Feb . 6〜 Feb. 12 2023

2 Things People Can't Stop Talking About, Etc. "
アメリカで2023年の話題を独占する2つのプロダクト、Etc.


このコラムがアップされる2月12日、日曜日はスーパーボウルが行われるスーパー・サンデーであるけれど、 スーパーボウル・ウィークのお祭り気分が高まるアメリカで最大の報道になっていたのは、言うまでも無く2万人以上の死者が記録されている トルコとシリアで起こった大地震のニュース。 中でも同情を集めているのが瓦礫の中から救出される子供達の映像で、イギリス、アメリカでは 「親を失った子供達を養子で引き取りたい」というオファーがトルコ大使館に殺到。 地震報道の2日後にはアメリカからトルコへ8500万ドルの救済金が送られることが決定したけれど、シリアに関しては アサド政権が政府を通じた援助を主張し、西側諸国は過去10年に渡ってシリアに対する人道援助をアサド政権が操作しては私腹を肥やしてきたことから難色を示しており、 政治的理由で陸路のアクセスが限られていることも重なって問題山積の状態。
また今週はアメリカ上空を飛行していた中国のスパイ・バルーンが、海上に出た段階でアメリカ軍によって撃ち落とされているけれど、 バルーンとは言え そのサイズはトラック2台分の巨大なもの。何故そんな原始的な飛行物体を中国が使用したかと言えば コストが安く、レーダーが捉え難いため。 スパイ・バルーンの飛行はこれが初めてではなく、トランプ政権時代に2回、バイデン政権になって1回記録されており、この事態を受けてブリンケン国務長官が 今週予定されていた訪中をキャンセル。米中間が更にギクシャクすることが見込まれるのだった。



チャットGPT VS. グーグル BART


史上最短で100万人のユーザーを獲得するアプリになったことが報じられたのが、何度もこのコラムで書いている AIチャットボット・アプリ、”チャットGPT”。 今週にはチャットGPTの親会社、オープンAIに100億ドルを投資したマイクロソフト社が、社員に対してチャットGPTと会社の内情についてやり取りをしないように 通達していたけれど、同様の通達はアマゾンもつい最近行ったばかり。 アメリカでは大学生の半分近くがチャットGPTのユーザーであることが伝えられ、論文やレポート執筆の際のチャットGPT使用禁止を明確に提示する大学も出てきているけれど、 オープンAIが新たにリリースしたのが、チャットGPTによって執筆された文章を識別するアプリ。しかしその性能は未だ100%ではないことが警告されているのだった。
水曜にはグーグルがチャットGPTの競合アプリ、”BARD / バード”をリリース。全社員に対して使用を呼び掛けており、 早くからAI開発事業に多額の資金を投じて来たグーグルによるAIアプリが期待と注目を集めたけれど、リリース初日にエラーを露呈したことから、 グーグルの親会社、アルファベットの株価は9%下落、企業価値にして1200億ドルが失われる大打撃となっていたのだった。

BARDのエラーが起こったのは、「ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡 (JWST) について 9歳の子供にどう説明すべきか」を尋ねられた際の回答。 BARDは「地球の太陽系外の惑星写真を初めて撮影したを望遠鏡」と回答したけれど、実際には最初の撮影は2004年にヨーロッパ天文台の超大型望遠鏡によって行われており、 その間違った回答を収めたビデオがツイッター上で公開されて 一気に信頼を失ったのがBARD。 IT業界インサイダーによれば、グーグルはチャットGPTがこれ以上市場を独占する前に自社アプリをリリースしようと焦っていたとのことで、 完成度が低い状態でGoサインを出したとは言え、世界最大のサーチエンジン企業のAIがインターネット上で認識されている事実を拾えなかったのは致命的なミス。
今週にはマイクロソフトがチャットGPTのアップグレード版を搭載した同社のサーチエンジン、BINGを発表して 事実上グーグルに宣戦布告をしており、 ビル・ゲイツが「今後のサーチの概念を変える」とまで予言したのがチャットGPT搭載のBING。実はチャットGPTは グーグルが2014年に買収したAI企業、ディープ・マインドに対抗する オープン・ソースのAIテクノロジーとして誕生したもの。しかしサーチエンジンでも、ブラウザでもグーグル、及びクロームは後発で市場のマジョリティを獲得した事実があることから、 AIの世界でもグーグルが後から巻き返す可能性は否定できないところ。

それとは別に グーグル BARDと新ヴァージョンのBINGがリリースされた水曜にツイッターで起こったのが、ユーザーが「1日のツイート限度を超えました」というメッセージが出て ツイートが行えない事実上のサイトダウン。この原因はスタッフが誤ってデイリー・リミットをコントロールするファイルを消去したためであったけれど、 更に明らかになった恐ろしい事実が このリミットを担当したチーム全員が昨年11月に辞職していたこと。11月と言えば、大量レイオフの直後にマスクが オフィスでの最低40時間勤務を含むハードワークを受け入れるか、辞職するかの選択を期限付きで社員全員にEメールで迫った時で、ハードワークを受け入れて残ったスタッフは 約2300人。マスク買収前の7500人体制の三分の1になっており、しかもカフェテリアをクローズし、掃除婦の数も減らし、オフィス・レントを滞納するなど、エクストリームなまでの コスト削減を行ったせいで、社内の士気は最低レベル。 今週のサイトの問題には、ツイッターの共同設立者でマスクの買収を支持していたジャック・ドーシーも「ツイッターはかつて、何処かで何等かのサービスがダウンする度に それを話題にする役割を担っていたのに…」と皮肉めいたコメントをしていたけれど、2023年のIT業界は AIアプリの爆発的な普及とツイッター落日の様子がこのまま話題を提供する気配なのだった。



究極のトレンディング・ダイエット薬


IT業界でチャットGPTが話題を独占している一方で、医療、それもダイエットの分野でメガ・ブレークとなっているのが 大人気ダイエット薬、オゼンピック。
昨年夏のヴァケーションで すっかり体重が増えて 弛んだウェストラインを披露していたイーロン・マスク(写真上左)が、 秋口には 大幅に体重を落としていた秘密がオゼンピックであれば、昨年の5月のMETガラでマリリン・モンローが着用したヴィンテージ・ドレスを着用するために、 猛烈なダイエットをしたキム・カーダシアンが使用していたのもオゼンピック。 無理なく誰もが短期間で簡単に痩せられることから、今や全米規模の不足状態をFDA(食品医薬品局)が警告する事態になっているのだった。
オゼンピックの主成分になっているのは2014年にFDA(食品医薬品局)によってダイエット用途で認可されたセマグルタイド。 インスリン・レベルと食欲を同時にコントロールするこの成分は、肥満&超肥満の成人を対象にした臨床実験で プラシーボーを摂取したグループが16週間で平均1キロ体重を増やしたのに対し、 セマグルタイドを摂取したグループは体脂肪を14.7%落とし、平均17キロの減量に成功。
セマグルタイドを配合した肥満治療薬としては”Wegovy / ウェゴーヴィ”が2021年6月にFDAの認可を獲得。 オゼンピックはTVCMやインターネットCMで大々的にプロモーションを行っていることから ウェゴーヴィよりも知名度が遥かに上であるけれど、 FDAからは2型糖尿病治療薬、過食障害治療薬としての認可をされているだけで、ダイエット目的の認可は得ていないのが実情。 オゼンピックもウェゴーヴィもセマグルタイドの生産を独占するノヴォ・ノルディック社の製品で、 一度摂取を始めて体重が減り始めると、血糖値や血圧も正常値に近付くので、睡眠の質も向上。体調全般が改善される結果、 ユーザーの生活クォリティも向上することが伝えられるのだった。

アメリカは成人の69%、すなわち3人に2人が肥満、もしくは超肥満という肥満社会。 肥満が原因の糖尿病、心臓病が医療費や保険費用を跳ね上げているにも関わらず、 ダイエット薬は殆どの保険で対象外。そうなってしまうのは、肥満は薬ではなくヘルシーな食生活やエクササイズ等、生活習慣の見直しによって治療するべきという概念が定着しているため。
オゼンピック、ウェゴーヴィをトライする多くの人々は製薬会社が配布する割引クーポンを使って 1ヵ月分に25ドルを払って摂取を始めるけれど、 効果が表れて、体調が良くなってきた頃に使用不可になるのがクーポン。ユーザーがクーポン無しで購入しようとすると、 その価格はオゼンピックが1ヵ月850ドル、ウェゴーヴィが1300ドルという法外なお値段。
セマグルタイド自体のお値段は1ヵ月分が300ドル程度なので、この価格はいかにもアメリカの製薬会社にありがちなボッタクリ状態。 しかしどちらもジェネリック版が無いことから、高額を支払うか、止めるかのチョイスになるけれど、止めてしまえばあっと言う間に体重も血糖値も血圧も 元に戻るだけ。 決して体質改善までは請け負ってくれないダイエット薬なのだった。



体型に貧富の差が表れる? 


アメリカは貧困層ほど肥満の社会なので、多くの肥満層はクーポン無しで服用を続けることが出来ないけれど、 今 オゼンピックやウェゴーヴィを競って服用しているのは、深刻な肥満で健康状態を脅かされている本来のターゲット層ではなく、 前述のイーロン・マスクやキム・カーダシアンのように 5キロ〜10キロ程度体重を落として ソーシャル・メディア等でアピールするスリムなボディを手に入れたい人々。 事実、TikTok上ではオゼンピック、ウェゴーヴィの摂取により あっという間に体重を落としたインフルエンサーが ビフォア&アフターのポストでビューワー数を増やす様子がトレンディングになっているのだった。
オゼンピックもウェゴーヴィも、BMI(ボディ・マス・インデックス)が27以上の人々に対して処方するのがガイドラインであるけれど、 オンライン・ファーマシーを利用すれば、 簡単な質問事項のフォームを埋めて60〜70ドルを支払えば、 ごく普通の体型で 糖尿病の問題を抱えていなくても 簡単に処方箋がゲットできるのが現状。そんな処方箋の入手法までご丁寧にTikTokにポストされているのだった。 前述のように一度摂取をストップすると体重が戻ることが知られているだけに、モデルやセレブリティ等が 躍起になって買い占めていることが伝えられるけれど、 そのせいでオゼンピックとウェゴーヴィは二型糖尿病患者や食障害患者などには全く行き渡らないのは深刻な事態。

とは言ってもこれらの薬品の存在意義には矛盾もあって、肥満や食障害はクロニクル(長期的)な症状と見なされることから、 こんなに高額な薬品でありながら 糖尿病患者のインスリン同様に一生コミットして摂取を続けることを前提に開発されていること。 それだけに長期の服用でも副作用が無い安全性が保障されているけれど、これらの薬品によって楽にスリムなボディを保とうと思った場合は、 言い方は悪いものの”一生薬漬け”。 摂取をストップした場合、体重が戻るだけでなく 以前よりも食欲が自力でコントロールできなくなることから、特に過食治療のために摂取していた場合、 以前よりも遥かに肥満が進むケースも報告されているのだった。

現在、インターネット上のブラック・マーケットでは オゼンピックもウェゴーヴィの ”フェイクのジェネリック版”が出回っていて、そちらも飛ぶように売れているとのこと。 そのジェネリック版フェイクは、オリジナルを薄めたもので、正規品1ユニットから5〜6ユニットのフェイク版がクリエイトされるとのこと。
そんなオゼンピックやウェゴーヴィの人気をやがて脅かす存在になると言われるのが、現在FDAの認可待ちのイライ・リリー社の新しいダイエット薬。 こちらはティルゼパタタイド という成分を用い、短期間の臨床実験で被験者が体脂肪を20%以上落としたというスーパードラッグ。 もしこれが発売された場合、バイアグラを抜いて史上最高売上の処方箋薬になることが既に見込まれているけれど、こちらもお値段は1ヵ月1100ドル。
そのため これからの時代は、益々体型に貧富の差が現れるとさえ予測されるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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