
Jan. Week 1, 2017
New Kind of Meditation Center, "Inscape"
元ファッション・エグゼクティブが創設した
新しいスタイルのメディテーション・センター、”インスケープ”

今やニューヨークにヨガスタジオ並みに増えたのがメディテーション・センター。
その理由は、メディテーションによるストレス・リリーフや心の安定を求める人が増えている一方で、
メディテーション・センターは、ノイズさえカットされていれば、簡単な施設でオープン出来ることが 経営側にとっては大きな魅力となっているため。
ふと考えると私は 2016年の1月1週目のこのコーナーでも当時マンハッタンにオープンして間もなかったメディテーション・センター、MDFLについて
書いていたけれど、新年を迎えると誰もが自分を変えたり、新しいチャレンジがしたくなるもの。
私の場合、ここ数年間、ずっと課題になってきたのがメディテーションによって、エクササイズでは到達できない
心の新境地を開拓することで、それが2017年も ”New Year, New Me” の目標となっているのだった。
そんな私が年末から足を運ぶようになったのが、ここにご紹介するInscape / インスケープ。
私がインスケープに興味を持ったのは、同施設の創設者が ファッション・セレクトショップ ”Intermix / インターミックス” の元オーナー、
カージャク・カレディジャンというビジネスマンであったため。
サンローラン、クロエなどハイエンドなブランドと、Jブランドのようなカジュアル・ラインを1軒のブティック・スペースで扱うインターミックスは、
全米に40店舗を展開するビジネスに成長し。カージャク・カレディジャン自身もアメリカのファッション業界では非常に名が知れた人物。
そんな彼が真剣にメディテーションをスタートしたのは、日本ではリーマン・ショックと呼ばれるリセッション直前の2007年のこと。
やがてカージャク・カレディジャンは、ギャップ社にインターミックスを約150億円で売却し、
人生がターニング・ポイントを迎えることになったけれど、その間、彼が追い求めていたのが自分に合ったメディテーション・メソッド。
そのために カージャク・カレディジャンは、ありとあらゆるスタイルのメディテーションを様々なセンターでトライしたというけれど、
彼が通ったメディテーショ・センターの多くは、スタイリッシュさのかけらもないスペースで、
時に埃が舞っているような状態。しかもインストラクターの良し悪しがメディテーションに影響するものが多かったという。
やがて自宅でメディテーションを行うようになった彼は、それまでの経験を生かしながら 自分なりの効果的なメソッドを探求するようになったという。


そうするうちに、周囲から「一体どうやってメディテーションをしているのか?」と尋ねられるほどに、精神が安定&充実してきたカージャク・カレディジャンは、
そのメソッドにインターミックスのスタイル要素を取り入れた全く新しいメディテーション・センターをオープンしようと考え、そうして生まれたのがインスケープ。
チェルシー地区にあるインスケープは、5000スクエア・フィート(465平方メートル)という メディテーション・センターとしては大規模なサイズ。
その中は、写真上のレセプション兼ショップ・エリア、メディテーション後にリラックスするラウンジに加えて、大小2つのメディテーション・ルーム、
荷物を収納するロッカー&シューズを脱ぐエリア等で構成されていて、今まで私が出掛けたメディテーション・センターの中では文句なしに
最もアップスケール。
それでいて、スタッフがフレンドリーなだけでなく、クラスのレジスターから何から何までテクノロジーで全てを簡略化しているので、
非常にリラックスした雰囲気が漂っていたのも私がインスケープを気に入った理由なのだった。

2つのメディテーション・スタジオは、大きな方が写真上のドームと呼ばれるスペース。
実際に出掛けてみると、フロアの上にはメディテーション用のクッションやピローが置かれていて、
ドーム型の天井がメディテーションのプログラムに合わせてLEDライトで色が変わったり、照明がダークになるという作り。
楕円形のスタジオを取り囲むように壁際にはベンチが備えてあって、座ってメディテーションをするのを好む人は そこに腰掛けることが出来るようになっているのだった。
私がインスケープを気に入った理由はそんな施設や、スタッフだけでなく、メディテーション自体がとても興味深いため。
まずインスケープでは、インストラクターが不在で クラスはスタジオ内に流れる音楽とヴォイスに従って行うというシステム。
そのヴォイスは200人以上のプロの声優の中から、最もメディテーションに適した声色と発音の持ち主を選び抜いたとあって、
脳に浸透するような語り口。もちろんスタジオ内には、ガイド役が常駐していて、クラスの始めと終わりには簡単な指示を与えてくれるのだった、
クラスの最中にヴォイスと共に流れる音楽はニューエイジ系の心地良いもので、それが柔らかく身体に浸透するような優秀なサウンドシステム。
ピローやクッションは数種類あるので、自分の身体のポジションに合ったものが選べるようになっていて、
スタジオ内はメディテーションに適した若干肌寒い温度なので、低体温の人のためのカシミア製ブランケットも用意されているのだった。
2つ目の小さな方のメディテーション・ルームは、アルコーブ・スタジオと呼ばれて、アーティストによるロープのデコレーションが施されたスペース。(写真下)
これに止まらず、インスケープのラウンジには、ハフィントン・ポストで知られるアリアナ・ハフィントンの娘が手掛けた大判サイズのアートなども飾られていて、
デザインやアートを重んじる姿勢を感じさせているのだった。

さらに私がインスケープを気に入ったのは、クラスの長さというより短さ。
私が同スタジオで取っているのは33分のクラスで、他に22分、44分のクラスがあるけれど、
他のメディテーション・スタジオの45〜80分のクラスだと眠くなってしまう私にとって、33分は理想的な長さ。
とはいってもインスケープではクラスの15分前にスタジオ入りして、クラスの後はラウンジでリラックスすることを奨励しているので、
時間的には1時間のクラスを取っているのと変わらないもの。でもクラスに駆け込んで1時間メディテーションをして、さっさと帰るよりも
時間が有効に使えて、クラスの前後にスタジオに来ている人たちとの会話も楽しめるのだった。
そんなスタジオに来ている人たちもインスケープの魅力の一つで、私はこれまで平日の昼間のクラスを取っているけれど、
チェルシーという場所柄、クラスに目立つのは若いクリエイティブ系のプロフェッショナル。
目を閉じてメディテーションをするのに、スタジオに来ている客層は関係無いという人も居るけれど、
私は同じスペースで空気をシェアしながらメディテーションをするのならば、ポジティブなエネルギーを発している人に囲まれているのを好むタイプ。
したがって、客層も大切なポイントの1つなのだった。
インスケープはそのクラスの種類もディープ・レスト、ディープ・サウンドなど、他のスタジオには無いラインナップ。
さらにインスケープはメディテーションのアプリも製作していて、これはマンスリー・フィーを支払って利用するシステム。
スタジオで流れる音楽やヴォイスを聴きながら、自宅でもオフィスでも、何時でも好きな時間に好きな場所でメディテーションが出来るようにデザインされたもの。
私もいずれはアプリのユーザーになるかと思うけれど、今はインスケープに通うメディテーションを楽しんでいるのだった。
執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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