Jan 28 〜 Feb 4 2024

End of D.E.I?
テイラー、グーグル、チップ埋め込み&離婚産業!?


X(元ツイッター)上で、先週末から週明けにかけてブロックされていたのが、”テイラー・スウィフト”の検索。 理由はジェネレーティブAIによって作られたテイラーのディープ・フェイクのポルノ映像がX上に多数投稿されていたためで、Xがビデオ削除に動いたのはディープ・フェイクがヴァイラルになり、スウィフティーズ(テイラーのファン)からの抗議が殺到してからのこと。 そのため関連ビデオ消去までの異例の措置として行われたのがテイラーの検索ブロックの措置。
この事態を受けて、先週末の段階で「AIテクノロジーに対する早急な法的なガイドライン設定」を議会に呼び掛けたのがホワイトハウス。 それに対してマイクロソフト社のCEO、サティア・ナデラは「今回のテイラーのようなディープ・フェイクの取り締まりには AIテクノロジーを用いるのが最も有効な手段である」と、 規制を牽制する発言をしていたけれど、昨年5月にペンタゴン爆破映像のディープフェイクが出回り、株価が乱高下した時には全く無反応だったホワイトハウスやIT業界トップが、 テイラーのディープ・フェイスには早急な反応を見せた様子は、現在のアメリカ社会でテイラーの影響が如何にパワフルであるかを示すもの。 思い返せば2022年11月にテイラーのエラス・ツアーのチケット販売がスタートした際にも、独占で販売したチケット・マスターのトラブルと多額の手数料にスウィフティーズの怒りが爆発。 チケットマスターCEOは下院聴聞会での弁明と謝罪を強いられ、その後ビヨンセのチケットが発売された際には大きな改善ぶりを見せていたのだった。
そんなこともあってか、先週「サタデーナイト・ライブ」のホストを務めたダコタ・ジョンソンが、そのオープニング・モノローグの中でテイラーを「アメリカで最もパワフルな人物」と語っていたけれど、 実際に今年の大統領選挙でバイデン勝利の鍵を握ると言われるのが、テイラーからの公の支持をバイデン氏が獲得出来るか否か。 テイラーは多くのセレブリティ同様、トランプ嫌い。しかも昨年9月からはファンに、選挙投票のための登録を済ませるように呼び掛けており、バイデン政権はテイラーの支持獲得に真剣に動いている様子が伝えられるのだった。



アップル、マイクロソフト、グーグルの現在


先週アップルに次いで、史上2番目の3兆ドル企業となったマイクロソフト社が、その前の週に果たしていたのが アップルを抜いて、時価評価額世界一企業への返り咲き。 今週発表された2023年第4四半期の業績でもその売り上げが前年比33%という好調ぶりで、 アップルとマイクロソフトのポジション逆転のキーワードは言うまでもなく「AI」。
一方アップルから今週、2月2日に発売されたのが、課税前の米国価格が3499ドルという 最強XRテクノロジーを搭載したヘッドセット、”アップル・ヴィジョン・プロ”。 XRとは”Extended Reality/エクステンディド・リアリティ”のことで、実世界のデジタル版と仮想デジタル・ワールドをナチュラルにブレンドさせるテクノロジー。 早くもステータス・ガジェットの呼び声が高いヴィジョン・プロは、その販売数を40万ユニットに留めるのがアップル社の意向。 他社の安価な VR&AR (ヴァーチャル・リアリティ&アグメンテッド・リアリティ) ヘッドセットとは桁違いのクォリティを実現している上に、 アップルは開発者フレンドリーな社風を貫いてることから、今後見込まれるのが XR及び、メタヴァース関連のアプリやコンテンツが 先ずはヴィジョン・プロ対応で製作されること。 それに伴って安価な普及版のヴィジョン・プロが市場に出回ることが見込まれているのだった。
2社に比べて、芳しくないムードが漂っているのはグーグル(親会社アルファベット)。グーグルも今週2023年第4四半期の収益報告を行ったけれど、その中で明らかになったのが、 2023年1月に行った約1万2000人の大型レイオフの退職手当として、21億ドルもの損失を計上していたこと。ちなみに このレイオフはグーグル社員の愛社精神が大きく揺らぐほどの ダメージを与えたと言われ、それまでは福利厚生が整ったIT企業の中でも、更に従業員への好待遇で知られたグーグルは社員のロイヤルティの高さで知られた存在。 しかし悪化する社内感情に拍車を掛けるように、レイオフがまだまだ続くこと、その分の退職手当として更に7億ドルの支出が 今週発表の収益報告に既に反映されていることが発表されているのだった。
業績自体は第4四半期収益が前年比13%アップの836億ドル、会計年度の収益が前年比9%アップの3074億ドルで 決して悪くはないものの、 グーグルの収入源であるサーチ・ビジネスの収益はウォールストリートの予測を下回る数値。 そのこととマイクロソフト社のAIビジネスの好調ぶりはグーグル社内の危機感を煽ったようで、 このままAIチャット・ボットが普及した場合、ウェブ上で検索しなくても AIに話しかけるだけで必要な情報が得られることから、これまでグーグルの独占市場であったウェブ検索は、 いずれ消えて行くと言われるビジネス。 しかもグーグルのAI、BARDは マイクロソフト&オープンAIのチャットGPTに水を開けられる一方。
グーグルは年明け早々に行ったレイオフで、スマートフォンのピクセルなどハードウェア部門のスタッフを解雇したことから、今後もハードウェアには期待が持てない状況。 また昨年から多くのストリーミング・サービスが サブスクライブ料金を下げるために広告入りのプランを設けるようになったことから、これまでグーグルやYouTubeに集中していた デジタル広告が様々なストリーミング・サービスに拡散されるようになってきたのもグーグルにとっては喜べない状況。 さらにグーグルはEUや米国司法省が起こした様々な訴訟で裁判費用と記録破りのペナルティを支払い続けており、暫くの間、グーグルへの向かい風は収まりそうにない気配なのだった。




人体埋め込みチップは実用化されるか?


今週イーロン・マスクがX上で発信したのが、彼が設立したニューラリンク社による 初のコンピューター・チップ人体埋め込み手術が行われ、被験者が順調にリカバリーしているニュース。 2016年7月にカリフォルニア州で「医療研究企業」として設立されたニューラリンク社は、イーロン・マスクがほぼ単独で資金提供をしてきたビジネスで、 食品医薬品局からコンピューター・チップ埋め込みの人体実験承認を得たのは昨年のこと。
ニューラリンク社が開発した「テレパシー」とネーミングされたチップをインプラントすれば、頭で考えるだけで スマートフォン、コンピューター、その他ほぼ全てのディバイスを制御出来るようになり、 障害を持つユーザーでも問題なくコミュニケートが出来ると謳われているのだった。
ニューラリンクは脳に接続された電極ネットワークの研究で知られる存在で、これは言葉や文章を使わずに相手と自分の考えや気持を共有出来るようになるテクノロジー。 その開発を進めることにより、脊髄を切断された人の全身機能回復、生涯盲目だった人の視力回復に加えて、パーキンソン病、認知症、アルツハイマー病、その他の精神疾患、脳疾患も治療できるというのが 同社のビジョン。加えてやがては音楽や映画もガジェットを通さず、脳内で直接ストリーミング再生が行えるようになるとさえ言われるのだった。
ニューラリンクのチップには細く柔らかい糸状の電極がついており、それをミシンのようなロボットによって脳の特定の領域に縫い付けるのがインプラント手術。 脳の切開によって若干の傷が残るものの、手術の所要時間は僅か30分で、部分麻酔で行えるだけでなく、入院の必要もないので、手術の当日に帰宅が許されるのだった。
人間の脳は、筋肉や神経などの細胞に信号を送信する ニューロンと呼ばれる特別な細胞で構成されており、 ニューラリンクのチップの電極はこれらの信号を読み取りながら、モーター制御への変換を可能にするもの。 すると筋肉の動きなどの身体機能をチップがコントロールできるようになり、前述の通りコンピューターやスマートフォンなどの外部テクノロジーのコントロールも可能。 そして将来的には記憶をバックアップ保存し、復元すること、すなわち過去の記憶を脳の中で完璧に再生することが出来るようになり、タイムマシン無しでも過去の実体験が味わえるだけでなく、 その記憶を別の脳やロボットにダウンロードすることも可能になるという。 人間はチップを通じて、頭で考えるだけでAIとコミュニケートが出来ることから、「AIが人間の脅威になることなく、人間と共生出来る」というのがイーロン・マスクが当初から掲げて来たゴール。

しかし当然のことながら問題やリスクもあり、まず問題視されているのはニューラリンクが行って来た動物実験。 2022年には 非営利団体責任医療医師委員会(PCRM)が米国農務省に ニューラリンクの実験が動物虐待に当たるとの訴えを申請。脳に電極を埋め込むために頭蓋骨に穴を開けられたサルの3分の1が脳出血を患い、 約1500頭ものサルが実験、もしくは安楽死によって命を落としているのだった。チップが埋め込まれたサルは、ほぼ全てが衰弱化し、埋め込まれた電極が原因の感染症にも苦しんでいたようで、 ニューラリンク側は虐待は否定しながらも、多くの豚やサルが犠牲になったことは認めているのだった。
さらに危惧されるのは、プライバシーやテクノロジー悪用、乱用の問題。チップのインプラントによって人間の深層心理のモニターが可能になれば、その情報が売買されたり、 大手企業や権力者に利用されるのは時間の問題。 これまでグーグルがユーザーの検索履歴情報を使って広告収入が得易く、サイトに止まる時間が長くなるアルゴリズムをデザインしてきたのと同様のことが、 脳から得た情報で行われた場合、人間は知らずしらずのうちに自由や人権を失うリスクにさらされるのだった。
とはいってもテスラの自動運転さえ問題多発で実用化からどんどん遠のいているのが現在。それだけにニューラリンクのチップも、本当に謳っている通りの効力を実現できるかは、まだ未知数と言えるのだった。



今や離婚も祝う時代!? 離婚産業がブームに!


多くの人々にとって、結婚は生涯の大イベントの1つであり、離婚はその結婚の失敗、時に悲劇を意味するもの。 ところが実際には結婚して幸せになる確率よりも、離婚して幸せになる確率の方が高く、 結婚を後悔する人は沢山居ても、離婚を後悔する人は極めて少ないというデータが出ているのだった。
そうなれば「結婚よりもする価値、祝う価値があるのが離婚」という訳で、昨今アメリカで盛り上がっているのが離婚産業。 離婚サポート・サービスや、ネットワーク・コミュニティ、離婚後の生活のコーディネート等、離婚に付随したビジネスがどんどん誕生しているのが現在。
2022年のギャロップ社のアンケート調査によれば、離婚を道徳的見地から肯定するというアメリカ人は81%。 20年前の2002年の調査時にはその割合が60%であったので、世の中がかなり離婚に寛容になったと言えるけれど、 その理由の1つは 離婚に否定的なキリスト教が社会に及ぼす影響力が衰えて来たこと。 もちろん女性の社会進出が進んで、経済的に離婚をしても困らない女性が増え、離婚経験者のイメージが大きく改善されたことや、 「子供のため」、「生活のため」と不幸な結婚を我慢して続けることに価値を見出さなくなった社会風潮も影響しているのだった。
以前よりも、離婚に伴う罪悪感がなくなり、自分の幸せのために堂々と胸を張って離婚をする時代になったことから、 「結婚時と同じように、離婚も祝いたい」と考える人々は多いようで、昨今増えているのが離婚パーティー。 オンライン・インヴィテーションのEviteによれば、2023年には離婚関連のパーティーやイベントの招待状の数が過去最高、2桁の伸びを記録。 フレンドリーに離婚をするカップルの中には、2人揃って共通の友人を招いたパーティーをするケースもあるものの、 大半は厄介払いが出来たことを祝うのが離婚パーティー。
今やベーカリーも、ユーモラスなディヴォース(離婚)ケーキのデザインを競う時代に突入しているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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