May. Week 1, 2014
” Spring Masters New York ”
” スプリング・マスターズ・ニューヨーク ”



私がこのコラムを書いている5月1日から一般に公開がスタートしたアート・エキジビジョン、 ” スプリング・マスターズ・ニューヨーク ”。 そしてその前夜に行われたのがオープニング・パーティーであったけれど、この日は アメリカ東海岸で1ヶ月分の雨が1日に降った異常気象の日。 ニューヨークでもセントラル・パークからクイーンズまで、各エリアで降水記録を塗り替えたほどの大雨。 なので 出掛けるのを躊躇したものの、このコーナーに書かなければという義務感から 出掛けたのがそのオープニング・パーティー。
でも お天気さえ良かったらアート・エキジビジョンのオープニングというのは、 昨今では、ホットで楽しめるイベントになってきているのだった。

というのも、何度もCube New Yorkの記事で書いている通り、昨今は空前のアート・ブーム。 アートを集めているリッチ・ピープルでも、見ているだけの一般人でも、 ファッション・トレンドのようにチェックしているのが昨今のアート界。 特にコンテンポラリー・アートの世界は、 投資対象でもあり、メディアの話題が集中する人気カテゴリー。
スプリング・マスターズは、そんなコンテンポラリーから アンティーク、印象派から、ピカソまでが ひしめいて展示されるエクレクティックなエキジビジョンなのだった。











オープニング・パーティーのメリットは、こうしたアートを ワインやシャンパンを片手に ゆっくり眺めることが出来て、さらにギャラリー・オーナーや 時にアーティスト本人と会話が楽しめること。
オードブルも10種類前後出されるので、以前別のオープニング・パーティーに友人を誘って出掛けたところ、 その友人が 「カクテル・パーティーの参考になった」と言っていたほど。 実際のところ、昨今では新しいアートを購入する度に、そのお披露目パーティーをする人も多くて、 大勢の友人を招待してワインやカクテル、オードブルを出して 買ったばかりのアートを見せびらかすといった ギャラリー・オープニングのようなイベントが、個人レベルでも行われているのだった。

ところで写真上、上段右のアートは、以前フェイバリットのセクションでも取り上げた Jean-Francois Rauzier / ジャン・フランソワ・ロジエの作品。
マンハッタンのビルの写真を組み合わせたハイパー・フォトグラフィー・アートは、 オープニング・パーティーでも 多くの人々が足を止めて見入っていただけでなく、 既に商談も進んでいた作品なのだった。
そして写真上、下段右側は 言わずと知れたアンディ・ウォーホールのキャンベル・スープの缶。 これまで様々なカラー・ヴァリエーションを観てきた同シリーズであるけれど、Tシャツに斜めにプリントされたスタイルを観たのは初めてなのだった。











ギャラリー・オーナー達の話によれば、彼らのメジャーなクライアントは、 今も40歳以上のリッチ・ピープル。 でも、1億円を超えるような高額のコンテンポラリー・アートになってくると、20代、30代のメガリッチがロフトやペントハウスの デコレーションのために購入するケースも少なくないようで、 そうした若いメガ・リッチにアピールするのは、サイズが大きく クレージーなコンセプトのもの。
時にギャラリー・オーナーたちでさえ、” ゴミと紙一重 ” と思うような 作品もあるというけれど、クレージーなアートほど 高く売れることも同時に認めているのだった。








ところで、今Will New Yorkのハウジング施設に滞在しているのが、25歳のイタリア人女性2人。
彼女らは7月までブルックリンのアートギャラリーのインターンとして働いていて、 イタリアのアート・カレッジではコンテンポラリー・アートを学び、将来はニューヨークで自分のギャラリーをオープンしたい というのがその夢。 なので、彼女らにマンハッタンのアートシーンを見せてあげるのが 今の私のプロジェクトになっているけれど、 今やヨーロッパでもアートは空前のブーム。彼女らも現在のアート界において、 いかにセレブリティやスポンサーとのコネクションや、若い世代を引きつけるパーティーが大切かを ニューヨークに来てから、益々実感しているところなのだった。

ビジネスとしてのアートは、高い値段がつくことが全てであるけれど、 そのためには、作品やアーティストが一般の人々に知られていなければならないのは言うまでもないこと。
たとえば、中国人アーティストの中で 最も有名な存在になったのが Ai Weiwei / アイ・ウェイウェイであるけれど、 先週日曜のNYポスト誌には、「アイ・ウェイウェイの名前がついただけで、切り倒しただけの大昔の木が アートとして5000万円の価値になる」といった批判めいた内容が記載されていたのだった。
でもそんなメディア報道が益々高めているのが彼のネーム・バリューで、 一般の人々がその作品や名前を知れば知るほど、コレクターやバイヤーは その購買意欲を掻き立てられることになるのだった。



ところで、アイ・ウェイウェイと言えば、現在ブルックリン・ミュージアムで行われているのが、 ”According to What? / アコーディング・トゥ・ホワット?” とネーミングされた 彼のエキジビジョン。
今回のスプリング・マスターズ・ニューヨークのオープニング・パーティーは、 ブルックリン・ミュージアムをサポートするためのチャリティ・イベントでもあったため、 会場には そのアイ・ウェイウェイの2010年の作品、”Grapes / グレープス”が、特別に展示されていて、 それがイベントの目玉にもなっていたのだった。

この「グレープス」という作品は、三脚の丸椅子を積み重ねたスカルプチャーであるけれど、 地面に足が着いているのはたった1つの椅子だけ。 その椅子の3本脚だけで、スカルプチャー全体を支えているというのがそのコンセプト。
見た目には特にアピーリングではないものの、社会的メッセージや人生の教訓が汲み取れる作品になっているのだった。

Spring Masters New York
@ Park Avenue Armory (Park Ave 67th St.)
May 1st. to May 4th.

Special Thanks to Kyla McMillan of Resnicow Schroeder Associates





執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。 丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。


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