Nov. Week 2, 2018
”RH Flagship in MePa with Rooftop Restaurant"
”ルーフトップ・レストランと共にMePaにオープンした、新RH フラッグシップ"
9月半ばにマンハッタンのミートパッキング・ディストリクトにオープンしたのが、RHのニューヨーク・フラッグシップとそのルーフトップ・レストラン。
RHはかつてはレストリクション・ハードウェアと呼ばれたハードウェア&インテリア・ショップ。
それをビリオン・ダラーの年間売上を誇るアップスケール・インテリア・ストアに生まれ変わらせたのが
現在同社のCEOを務めるゲリー・フリードマン。
彼の敏腕ぶりは アメリカの小売業界ではかなり有名であるけれど、そのゲリー・フリードマンが「最も野心的で、
ゲーム・チェンジャー(ビジネスの展開を変えるきっかけ)となるコンセプト」と語るのがこの新店舗。
それもそのはずで、RH ニューヨークは建物の改築と改装に5年の月日と56億円の費用を投じた、
総面積9万スクエアフィート(約8360平方メートル)のアップスケールなプロジェクト。
今のアメリカは買い物客がストアに足を運ばず、何から何までオンライン・ショッピングで済ませるようになって久しいだけに、
これだけの規模のストアがオープンしたのはニューヨークでも久々のことなのだった。
RH ニューヨークがオープンしたのはミートパッキング・ディストリクトのど真ん中で、
かつて「セックス・アンド・ザ・シティ」にも登場し、ビヨンセからアナ・ウィンターまでが常連であった
大人気レストラン、パスティスがあったロケーション。
その絶好のロケーションのビルディングを地下も含めた6フロアに改装したのがRHで、
ストアというよりもアップスケールなインテリアのギャラリーというポジションを取っているのだった。
1階〜4階までがそのギャラリーで、中央の吹き抜けのアトリウムがダイナミックな印象を演出。
各フロアへの移動手段は、スタイリッシュにデザインされたステアケースとグラス・エレベーターで、
それぞれのフロアのインテリア・ディスプレーはモダンとクラシック、シャープさとエレガントさが融合された
RH独特のスタイル。
かつてフラットアイアン地区にこれより遥かに小さなストアを経営していたHRにとって、
同店はニューヨーク再デビューのストアであり、全米で19軒目の店舗。
現在、ニューヨークは不動産市場のバブルが終焉し、バイヤーが更なる価格調整を待って市場の動きが
スローになって久しい状況。でもそのおかげで潤ってきているのがRHのような高額インテリア・マーケット。
というのも不動産を売りたい側は 物件をより良く見せるステージングにお金を掛ける傾向にあり、
家具代を支払ってでも物件を売ろうとする一方で、
新しい物件を替え控えるバイヤー側は、その代わりに自分の住む家に手を入れてインテリアをリフレッシュしようとするので、
RHのギャラリーのようなインスピレーショナルなモデルを見せられると、
心が動く人々が少なくないようなのだった。
さすがにRHは出店する場所のカスタマーの好みをしっかりリサーチしているとあって、
同じアップスケールなRHの店舗でも、フロリダのウエスト・パームビーチと
ニューヨークではカラー・パレットもインテリアのスタイルも異なるのは当然のこと。
ニューヨークの方が、カラーがダークでリッチ、スタイルがモダンかつシャープで、
当然のことながら より都会的なスタイルが中心になっているのだった。
RHの19店舗のうち、レストランやカフェがあるのはニューヨークのストアが5軒目。
ニューヨークの店舗は、建物の最上階の1万スクエア・フィート(929平方メートル)がルーフトップ・レストランで、
フードがサーヴィングされるのはこのエリアのみ。
アウトサイド・テラスはもっぱらワインバーの役割を果たしていて、それ以外にコーヒーやソフト ドリンクのサーヴィングをする
バリスター・バーがあるのだった。
いずれも、ニューヨークにあっては周囲の建物が低いミートパッキング・ディストリクトから、フリーダム・タワー等を始めとする
ニューヨークのビューが楽しめるエリアで、グラスハウスのようなレストランは晴天の日のランチやブランチには格好のロケーション。
無機質になりがちなグラスハウスのセッティング&グレー・トーンのテーブル&チェアにナチュラルな緑を添えるインドア・ランドスケーピングと
ゴージャスなクリスタル・シャンデリアでアクセントを演出するのは他のRH店舗のレストランと共通のインテリア。
レストランや気軽に立ち寄れるバリスタ・バーの存在は、来店客の滞在時間を長くするので、
RHのようなアップスケールなインテリア・ストアにとっては、
その利用者が多ければ多いほど、ストアの売り上げにも貢献するということ。
そもそも家具やインテリアのショッピングには体力や根気が必要であるけれど、
休憩が取りたくなった際に それが店内で事足りれば、休憩後にカスタマーが再び売り場に戻ってくる可能性が高まるのは言うまでもないこと。
またその休憩スペースがRHのスタイリッシュな雰囲気で演出されていた場合、
食事やドリンクを楽しむ時間がショッピングの決心に繋がるケースも多いようなのだった。
ルーフトップ・レストランのシェフを務めるのはシカゴの有名レストラン、オー・シュヴァルのシェフ、
ブレンダン・ソディコフで、彼は一足先にスタイリッシュでラグジュアリアス なステーキ・ハウス、
4 チャールズ・プライムリブでニューヨーク・デビューを果たしていた存在。
メニューはブレックファスト、アペタイザー、サラダ、軽食のメイン、そしてデザートで、
基本的にはカフェ・メニュー。
人気アイテムは24ドルのRHバーガー、ロブスター・ロール(32ドル)等、
カジュアルなフード。
それでもスタイリッシュな雰囲気と、優秀なサーヴィスの中でシャンパンやワインと共に味わうと満足するとあって、
今のところ「この雰囲気なら、このお値段でも許せる」というレビューが圧倒的。
私も先週トリュフ入りのグリルド・チーズ・サンドウィッチ(21ドル)を味わってきたばかりであるけれど、
雰囲気や客層が良かったので、お値段には文句は全くないのだった。
1つ文句があるとすればその営業時間で、ミートパッキング・ディストリクトの一等地にありながら
同店の営業は午後9時まで。
以前このロケーションにあったパスティスが夜中を過ぎても大賑わいで、
近隣のクラブから流れてきたニューヨーカーがフレンチフライとシャンパンを夜中の2時、3時に
味わっていた時代を覚えている私としては、この場所にあって9時に閉まってしまうのは勿体ないという印象。
とは言ってもRHがレストランを経営する理由は あくまでストアの売り上げを伸ばすことが目的。
なので レストランのビジネスだけを比較した場合は、早朝から夜中過ぎまで
賑わったパスティスの方が成功していたと思うけれど、
RHニューヨークの初年度の売り上げ見込みは110億円。その利益率は28%で、
飲食業よりも遥かに大規模かつ、効率の良いビジネスになっているのだった。
RH Rooftop Restaurant
9 9th Avenue, Manhattan, NY 10014
TEL:(212) 217-2210
ウェブサイト:https://www.restorationhardware.com/?cm_mmc=Yext-_-Store+Listing-_-Store+Listing-_-Yext_Listing
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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。
FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に
ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。
その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。