Feb. Week 2, 2014
” Coach Clothing Line ”
”コーチ・クロージング・ライン”



私にとって、これまであまり魅力が分からなかったブランドの1つがコーチ。
コーチのバッグは1つも持っていないし、シューズやウォレット、傘、コスメティック等も 持ったことが無くて、ふと考えたら、唯一使っていたのが旅行用の化粧ポーチ。
日本人の中には、”ニューヨークと言えばコーチ”というイメージを持つ人も居るようだけれど、 それは 私だけでなく、他のニューヨーカーにとっても、あまりピンと来ないものなのだった。

そんな状態なので、私は同ブランドの動向は殆どと言って良いほど チェックしていなかったけれど、 つい最近インターネットで見て驚いたのが、そのクロージング・ラインが非常に 洗練されてきたということ。
カーリー・クロスがモデルを務める広告写真(写真上)の一連に加えて、 写真下の2013年の秋冬のルック・ブックを見て、 正直なところ、コーチというブランドをすっかり見直してしまったのだった。





私は そもそも アウターウェアのアイテムの中では、トレンチ・コート と ピーコートを非常に好んでいて、 そのテイストフルなコーディネートには極めて弱いのが実情。
なので、写真上のコーチのスタイル・ブックを気に入ってしまう理由は十分にあるけれど、 ピー・コートとトレンチ・コートというのは、男性の目を引くアウター・アイテムでもあるのだった。 一部の女性は秋冬シーズンのアウター・ウェアというと ダウン・ジャケット&ダウン・コートだけを着用して 過ごしてしまう傾向にあるけれど、 秋冬シーズンは 中に着ている服より重要なのがアウター・アイテム。
ホットなクラブのバウンサー(ドアマン)にしても、春夏シーズンに客層をジャッジするのは、ルックスとシューズであるけれど、 秋冬シーズンはアウター・ウェア。したがって高そうなコートを着用していると それだけドア・ポリシーをクリアできる確率が高いと言われているのだった。

話をコーチのラインに戻せば、私が気に入ったのは シンプルなコーディネートながら、バランスが良く、 様々なオケージョンで着用できそうなアイテムで構成されていること。
同様のコンセプトは、以下の2014のスプリング・ルックブックでも健在なのだった。





個人的には2013年秋冬の方が好みであるけれど、 春のトレンディ・アイテムと言われるスタジアム・ジャンパーや、レザーTシャツ、 ショート丈のトレンチなど、エフォートレスに、 若干のエッジを演出しながらコーディネートし易いアイテムが揃っているのは 好感が持てるところ。
一部には、コーチの現在のラインが、某一流ブランドの数シーズン前のランウェイ・ルックを 庶民的にしたようなバージョンという指摘も聞かれるけれど、 ブランドのポジショニングとしてコーチに近いといえるのは バーバリー。 でもバーバリーの トップ・ラインである プローサムについてはセレブリティも着用する別格ブランドなのだった。

コーチのアパレル・ラインがグレードアップしているだけに、もうちょっと頑張って欲しいと思うのは メイン・アイテムであるバッグ。 使い勝手は良さそうだけれど、デザインが無難に纏まりすぎていて、 無個性に見えてしまうのが同ブランドのバッグ。 一目見たら忘れられないようなインパクトの強さや、ほど良い奇抜さがあるバッグの方が、 ファッショニスタに遥かにアピールすると思うのだった。
実際のところ、コーチのバッグはキャリア・ウーマンのバッグというよりは、 その下で働くアシスタントが持つバッグというイメージがアメリカでは定着しているのが実情。 そう見なされる理由の1つは コーチというブランド名。 英語では飛行機のエコノミー・クラスのこと”コーチ・クラス”と言うので、 そのブランド名からして、人々が高級そうなイメージを抱かない傾向にあるのだった。

コーチで、プレジデント兼エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクターを16年務めたリード・クラコフにしても、 高額ラインをスタートさせるに当たっては、コーチというブランド名を使用せず、 自らの名前をブランド名にして展開しているのだった。
その彼は2014年6月の契約切れと共に辞任。その後任に決定しているのは、現在ロエヴェのクリエイティブ・ディレクターを務める 若手デザイナー、スチュアート・ヴィヴァース。彼は過去に カルバン・クライン、ボッテガ・ヴェネタ、ルイ・ヴィトン、 ジヴァンシー、マルベリー等、一流ブランドで経験を積んできた有望デザイナー。
なので、私としてはスチュアート・ヴィヴァースがコーチのバッグ、シューズ、アパレル・コレクションを ボッテガやジヴァンシーのような洗練されたエッジを感じさせるラインに導いてくれることを願っているのだった。






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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。
丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。

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