Nov 26 〜 Dec 2 2023

HENRY, Zoomer, Italian Cheff, Etc.
HENRYとは?, Zoomerの動向, イタリアン・シェフ, Etc.


今週は、イスラエルVS.ハマス戦争が、一時休戦に入り人質の一部が解放されたニュースに 米国メディアが報道時間を割いていたけれど、 エコノミストとYouGovの最新世論調査によれば、戦争でイスラエルを支持するアメリカ人は38%、パレスチナ支持は11%、ほぼ同等に支持を表明したのは28%。「分からない」と回答した人々は28%。
NBCの世論調査では、イスラエルを支持したアメリカ国民は47%、イスラエルへのネガティブ意見は24%で、これは同じく米国支援を受けて戦争状態にあるウクライナとほぼ同等の数値。
NPRが行った調査では、殆どのアメリカ人が「今回の戦争はハマス側の責任」と回答。引き続きイスラエルを重要な友好国と見なしているものの、開戦から1ヵ月が経過してからは イスラエルの攻撃を「行き過ぎ」と考える意見が増えている状況。
結局のところ、アメリカ世論はイスラエルを支持し、「ハマスのテロ攻撃に対して報復をするのは当然」という意見でありながらも、 「これ以上、パレスチナ市民の命が失われるべきではない」、「しかしここで停戦して、話し合いの解決に向かえば、事実上ハマスの勝利となる」というどっちつかずの意見。 政治的ポジションで分析した場合、リベラル(自由主義)であればあるほどパレスチナに同情的で、コンサバティブ(保守派)であればあるほどイスラエルを支持する傾向が極めて顕著。
これはリベラル派が多い若い世代&都市部、保守派が多い年配世代&地方の意見をそのまま反映しているとも言えるのだった。





Who is HENRY?


今週のアメリカでは11月19日に96歳でこの世を去ったカーター元大統領夫人、ロザリン・カーター(享年96歳)の葬儀が行われ、 現在ホスピス・ケアに入っているカーター氏(99)が車椅子姿で出席。カーター夫妻は77年間連れ添ったアメリカ史上最長のファーストカップルなのだった。
そして11月28日火曜日にはバークシャー・ハサウェイ副社長で、ウォーレン・バフェットの長年の右腕、チャーリー・マンガーが99歳で死去。その翌日、29日に報じられたのが。過去60年間に12人の大統領のアドバイザーとなり、ベトナム戦争を終結に尽力してノーベル平和賞に輝いたヘンリー・キッシンジャー(享年100歳)死去のニュース。多くの人々が一時代の終焉を感じていたのだった。
そのキッシンジャー氏のファーストネーム、HENRYは昨今では「High Earners, Not Rich Yet(高所得でも、未だ裕福でない層)」の略称で知られるようになってきた存在。 HENRYとは呼ばれるのは年齢にして27〜42歳のミレニアル世代で、子供は居ないケースが多く、年収は10万ドル以上。 High Earnersとは言っても、ITや金融の高給取りとは異なるレベルなので、カードローン、自動車ローンなどの借金を抱えながら、 地道に投資や貯金を行い、将来に不安は感じても、決して生活が安泰とは考えていないのがHENRYの特徴。 そんなHENRYたちを最も苦しめてきたのが学費ローンで、年収10万ドル以上を稼ぐためのバチェラー・デグリー(大卒資格)に、25万ドルの学費を支払うのは必要経費と見なされてきたのだった。
ところがつい最近報じられたのが、IBM、アクセンチュア、ウォルマート、バンク・オブ・アメリカ、グーグルといった一流企業が、2024年から大卒資格を採用条件に含めない意向を示していること。 インテリジェント・ドットコムが大手800社を対象に行ったアンケート調査によれば、2024年の採用から大卒資格を問わないと回答したのはそのうちの45%。 業界別に見てみると、最も多かったのが情報サービス業で、回答した企業の72%が2024年から大卒資格を問わないとのこと。次いで多かったのがソフトウェア開発の62%、金融&保険業が61%、建設業が55%、 ヘルスケア&社会福祉関連が42%となっており、さすがに教育分野は学歴が大切のようで、大卒資格を採用条件から外すと回答したのは35%に止まっているのだった。
大卒資格の代わりに雇用主がこだわり始めているのは、採用者が職種に必要な技能を身につけているか、職種に有益な経験を積んでいるか。 加えて企業側は事務職等の専門性がない職種に、あえて大卒資格を問うことにより、不要に高額な給与を支払う傾向を嫌っているとのこと。
今後も大卒資格を採用者に求め続けると回答している企業でも、「社内の25%の職種は大卒資格が不必要」と回答したのは24%。「50%の職種で大卒資格が不必要」と回答したのは27%で、 大卒にこだわる企業でも、半分以上が 全ての仕事に大卒のステータスが必要ではないことを認識している様子が明らかになっているのだった。
大卒資格を問わない企業の採用状況はと言えば、高卒を雇用しているのは 当然のことながら圧倒的にエントリー・レベルの仕事。 専門性が高い 上級ポジションは、今も大卒を採用条件にする、もしくは選考時に優位になると回答する企業が半数以上。 しかし上級ポジションでも、秀でた実務経験が最も優遇されるのは全業界共通の見解で、 逆に大卒でないにも関わらず、特定業種で功績を上げた実績はより高く評価されるもの。
一方の大卒者は学生時代に築いた交友関係や人脈が能力の一部として評価される傾向は今も顕著なのだった。



HENRYより強いZoomer、その後に控えるアルファ


現時点でジェネレーションZ(現在14〜26歳)はアメリカ史上最も大学進学率が高い世代。 2022年にアメリカの高校を卒業した16〜24歳のうち、大学に進学したのは62%で、これはアメリカ史上最多レベル。同じく2022年に大学を卒業した20〜29歳のうち、就職したのは76.4%。 2022年に高校卒業資格を取得し、大学に進学しなかった38%のうち、就職したのは69.2%。大卒よりは就職率は低いとは言え、企業側が大卒資格を問わないようになれば、 今後増えて行くと思われるのがこのパーセンテージなのだった。
それがハイスクール・ドロップアウト、すなわち高校中退者になると、仕事をしている、もしくは職業安定所に登録して仕事を探しているのは41.9%。 すなわち大学に行くか否かよりも、高校を卒業できるかの方が人生の明暗を分けるという印象。
2024年は 遂にベビー・ブーマー世代の就業人口を、今やZoomerと呼ばれ始めたジェンZが追い越す年。 ZoomerはBoomerの子世代なので、投資で資産を増やしたBoomerの影響か、 既に半数が投資をしているようで、職場に”ワーク&ライフ・バランス”の理想論を持ち込むのは 上の世代にとっては頭が痛いところ。
そんなZoomerに最も手を焼いているのがその上のHENRY達で、彼らはZoomerからのストレスを抱えながら、給与が安くないだけにレイオフの対象になりがち。しかも金利が上がって家が買えず、 学費ローンをせっせと返済する中で、自分より下の世代からは「大卒資格を問わない」企業が増えるという、気の毒なグループ。
一方、Zoomerは暫しの間は若さに物を言わせて、職場やライフスタイルを変えて行くと見込まれる存在。 今時「TVを観ない」、「ソーシャル・メディアをニュース・ソースにする」のはZoomerに限ったことではないけれど、 Boomer、ジェネレーションX がフェイスブック、X(元ツイッター)をニュース・ソースにしていたのに対して、Zoomerがニュース・ソースにするのは圧倒的にTikTokとインスタグラム。 そのせいかフェイスブックとツイッターの影響力が減速中なのに対して、TikTokとインスタグラムは影響力を拡大中。
しかしながら、経済面ではまだまだ続くのがBoomerの影響力。 アメリカでも高齢化が進んだ結果、現在全人口の10人に3人が55歳以上。ベビーブーマーはそのうちの59〜77歳で、 子供が仕上がって”エンプティ・ネスト”になったブーマーは、既に住宅ローンを払い終え、投資も行っているので、旅行やエンターテイメントに最も可処分所得が割ける世代。 そのためZoomer世代の成功の鍵は、Boomerのように投資をするか、Boomer世代を狙ったビジネスをするかのどちらかと言われるほど。 そしてZoomerの後に既に控えているのが、史上最も手ごわいアルファ世代(13歳以下)。
ミレニアル、Zoomerが ”スノーフレーク”と呼ばれる、良く言えば繊細、ハッキリ言えば精神的に弱い世代だったのに対して、 アルファは強靭な精神を持ち合わせた恐れ知らずの世代。 学歴を問わない傾向が高まれば、やがてこの世代が若くしてどんどん社会進出をして来ることが見込まれるのだった。



流浪のイタリアン・シェフ


パンデミック以降、すっかり冴えないのがNYのレストラン・シーン。 特に嘆かれているのが大規模なレストランのオープニングが減って、イノベイティブな若手シェフが不在であること。
しかし、レストラン業界のインサイダーの間で囁かれているのが、そんな状況が2024〜2025年に改善される見通し。 その復活の一端を担うと見込まれる食のカテゴリーは、意外にもイタリアン。
イタリアンは1990年代から2010年前後まで、NYで圧倒的な強さを誇った”過去の栄光”的な存在。 今も、カルボーヌのような人気イタリアン・レストランが存在するけれど、料理のカテゴリーで現在人気を博しているのは NYで不滅の強さを誇るステーキと、ヌーベル・コリアン。
それでもイタリアンがNYレストランの黄金時代のカムバックを担うと言われるのは、NYで働くことを夢見る有能なイタリアン・シェフが多いため。 日本でも若く有能な人材が、より高額な給与を求めて海外で働く可能性を模索していることが伝えられているけれど、 シリコンヴァレーの給与を知ったら、同じ仕事で日本で働くことが馬鹿らしく感じてしまう人々は多いはず。
イタリアは、EU圏に25年前にユーロが導入されて以来、急激なインフレと安い賃金で、経済が大きく後退し、今もそれに歯止めが掛からない状態。 そのため能力がある若い世代がより良い労働条件を求めて、ヴィザ取得問題が無いユーロ圏の国々に流出する事態が長く続いており、 イタリアン・シェフの場合、先ず出向くのが 言語のハードルが低く、近年グルメ・レストランが急増しているスペイン。 スペインとて景気は良くないので 給与は安いものの、イタリアに残るよりも労働環境は遥かにベターだそうで、 一部では過去10年ほどの間に スペインのレストランのレベルが大きくアップした要因とも言われるのが、イタリアから修行と出稼ぎに来ているシェフたちの存在。
しかしユーロ圏である程度経験を積むうちに彼らが痛感するのが、「ヨーロッパに居る限りは明るい未来が無い」ということで、 そうなれば目指すはアメリカ。それも大きなイタリアン・コミュニティがあり、経済規模が大きなNY。 そのNYはイタリアンが下火で、かつてのセレブ・イタリアン・シェフ、マリオ・バターリは #MeTooムーブメントで失脚。 イタリアンのスター・シェフが不在であるけれど、そんな状況はこれから進出を狙う側にとっては願ったり叶ったり。 レストラン業界上層部も、ユーロ圏からの有能な若手人材引き抜きに動いている真最中であるという。
レストラン業界だけでなく、街全体が再編成に向けて水面下で大きく動き始めているのがニューヨークとサンフランシスコ。 どちらもパンデミック後のリモート・ワークを受けて、多くの住人が 環境と治安が良く、物価が安い郊外や地方に流出したけれど、 2021年に地方生活に見切りをつけて都市部に戻ったブーメラン組とは異なり、過去3年前後を新天地で過ごした層が、 いよいよカムバックに向けて動くと言われるのが2024年以降。
その要因には「土地柄に馴染めない」、「自然災害」、「災害保険が掛けられない」、「実際に暮らして分かった 地方ならでは高い生活費」、 「人工中絶取り締まりの影響で産婦人科が無い」等、様々な理由がコンビネーションで影響しているようで、「災害保険が掛けられない」という問題は、 自然災害頻発の影響で、保険料が高過ぎるケースと、自分が住むエリアから保険会社が撤退しているケースがあるとのこと。
2024年以降は流動性の暗示が強い風の時代が本格化するとあって、これまで以上に人や物、情報がどんどん動くことが見込まれるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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