Jan 21 〜 Jan 27 2024

Election, Spotify, Longiviti Tech
スポティファイが儲からない訳、デザイナー・クローズよりデザイナーズ・ボディ!?


今週にはニューハンプシャー州で民主共和両党の大統領予備選が行われ、予想通り50%台の過半数を獲得して勝利を収めたのがバイデン大統領とトランプ氏。
しかし民主党の若い世代が候補者名の代わりに投票用紙記入していたのは「Ceasefire/シースファイア(停戦)」の文字。イスラエルVS.ハマス戦争以降、イスラエルを支持するバイデン氏への 若い有権者の反発は高まる一方で、予備選でミネソタ州のディーン・フィリップス下院議員が予想以上の健闘を見せたのも、バイデン氏に投票したくない民主党支持者が票を投じたため。 共和党予備選も然りで、ニッキー・ヘイリーがトランプ氏に11%の差をつけられながらも 43.3%の投票数を獲得したのは、他候補脱落により トランプ氏に投票したくない共和党支持者の票が彼女に集まったため。
現在アメリカ全体で高まっているのが バイデンVS.トランプの再対決を望まないムードで、最新の世論調査によれば「再びこの対決になった場合、投票しない」と答えた有権者は18%。ほぼ5人に1人の割合。 このような「どちらにもウンザリ」という国民は増加傾向で、これらの人々が望むのは未来に希望が持てるような若い候補者。 実際に過去30年のアメリカを振り返ると、クリントン、オバマという当選時に40代の若さだった大統領政権下で、経済を含む様々な軌道修正がされてきているのだった。



スポティファイが儲からない理由


昨年最多のレイオフを記録したITセクターでは、2024年も年明け早々グーグルが約1000人を解雇したのを皮切りに、ウェイフェアが1700人、ユニティが1800人、アマゾンのオーディブルが従業員の5%を解雇し、 CEOが今後も更なるレイオフがあることを示唆。今週にはEベイが全従業員の9%に当たる1000人のレイオフを、 マイクロソフト社がアクティビジョンとXBoxの従業員1900人のレイオフを発表。セールス・フォースも700人の解雇の見込みをウォールストリート・ジャーナルが報じており、 まだまだ後続がありそうな気配であるけれど、2023年12月に従業員の17%に当たる1500人のレイオフを行ったのがスポティファイ。
その解雇者の中には、雇用契約を交わしただけで仕事を始めていない人材も含まれていたようで、その1人だったのが私の知人の息子。 彼は名門ペンシルヴァニア大学ウォルトン校卒業後に某一流IT企業に務めたエリート。スポティファイ採用の際には、彼が行ったプレゼンテーションが 拍手喝采を浴び、好条件で雇用契約を取り交わしたものの、未だオフィスに出向いてもいない段階でレイオフの通知を受けたようなのだった。
ミュージック・ストリーミングの最大手、スポティファイは世界中に5億人以上のサブスクライバーを擁しながらも、未だに利益が上がらない企業。 昨年末の大型レイオフは「利益が上がらないのなら、せめてコストカットを」という株主からの圧力を受けたものであったけれど、 そんな資金繰りに追われる業界最大手が 何故ヘッジファンドの買収対象にならないかと言えば、ミュージック・ストリーミングというビジネス自体が 利益が上がらないように出来ているため。
ネットフリックスやマイクロソフトであれば、映画やソフトウェアのライセンス料を一度支払えば、その後どれだけ映画やドラマがストリーミングされても、 ソフトウェアがダウンロードされても、売り上げは全て自社のもの。しかしウォールストリート・ジャーナルのレポートによれば、 ミュージック・ストリーミングは、ストリーミングの度にライセンス料の支払いが生じるビジネス・モデル。1ドルの収益につき70セント、すなわち70%を楽曲の所有者に支払うという薄利多売を強いられるビジネス。 アップルやアマゾン、グーグルといったライバル企業が ミュージック・ストリーミングを片手間で行っても、決して本腰を入れないのは ズバリ「儲からないため」なのだった。 そのためスポティファイはコスト減らしだけでなく、ポッド・キャストやオーディオ・ブック等、音楽ストリーミング以外で もっと割の良い収入源を模索している真最中。
逆に割の良いビジネスを長年続けた結果、今週火曜日にアップルに次いで史上2番目の時価総額3兆ドル(日本円で約440兆円)企業となったのがマイクロソフト社。 これまでは他のIT大手に比べて「退屈」、「面白味が無い」と言われてきたマイクロソフトであるけれど、その企業イメージは昨年のAIブームをきっかけに激変。 今ではオープンAIの最大のインヴェスターとなり、先週のこのコラムにも書いた通りウォルマートとのパートナーシップで 小売業に新たなAIフォーマットを確立している最中で、 メディアの中には「それまでのマイクロソフトの堅苦しいイメージが、かえって新しいテクノロジーを売り込む際の信頼に繋がっている」と賞賛する声も聞かれるほど。
加えて今週には フェイスブックの親会社、メタも2021年以来、久々に時価総額が1兆ドルを超えたけれど、メタにしても 社名変更までして取り組んだメタヴァースよりも、 現在ではAIテクノロジーに株主の期待と評価が集まる存在。2024年はVC(ヴェンチャー・キャピタリスト)も一般投資家も、引き続きAIに大きな期待を寄せているのだった。



AIと共にVCが関心と投資を寄せるのは…


経済メディアの世論調査で明らかになったのが、アメリカ国民の多くが 意外にも 過去数年間で最も 今の自分の経済状態に満足しているという事実。
雇用が安定し、給与が増え、インフレが一段落してきたのがその要因と言われ、ハイブリッド勤務で得られる時間的余裕や、それと共に高まった旅行ブームで視野が広がり、 忙しさやストレスを物欲で満たしていた時期よりも、幸福度が高まりつつある様子が分析されているのだった。
特にミレニアル、ジェンZ世代は、パンデミック以降、ブランド品に代表される物欲が一段落して、旅行やコンサート等の体験にお金を遣う傾向が顕著になったと言われ、 それはソーシャル・メディアにも反映されている風潮。 かつてはブランド物で身を固めてプライベート・ジェットに乗り込んだり、パーソナライズしたフェラーリを前にポーズするインフレンサーがフォロワーを集めていたけれど、 過去2年ほどでそのフォロワーはトラベル・インフルエンサーにシフトしているのだった。
旅行をして世界観が広がり、人生の満足度が高まってくれば、物欲よりも、健康と幸福の助長、活動的に生きるための健康やスタミナを求めるようになるのはピュアな人間心理であり、ある種の本能。 シリコンヴァレーでは、センティミリオネア、ビリオネアになって 欲しい物が何でも手に入る反動から 物欲に価値を見出さなくなったIT富豪たちが、 出来る限り長く豊かな人生を謳歌するために、不老不死のボディを実現するテクノロジーに多額の資金を投じるようになって久しい状況。 昨年末の段階で、VCの興味と資金が最も集中していたのがAIと、ロンジビティ(長寿)・テクノロジーのビジネスなのだった。
シリコンヴァレー・エグゼクティブの間では、何年も前から 若い健康体のブラッド・プラズマ(血漿)を輸血する健康法が行われており、 ブラッド・プラズマとは 血液から赤血球、白血球、血小板といった有形成分を除いた液体成分のこと。 血液の55%を占めるのがブラッド・プラズマで、栄養成分を全身に循環させながら、 二酸化炭素や老廃物を排出する役割を果すことから、これが不老不死を叶えるサプリのようにもてはやされているのだった。 この健康法を実践する大富豪は、お抱えの若いブラッド・プラズマ提供者を雇い、 上質なブラッド・プラズマを提供してもらうために、その食生活からライフスタイルまでを管理している様子が伝えられるのだった。



羨望の対象はデザイナーズ・クローズからデザイナーズ・ボディへ<


そんなロンジビティ投資をするITメガリッチの中で、昨今名前が知られてきたのがブライアン・ジョンソン(46歳)。 自ら立ち上げたIT企業を売却してセンティミリオネアとなった彼は、過去2年の月日と200万ドルを投じて食事、睡眠、スキンケア、ワークアウト、サプリメント等、可能な限りの分野で、 可能な限りのテクノロジーを用いた 長寿と若返りのプログラムを実践。そのメソッドを”ブルー・プリント”と名付けて、サプリや食品販売にも乗り出したばかり。 彼も自分の息子から得たブラッド・プラズマを輸血する1人であるけれど、昨今では その若返りプロトコールをソーシャル・メディアで発信。 ロンジビティ・グルとして自らを売り込む活動にも出ており、アンチエイジング・ドクターやロンジビティ・エキスパート達も、 お金に糸目をつけずに高額トリートメントや施術をどんどん行う彼を 興味深く見守っているようなのだった。
その一方で、LAエリアに10店舗を構える超高額スーパー、エアウォンも、世の中のヘルス&ロンジビティ志向の高まりを担う、興味深い存在。 エアウォンについてはCUBE New Yorkの記事で詳細をご紹介しているけれど、マーケティング・チームもコンサルタントもついていない ヘルス・コンシャスな高級食材店を中心に、現在巻き起こりつつあるのがフードやライフスタイルの価値観を変えていくムーブメント。
多くのセレブリティやビリオネアが フラリと日常着で訪れるエアウォンは、グッチやルイ・ヴィトンのブティックとは異なり、ごく普通の一般人でも 彼らと差別されることなく、同じ空間で 同じように食材ショッピングが楽しめるスポット。 庶民とメガリッチの違いと言えば、メガリッチがカート一杯に 高額食材を購入して数百ドル、時に1000ドル以上を支払うのに対して、 庶民はソーシャル・メディアでヴァイラルになっている同店の20ドルの名物スムージーを飲みながら、50ドル程度の食材を買っている点。 モダンでクリーンな店内で、近隣の高級住宅街に住むメガリッチやセレブリティと一緒に食材ショッピングをしていると、 最初は興味本位のセレブリティ・ウォッチングでやって来た人々も、徐々に店内に並ぶ見目麗しいオーガニック野菜や、高級食材に魅了されたり、興味が沸いて来るのは時間の問題。 加えて 店内で見かける富裕層たちが 自分達と同じようなジーンズ&Tシャツ、スウェット姿でも、肌の色ツヤが良く、 ヘルシーなオーラを放っている様子を目の当たりにするうちに、価値を見出すようになってきたのが”デザイナーズ・クローズ”よりも ”デザイナーズ・ボディ”。
それまで食費を安く切り詰めて デザイナーズ・フーディーや、デザイナーズ・スニーカーを購入していた若い層が、 ルイ・ヴィトンで全身を固めてエイジングを早めるよりも、Tシャツが似合う健康体で 世界中を旅するライフスタイルに価値を見出すようになってきているのが現在。
まだこのムーブメントは始まったばかりではあるけれど、身体の健康を手に入れた人々が次に求めるのは精神の安定と充実。 2020年から始まった風の時代は、それまで200年続いた土の時代の物質至上主義から 精神世界へのシフトが起こると言われるだけに、 着実にそれに向かう兆しを感じさせているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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