Apr. 24 〜 Apr. 30 2023

Carlson, Ozempic Face, AI, Etc. "
カールソン解雇のインパクト、オゼンピック副作用、AIレヴォルーション、Etc.


今週火曜日、4月25日にビデオ・メッセージによって2024年大統領選挙での再選に向けて出馬表明をしたのがバイデン大統領。 これによって次回大統領選挙が再びバイデンVS.トランプ対決になるとの予測も聞かれたけれど、 3大ネットワークの1つ、NBCニュースの世論調査によれば、バイデン氏の出馬に賛成の国民は僅か26%で、70%が反対意見。 トランプ氏の出馬に賛成の国民は35%で、反対意見は60%。出馬表明段階でのバイデン大統領の支持率は41%で、支持しないという意見が54%。
国民の70%がバイデン氏出馬に反対する最大の理由は年齢で、2期目を終了する段階でバイデン氏が86歳を迎えることを懸念する声が非常に多いのだった。 トランプ氏出馬に反対する人々の間では、2020年1月6日の議会乱入事件、及びジョージア州での選挙不正行為、ホワイトハウスからの最高機密書類持ち出し等を含む トランプ氏が抱える法的問題、及び犯罪容疑を問題視する声が多く、今週NYでスタートしたのが トランプ氏を1996年のレイプ容疑で訴えたコラムニスト、E・ジーン・キャロルによる民事裁判。
一方、5月半ばに正式出馬表明をすると見込まれるフロリダ州知事、ロン・ディサンティスに対しては、フロリダ州最大の企業であり、最大の雇用主である ディズニーが 「異なるポリシーを支持する企業に対して、政治権力を悪用して報復した」と今週水曜に起こしたのが訴訟。 2022年4月にフロリダ州がLGBTQコニュニティを差別する「ドント・セイ・ゲイ」法を制定してから続いてきたディズニーVS.ディサンティスの対決が いよいよ法廷に持ち込まれるけれど、ディスニーに対してはサウス・キャロライナやテキサスといった共和党支持者が多いレッド・ステーツが ディスニー・ワールドをフロリダから移転するように持ち掛ける様子が見られ、どう転んだ場合も大統領候補としてのディサンティス氏にとって 有利とは言えない状況が見込まれるのだった。



タッカー・カールソン解雇の背景


今週のアメリカで最も報道時間が割かれていたのは、4月24日、月曜に起こったメディア業界の大シャッフルのニュース。
まずはFOXニュースがトップ・アンカー、タッカー・カールソンの解雇を発表。同じ日にはNBCユニヴァーサルのCEO、ジェフ・シェルが社内女性との不倫関係、及びセクシャル・ハラスメントでポジションを追われ、 CNNのプライムタイム・アンカー、ドン・レモンも女性に対する不適切発言を含む様々な問題から突然の解雇が言い渡されており、各メディアが不穏分子を一気に追い出した印象を与えていたのだった。
特に衝撃的に受け止められたのがFOXニュースによるタッカー・カールソンの解雇のニュースで、FOXニュースのトップと親会社ニューズ・コープのトップ同士が彼の解雇を決めたのは先週金曜のこと。 それをカールソン本人に告げたのはニュースで報じられる僅か10分前で、カールソンは自らのプライムタイム・ニュース番組「カールソン・トゥナイト」で最後の挨拶さえする事無く、 文字通り追い出された形。月曜からの番組は「FOXトゥナイト」とネーミングが変わり、後任が決まるまではFOXニュースのキャスター達が回り持ちで番組を担当することになっているのだった。
「カールソン・トゥナイト」は平均で300万人のビューワー数を獲得。この数は3大ネットワークのブロードキャスト・ニュースに比べると半分の視聴者数ではあるものの、ケーブル局のニュースとしては文句無しにNo.1 であると同時にFOXニュースでは最高視聴率番組。 カールソンが解雇後に初めて沈黙を破ったのは今週水曜にツイッター・ビデオで発信した声明で、このビデオは24時間で5700万のビューイング数を記録。 バイデン大統領の再出馬表明のビデオが24時間で4180万人のビューイング数であったことを思うと、 その世論の関心の高さが窺えるのだった。
FOXニュースが看板スター、カールソンを解雇した理由は、投票機メーカー、ドミニオン社がFOXニュースを相手取って起こしていた 名誉棄損の賠償金請求の裁判資料として、カールソンがプライベートにやり取りしていたメッセージに人種差別、性差別、移民差別を含む、極めて不適切かつ過激な内容が見られたため。 FOXニュースが7億8500万ドルという史上最高額の賠償金を支払って、裁判を開始直前に示談に持ち込んだのも、カールソンの不適切メッセージがメディアに流出するのを防ぎ、カールソンを裁判で証言させないための 必死の手段であったとのこと。
とは言ってもカールソンは毎晩のように番組内で、LGBTQや移民に対する差別的発言を繰り広げ、カールソンの番組自体も元女性プロデューサーが、女性蔑視のトキシックな職場環境を理由に裁判を起こしたばかり。 カールソンを始めとする番組スタッフが、女性ゲストや社内の女性スタッフの容姿を馬鹿にするのが日常茶飯事である様子は、既にメディアで報じられて久しい状況。 それだけに、今となっては公開されずに終わった裁判資料が 極めて過激な内容であったと憶測されており、事実、FOXニュース側はその資料を読むまでは ドミニオン社と裁判で戦う意向であったことも伝えられるのだった。
メディア関係者の間では、FOXニュース上層部だけでなく、親会社の創設者、ルパート・マードックさえもコントロールが出来ないほど傲慢になっているカールソンを このまま野放しにした場合、FOXニュースは この先も億ドル単位の賠償金を支払う羽目になるリスクが指摘されるだけに、「FOXに側にとってこの解雇は妥当」との見解が圧倒的。 政治関係者の間では、カールソンの今後の身の振り方が2024年の大統領選挙に影響する可能性が指摘されており、 それというのもカールソンは、トランプ支持者に最も影響力を持つ存在であるため。カールソン本人はトランプ氏を毛嫌いしている様子がドミニオン社の裁判資料で明らかになったとは言え、 彼を一躍スターにしたのも、彼に最も信頼を寄せているのもトランプ支持者。そのカールソンが かつては”トランプ・メディア” と呼ばれたFOXニュースを解雇されたことで、 少なからずダメージを受けると言われるのが選挙戦におけるトランプ陣営。もしカールソンが 極右保守メディアとしてFOXニュースを追随する Newsmax、もしくはOAN(ワン・アメリカ・ネットワーク)に移籍した場合には、 彼の年俸がFOXニュースから支払われていた2000万ドルから、その1.5倍に当たる3000万ドルに跳ね上がるというのが業界の見積もり。ちなみにFOXは既に結ばれた契約期間については カールソンの年俸を全額支払うとしているのだった。
これまで解雇された保守派キャスター達は、別のネットワークに移るよりも、自らのポッドキャストをスタートするなど、 独立を好む傾向にあることから、カールソンにも見込まれるのが独立の選択肢。実際にビル・オライリー、メーガン・ケリー等 カールソン同様に突如の解雇の屈辱を味わったキャスターは、二度と同じ思いをしないために独立を選ぶケースが多いようなのだった。



オゼンピック・フェイス? 大人気ダイエット薬の副作用


イーロン・マスクやキム・カーダシアンが短期間にウェイトを落とし、それを維持している秘訣と言われるのが大人気のダイエット薬、オゼンピック。 誰もが苦労せずに確実に痩せられることから、1ヵ月分が1000ドルを超えるお値段にも関わらず大ブレーク中で、全米で品薄になっていることが伝えられて久しい状況。
ダイエット薬とは言ってもFDA(食品医薬品局)が認可しているオゼンピックの用途は二型糖尿病の治療薬としてで、ダイエット薬として認可されているのは オゼンピックと同じ成分、セマグルタイドを配合した”Wegovy / ウェゴーヴィ”。 しかしTVCMで盛んにプロモートされていることもあり、 オゼンピックの方がダイエット薬として知名度を獲得しており、本来オゼンピックが処方されるべき二型糖尿病患者よりも、「インスタグラムの写真写りを良くするために5〜10キロ程度痩せたい」という人々が オンライン・ファーマシーの処方箋を使って買い占める様子がレポートされているのだった。 オゼンピックは摂取を止めると体型が元に戻るだけでなく、食欲がコントロールできなくなって、摂取前より体重が増えるケースも報告されていることから、 一度オゼンピックで体重を落とした人々の中には、安定したサプライを得るために、プレミアム価格を支払うケースも少なくないとのこと。
当初は「副作用が無く、長期の使用にも安全」と謳われたオゼンピックであるけれど、このところユーザーの間で指摘されるようになったのが「オゼンピック・フェイス」と呼ばれるサイド・エフェクト。 これは頬がこけて、肌にハリが無くなって、老け込んだ顔になることで、年齢を問わず現れる症状。 短期間に体重が減って、体脂肪率が下がれば 頬がこけるのは当然のこととは言え、せっかく身体がスリムになって、遠目の印象が若返っても、 顔をアップにするとエイジングが進んだ印象になることを嫌う人々は多く、今や”オゼンピック・フェイス”はオゼンピック・ユーザーを悩ませる最大の問題点。 中には頬にフィラーを注入して、失われた皮膚のボリュームを補う女性も居るほど。
一般に 「30歳を過ぎてダイエットをすると、痩せて欲しくない場所から脂肪が落ち始める」と言われるけれど、 オゼンピックの女性ユーザーに多いのが「スリムなボディになっても ヒップが真っ平だったら 男性にモテない」ということで、BBLを行うケース。 BBLとは”ブラジリアン・バット・リフト” の略で、キム・カーダシアンのような不自然なボリュームがあるヒップになるためのインプラント。 要するに こうした女性達は 月1000ドル以上を支払って、体重と共に落ちてしまった顔やヒップのボリュームを、更に大金を投じた美容施術で補うという無駄をしているのだった。
加えてつい最近レポートされるようになった新たなオゼンピックの副作用がヘア・ロス。 オゼンピックは食欲を激減させることによって、食べる量が減り、その結果ドラマティックに体重が落とせる処方箋薬であることを考えれば、 拒食症のティーンエイジャー同様に、摂取カロリーが少な過ぎれば頭髪が抜け易くなるのは当然のこと。 ヘア・ロスは男性にとっても、女性にとっても深刻な問題とあって、ソーシャル・メディア上で騒がれ始めたこの問題を危惧する声が高まっているのが現在。
しかしオゼンピック・フェイスも、ヘア・ロスも、本来オゼンピックを摂取するべきオーバーウェイトで二型糖尿病を患っている人には無縁の問題で、 処方のガイドラインを無視して平均体重の人が摂取するからこそ起こる問題。 したがって これらを副作用と呼ぶべきかについても、医療関係者を中心に意見が分かれているのが現在なのだった。



AIが盲人の優秀なヴァーチャル・アシスタント?


今週はマイクロソフト、グーグル、アマゾン、フェイスブック等のIT大手の2022年第一四半期の業績が発表され、予想を上回る好業績を記録したことから 株価が大きくアップしていたけれど、 その業績発表に伴って行われた株主への 今後の経営方針説明の際に、各社CEOがフォーカスしていたのがAI。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグはスピーチのうちの6分間をAI開発について語り、 マイクロソフト社のサティア・ナデラは 15分間のイントロダクション・スピーチの中で、29回も “A.I.”もしくは “Open AI”と語ったことがレポートされたほど。 ちなみにOpen AIは、昨年12月に登場以来、史上最速で普及するAIチャット・ボット・アプリ、”チャットGPT” のクリエーター。
チャットGPTの急速な普及により、突如AIが一般人の生活に身近な存在になったのは周知の事実であるけれど、今やIT業界のバズ・ワードはこれまでの”メタヴァース”から ”AI”に移行。 メタヴァースに力を入れるために社名を”Meta”に改めたマーク・ザッカーバーグでさえ、今回の株主へのスピーチで メタヴァースについては僅か6秒しか触れていないのだった。
そんな中、現在100人の盲人ボランティアを対象にベータ・バージョンのトライアルが行われているのが、”Be My Eyes/ビー・マイ・アイズ”という盲人用AIアシスタント・アプリ。
このアプリをスマートフォンにダウンロードすることにより、ネーミング通りAIがカメラ機能を駆使して、目の役割を果たしてくれるのがその機能。 例えば外を歩く際には 信号機の読み取りはもちろん、初めて訪れる店の扉を押して開けるのか、引いて開けるのかを 扉のサインを読み取って知らせてくれるのに加えて、 レストランに入ればメニューを音声で読み上げてくれて、ショッピングに出掛ければ商品の在処、手に取った品物がどのブランドの何であるかを告げてくれて、 自宅の冷蔵庫の中にどんな食材があるかも列挙してくれるなど、広範囲のアシストを可能にする優秀さ。
”ビー・マイ・アイズ”の機能を知ると、逆にこのアプリ無くして 目が見えない人々が一体どうやって生活をしているのかとさえ思えてしまうけれど、 これまで盲導犬で補えない様々な役割を担ってきたのが人間のヘルパー。しかし目が見えない人々はヘルパーの存在に感謝しているとは言え、 本音では出来る限り彼らに頼らずに生活したいと考ているようで、 トライアルに参加しているユーザー達がこぞって挙げる ”ビー・マイ・アイズ”のメリットが、「ヘルパーに頼らずに済むことが増える分、自分のプライバシーが守れる」ということ。
”ビー・マイ・アイズ”は早ければ来年には実用化に踏み切れるとのことで、そうなれば目が見えない人々の生活が大きく改善されると見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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