Jan. 1 〜 Jan. 7 2023

Here Comes 2023! "
テスラ、NFL波乱の新年幕開け、ドライ・パーマネントリー、Etc.


月曜がニューイヤーズ・デイの振替休日であったことから、1月3日の火曜日から本格的に2023年が始動したアメリカ。 その初日から4日間に渡って、共和党が過半数を占めた下院では その足並みが揃わないために1923年以来100年ぶりに議長選出の投票が15回も行われる事態が発生。 議長不在では議会が機能しないとあって、1月1週目を完全に無駄にする幸先の悪いスタートを切っているのだった。
また今週にはアマゾン、セールスフォースが事前の予想を大きく上回るレイオフを発表。それ以外にもオンライン・アパレルのエヴァ―グリーンや、スティッチ・フィックスが従業員17%、11%の解雇を発表。 破綻したクリプトカレンシー取引所FTXの元CEO、サム・バンクマン・フリードは初めてアメリカの裁判所に出廷し、訴追された全ての容疑を否認。10月からの公判開始が決定。 フェリシティ・ホフマンやロリー・ロクリンといったセレブが実刑服役刑を受けるに至った大々的な有名大学不正入学スキャンダルの大元締めであったリック・シンガーに対しては、ようやく3年半の実刑懲役刑が確定。 金曜に発表されたアメリカの12月の雇用統計では、22万3000の新たな仕事が生み出され、数としては減少傾向ながらも失業率は3.5%に低下。 雇用が引き続き堅調で、給与も上昇率こそは下降線でも 引き続き上がり続けていることから、2023年に確実視されていたアメリカのリセッション突入が避けられる可能性が浮上。
そうかと思えば、昨年末に公開されたネットフリックス・ドキュメンタリーに続いて、ハリー王子の暴露本的自叙伝「Spare/スペア」の内容が1月10日の発売を待たずしてメディアに公開され、 人々が半ばウンザリしながらも大物議を醸しており、既に目まぐるしい1週間。その間にもカリフォルニアを中心としたウエストコーストや中西部では、ボム・サイクロンと呼ばれる大型ストームが既に2回直撃し、 大洪水や地滑りの大被害が続出。さらに金曜にはヴァージニア州で2023年最初のスクール・シューティングが発生。6歳児が教員に 事故ではなく故意に発砲して怪我を負わせて逮捕されており、 2023年も波乱の幕開けとなっているのだった。



2023年、テスラ受難の幕開け


2022年12月末にメタを抜いて2022年に最も価格が下落したIT株になったのがテスラ。
2023年市場の幕開けとなった1月2日火曜日にも株価が更に12%下落し、この日だけで失った企業価値は470億ドル。この金額はフォードのマーケット・ヴァリューとほぼ同額で、 テスラは2020年11月のピーク時から8500億ドル以上のマーケット・ヴァリューを失った計算。 ゴールドマン・サックスやモルガンスタンレー等、ウォール・ストリートのアナリストは軒並みテスラの業績悪化を予測し、「2023年はテスラにとってリアリティ・チェックの1年になる」との声が聞かれるのだった。
事実、長きに渡ってテスラ株を保有してきたインヴェスターがここへ来てどんどん離れていることが報じられるけれど、 その要因の1つは、2022年に世界中の中央銀行が軒並み金利を引き上げ、それが2023年も続いて 自動車ローンが高額になることから、需要が減る傾向にあること。ちなみに2022年に金利を引き上げなかったのは日銀と中国人民銀行のみ。
また世界最大のEV市場であるヨーロッパで、イギリス、ドイツ、スウェーデンといった国々が それまでEV購入者に与えていたインセンティブを終了しつつあるのも懸念材料。 アメリカでも2023年1月1日までに購入された新車EVには 最高で7500ドルの税金控除が与えられたけれど、アメリカ国内で チャージング・ステーションが十分に設置されているのはカリフォルニア等、まだ一部の州。テキサスなどは、まだまだEVで長距離を移動するのは極めて難しい環境。
そのEV市場ではフォード・マスタング・マッハE、フォルクスワーゲンID3等の競合が増え、消費者にとっての選択肢が広がりつつあることから、2019年にはヨーロッパの新車EV販売数で33%を占めていたテスラのシェアが、 昨年には15%に落ち込んでいる状況。 今後の景気動向によっては中国、日本といった市場で自国メーカーのEVをプロモートする保護政策が取られることも見込まれ、テスラにとっての不安材料は山積。

今週明けにはテスラ中国のトップ、トム・ズーがアメリカ工場のオペレーション管理を担当することが報じられたけれど、 この人事は「イーロン・マスクが救けを必要としていることを認めたメッセージ」と株主に受け止められ、株価下落の原因になったというのが市場関係者の声。 さらに今週末には中国での深刻な売上減少を受けて過去3ヵ月で2度目の値下げを発表。同様の値下げはオーストラリア、日本、韓国でも行われる見込み。
その一方でイーロン・マスクは2018年にテスラを非公開株にする発言をして株価を操作した疑いで、証券取引委員会に訴えられているけれど、 同じ案件で新たにサウジアラビアのソブリン・ウェルスファンドからも訴えられる見通しで、 マスクはとてもツイッターの経営などしている場合ではなくなっているのがテスラの現状。
そのツイッターは年明け早々、サンフランシスコのオフィス・レント、13万ドル6260ドルの未払いでランドロードに訴訟を起こされたばかり。 相次ぐトラブルで広告主が戻らないことを受けて、ミス・インフォメーション拡散を防ぐために2019年から禁止してきた政治広告掲載復活を発表したのが今週水曜のこと。 加えて今週にはツイッター従業員が社内メールで、コスト削減によるトイレット・ペーパー不足を訴え、社員だけでなく清掃スタッフまでカットしたことから悪臭が漂っていることに抗議。 益々企業として破滅的な方向に向かう様子を露呈していたのだった。



NFL、受難の幕開け?! or またしても責任回避!?


今週のアメリカで最大のニュースになっていたのが、1月2日月曜夜に全米ネットで放映されたNFLバッファロー・ビルズVS.シンシナティ・ベンガルズの試合中、 ビルスのセイフティ、ダマー・ハムリン(24歳、写真左上)が一見ルーティーンと見られるタックルの後、突如倒れ、心肺停止状態になった事態。 当然ながら現場は騒然となり、両チームの医療スタッフが10分を掛けて何とか心拍を取り戻し、フィールド内まで乗り付けた救急車で病院に運び込まれけれど、 両チームのプレーヤーはショックを受け、相手チームのプレーヤーともハグを交わし、円陣を組んで祈りを捧げる姿が見られ、やがてプレーヤーはロッカー・ルームに引き上げ、 試合中止がNFLから通達されたのだった。
今シーズンのNFLは、開幕早々マイアミ・ドルフィンズのクォーターバック、トゥア・タゴヴァイロアが 相手チームのディフェンスの強い当たりを受けて脳震盪で倒れたにも関わらず、 その後 ドクターが彼を再び試合に戻す判断をして大顰蹙を買っており、今回のダマー・ハムリンの心停止に関しては 心拍の合間の微妙なタイミングでヘルメットが彼の心臓を猛スピードで直撃したことから、 脳への血流がストップするという極めて珍しい症状。 もしこれが脳震盪であれば、彼がそのままフィールド外に運び出されて ありがちなトラブルとして片付けられ、人々の関心がプレーオフを掛けた試合の動向にのみ向けられていたような状況。 しかしこの時ばかりはハムリンに対する救急医療チームの措置、プレーヤーや観客が愕然とする様子を 何百万人ものビューワーが終始ライブ中継で見守ることになり、 スポーツ・コメンテーターからは「歴史上最も悲惨なスポーツの試合」との声まで聞かれていたのだった。

NFLと言えばヘルメットを始めとするプロテクション・ギアを付けたプレーヤーによる、容赦無しのラフなプレーが人気を博し、アメリカで最も高収益を上げるプロ・スポーツ・リーグ。 しかしプレーヤーの身体リスクは長年警告されながらも軽視され続けられてきた問題。既に多くのプレーヤーが怪我、特に脳の障害によって早期引退や若くして死亡するケースが多く、 プロになる以前の高校、大学時代に致命的なハンディキャップを負うケースも多発。アメリカでは親が子供達にプレーをさせたがらないスポーツの筆頭。 特に過去10年の間にアフリカ系アメリカ人プレーヤーの割合が更に増え、かつては白人ポジションと見なされて来たクォーターバックに黒人層が増えたのも、 「白人家庭の子供達の方が NFLプレーヤー以外に将来的に裕福になれるオプションが多いことから、白人プレーヤーが激減した結果」と指摘されるのだった。
そもそもNFLでは1チームに55人のプレーヤーが登録され、そのうちの48人が実際にプレーを行うけれど、1試合当たり30人のメディカル・スタッフが脳震盪やその他の怪我への対応に待機しているというのは 頭を冷やせば異常な数。 今週には「NFLもラグビーのようにプロテクション・ギアをあえてつけない方が 保身の意識が働いて、リスキーなプレーが減るはず」といった意見と共に、 これまでプレーヤー達の身体的ダメージに保証責任逃れをしては 膨大な利益を上層部だけで吸い上げてきたNFL側の姿勢を改めて批判する声が広がっていたのだった。 ハムリンに対しても全米からの同情が寄せられ、彼がスタートした貧困層の子供達に玩具をプレゼントするチャリティのクラウド・ファンディングには、 当初2500ドルの目標額に対し、金曜の時点で寄せられた寄付は何と700万ドル。木曜にハムリンの意識が戻るまでは 彼の入院した病院前や、地元バッファローでは 毎晩彼のために祈りを捧げるキャンドル・サービスが続いていたのだった。 金曜にはハムリン自身がフェイスタイムを通じて 木曜から練習を再開したチームメイト達を励ましたことがレポートされたけれど、 果たして今回の事態で遂にNFLが プレーヤー・セイフティへの抜本的な取り組みに動くかは未だ微妙なところ。
それというのもNFLは 多額の資金に物を言わせて チームや選手をコントロールする一方で、 反対勢力を世論や政治力を操って抑え込むことで知られる 政府とマフィアを合体させたような組織。 それはハムリンに関する報道の中で、ハムリン自身がインタビューで「いつか試合中に自分のプレーヤーとしての最後の日が来るかもしれないことは覚悟している」と語る様子が NFLのダメージ・コントロール的にタイミング良く放映される様子にも象徴されており、 多額の契約金と年俸を受け取るプレーヤー達は、元気なうちは必ずこう語るようにNFLにプログラムされている有り様。 ファンにしても 今回のような事態が起これば一時的にプレーヤーのリスクを懸念するものの、これからプレーオフ、スーパーボウルというNFLが最高潮に盛り上がっていく局面では、 プレーのエキサイトメントが最優先になってしまうのが毎度のシナリオなのだった。



Alcohol is no longer cool!? ドライ・ジャニュアリーからドライ・パーマネントリーへ


年が明けるとアメリカ人がニューイヤー・レゾルーションと称して新年の目標に取り組むのは毎年のこと。 その目標の6大レギュラーと言えば、「タバコを止める」、「ダイエットをする」、「お酒を止める/控える」、「借金を減らす/お金を貯める」、「しっかり睡眠を取る」、「エクササイズをする」であるけれど、 それとは別に多くの人々が1月になると取り組むのが「ドライ・ジャニュアリー」、すなわちホリデイシーズンの飲み過ぎを反省して、1月をアルコール・フリー月間にすること。 しかし過去2〜3年ほどは「ドライ・ジャニュアリーを実践して以来、体調が良くなった」という人々がTikTokを始めとするソーシャル・メディアで、すっかりお酒を断ったライフスタイルを披露する傾向が顕著。 それが「お酒は飲めるけれど、あえて飲まない」という”Sober Curious / ソーバー・キュリアス”のムーブメントとなって若い世代を中心に大きく浸透しているのだった。
実際にイギリスとアメリカでは過去10年に、21〜40歳の年齢層でお酒を全く飲まない人々の割合が10%以上増えているけれど、 アメリカにおいてミレニアル&ジェネレーションZが 親の世代よりアルコールを飲む量が激減している理由は、まずアルコール中毒や依存症の親を持つこの世代がアルコールに対して拒絶反応を示していること、 加えてアルコール・ドリンクが高額で、ドラッグの方が安価で確実にハイになれて、しかも二日酔いが無いためで、この世代にとってはアルコールよりもアデロール(ADHD治療薬として知られるアンフェタミン)中毒の方が深刻な問題。 さらにはアルコール摂取に健康上のメリットが全くないことが近年報じられるようになったのも 健康志向の人々がお酒を止める理由の1つ。ワインから摂取出来るレスヴェラトロールの量や お酒の心臓病を防ぐメリットなどは、 アルコール摂取がもたらす身体のダメージで簡単に掻き消されてしまう程度の微々たるものに過ぎないのだった。
そんな様々な要因が重なって、特にジェンZ、ミレニアル世代で「Alcohol is no longer cool!」と言われて久しい状況。 その風潮が顕著になったことを受けて、2022年大晦日のCNNのタイムズスクエアからのカウントダウン・ライブ放映では、ホストやゲストがシャンパンを飲む姿を極力放映しない方針が打ち出されていたほど。

アメリカではパンデミックのロックダウン中にお酒の売上が30%以上アップしたことが伝えられたけれど、 その飲酒量は貧富の格差拡大と同じで、飲む人の飲酒量が増えて、飲まない人がどんどん飲まなくなっているのが現状。 お酒を飲む人々の間ではパンデミック以降、飲酒量が20%増えているとのことで、現在、アメリカのアルコール中毒、及び依存症の数は1400万人。
その治療薬として、アルコール欲求を抑える薬が既に開発されてはいるけれど、副作用が大きいため ナショナル・インスティテュート・オブ・アルコホリック&アルコール・アビュースでは異なるアプローチで臨床実験が行われている真最中。 それによれば、現時点で飲酒欲求を押さえるのに大きな効果を上げているのが 食欲抑制剤と高血圧の薬で、これらを摂取し始めた人々は 我慢せずにアルコールを飲まずにいられるようになっているとのこと。
昨今ではノンアルコール・ドリンクも売上を伸ばしているけれど、その代替が効くのは あくまで”Sober Curious”の「飲めるけれど飲まない」人々。 アルコール中毒者や依存症のアルタナティブにはならないようなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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