Mar. Week 2, 2022
”Pistachio Croissant @ Maman”
久々のヒットペストリー! ピスタチオ・クロワッサン@ママン


私にとってパンデミックの最も大きなダメージの1つがお気に入りのベーカリーであったメゾン・カイザーが無くなって、その店舗が全て親会社傘下の ルパン・コティディアンになってしまったこと。 後者のパンも悪くは無いものの、私はメゾン・カイザーでリピート買いしていたペストリーやパンがいくつもあっただけに、それらを味わえなくなったのは残念な限り。
またパンデミック中に小麦粉価格が高騰したことから、どんどん上がって行ったのがベーグルやペストリーのお値段。 そのため 新しいベーカリーをトライする度に「どうしてこのベーグルやこのケーキがこのお値段?」という苦い経験が続いてきたのが昨今。 私にとって一番の衝撃だったのは、ロックフェラー・センターに昨年秋にオープンした”LODI/ロディ”のモンブラン(写真下)。 チェスナッツ・クリームの下はババ・オウ・ラムのようにラム酒に漬けたブリオッシュでその中にブルーベリー・ソースが入っているという モンブランのコンセプトを著しく逸脱した 支離滅裂な味のペストリーが アンジェリーナのモンブランの1.5倍に当たる15ドル+Tax。 これまでの人生で恐らく最も高額だったモンブランが一番不味かったというのは モンブランにこだわる私にとっては情けない経験。
つい最近には 友人が自宅にお茶を飲みに来ることになってたので、私の家から近いマディソン・アヴェニューに新たにオープンしたカフェで パリブレストとアップル・タルトを購入したけれど、小さなペストリーが2つで25ドル+Tax。 しかも素朴な見た目同様に 味わいも極めて素人臭いもので、私はまるで自分が焼いた失敗ペストリーを出すかのように 友人に謝りながら言い訳をする羽目になってしまったのだった。






今回ここにご紹介するカフェ兼ベーカリーのMaman/ママンは、今はクローズしてしまったノリ―タ南端のストアが第1号店。 今は企業によって買い取られたことから マンハッタン内にどんどん店舗が増えていて、トライベッカやロックフェラーセンター等にも出店。 私が住むアッパー・イーストサイドにも2020年にオープンしたように思うのだった。
ママンはフレンチ・ベーカリーで、チェーン展開された今も インテリアや食器、ペーパーカップに至るまで シングル店舗でスタートした時のフレンチ・カントリー・スタイルはそのまま。 そんなほのぼのとしたノスタルジックなプレゼンテーションを好む常連客は非常に多いのだった。
私にとっては頻繁に前を通るだけで、なかなか立ち寄るチャンスが無かったアッパー・イースト店であるけれど、 昨年末に友人2人と同店で待ち合わせをした際、先に到着した友人が店内の混み合いを察して、 私達の分もオーダーしておいてくれたのがラテとクロワッサン。 その時に初めて味わったのがママンのクロワッサンで、外側はクランチー、内側の生地に粘りとほのかな甘さがあるスタイルは まさに私好み。 即座に「ママンのペストリーをもっとトライしてみよう」という気持ちになったのだった。




ちなみに それまで私がママンで唯一トライしたことがあったのは、ママンのシグニチャー・スウィーツの1つでもあるチョコレートチップ・クッキー(写真上右)。 ママンのアッパーイースト店の3ブロック先には、”NYのNo.1 クッキー”で知られるレヴァイン・ベーカリーがあるけれど、 ママンのクッキーはレヴァインの分厚いアメリカン・スタイルとは異なるもの。 でも私にとってクッキーというのは、ケーキ並みに糖分、脂肪分、カロリーがある割には、デザートというよりスナックを食べた気分にしかなれないことから プライオリティの低いスウィーツ。そのため ママンのクッキーを味わった際も、美味しいとは思ったものの 「またこれを買いに戻って来よう」とは思わなかったのだった。
でもクロワッサンですっかりママンのベーカリーとしての力量を実感した私は、 その後何度か同店に足を運ぶことになったけれど、ある日お店の人が間違って袋に入れてくれたのがピスタチオ・クロワッサン。 店内でその間違いには気付いていたけれど、面倒なので そのまま持ち帰って味わったところ、私にとって久々のヒット・ペストリーになってしまうほど これを気に入ってしまったのだった。
そもそもママンのクロワッサンは、写真上のように内側の生地が 美しいレイヤーで均等に空気を含んでいるのも美味しさのポイント。 ピスタチオ・クロワッサンは、その生地のボトムにチョコレートとピスタチオ・クリームという異なる食感と異なるフレーバーがレイヤーになっていて、 一口味わう度にクロワッサン、チョコレート、トッピングのピスタチオ & ピスタチオ・クリームが脳に異なるセンセーションを時間差で与えてくれる美味しさ。 「何てIQの高いペストリー!」と感心してしまったのだった。




ピスタチオ・クロワッサンはママンの中でも人気ペストリーで、他に人気が高いのが中央上段のチョコレート・ヘーゼルナッツ・ブリオッシュ、 中央下段のヌテラ・ベニエ。私はヌテラが苦手な上に 揚げ物を食べない主義を30代から貫いているので ヌテラ・ベニエはトライしていないけれど、 現時点で、ママンのスウィーツで唯一私好みでは無かったのがローフ・ケーキ。 写真上左で見ての通り複数の種類があるけれど、いずれも 周りの茶色い焼き色の部分が 老化を促進させるAGE(終末糖化産物)を大量に含んでいるような苦みを感じさせるほど しっかり硬く焼き上げたスタイル。私はケーキと名がつくものは「しっとり焼き上げるべき」と考えているのだった。
でもママンのペストリーやスウィーツはいずれも5~6ドル程度で、その味わいの優秀さを考えると 何を選んでも極めて良心的なお値段であることは確か。

ちなみに私はパンにはこだわりが強いので、工場生産で袋に入ってトラックで運ばれてくるパンは”加工食品”と見なして食べない主義。 出来る限りその場で焼いて売っているベーカリーで購入するようにしているけれど、その方が小麦粉の質も確かなのと、 工場生産にありがちな二次発酵を省いたプロセスでないことも確実。
2011年にウィリアム・デイヴィス博士の著書で 全粒粉の小麦が諸悪の根源と謳った 「Wheat Belly/ウィート・ベリー」が世界的なベストセラーになって以来、 小麦粉の中毒性が問題視されるようになって久しいけれど、実際には炭水化物中毒の本当の原因は加工食品として生産される際に含まれるケミカル。 それらのケミカルが脳に与える中毒作用を熟知してシリアルからパン製品、クッキー、スナック類を1990年代から生産し続けてきたのがアメリカの食品業界。 それを食べれば食欲にあらがえず肥満になるのは人間である限り当然のシナリオと言えるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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