感が高まり、 各州で大統領選挙並みの投票率を記録していたのが今年の中間選挙。それによって民主党の上院での過半数が確保されたけれど、 「民主主義が覆される」という危機感は 2020年の大統領選挙の不正を今も信じる保守右派の間でも違った意味で顕著。 最新のアンケート調査の結果では民主党支持者の48%、共和党支持者の45%がそれぞれに「対抗勢力によって民主主義が脅かされている」という意識を持っていることが明らかになっているのだった。

民主党・リベラル派にとって最も民主主義の危機感を煽られたイベントと言えば、何と言っても2021年1月6日のトランプ支持者による議会乱入事件。今週にはその独立調査委員会の最終報告が纏められ、 司法省に対してトランプ氏に対する刑事責任追及が促されたのに加え、下院に提出されたのが 「議会乱入が選挙結果を覆そうとするトランプ氏による事前に計画された策略であった」という 1200人以上の証言と証拠を纏めた840ページを超えるレポート。それ以外にも税金&脱税問題やホワイトハウスからの最高機密書類の持ち出し等、 トランプ氏を法的に追い詰める問題は2023年も継続するけれど、トランプ氏の政治生命にそれよりも深刻な危機をもたらしているのはフロリダ州知事、ロン・ディサンティスが 次期共和党大統領候補としてどんどん力を拡大していること。今週にはトランプ氏の家族さえも ディサンティス知事の方が有力な大統領候補であると認めていることが報じられていたのだった。

トランプ氏の家族の中でも完全にトランプ氏に見切りを付けたと今週報じられたのが娘婿のジャレッド・クシュナー。理由はトランプ氏が11月にアンチ・ユダヤ発言が原因でアディダスを始めとするあらゆるビジネスからキャンセルされたカニエ・ウエストと ホロコースト否定論者の白人至上主義者、ニック・クエンテスをマー・ラゴの私邸に招いてディナーを共にしたためであるけれど、2022年は前半はアジア人差別、中盤からは LGBTQ、特にドラッグ・クイーンへの差別、そして1年を通じて増加傾向が著しかったのがユダヤ系に対する人種差別で、ヘイトクライムの数は2022年も史上最多を更新の見込み。
同様に2022年のアメリカで一向に歯止めが掛からなかったのがガン・ヴァイオレンス。1回の事件で4人以上が銃で撃たれる”マス・シューティング”の数は12月20日の時点で741件、 1日に2.08回のペースで起こっており、死者は850人以上、負傷者数は約3000人。 それでも銃規制が進まないのは、銃規制に反対する共和党が銃乱射事件の原因が 戦闘用の銃が簡単かつ合法的に入手できる状況よりも メンタル・ヘルスにあると主張する一方で、民主党主導で改定された保釈金制度の影響で都市部で犯罪が増えたことを逆手に取って「犯罪に甘い民主党」、「自衛の必要性」を 有権者にアピールしているため。
パンデミックについては さすがに2年近く続いているとあって、今ではすっかりCOVID-19がインフルエンザと同様にこれからも居座るウィルスとして捉えられるようになったのが2022年のアメリカ。 夏から秋にかけてはモンキー・ポックス(サル痘)がゲイ男性の間で広がり、そのネーミングが差別的であることから 後に正式名称がMポックスに改定されたけれど、秋以降に乳幼児の間で大ブレークしたのがRSV(RSウィルス)。そのため この冬はCOVID-19、インフルエンザ、RSVによる”トリプルデミック”、”トライデミック”と呼ばれる状況であるものの、 危機感のレベルは昨年の今頃に比べて遥かに低いのが実情。 学校の一部ではマスクの着用義務が復活し、NYでもインドアでは再びマスク着用が奨励されるようになったけれど、 以前のようなマスク着用を巡る抗議運動や物議は起こっておらず、パンデミックに対する人々の感情やリアクションはかなり冷めたものになってきているのだった。



利上げ&インフレ、Year of Musk & Twitter...


経済に話題を移せば、2022年を象徴する出来事と言えば まずは連銀のインフレ抑制のための7回に渡る利上げ。 その結果年明けには0%であったアメリカのベース金利が現在4.4%に上昇。インフレ率は6月に9%のピークを付けて以来、 下降線を辿っているものの、2023年も金利上昇とインフレが続く結果、リセッション突入必至というのが金融業界の2023年の展望。
景気後退対策が常に真っ先に行われる金融界では、既に大型レイオフが実施、もしくは予告されており、好成績を上げたトレーダーでも 今年はボーナスカットが当たり前。中にはゼロの社員もいるようで、ボーナス減額の割合が70〜80%以上の社員に来年早々待ち受けていると言われるのがレイオフ。
アメリカのインフレが2023年も継続する理由の1つは、パンデミック中のサプライチェーンの問題やテクノロジーの進化を受けて、 徐々にアメリカ国内生産に戻す企業が増えてきているためで、その結果、輸送コストは省けるとは言え、どうしても増えるのが人件費。 それが価格に跳ね返るので 物価上昇は避けられないトレンド。しかも国内雇用が増えて、低失業率と労働者不足が2023年も続けば、 賃金上昇、それに伴う価格上昇を受けて、連銀は更なる利上げを続けざるを得ないというのが見込まれるシナリオ。

2022年の経済界を代表するもう1つのニュースはツイッターの買収劇、及び買収後の様々なトラブル。 「フリースピーチの完全復活」を謳って、経営状態が芳しくないツイッターを440億ドルという完全なオーバーペイ・プライスで買収したイーロン・マスクであるけれど、 マスク買収後はツイッターの収入源である広告主がどんどん離れた結果、経営は悪化の一途。 従業員の半数以上をレイオフし、社内のカフェテリアの施設も閉鎖し、そのキッチン・エクイプメントまで売却するコスト・セイヴィングを行い、 残った従業員に過酷な労働時間を厭わない宣誓書の提出を求めるマスクの経営姿勢には社の内外から批判が集中。今週には マスクが後釜を見つけ次第ツイッターの経営を任せる意向を明らかにしているけれど、ツイッター買収が最も悪影響を及ぼしたと指摘されるのは テスラの株価。マスクが買収資金を捻出するために売却したテスラ株の総額は約400億ドル。今週末にはマスクがこれ以上テスラ株を売却することは無いと宣言したものの、 1兆ドル企業の仲間入りをした昨年に比べて企業価値が6000億ドル落ち込み、株価も約60%下落。 そんな2022年のテスラ株下落の要因を担っていたのがマスクによる株式売却。
しかし2022年に企業価値を大きく減らしたのはテスラだけでなく、フェイスブックの親会社 メタも2021年に企業価値を70%失って、 1兆ドル企業から転落。CEOのマーク・ザッカーバーグはその個人資産が1420億ドルから38億ドルに激減。 アマゾンも企業価値を約45%減らし、世界初、史上初の”企業価値が1兆ドル目減りした企業”になっているのだった。

ソーシャル・メディアで2022年もダントツの人気を誇ったのはTikTokで、ありとあらゆるトレンドが生み出されたのがTikTok。しかし親会社の中国企業バイトダンスがアプリを通じて 盗み出すユーザー情報については連邦政府レベルで警戒が高まっており、年末にはバイトダンスが一部のジャーナリストの個人情報流用を認めたことから、 現在12の州で政府関係者の仕事用スマートフォンでのTikTokアプリ・ダウロードが禁じられている状況。
ソーシャル・メディアへの政治力の介入については、ツイッター社内にもCIAやFBIのエージェントの存在が認められたことが、 イーロン・マスクによる過去数週間の内部資料公開によって明らかにされているけれど、 ツイッターを解雇された元エージェント達を積極的に雇用したのがグーグルやメタを始めとするシリコンヴァレーの大手。 2022年はIT企業から大量のレイオフが出ているけれど、エンジニアに関しては医療、金融、流通業等 様々な分野に好待遇で再就職を果たしており、それが2023年以降の各分野における技術革新をスピードアップさせる要因になると見込まれるのだった。



オスカー, ストリーミング, トレンディング...


2022年のエンターテイメント界で最もインパクトが強かった出来事と言えば、オスカーのステージ上で ウィル・スミスがプレゼンターのクリス・ロックを殴った事件。これはクリス・ロックがウィル・スミスの妻で女優のジェイダ・ピンケット・スミスの バズカットを脱毛症とは知らずにジョークにしたためで、ウィル・スミスはこの時受賞したオスカー像を剥奪されることは無かったものの、 向こう10年間は授賞式を含む一切のアカデミーのイベントに出席禁止の処分を受けているのだった。
スポーツで話題を提供したのはヤンキーズのアーロン・ジャッジのホームラン記録達成とプロテニスのセリーナ・ウィリアムスの引退。 2022年はスポーツ観戦からドラマシリーズまで、エンターテイメントの中軸を成していたのがストリーミング・サービス。 上半期には劣勢と複数回のレイオフが伝えられていたネットフリックスは、一時的にディズニー+に最多視聴者数を奪われたものの、 第3四半期からビューワー数が再び増加。新たに広告入りの安価な料金オプションを設け、2023年からは これまで野放しになっていたパスワード・シェアリングを取り締まり、 アカウントがシェア出来るのは同じ世帯に住む家族のみになるのだった。
そのネットフリックスのドキュシリーズで12月に入ってから物議を醸しているハリー王子&メーガン・マークル夫妻は、 2022年に最も物議を醸したセレブリティ・カップルの1つ。春先のオプラ・ウィンフリーとのインタビューで、 英国王室における人種差別について語ったのに始まり、メーガンのポッドキャスト、国民からブーイングを浴びたエリザベス女王葬儀出席、 環境問題を訴えながらのプライベートジェット使用等、1年を通じて話題に事欠かなかったのが2人。
エリザベス女王の死去後初めて迎えるクリスマスの直前には、チャールズ3世が ハリー王子と並ぶ英国王室の問題児、 アンドリュー王子をバッキンガム宮殿から追い出し、宮殿内にオフィスを構えることも禁じたと報じられたけれど、 アンドリュー王子がジェフリー・エプスティーンのセックス・トラフィッキングの被害者ヴァージニア・ギフレに対して1600万ドルを支払う示談に応じたのが 2022年3月。そしてエプスティーンのマダムであったギレーン・マックスウェルに20年の禁固刑が言い渡されたのが2022年6月末。 他にも世界中のVIPがエプスティーンがアレンジしたティーンエイジャーと関係したと言われながらも、これで一件落着になりそうなのがエプスティーン・スキャンダル。 今後人々の関心は移っていくのがギレーン・マックスウェルと同じ弁護士を雇ったFTXの元CEOで、ユーザーの資金を勝手に流用した史上最高額の詐欺事件で、 今週アメリカの警察に身柄を引き渡されたサム・バンクマン・フリードを巡る裁判。

2022年のボックスオフィス最大のヒットは「トップガン・マーヴェリック」で、アメリカ国内で7億1873万ドル、アメリカを除く世界中で7億7000万ドル、合計14億8873万ドル、 2位の「ジュラシック・ワールド:ドミニオン」に4億ドルの差をつけてダントツのNo.1。2022年に最も視聴されたTV番組はケヴィン・コスナー主演の「イエロー・ストーン」。 音楽ではビルボード・ホット100に発売から52週間をかけてNo.1 に輝いたグラス・アニマルの「ヒート・ウェイブ」が2022年最大のヒット。 2022年に最も興行成績を上げるツアーを行ったのはバッド・バニー。
2022年のファッションの流行色はピンク。ブラッド・ピットがレッド・カーペット上で着用したことにより、男性のスカート着用が市民権を得たのも2022年。

2023年は景気の点では厳しい見通しが聞かれるものの、新しい職業やカルチャー、働き方、テクノロジーの登場による明るい展望が聞かれるのもまた事実。 またガンを始めとする病気治療の進化が見込まれ、そしてウクライナ戦争が春頃から終結に向けて動き出すという予測も聞かれるけれど、 2023年が良い年になるか、辛い年になるかは社会情勢よりも 自分の生活が中心で決まるもの。
2023年が皆さまにとって素晴らしい1年になるよう、お祈りしています。

来週のこのコーナーはお休みをいただきます。 1月8日が2023年最初のこのコラムの更新となります。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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