Love Nest of Kate & Johnny?
Markting Tactic of High Price Real Estate Doesn't Sell in NY
高額不動産が売れないニューヨークで実践される...
苦肉の3つのマーケティング・タクティック
Published on 1/25/2019
2017年からFED(連銀)が公定歩合の引き上げを始めたことから、
その前にピークを過ぎて飽和状態になりつつあったニューヨークの不動産市場がスランプに入ったのは周知の事実。
また不動産バブル後の価格調整の期待や、今後も公定歩合の引き上げが見込まれること、
そして何より次のリセッションが迫っている危機感も手伝って
2018年にはピーク時に購入した高額物件をプロフィット無し、もしくは原価割れで手放すオーナーが決して少なくなかったのが実情。
また買い手がつかない物件はエージェントを変えたり、一度マーケットから下して再び売りに出す等の
苦肉の策が見られていましたが、ニューヨークは不動産市場が不振とは言え、
新開発ビルの建設ラッシュは続いていることから、買い手がつかないのはもっぱら古い高額物件、
特にタウンハウスのようにアメニティが無く、維持費が掛かる物件。
新開発のビルに住めばドアマンやコンシアージュが24時間常駐し、
ジムやプール、子供のプレイルーム、BBQが出来るルーフトップがあるのはもちろん、今ではヴァレット・パーキング、スパ、バー&ラウンジ、
メディテーション・ルームから、メディア・ルーム等が標準装備。加えてパーソナル・アシスタントやクリーニング・スタッフの派遣までしてくれるとなると、
それらの施設を自費で設置する、もしくは近隣の施設を料金を払って利用するのは馬鹿らしい出費と手間。
そんな売れない高額不動産の条件を集めたような物件がここにご紹介するマンハッタン、
ウエスト・ヴィレッジのタウンハウス。
長きに渡って売りに出されていたものの、一向に買い手がつかなかったこの物件を何とか売却するために用いられた
マーケティング・タクティックが、まずパブリシティの獲得。
不動産でパブリシティを獲得するには、極めて高額 もしくは安価、奇抜なロケーションなど、
ニュース性が必要で、「セレブリティが以前暮らしていた」というのはパブリシティとバイヤーを同時に引き寄せる格好の条件。
そこで この物件の売り込み文句となったのが「1990年代後半に当時交際中だったケイト・モス&ジョニー・デップが
暮らしていた」という20年以上も前のテナントのネーム・ドロッピング。
でもそれが見事に功を奏して ニューヨークのローカル・メディアや芸能メディアに取り上げられたのがこの物件。
その報道を見て初めてケイト・モス&ジョニー・デップが以前交際していたことを知るミレニアル世代も少なくなかったのだった。
次なるマーケティング戦略がデジタル・ステージング。
ステージングとは 不動産の世界では デコレーターに部屋のインテリアを手掛けてもらい、
実際に暮らす空間としてのインスピレーションを与えること。
何も無い閑散とした状態で眺めると、どんな物件も味気ないだけでなく、狭く、小さく見えるもの。
しかしながらプロがデコレートすれば 広く、明るく、スタイリッシュに見えるだけでなく、
ターゲットにするバイヤーのライフスタイルを考慮したプレゼンテーションが出来るので、
不動産の価値がアップして見えるのはもちろんのこと。
しかし決して安くはないのがステージングのお値段で、
高額物件のステージングの場合、たとえ家具や調度品、アートは全てレンタルでも
壁の色を塗り替えたり、照明器具の取り付け等の作業が生じ、壁にアートを吊るすのもプロに依頼するのがレンタルの条件。
その運送費、レンタル料、保険、そして何よりデコレーターに支払う費用が掛かるので、
かなりの出費。
これを不動産エージェントが支払う場合、不動産の売り手が支払う場合、折半の場合があり、
売り手にとってはステージングの費用と それを誰が支払うかは エージェントを選ぶ際のポイントにもなっているのだった。
ニューヨークの不動産ブームのピーク時には、インテリア・デコレーターやステージング業者が
大儲けをしたことが伝えられていたけれど、実際に高額不動産が さらに高額で売れていた時代には
ステージングに投資をすればするほど得られたのが売却益。
その費用を払う必要が無いのがデジタル・ステージング、ヴァーチャル・ステージングと呼ばれるコンピューター・グラフィックを用いた
仮想のステージング。
今やCGがすっかり進化したお陰で、実物の写真かヴァーチャルかの区別がつかないのがこうしたビジュアル。
それだけに説得力もあり、物件のオーナーも驚く仕上がりになるのだった。
写真上2枚と下2枚は、同じベッドルームの別アングルからのヴァーチャル・ステージングで、
家具のレンタルや輸送費を払わずに、これが実現するのは売り手にとっては願ったりかなったり。
従来、ヴァーチャル・ステージングは開発前の物件、開発中の物件を販売する際に用いられてきたもので、
これは開発業者が早めに利益を上げることによって、それを建設費に充てる場合もあれば、
別の新しい物件の開発に用いるケースもあるもの。一方の買い手側は
仕上がった物件を見てからの購入ではない分、安価な先行販売価格がオファーされるため 物件が仕上がった途端に
売りに出しても利益が得られる計算。
この物件の場合、どうしてヴァーチャル・ステージングが極めて好ましかったかと言えば、
あまりに長く買い手がつかなかったために、オーナーが売却を諦めて レンタルに方向転換をしたため。
物件が売れない状態が続けば、オーナーは維持費や固定資産税を支払い続ける訳で、
コンドミニアムならばまだしも、タウンハウスのこれらの出費はかなりの金額。
そのため 物件を貸し出すというのは高額物件が 長く売れない場合の常套手段であり、
有効なマーケティング・タクティック。
というのもこの物件が買えるバイヤーより、この物件が借りられるレンターの方が遥かに多いのは言うまでもこと。
新築であれば貸し出すことによって不動産価値が大きく下がるものの、
中古の物件の場合はそのリスクが小さいため、市場がスランプの間は物件をレンタルして
維持費、税金+毎月少しずつの利益を稼ぎ出す方が賢いチョイスなのだった。
売却ではなくレンタルにするとなれば、高額を投じてまでステージングをするオーナーなど居ないのは当然のこと。
とは言ってもこの物件はセレブリティも近隣に暮らすウエスト・ヴィレッジで人気の高いロケーション。
そのためレンタル料も強気の設定で月々2万1000ドル、日本円にして約230万円という高額ぶり。
これだけの家賃を請求しようと思ったら、ある程度のプレゼンテーションが必要となる訳で、
そこで役立つのがヴァーチャル・ステージング。
もちろん借り手はガランと閑散とした物件を実際に眺めてから レンタル契約を交わすことになるものの、
ヴァーチャル・ステージングによるスタイリッシュなコンディションが先入観にあると無いとでは、
同じ物件を眺める目が全く異なるのだった。
写真上の3枚はタウンハウスのキッチンと 2つのバスルームのヴァーチャル・ステージングで、
どことなく「ケイト・モス&ジョニー・デップが こんな風に暮らしていたのでは?」
と思わせるようなボヘミアン・シックな仕上がりになっているもの。
それはリヴィングやベッドルームのデコレーションのテイストにも現れていて、
「ケイト・モス&ジョニー・デップが住んでいた」という宣伝文句で
物件に興味を示した人々のイマジネーションを掻き立てる演出がなされているのは計算ずくのこと。
それと同時に 若くリッチでプロフェッショナルなカップルをターゲットにしている様子が顕著に窺えるインテリアになっているのだった。
何故、不動産エージェントとオーナーがこの物件の借りてのターゲットとして若くリッチでプロフェッショナルなカップルをターゲットにしているかと言えば、
ニューヨークではタウンハウスに住む傾向にあるのは子供が居る、居ないに関わらず、比較的若いカップルが多く、
このレントを支払うにはリッチでなければならないのは当然のこと。
加えてこのタウンハウスの隣は、人気長寿イタリアン・レストランのバッボ。#MeTooムーブメントの告発を受けて、
現在レストラン業界から身を引いているイタリアン・シェフ、マリオ・バターリが1990年代にオープンした初のアップスケール・レストランがバッボ。
そのため住宅街とは言え人通りが多い状況は、若い世代の方が歓迎する傾向にあるのだった。
それ以外のこの物件のターゲットは企業クライアント。
企業であればエグゼクティブ の高額レントを支払っても、それはエクスペンス扱い。
一般の人々のように家賃が家計を圧迫することがないのだった。
また意外に多いのが 自分が経営するビジネスのエクスペンス払いで
不動産をレンタルするセレブリティ。とくに俳優は
映画やTVドラマの撮影中、ロケ地の物件をレンタルするケースが非常に多いのだった。
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